2016年05月21日 新・週刊フジテレビ批評で放送
政治・政策

放送への政治介入にどう向き合うべきか?

今年に入り、放送への政治権力介入の問題がメディアを賑わせています。
発端となったのは、2月8日の高市早苗総務相の発言でした。

衆議院予算委員会で高市総務相は、
民主党・奥野総一郎議員の質問に対し、
「行政指導というのは、要請になりますけれども、公共の電波を使って
 全く改善されない、繰り返されるという場合に、全くそれに対して
 何の対応もしないようことを、ここでお約束するわけには参りません」
と答弁。

これに対し奥野氏は、
「恣意的に運用されれば、政権に批判的な番組だという理由で
 その番組を止めたり、その番組のキャスターを外したりということが
 起こりうる。放送法4条(政治的公平)の違反には、
 放送法174条(業務停止)や電波法76条(電波停止処分)を
 適用しないと明言してほしい」
と求めました。

また、高市総務相は放送法について、
「単なる倫理規定ではなく法規範性を持つ。
 私が在任中に(命令を)出すとは思えないが、事実に照らして、
 その時の総務相が判断する」
とも発言しています。

翌9日に高市総務相は、
「1回の番組で電波停止はありえない。極めて限定的な
 状況のみに行う」などと説明しましたが、
野党などから、
「時の政権の判断で介入できるという発言で極めて問題だ」
と批判が出ています。

論点の一つとなっているのは「政治的公平性」や「報道は事実を
まげないでする」などを規定する放送法第4条が「倫理規定」なのか
「法規範性をもつ」のかという“法解釈”の問題であり、
放送法174条や電波法76条の業務停止や停波を放送法4条違反で
適用できるかどうかという点となっています。

高市総務相の発言を受け、新聞など各メディアを中心に、
「放送への政治的介入であり、政治権力のに対する放送局の委縮を招く発言だ」
などの議論が巻き起こっています。
2月29日には田原総一朗氏らジャーナリストが、
「高市氏の発言は憲法と放送法の精神に反している」と抗議する声明を発表。
また3月2日には、樋口陽一・東大名誉教授(憲法)ら5人の学者が、
放送法4条を根拠に処分を行うことは憲法違反にあたるとする見解を表明しました。
さらに4月19日、国連人権理事会の調査で来日した、
デビッド・ケイ米カリフォルニア大アーバイン校教授が会見で
「日本の報道機関の独立性が深刻な脅威にさらされていることを憂慮する」とし、
放送法や特定秘密保護法の改正を求める声明を発表しています。

我が国には憲法によって表現の自由が保障されています。
新聞、雑誌は放送法の対象ではなく、放送という形態に対象を限ったものが
放送法です。
放送法第4条の主語は政府であることが、法学者などの法解釈における主流である中で
高市総務相が転換したとも取られています。

米国ではFCC(連邦通信委員会)が政府の独立機関として運営されています。
我が国ではBPO(放送倫理・番組向上機構)がNHK、民放連の出資で、
運営されていますが、放送法に基づくこうした放送行政のあり方は、
日本独特のものと言われています。

この問題について、テレビや新聞の報道はどう伝えてゆくべきでしょうか?
また政治権力とメディアの関係性についてどうあるべきでしょうか?
コンパス・オピニオンリーダーの皆様のご意見を伺いたいと思います。
お力添えの程、お願い申し上げます。

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:昨今の放送法をめぐるメディアの報じ方についてどう評価しますか。
Q2:問1の回答理由をお聞かせください。
Q3:政治権力のメディアへの介入、あるいはその可能性について、
私たちはどう向きあえばよいとお考えですか。
ご意見をお聞かせください。
Q4:政治権力のメディアへの介入について、
テレビというメディアに期待することがありましたら、
ご意見をお聞かせください。

オピニオンリーダーの回答

( 13件 )
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2. ある程度評価する

浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「2 - ある程度評価する」の回答理由
高市総務相の発言は、業務停止や電波停止の可能性をちらつかせて恫喝したようにしか見えない。これに対して、メディアが抵抗して批判的な報道を中心に取り扱っていることは、それなりに評価できる。ただ、高市総務相への責任問題にまでなっておらず、何となく、この問題はうやむやになってしまったような印象もある。
高市総務相は自らの主張を強力に発信しているのに対して、各メディアがそれを批判的に報じるのは当然。

