2015年10月03日 新・週刊フジテレビ批評で放送
政治・政策

安全保障関連法案に関するテレビ報道

今月9月19日、安全保障関連法案が参議院で可決され、成立しました。
「集団的自衛権の限定的な行使は違憲か合憲か?」
「その行使の領域は?」「自衛官のリスクは高まるのか?」など、
この法案に関して、様々な議論が行われ、様々な意見が述べられてきました。

テレビでは様々な形でこの問題を取り上げ、伝えました。
フジテレビでは安倍首相をスタジオに招き、政府の考えを質す一方で、
反対デモを行う学生団体「SEALDs」の代表者を出演させ、
意見を聞くなど、多様な意見を紹介するようにしました。
しかし、テレビ各社の安全保障関連法案に関する報道の姿勢や
内容を巡っては、有識者や視聴者から様々な評価を受けました。

論点が多岐にわたり、また賛否が分かれた安全保障法案について
テレビはしっかり報道することができたでしょうか?また、
今後、このような賛否が分かれる問題をテレビはどう伝えて
いけばいいのでしょうか。

安全保障関連法案に関するテレビ報道のあり方について、
コンパス・オピニオンリーダーの皆様にご意見を伺いたいと思います。
お答えいただけますようお願い申し上げます。

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:安全保障関連法案に関するテレビの報道姿勢や報道内容を
どのように評価しますか?
Q2:問1の回答理由をお聞かせください。
Q3:様々な論点があり、議論も多かった安全保障関連法案について
テレビは、国民がその内容を理解し、議論を行うことができるような
報道をしていたでしょうか?ご意見をお聞かせください。
(コメント欄-文字数に制限はありません。)
Q4:今後、国民の賛否が分かれる問題を報道する上で、
テレビメディアに必要なことは必要なことは何でしょうか?
お考えをお聞かせください。
(コメント欄-文字数に制限はありません。)

オピニオンリーダーの回答

( 18件 )
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該当する回答がありません
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2. ある程度評価する

岩渕美克
日本大学法学部教授
Q2. 「2 - ある程度評価する」の回答理由
 対立する意見を多角的に報道することは評価できるが、今回の場合、国会では本質的な議論が行われていないので、法案の構成やすべての法案の中身を開設する番組がほしかった。
 一国の首相を招くので、致し方ないとは思いますが、総理が出演した番組はかなり気を使っていたので論点が甘くなっていた感があります。多様な意見を紹介するのは放送法上も好ましいとは思いますが、言わせっぱなしではジャーナリズム、言論機関としての役割は果たせないので、ある種の結論を出せとは言わないが、局なりの姿勢を見せても予感のではないかと思います。
 何を質問されても「国民の生命と安全を守るため」としか言わない与党と「(途中からですが)憲法違反」としか言わない野党の話は国民には分かりません。もう少し論点を整理すること、何が問題で何が問題ではないのかを専門家を招いて説明する報道が各局ともに多いとよいと思っておりました。もちろん、もめたり、挑発したり、怒り出したりは、見ていて面白いのですが、何の得られるものがない娯楽でしかないからです。
 本質を議論していない国会議員のやり取りを、解説しながら報道してもらいたかった。結局、評論家も含めて法案をすべて読んだ人はごく少数という中で議論しているので、すべての法案の中身について報道する特番があってもよかったのではないでしょうか。
 私も法sンはすべてを読んでいるわけではなく、専門家のレクチャーを受けただけの身ではありますが。
Q3. 回答する
 賛成派も、反対派も、国民の中に法案の中身をすべて読んでいる人はほとんどいないだろうから、情動の持つ意味は大きかったと思う。しかしながら、これだけ解釈が違う結果を生んでいるのは、新聞のスタンスによる評価の違いが小さくなかった。その中で、政治的公平性を要求されるメディアが果たして効果的な役割を果たせていたかは疑問である。政治的公平性の意味合いを、法の趣旨に基づいて考えれば、局なりの意見を付してもよかったのではないか。少なくとも、議論の整理をもっと行うべきであったと思う。
 法案自体が何を目指すのかが分かりずらいものなので、難しかったとは思いますが。
Q4. 回答する
 客観報道、多様な意見の紹介とその評価。単位紹介に終わらない工夫が必要で、結論を求めているのではなく、両者の論点を整理し、言っての評価を与えることが必要であった。
 放送法でいう政治的公平性は、許認可事業である放送局が、権力の圧力を受けないための意味合いで制定されたものであることをアピールすべきだ。かなうかどうかはわかりませんが。
 
