今年に入り、放送への政治権力介入の問題がメディアを賑わせています。
発端となったのは、2月8日の高市早苗総務相の発言でした。
衆議院予算委員会で高市総務相は、
民主党・奥野総一郎議員の質問に対し、
「行政指導というのは、要請になりますけれども、公共の電波を使って
全く改善されない、繰り返されるという場合に、全くそれに対して
何の対応もしないようことを、ここでお約束するわけには参りません」
と答弁。
これに対し奥野氏は、
「恣意的に運用されれば、政権に批判的な番組だという理由で
その番組を止めたり、その番組のキャスターを外したりということが
起こりうる。放送法4条(政治的公平)の違反には、
放送法174条(業務停止)や電波法76条(電波停止処分)を
適用しないと明言してほしい」
と求めました。
また、高市総務相は放送法について、
「単なる倫理規定ではなく法規範性を持つ。
私が在任中に(命令を)出すとは思えないが、事実に照らして、
その時の総務相が判断する」
とも発言しています。
翌9日に高市総務相は、
「1回の番組で電波停止はありえない。極めて限定的な
状況のみに行う」などと説明しましたが、
野党などから、
「時の政権の判断で介入できるという発言で極めて問題だ」
と批判が出ています。
論点の一つとなっているのは「政治的公平性」や「報道は事実を
まげないでする」などを規定する放送法第4条が「倫理規定」なのか
「法規範性をもつ」のかという“法解釈”の問題であり、
放送法174条や電波法76条の業務停止や停波を放送法4条違反で
適用できるかどうかという点となっています。
高市総務相の発言を受け、新聞など各メディアを中心に、
「放送への政治的介入であり、政治権力のに対する放送局の委縮を招く発言だ」
などの議論が巻き起こっています。
2月29日には田原総一朗氏らジャーナリストが、
「高市氏の発言は憲法と放送法の精神に反している」と抗議する声明を発表。
また3月2日には、樋口陽一・東大名誉教授(憲法)ら5人の学者が、
放送法4条を根拠に処分を行うことは憲法違反にあたるとする見解を表明しました。
さらに4月19日、国連人権理事会の調査で来日した、
デビッド・ケイ米カリフォルニア大アーバイン校教授が会見で
「日本の報道機関の独立性が深刻な脅威にさらされていることを憂慮する」とし、
放送法や特定秘密保護法の改正を求める声明を発表しています。
我が国には憲法によって表現の自由が保障されています。
新聞、雑誌は放送法の対象ではなく、放送という形態に対象を限ったものが
放送法です。
放送法第4条の主語は政府であることが、法学者などの法解釈における主流である中で
高市総務相が転換したとも取られています。
米国ではFCC(連邦通信委員会)が政府の独立機関として運営されています。
我が国ではBPO(放送倫理・番組向上機構)がNHK、民放連の出資で、
運営されていますが、放送法に基づくこうした放送行政のあり方は、
日本独特のものと言われています。
この問題について、テレビや新聞の報道はどう伝えてゆくべきでしょうか?
また政治権力とメディアの関係性についてどうあるべきでしょうか?
コンパス・オピニオンリーダーの皆様のご意見を伺いたいと思います。
お力添えの程、お願い申し上げます。