現政権による様々なメディアへの圧力が疑問視されている状況で、高市総務相の発言は、業務停止や電波停止の可能性をちらつかせて恫喝したようにしか見えない。これに対して、メディアが抵抗して批判的な報道を中心に取り扱っていることは、それなりに評価できる。

「1つの番組のみでも」との解釈を追加したことは、明らかに「1つの番組ではなく放送事業者の番組全体」という従前の解釈を拡大したもので、謙抑的な姿勢をかなぐり捨てて、積極的な政治的な介入の可能性を露骨に打ち出しているものと見ざるを得ない。この点に関する高市総務相の理屈付けは、本来の趣旨から逸脱した詭弁的なテクニックにすぎない。そういう詭弁も弄しながら、公平か否かを権力者が判断して介入すると明言して威嚇すること自体が、「政治的な介入」で、高市総務相の発言自体が、放送法第3条の「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」との定めに違反する疑いがあるわけで、これを批判的に報道するのは当然のことと理解できる。

ただ、高市総務相への責任問題にまでなっておらず、何となく、この問題はうやむやになってしまったような印象もある。
Q3. 回答する
同調圧力に弱く、空気を読みがちで、面倒なトラブルを避けたいと思うのは、多かれ少なかれ、報道に関わる人たちも同じだろう。政治権力は、言論人の中に、時としてそのように脆弱で、デリケートな面があるというところに目を付けて、メディアに介入してくる可能性がある。政治権力は、権力が強くなればなるほど、メディアにも介入する誘惑に駆られる。

言論機関が国民の知る権利に奉仕できるためには、そうした政治権力の介入は好ましくない。このことを十分に理解しながら、一般市民は政治権力がメディアに介入しないか監視していくことが重要である。

本来ならば、権力による違法な政治的介入があった場合には、憲法問題として争えることができるべきだが、日本の司法制度が弱いために、いざ問題が顕在化した場合の司法的救済がうまく機能しない恐れがある。その点で、これを是正するような方向での司法制度の改革を考えることが必要だろう。
Q4. 回答する
時既に遅しとならないように、放送局等のメディアの委縮を招くようなことのないような世論の醸成が求められる。テレビは、徹底的な取材に裏付けられた、画像と音声と編集・演出によって人々に訴える力を持っている点で、まだまだテレビは世論の形成に最も大きな影響力があるのではないか。

ただ、テレビでは放映時間の制約もあり、掘り下げが不十分な番組も多いし、視聴率競争のなかで真面目な番組の占める割合はそれほど高くはなく、政治とメディアの問題をテレビで視聴する人はそれほど多くはないかもしれないが。

このうち放映時間の制約については、ネット放送等との連携等により、掘り下げた報道やオンデマンド放送でアクセスしやすい環境が整備されていくことを期待したい。
 
 
山田秀雄
弁護士
Q2. 「2 - ある程度評価する」の回答理由
「公平な報道」や「事実を曲げないこと」は、極めて重要であるが、
その判断を時の権力が行うことは、極めて恣意に流される
危険がたかく、民主主義社会におけるメディアの重要性を
考えると、断じて許されることではない。
ナチス時代の言論、メディアに対する統制を想起するべきである。
高市総務相発言は、この危険を感じさせる内容で問題であろう。
この点を強調したメディアの報じ方については、評価したい。 
Q3. 回答する
テレビメディアの力は相対的に低下したといわれるが、
客観的には、最も強い影響力を有することは現在でも疑いがない。
民主主義の根幹は、言論、表現の自由の範囲において、
どのような「異端の考え」も許容することから出発する。
政治権力が、都合の悪い放送内容を「事実と異なる」や
「公平でない」とする判断は、恣意に流れる恐れが十分に
ある。
テレビメディアは、毅然として民主主義の砦としての自負をもって
対応すべきである。
Q4. 回答する
問3に同じ
 