 
浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「2 - ある程度評価する」の回答理由
放送局やMCなどによって、多少の立場の違いは反映されていたが、全体としては、それなりのバランスが取れていたという印象。
放送局やMCなどによって、多少の立場の違いは反映されていたが、全体としては、それなりのバランスが取れていたという印象。

基本的にジャーナリズムが権力を批判的に分析し、問題を指摘することは一般的にも期待された社会的使命なのだから、政府に批判的なものが多かったことが偏っていたとの批判は当たらない。

他方、安保法制を擁護する側の意見もそれなりに報道され、国民全体の意見も大きく割れている状況であるから、いろいろな番組ごとにトーンが異なるのは当然で、個別の意見の当否は個別に議論されるべきものだ。
Q3. 回答する
国会中継もあったし、政治家や評論家、専門家などの討論番組も多く、それらを多く見れば見るほど、それなりに問題点を含めて理解ができるし、議論もできた状況だったろう。

ただ、現行憲法の歴史的な意義や、安保法制以外の国際平和に向けた取り組みとしてどういうことが必要であるかの議論がやや不足していたのではなかったか。
Q4. 回答する
あまり中立性ばかりを強調しすぎるのは無理があるし、そもそもそれは本質を覆い隠す恐れもある。

それぞれの立場をはっきりさせたうえで、問題を明らかにして、幅広い様々な意見を紹介しながら、全体としてバランスが取れるようにすればよいかと思われる。

ただ、重要な場面の報道だとか、材料がきちんと提供されることが大前提であって、例えば、重要な国会中継がされないといったことは困る。また、情報が正しく、歪曲されることなく伝えられることも重要。

できるだけ、問題点を整理して、それなりの専門家が、幅広い角度から問題を分析し、一般の人々が理解できるように、解説や説明をしてくれることを期待する。
 
 
武貞秀士
拓殖大学大学院特任教授
Q2. 「2 - ある程度評価する」の回答理由
全体としてメディアは、多様な意見を紹介していた。ただ、国家の前途に関わる安保法制の問題は、公共政策学、国際政治学、憲法学、歴史学(戦後日本の外交史にも関わるので)、行政学など、多くの分野に関わる問題だった。報道の比重が憲法論に偏りすぎていた。
 視聴者の中には「一部の局の報道が、安保法制を支持する意見に偏っていた」という批判があるそうだが、そんなことはない。賛成と反対の論点を紹介していた。自分は特定の局の放送を1か月にわたって、論調を調査したわけではないので、偏向していたかどうかを判断すべく放送内容のすべてに目を通したのではないが、できるだけテレビと新聞には接するようにした。7月以降、出張で3度、外国に滞在したが、インターネットを通じて日本国内の報道に接するようにした。
日本国内の報道では反対意見、賛成意見を含めていろいろな意見が紹介されたと思う。反対している人は、賛成意見が耳障りだから、それを聞くと偏った報道と思う。賛成している人は反対意見を聞くと、反対意見を紹介する必要はないと思うものだ。これだけ日本全国がヒートアップした案件であれば、国民、視聴者が公平だなと感じる放送の方法というのは難しい。全体としてすべての論点が紹介されていたし、放送姿勢には問題はなかったと思う。
Q3. 回答する
いくつかの改善点がある。国会のなかの議論で欠けている部分をメディアは指摘して、「このような視点で機論をしてほしい」「このような人を参考人として呼んでほしい」と発信をしながら、国会の議論に風を吹き込んでもよかったのではないか。国会での議論をそのまま敷衍するのであれば、意味がない。
具体的にいえば、法的安定性に関する議論が多かったが、安保法制の問題は、7、8割は国際政治に関連する問題だ。朝鮮半島有事で、韓国にいる邦人はどうなるか。北朝鮮は戦争を開始するのかどうか。北朝鮮の体制は崩壊するのかどうか。その過程で、どのような混乱が日本に降りかかってくるのか。南北は軍事衝突するのか。尖閣諸島周辺の中国の次の一手は何か。議論すべきことがたくさんあった。議論の残りの2、3割が法律の解釈、国内政治のドロドロした話、国会外の反対運動の論点などの問題だった。国際政治の議論がごっそり欠けていた。メディアは「ここが欠けています」と声をあげるべきではなかったか。
国際政治に関していえば、極東のことだけに限らない。シリアからの大量の難民の流出で日本は何ができるのか。日本が行動したら、中東での日本人を対象にしたテロはどう拡大するか。中東の危機で日本はどのような役割を果たせるのか。南シナ海が不安定になれば、日本のシーレーンはどのような危険にさらされるか。どんな装備で防御できるのか。そのとき必要な法律は何かといったことを議論してほしかった。
とくに強調したいのは、日本の安全と深く関わる朝鮮半島とその周辺の重要性だ。北朝鮮のミサイル開発と北朝鮮の核戦略、南北間の緊張、中国の軍事的意図などの議論を中心に展開すべきだったのに、それが欠如していた。不安定な東アジアの一触即発の戦略環境を論じるべきだった。
自衛官の安全が確保されていないという議論は奇妙だった。自衛官は武器を携行している。自衛艦には武器を積んでいる。外交使節ではないので、当然であるが、攻撃対象になる。常に自衛官は安全ではないのである。それなのに自衛官にとってのリスク増大の有無などを議論していた。なぜ海外で自衛隊の活動が必要か。海上保安庁の船では太刀打ちできない相手がいるところで、平和維持活動をする必要があるからだ。警察官、法務省の担当者だけでは、日本の安全を守ることができないから、自衛官が必要になる。1950年、警察予備隊が創設されたときの趣旨を思い出してほしい。戦火の中にある朝鮮半島から武装した人民が日本に侵入したり、日本国内で武装した人民が蜂起したりして場合、警察官だけで対処できない。朝鮮半島で掃海艇を使って、海に浮かぶ機雷を除去する作戦は、警察官や漁船では不可能だった。そして、警察予備隊ができて、その後、自衛隊になった。武装している自衛官は命をかけた作戦をするのはあたりまえ。それが本来の職務なのだ。だから「自衛官の安全が確保されていない」という議論には世界が驚いただろう。
憲法の条文を読んで、解釈の議論をしている人々をメディアが繰り返し報道したのは賛成できない。法律学者が自分なりの解釈をして、政府の決定が憲法に沿っているのかどうかという議論は無用とはいわないが、問題全体の1割の話。少しだけ紹介すればよいことだった。その議論が長すぎた。
国会の衆議院と参議院で多数決で決定するのは、国民の声を無視するものという意見が多かった。国会の外でデモが吹き荒れているとき、国会の採決を急ぐのは民主主義に反するという議論が多かった。しかし、実際は多かったように見えただけで、メデイアが大きく取り上げたからだった。これには疑問を感じた。国会外の大衆運動をメディアが鼓舞してもよいのだろうか。選挙で選んだ国会議員が採決で決めることを大衆運動で覆すというのである。日本社会はそこまでアナーキーになってはいなかった。法制が成立したあと、安倍政権支持率は横ばいか、あるいは微増だったのは何を意味しているのだろうか。この世論調査結果には、多くの人が驚いたはずだ。あれだけ反対の議論が盛り上がっていたはずなのに・・・。法制が成立した直後は、安倍政権支持率は急降下するはずだ。大衆運動のエネルギーは急速に収束しつつある。論点を深めるよりも、反戦ムードをメディアが鼓舞しすぎたのではなかったか。それを賢明で冷静な一般国民は読み取っていたのだ。このことを正確に指摘したメディアは皆無だった。これは偏向といわざるをえない。