 
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3. あまり評価しない

岩渕美克
日本大学法学部教授
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
 萎縮しているわけではないだろうが、表現の自由やひいては憲法改正にもかかる問題なので、もっと大々的に報道してもよいと思う。とりわけテレビと新聞は良く言えば棲み分け、悪く言えばセクト主義的になりがちだが、大きな問題と思う。
 否定されるだろうが、やはり萎縮しているのではないかと思わせる報道姿勢のような気がする。具体的にどの部分とは言えないが、本来権力を監視するジャーナリズムの本旨が行かされていないような部分が気になる。たとえば、一連の放送法、憲法の解釈は、法の趣旨を逸脱したものである。安倍首相自ら、ある講演で立憲主義ないしは憲法は権力を抑止し国民を守るものであるという従来の法学者の解釈を古いものであると断じているようである。こうした問題についてもあまり大きく取り上げようとしないのは、やはり萎縮しているゆえんではないかと類推することになる。
 今までも、いわゆる椿発言問題、TVタックル、ニュースステーションの民主党明日の内閣報道問題など、多くの権力とテレビの間に緊張関係を生じる問題があったが、それなりに報道は取り上げて生きた気がする。今回はそれよりもひどいと思うが、こうしたものに対する報道は多くはない。舛添知事の公用車、外国旅費の方が各局で大きく取り上げている気がする。
 国家権力に対する弱さを露呈した感すらある。立ち向かえとは言わないが、批評のような番組以外でも大きく取り上げてしかるべきではないだろうか。憲法改正や表現の自由ともかかるもんだであることを考えてもらいたい。
Q3. 回答する
 これだけ法の解釈が、学者というか今までの学問的常識を逸脱する解釈が政治によって可能になり、それを世論に訴えるべきはずのメディアが看過してしまうようであれば、その可能性は残念ながら高いと言わざるを得ない。基本的には世論の成熟を待つしかないのだが、それを助長させるのもメディアの重要な責務であるはずと思う。
Q4. 回答する
 より大きな影響力を持って、問題の本質に切り込むような報道や議題設定を望みたい。放送法という縛りの中でも可能であると考えます。
 個人的にはかなり保守的な歯垢に位置すると思ってはいるが、安部政権の政策そのものや政治姿勢というよりも方法論については問題があると思う。
 
 
中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
政治介入を論じる前に国益の視点を重視すべき。
政治介入という言葉を乱発し過ぎている。政治が介入しているか、いないかに、あるいは政治と報道に焦点が集中し過ぎている。その前に国益の観点が必要である。日本のメディアは政府や首相、閣僚に対してあまりにも辛辣に過ぎる。批判と侮辱を同一視している。それが視聴率重視姿勢に投影されている。
Q3. 回答する
メディア機能の一つとして、確かに政治を監視する役割はある。しかし同時に、等身大の政治を視聴者に正確に伝える役割も合わせ備えている。この意味でメディアは中立的立場を堅持する必要がある。ところが、一部のテレビ局、報道番組の中には世論を左回旋させようと操作するものが目立つ。そうなると、どうしても政府としては介入姿勢に転じてしまう。政府とメディアは対話することが重要なのではないか。これは中央銀行と市場との対話が必要なことに酷似している。視聴者には高度な見識が求められるようになった。また、番組には視聴者の多様な見解をくみ上げる努力がこれまで以上に問われている。
Q4. 回答する
少し前、ある生番組で事実と異なることを平気で報じていたため、視聴者意見として番組のHPに投稿したことがある。しかし、番組からの返事はなかった。メディアには視聴者からの意見、見解を反映するよう努力して欲しい。
 
 
岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
この問題は、実際に新聞やテレビの報道番組を作っている当事者の方々、それも歴代の方々の発言を聞いてみたいと思います。
Q3. 回答する
ここ数年、テレビ報道が委縮して眠ってしまっている印象です。
政治圧力を受けるのは面倒、と思うのか、独自性が失われて、つまらなくなってきている。
だいたいにして、報道に携わっている皆様は「ここは報道してはいけない」という常識があると思いますし、それを守ればいいんです。
政治家は「政治的公平性」を持ち出しますが、その意図は政治に批判的な報道をなくそう、ということですし、政権が変わったらその軸も変化するわけですから、いちいち政治を気にするより、「我が番組はこのスタンスで行く」というほうがずっと信頼できると感じます。
Q4. 回答を控える
 
 
常見陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
実に中途半端だと感じる。問題提起をしていそうで、問題の本質に踏み込んでいない。問題への切り込みが浅い。たとえば、このような介入が実現したあとの世界を提示するなどしたらよかったのではないか。そもそも、放送への介入の問題以前に、すでに放送局というものが去勢された、無難な存在になっていることが可視化されていないか。
Q3. 回答する
介入後の世界はどうなるのかというものを提示すれば共感を得られるだろう。あるいは、北朝鮮のような報道体制になったらどうするかという極端な例の提示も必要だ。その前に、できることを最大限にやることだ。介入などを危惧する前に、すでに放送局は無難になっていないか。萎縮させる、自主規制を促すという意味では、すでに政権の手のひらの上で踊らされているといえる。誰もNOと言えない事実をつきつける活動が必要だ。そのためには、なんとか予算と自由を確保しなくてはならない。このままでは、報道は政府と文春に支配されてしまう。
Q4. 回答する
老若男女などを超えて、訴えかける、映像を届けること、政府など関係なく国民に見せるべき映像とは何かを各局のテレビパーソンが常に自分に問いかけ続け、実施に届けて欲しい。
 