 「人の命にかかわる法案を憲法改正をしないまま決定してしまうのは民主主義に反する」という意見についても疑問を呈したメディアはなかった。安保法制が成立して、いままで以上に身体を張って国際平和に貢献するという日本国民の姿勢が鮮明になった。米国はようやく日本が自国のみの一国平和主義からで脱しつつあると評価している。今後はいままで以上に米国は身体を張って、日本を守るという気持ちになってくれるだろう。そのことは、「簡単に日本を攻撃するわけにはいかない。米国が日本を守ろうという気持ちが強くなったので、日本を攻撃すると、米国は攻撃した者に対して懲罰を加えてるだろう」と相手が考えるようになったということだ。安保法制成立の前と比較すると、相手は日本を攻撃しにくくなっている。つまり、安保法制は日本の抑止力を強化してくれた。それなのに「戦争に巻き込まれる」という意見のみが紹介されていたのではなかったか。
 安保法制によって、日本政府が海外に駐在する邦人を保護しやすくなった。日本国が邦人を保護するときに他の友好国の手伝いをお願いしやすくなった。これだけ海外にいる日本人の数が増えている。韓国には3万人の日本人が住んでいる。有事のとき邦人を救出のための作戦に関して複数の選択肢ができた。これは日本国民にとって朗報だ。安保法制が成立したことにより、戦争が起きたときに死に直面する日本人の数は、大幅に減ったと言える。これをなぜメディアは指摘しなかったのか。
 繰り返すが、メディアでは、安保法制に関連して、その必要性の根拠になる、あるいは不必要であるという根拠になる世界の戦略環境、韓国、北朝鮮、中国、ロシアの軍事動向、東アジアの安定性、この地域において次に何が起こるのかについての議論が欠如していた。それを議論すべく、報道は世論と国会と政府を、啓発してゆくべきではなかったか。「法律違反」「国民の声を無視している」「戦争に巻き込まれる」という抽象的な論議に、国民は厭きてしまった。その結果、法制が成立したあとは、政権支持率が急降下することがなかったのである。
Q4. 回答する
メディアは、リアルタイムで、国会での議論に関連して「こんな問題点を議論してほしい」「こんな視点で論じてほしい」と要望を出すべきだった。しかし、メディアは、国会での議員らの法律論議と、国会外でマイクとスピーカーで「戦争をするのですか」というキャッチーな言葉で訴える人たちの紹介が多かった。
また、外国での報道の内容を公平に紹介してほしかった。韓国、中国、ロシア、北朝鮮は、安保法制をどう伝えたか。法制の成立をどう受け止めたか。各国政府はどう公式見解を述べたか。あまり紹介がなかった。これは足りない部分だった。
 自分は8月の10日間、韓国に、9月は10日間、中国の延吉市と長春市での国際会議と討論会に出て発表と講演をした。先週は日本で日本・ロシアの専門家会議に出た。安保法制のことが話題になった。中国では、安保法制について吉林大学で講演をした。
 日本での世論調査で、安保法制が成立したあと、安倍内閣の支持率が急降下しなかったことについて、中国の専門家は「初めて聞く話だ」という感想を述べた。安倍内閣退陣にむけて、安保法制が成立したあとは、国全体が盛り上がり、全国で反対運動が盛り上がると期待した国もあった時期である。
安倍政権支持率横ばい現象について、中国の専門家は、「うーん。なるほど」と述べた。中国の専門家の間にも「安保法制批判を続けていると、日中対話が停滞して中国が損をする」というムードが漂っている。9月下旬には、習近平国家主席の訪米、米中首脳会談があり、習近平国家主席は国連総会で演説をする。米国が称賛する安保法制である。成立についていつまでも批判をしていると中国は損だと思っているのだろう。日米同盟が堅固であるのに、中国が反対を続けると、米中首脳会談のときに、米国と中国の「違い」が際立ってしまう。これは避けたいと中国は考えはじめている。このことを指摘しているメディアが日本にあるのだろうか。
ロシアの専門家は、安保法制について9月下旬の時点で、「日本国内のことであり、賛成とも反対とも、述べたくない」と述べていた。法制が成立して、日本国民の安倍政権支持率が降下することなく、次の時代に向けて各国は準備を始めた。これを知るロシアは、日露関係を改善して制裁を緩和してほしいので、対日政策のうえで、マイナスになるような「安保法制には反対」という損な役回りをすることを回避している。
そもそも中国は9月2日、韓国と中国の首脳会談のときに、10月末から11月にかけて、日中韓の首脳会談をソウルで行うことを、韓国に対して同意すると伝えていた。世界が安保法制がどうなるかを注目しているときに、安保法制成立後を睨んで、日中韓首脳会談開催に中国は同意していたわけだ。日本国内の反対の声が、いかに国内消費向けであったか。国際環境への視点が欠けていたか。それをメディアは指摘すべきではなかったか。
今後はメディアに登場する人の人選を慎重にすべきだろう。憲法学者が、安保法制を国会採決で確定するのは違反だと指摘したのは、十分に理解できる。憲法の条文に照らし合わせて違反を主張するのは、憲法学者であれば当然だ。問題は安保法制の是非について、憲法学者を中心に国会で意見を聞いたことだった。「国際政治学者も学者ですが」という声があがったのは正論だった。それにメディアが憲法学者、憲法論から判断する元政府関係者の声を、二分の一の声として、討論の場に呼んで安保法制を議論したことは偏りすぎだった。法律論の比重を下げるべきだった。
私自身は、国際政治学の専門家として発信をしてきた。TBSテレビの「ひるおび」で2日間、フジテレビの「みんなのニュース」、BS日本テレビの「深層ニュース」、BS朝日の「いま世界は」、BSジャパンの「日経+10」などに出演して、日韓、日中関係の難しさ、朝鮮半島が常に危険な状態にあることを指摘し、東アジアの戦略環境から、日本の安保体制を論じるべきだという発信をしてきた。8月、軍事境界線で地雷爆発がおきて南北関係が緊張したとき、一触即発の事態であることを指摘した。戦争になれば、日本の在日米軍基地を使用して、国連軍は朝鮮半島に向かう。すると在日米軍基地に向けて、弾道ミサイルが飛んでくることもある。防衛出動の事態になる。数日で、一挙に安全が脅かされる事態に転換するシナリオがありうる。邦人救出をどうするのか。いつなんどき、日本の安保環境が急変するかもしれない。それが朝鮮半島情勢なのである。それらのことを議論することなく、安保法制の法的側面の検討が続いたのではなかったか。
 
 
砂川浩慶
立教大学社会学部メディア社会学科教授
Q2. 「2 - ある程度評価する」の回答理由
①日本のメディアの特徴である全国紙と在京テレビ局との提携の図式が、
 そのまま安保法案のテレビ報道に持ち込まれた。
②NHKは強行採決まで問題点をほとんど伝えなかった。
③一方、テレビ朝日、TBSでは問題点、反対・賛成の動きを時間を割いて報道しており、
 その点を評価する。
Q3. 回答する
全体としてはできていなかった。
もともと絵が優先されるテレビでは法律や経済のニュースが苦手。
今回の安保報道もその意味で個別には健闘したニュースもあったが、
全体としては国民への情報提供は不足している。
ただ、成立後も「反対」が多いのは国民の理解が進んだとも考えられる。
Q4. 回答する
議論の材料と場の提供。そのためにはオンエアだけでなくHPの活用が図られるべき。
例えば、ニュースに限らず、「新・週刊フジテレビ批評」のHPにいくと
ベーシックな資料が手に入るなどの工夫があってもよいのではないか。
いつまでも「絵にならない」を判断材料としていると陥穽に落ちる。
 
 
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3. あまり評価しない

岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
安保関連法案に関するテレビ報道は、国会での論戦の一部、デモの様子、首相の会見、簡単な論点整理などに分けられ、外から見ている印象でした。
むしろ、国民の方が、自分のこととして、日本の将来の問題として深く入り込み、真剣に考えている感じがしました。
マスコミは公平であるべきなのかもしれませんが、賛成なら賛成、反対なら反対の立場でもっと突っ込んで報道するべきだったと思います。

しかし、大事なのはこれからだと思います。
安保関連法案はこれほど大きな問題なのに、一度も選挙のメインの争点にはなっていません。
いまだに反対意見が強い世論調査に対して、政府は今後も丁寧な説明を続けていくと言っています。
それなら、政府の関係者を招いたり、格差の問題と関連付けたり、海外の事情を報道したり、財政的にどのくらいの負担をすることになるかなど、今後も一年間くらいは定期的に特集を組んだらどうでしょうか。
Q3. 回答を控える
Q4. 回答を控える
 