 
音好宏
上智大教授
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
 軽減税率の対象品目として新聞が浮上してきたことの報道がそうであったように、日本のメディアは、先進諸外国に比べ、自らの存在に関わる問題については、報道を抑制する一方、水面下で落としどころを探る傾向が強いように思われる。特に免許制度の下に置かれ、かつ、技術開発や規格が、その将来に大きく関わる放送においては、その傾向が強いのではないか。それゆえに、高市大臣らによる放送法の番組規制についての言動に対するメディアの対応は、後手に回っていたように思う。
 また、担当記者たちも、行政に対する取材において、予定調和の関係に慣れてしまってはいまいか。
例えば、11月6日に公表されたBPO放送倫理検証委員会による「NHK総合テレビ『クローズアップ現代』」出家詐欺報道に関する意見書」は、総務大臣による行政指導のあり方を問題視したが、その直後に高市総務大臣は「大臣談話」を出して、BPO意見書を批判。これに応える形で、放送倫理検証委員会の川端委員長は、13日付の朝日新聞の紙面で再批判を行っている。ところが、その直後の17日の総務大臣会見で、総務省詰めの記者たちは、この件について質問をしようとさえしなかったことが、総務省のHPに会見記録に残されている。メディアは、記者会見などオープンな場で権力と向きあうことを、もっと重視すべきである。
Q3. 回答する
 独立行政委員会が放送行政を所管する欧米の先進諸国とは異なり、日本の放送制度は、総務大臣が許認可権を持つ独任制の組織が所管することもあり、民主国家を標榜する先進国の体面を保つためには、番組規制に関して慎重でなければならない。そのことは、法解釈上も、制度運用上、常に留意されてきたところであり、担当大臣ら行政執行者も、国会等でこの点に配慮をした慎重な発言を継承してきた。
 ところが昨年の「NHKクローズアップ現代」における行政指導や同問題に対するBPO意見書への大臣談話の発表など、高市大臣は、就任来、番組規制に対して積極的な言動が目立つ。日本の放送制度の特質を考えれば、担当大臣は、番組規制に関する発言は慎重であるべきなのは言うまでもない。
 加えて、高市大臣は、電波停止発言後に、これまでの放送法解釈からするとより踏み込んだ「一つの番組のみでも判断する場合がある」と発言するとともに、総務省は「政府統一見解」を提示したが、その一方、3月30日の参院総務委員会での吉川沙織議員(民進党・緑風会)の質問に対しては、「一つの番組のみでも判断する」ことはないと、停波発言以前と法運用上の姿勢は変わらないと答弁するなど、発言にブレが見られることも確かである。
 一連の高市大臣の言動は、与党の有力政治家として、この夏に予定される参院選挙を意識したメディアへの牽制の意味合いが強かったと勘ぐってしまいたくなる。そのような政治の動きに対して、メディアは忖度などせず、毅然とした態度でその役割を全うすることが求められる。
Q4. 回答する
西側先進諸国においてマスメディアの社会的機能として最重要視されてきたのは、「権力の監視機能」である。それは民主社会の維持・発展にとって必要不可欠な要件とされてきたからだ。放送は、電波の希少性論などから、多くの国で免許制度が取られてきた。多メディア・多チャンネル状況が進むなかで、電波の希少性論の説得性が低下してきたのも確かだが、他方で、そのようなメディア状況の下で、言論の多様性を担保するためにも、免許制度を維持することを主張する「部分規制論」は多くの支持を集めている。
 しかし、免許制度の下では、その事業者が時の政治権力から影響を受けやすい状況が生じる危険性が付きまとうのは確かである。そのためには、制度運用上、放送の自立性を担保するよう務めるのはもちろんのこと、放送事業者、並びにその現場が脇を締めるとともに、自らを律し、政治介入の隙を与えないことが肝要だ。
 