 
石澤靖治
学習院女子大学長
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
 全て評価できないというわけではないが、最終的には「賛成か」「反対か」ということだけに焦点が当たったこと、反対する人たちのデモの様子、国会での委員会採決での乱闘など、その報道の仕方は事前に予想されたものと全く変わらなかった。今回の安保関連法案の議決は「歴史的なもの」と言われているが(私は必ずしもそうだとは考えないが)、報道ぶりは歴史的なものではなく、日常的なものだった。そのため、あまり評価しないという選択肢をとった。
Q3. 回答する
 問題の本質に立ち返った報道をすべきだ。問1にも関連するが、日本が国会で紛糾するものは、1960年安保しかり、1992年のPKO法案しかりで、税の問題を除けば安全保障に関することだけである。結局それは、憲法第9条を存在させる中で、日本が安全保障政策を整備していくことには矛盾があり、困難があることを意味している。問題はそこにあるのだが、それを論じずに安全保障問題を報じるのであれば、有意義で現実的な安全保障の議論を報道で展開させるのは難しいと思われる。
Q4. 回答する
 メディアの役割とは、問題における「議題の設定」である。日々の動きを追うテレビメディアは、この議題の設定が近視眼的になりがちである。言い換えれば、その日の時点で何が動いたかという表面的な出来事をより早く、より大々的にリポートする。そして毎日そのような情報にふれた視聴者は、大きな問題であっても「なにがどうなったか」というイベント的なものにのみ関心を寄せるようになり、問題を巨視的な視点で見ることを忘れがちになってしまう。カメラを引いて全体を映すように、「本来、どのような問題だったのか」ということを常に視聴者に示すようにすべきである。
 
 
宮家邦彦
外交評論家,株式会社外交政策研究所代表
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
(但し、局や番組により異なる)
局や番組によって異なるので一概には言えないが・・・・
Q3. 回答する
これも局や番組により異なるが、一部の番組では明らかに法案反対の論陣を張っていたように思う。
Q4. 回答する
両論併記の上で中立的に報じ、最終的判断を視聴者に委ねることが望ましいのでは?
 
 
松田千恵子
首都大学東京教授/マトリックス株式会社代表
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
事象をただ受身的に伝えることだけに終始する、あるいは
表層的にだけどこか、もしくは誰かに怒ってみせる、あるいは
情緒的に思い込みで作ったストーリーにはめ込もうとしている
(たとえば、60年安保の時のような国会前の“絵”が撮りたいだけとしか
思えないようなニュースなど)といった報道が殆どだったのでは。

この問題ほど、どのような論点があり、どの立場をとることによって
どういうメリット・デメリットがあるかを冷静に整理して論議し甲斐のある
テーマはないだろうに、全てを劇場型に薄っぺらくしてしまう弊害のみが
目立ったように思う。
Q3. 回答する
テレビはじめとするメディアは、「政権が説明を尽くしていないので
国民の理解がまだ十分でない」ことを批判していたが、政権の問題も
さることながら、国民の理解を促進するような報道をしていないという
点で、自身にも降りかかってくる問題だという認識が殆どなかったように
思う。たとえば、「戦争法案」という言葉が使われたが、それが本当に
そうなのか、そうではないのか掘り下げてしっかりと検証した番組が
あっただろうか。
Q4. 回答する
街の声を拾って垂れ流したり、刺激的な絵や語句を流して良しとしたりするのではなく、
問題についてしっかり「自分の頭で考える」「それを自分の言葉で伝える」ことをしてほしい。
そのためには、視聴者が「何もわかっていない」愚民である(といわんばかりの)
前提はもうやめたらどうか。
国民の反応を見る限り、もっとも遅れており、分かっていないのはメディア
であるような印象さえ受ける。個々のメディアパーソンは理解していることだと
思うのだが。
 
 
山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
・テレビ報道は、国家のリスクと危機管理の本質に迫らず論点が矮小化された感がある。
・歯切れ悪い政府答弁の裏側、デリケートな外交配慮やリスク切迫に切り込んでいない。
・米軍事力による戦後平和。後退した米軍プレゼンスのバランス補完も論議すべき。
 個人、社会、国家のいずれにおいても、危機管理における普遍的プライオリティは「結果の重大性」視点で行動や対策を決めることです。結果の重大性とは、失ったら取り返しのつかないことをいいます。失ったら取り返しのつかいこととは主に「命」と「時間(タイミング)」であり、結果の重大性に直面するリスクがあればそれに備えることが危機管理の鉄則です。
 今回の安全保障関連法案に関するテレビ報道の多くは「合憲か違憲か」「戦争に巻き込まれる可能性」「後方支援、駆けつけ援護、自衛隊リスク増大」など、国家の危機管理について報じるにしては論点がいささか矮小化されていたように思います。もちろん、この安全保障関連法案審議の前に憲法改正ができればそれに越したことはありませんが、政府がこの法案成立を急ぐ理由は、憲法改正まで待てない安全保障上のリスクが切迫しているという認識と日米ガイドラインとの整合性が求められているからだと思います。
 日本において切迫している国家リスクは中国や北朝鮮の軍事的脅威であることは公知の事実です。しかし、安倍首相が国会で仮想敵国となるような国名の名指しを避けるのは致し方ないことです。結果としてかの国との軋轢を深くすることに配慮し歯切れの悪い答弁になってしまうのです。そこを忖度した報道や議論があってよかったのではないかと思います。もし、リスクが顕在化し国民の命が危機にさらされてから「違憲か合憲か」を論議しても遅いのです。つまり時間(タイミング)を失ったら、取り返しのつかないことになるのです。ですから、テレビでもう少し掘り下げてほしかったのは、国民の命に係わるリスクの根源、その内容、法案がない場合の対処方法、なぜ今なのかの議論です。
Q3. 回答する
前述のとおり
Q4. 回答する
枝葉末節にとらわれず、物事の本質を掘り下げ分かりやすく、繰り返し伝えることが大切。
 
 
村沢義久
合同会社Xパワー代表/ 環境経営コンサルタント
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
国民の疑問に真正面から答えない政権に対し、マスコミの追求が極めて生ぬるかった。結果として法案に対する理解は進まなかった。
安保法制の最大の問題は、主権者である国民に内容を十分に知らせないままに、成立させてしまったこと。根本的な問題は、政府にあり、国会中継などを見ても、答弁は非常にふらついた。

理解を助けるはずのマスコミもほとんど無力であり、フジテレビでの首相の話は最悪であった。質問に真正面から答えない首相の責任であるが、局側の突っ込みも甘かった。
Q3. 回答する
安保法制に反対の立場をとる局の話は、問題点を探ろうとするので、話に具体性があったが、賛成の立場をとる局の論調は、政権側と同様に抽象的で分かりにくかった。問題は、最初から「成立ありき」「賛成ありき」の姿勢だったことではないか。
Q4. 回答する
テレビ局が、賛成、あるいは反対の立場を取ることはあって良い。しかし、立場に関係なく内容を掘り下げ、できる限りの詳細を国民に知らせることが必要だ。今回、政権側はできるだけ具体的な話をせず抽象論で押し切ろうとし、賛成側の局も、それを支援したような印象がある。
 
 
石川和男
社会保障経済研究所代表
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
平和安全法制に関するテレビ報道については、良し悪し両方が見られたが、大方は悪しきものであった。
国会中継を流すのは良いが、ニュース番組では、やはり揚げ足取りや、最初っから反対姿勢のテレビ局解説者や学者によるネガキャンが多かった。
むしろ、法案の中身をきちんと伝えるような政府関係者による解説番組や、賛否両論を冷静に議論させる場の設定が殆どなかったことは、テレビ局の限界を改めて垣間見た気がする。
Q3. 回答する
上記と下記に同じ。
Q4. 回答する
賛否両論を冷静に語れる人々を選んで出すべき。
賛成論者であれ、反対論者であれ、法案関連資料を読んだこともないとか、理解もしていないとか、そんな素人を(バラエティ番組ならいざ知らず)報道番組に出すべきではない。

賛成論を語る時間と、反対論を語る時間を、同じにすべき。
 
 
にしゃんた
羽衣国際大学教授/落語家
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
7月15日の衆議院・特別委員会で強行採決されたあたりから、SEALDsの動きも含めてテレビも時間を割くようになった感じがしているが、「多くの国民がノーと言ってるのはなぜなのか?」が、『正しく』語られることがなかった。
「テレビ」と一括りにするのは乱暴である。局によって、番組によって報道姿勢や内容が変わるのは当然あった。