 
砂川浩慶
立教大学社会学部メディア社会学科教授
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
視聴者の「表現の自由」に関わる問題であることをキチンと解説し、視聴者を\\\"味方”につけるべき。
視聴者が関心を持つテーマにも関わらず、十分な時間を取っての解説を行った番組が少なかった。
Q3. 回答する
テレビ局への「表現の自由」規制は、テレビ局のみの問題ではなく、視聴者の「表現の自由」に関わる問題であることをキチンと解説し、視聴者を\\\"味方”につけるべき。
Q4. 回答する
インターネットの時代においても最も身近なメディアであり、
今回の問題も含め、
「テレビに関する問題もタブー視せず、テレビを使って分かりやすく解説する」
ことで、信頼を勝ち取っていくべきと考える。
 
 
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4. 評価しない 

潮匡人
国際安全保障学者,拓殖大学客員教授
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
放送法四条は単なる倫理規定ではなく法規範性を持つ。本設問を含めメディア側の大臣批判は法的論拠を欠く。民主党政権下(平成二十二年十一月二十六日、参議院総務委員会で)平岡秀夫副大臣がこう答弁した。「放送法(中略)の番組準則については、我々としては法規範性を有するものであるというふうに従来から考えているところであります。/したがいまして、放送事業者が番組準則に違反した場合には、総務大臣は、業務停止命令、(中略)運用停止命令を行うことができる」・・・…高市大臣の答弁だけを採りあげ非難する姿勢自体が放送法に反している。
Q3. 回答する
そもそも今回、政治権力がメディアに介入したとは思わない。今後その可能性も想定できない。もし政府が憲法や放送法、電波法などを踏みにじる介入をした場合は、われわれ有権者が(責任)野党に投票すればよい。「投票箱と民主政の過程」を通じて是正するのが立憲主義の要請である。
Q4. 回答する
特にない。高市発言くらいでジタバタするメディアに、権力への抵抗を期待しても無駄であろう。蛇足ながら、放送法(や電波法)の関連規定は電波の有限性を根拠とする。その前提が崩れたデジタル時代のいま、法律の関連規定を撤廃し、放送の自由を保障すべきと考える(詳しくは「Voice」6月号拙稿)。
 
 
村沢義久
合同会社Xパワー代表/ 環境経営コンサルタント
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
メディアは、自身の存在を賭けて反論せよ!
メディアの存在自体が危機に晒されているというのに、反論が極めて不十分。一部メディアには、「自分達は政権寄りだから大丈夫」という嘆かわしい姿勢さえ感じられる。
Q3. 回答する
メディアの独立性が失われれば、太平洋戦争の二の舞と心せよ。
Q4. 回答する
「政権寄り」の局はもちろん、「批判的」であるはずの局も牙を抜かれてしまっている。メディアの存在意義を考え直せ!
 
 
クロサカタツヤ
株式会社 企 代表取締役/ 総務省情報通信政策研究所コンサルティングフェロー
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
問題は法律そのもの、大臣の資質は二の次
放送法第4条が現存する以上、高市総務相の答弁は、行政を担う者として当然の回答だと思います。

むしろそれを大臣の判断だけで忌避することが、法執行の恣意性を逆に明らかにしてしまうので、ああ回答するしかなかった、というのが正しいでしょう。

問題の争点は「そもそも放送法第4条っておかしくない?」というところであり、そこをもっと明確に指摘するべきだったと思います。
Q3. 回答する
政治権力のメディアへの介入は、隙あらば狙われるのは当然でしょう。

それを許さない立場なのだとしたら、シンプルに「戦え」ということしかないと思います。
Q4. 回答する
政治ではなく「行政」とメディアの関係性について、法制度や法執行の観点から、いま一度見直してみることが必要だと思います。

もしかするとその関係性にこそ、隙あらばの「隙」があるかもしれませんし、それを浮き彫りにしたのが放送法第4条だったのではないでしょうか。
 
 
石川和男
社会保障経済研究所代表
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
私はこの問題については、高市総務相が国会で発言した直後から申し上げてきたが、そもそも総務相発言の内容は、放送法の個別条項の解釈を述べたに過ぎないので、何ら問題視されるものではない。

もっとも、国会などの場で、放送法の所管大臣である総務相が自ら積極的に発言するようなものではなかったし、せいぜい放送関連法令の逐条解説書に書いておくといった程度の内容。

メディア側は、自分たちが放送法で規制される側なので、やや過剰に反応しているようにしか見えない。

総務相がこの程度の趣旨を国会答弁として質問に応じて発した事を以って危機感を覚えるというのはおかしな話だ。
Q3. 回答する
仮に政治権力がメディアに介入してきたら、どのような権限に基づくものなのか明確にするよう、まさに公開ベースで政府に求めるべき。

メディアとて、法治国家の一員なのだから・・・。
Q4. 回答する
テレビは、速攻性においてはネットにはかなわない。

今後は、根拠のある的確な情報の選別機能を強化していくべきだ。

ネットと競合しようというのはやめたほうがいい。
 
 
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5. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)

石澤靖治
学習院女子大学長
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
問4に回答
Q3. 回答を控える
Q4. 回答する
現在テレビでは、放送倫理・番組向上機構(BPO)がありその活動には敬意を表するが、
筆者が提案したいのは、テレビなら局自身がメディア批評番組を大きく押し出すことだと
考える。
ここで「大きく押し出す」と述べたのは、これまでもいくつかの局でメディアを
取り上げて批評する番組は存在していたからだ。
しかし筆者のスタンダードからするとそれは、本質に踏み込んだものとは決して
言えないし、番組の放送も目立たない時間帯に設定されている。

また局内から「自虐的な番組」という声を聞くこともある。悪く言えば、
基本的に及び腰であり視聴者の声をちゃんと聞いています、というアリバイ作りの感がある。
「マスゴミ」批判を克服し、政権にメディア統制の口実を与えず、自身を律して
事実を追求してこうとするためのものとして考えるならば、それではあまり意味をもたない

-----\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"Reliable Sourcesとして\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"------

ここで1つのモデルを紹介しよう。
現在アメリカCNNで、日曜日の東海岸時間午前11時、西海岸時間午前8時から
放送されている、『Reliable Sources(信頼できる情報源)』という番組である。
どの局も主力の政治討論番組を流す中心的な時間帯での設定だ。
この番組は、1992年に湾岸戦争の放送を再確認するための特別番組としてスタート
したが、90年代からは、週1回のプログラムとなり、現在に至っている。
筆者がこの番組に最もふれたのは、1998年から2013年まで、
ワシントン・ポスト記者のハワード・カーツ氏が番組ホストとして携わっていた
時代である。
(現在の番組状況については確認していない)

この番組を紹介するのは本質的なメディア批評番組であると同時に、ニュース
番組だからである。具体的には、1週間の中でアメリカ政治で大きな話題となった
報道それ自体を深く掘り下げるのだが、その際に問題自体を紹介しつつ、それを
メディアがどのように追い、そして、どのように影響を与えたか、それが受け手
から見て有益なものであったか、害悪であったかと検証する。それてその報道の
当事者を番組に登場させて、なぜどのような同期でその報道を行ったのか、偏向
がなかったのかなどを、ホストが徹底的に突っ込む。その場にメディア批評家が
参加することもあれば、ライバルメディアの担当者が同席することもある。
そして、
問題があればCNN自身が行なった報道も取り上げそれについて議論すべき点が
あれば、担当者が番組に登場する。

さらにこれがメディア批評番組の枠を超えて、ニュース番組としても存在してい
るという点が重要である。
報道の内容を確認して批判するということは、メディアの悪口を言うことでは
なく、それを通じて何が事実なのかということを突き止める作業にほかならない。
そのような観点で行われてきた番組だからこそ、長く続いてきたのであろう。

実は、かねてからこの種の番組を日本で行えないものかと思い、筆者はテレビ局
内外の知人を通じて複数の局に打診してみた。
その際はCNNと同様にその番組を放送する局の報道に問題があった場合は、その
担当者(責任者)が番組に必ず出て事情を説明することが必須である。
筆者は「マスゴミ」批判が定着しているときだからこそ、この種の番組には必ず
支持が集まると確信している。
しかし「とても面白いですね。
でも、ウチでは難しいですね」という答えが返ってくる。

もちろん、こうした番組があるからアメリカでメディア批判がなくなったというわけ
ではない。しかし、情報のアウトレット(出口)が無数になった中で、自らを厳しく
見つめて検討する姿勢こそが、「信頼できる情報源」となり、それが政権から批判や
報道内容についての論争を挑まれた場合に、国民とともに跳ね返す力になると考えるだが。

(出典)
 『月刊民放』2016年5月号
「政府のメディア批判に立ち向かうには」から抜粋
 
 
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