ひどかったのは安倍政権に阿りすぎたNHKであった。例えば、広島・長崎で行われた平和記念式典のスピーチでは、会場からの安部首相に対するヤジが放送の際に、ほとんど聞こえないレベルに落とされていた、との疑惑もある。SEALDs等のデモの報道も相当及び腰だったし、それらをニュースにしたときに必ず「賛成派も集会を開きました」と付け加えるのを忘れなかった。また、憲法学者のアンケートを取ったにも関わらず「違憲」の数が多かったため、結果を封印し、クローズアップ現代でパーセンテージを伏せて、申し訳程度に報道する、という醜態を見せた。参考人3名が法案を「違憲」とした後の行動は「報道ステーション」が早かった。アンケートを実施し、賛成派がほとんどいないことを早々に証明。日替わりで有識者にインタビューをしたのも良かった。

総じてテレビの報道は(何についてもそうだが)視聴者が何も分かっていないということを前提に基本的な説明をくどくどと繰り返すことが多く、議論を深めることがなかった。そして、「違憲」問題が全面に出て以降はどの局も一斉に「違憲」一色になってしまい、例えば同じ学者でも国際政治学の専門家であれば相当に意見が違うのに、そういう多角的な解説はほとんど見受けられなかった。また、印刷媒体ではさんざ取り上げられていた自民党(民主党も含む)、特に安倍政権の閣僚の多数派を占める「日本会議」について、きちんと解説する番組はほとんど見なかった。また、これは日本のメディア全体に言えることだが、政局報道に偏りすぎ、日本にとっての安全保障とは何かという本質について掘り下げることもあまりなかった。
Q3. 回答する
何が問題なのか?たくさんの法案がまとめて提出されて、何がなんだか、わからない、からか?法案の内容が難しくてよく分からない、からか?政府の説明が足らない、からか? アメリカの戦争に巻き込まれて日本人が「殺す」ことも「殺される」も起こりうる、からか?憲法を変えるのでなく、憲法の解釈を1つの政権で変更するのがおかしいからか?「私たちの憲法、私たちの将来を、勝手に決めないでよ」と思うからか?そもそも、3人の憲法学者が国会で口をそろえて「安保法制は違憲だ」と言ったのに、それでも前に進められたからか?・・・・・ これらについては多分どのテレビ局の報道局も「伝えた」と思っているだろう。

しかし、もっともっと大事な、もっともっとおかしいことがある。

特に国会終盤あたりになってからは、メディアによっては「権力の意向を忖度して、局としてバランスを取るために」賛成する国民の声も多く流したが、それらほとんどは「安保法制は必要。それは尖閣問題=中国の脅威、竹島問題=韓国の動き、北朝鮮の挑発的言動があるから」を理由とした賛成論だった。これらは個別的自衛権の話であって集団的自衛権とは問題が異なるのだが、多くの国民のこの「誤解」は安倍政権には大きくてラッキーな救いとなった。この「国民の誤解」を正して、正確に詳しく報道すると、政権にとっては足元をすくわれることにもなりかねないためか、この問題についての突っ込んだ報道はなかった。(知っている範囲で、1人、TBSで番組のコメンテーターを務める毎日新聞の岸井記者が機会あるたびにこのことを指摘したぐらいだった。)

もう一つ。これは上記の問題点よりもより重要なのだが、昨年、安倍総理が安保法案を説明する時、具体的に2つの事例を挙げたが、そのいずれをも今年8月、9月になって事実上撤回している。「日本人を乗せたアメリカの艦船を守るために」集団的自衛権が必要、というのが一つ。そしてもう一つは「原油の輸送ルートのホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば日本が重大な危機にさらされるから、その機雷を除去するために」集団的自衛権が必要、という説明だった。この2つ、特に日本人を乗せた米艦船護衛の例では、安倍総理自らが記者会見で、難を逃れようとする母親と子供を描いたフリップを見せながら、視聴者の「情」に訴えたもの。そんな2つの事例を撤回するようでは、この法案を国会に出す前提が崩れたとしか言いようがない。

この2つのポイントについては、重要度が高いにもかかわらず、テレビはあまり報道していない。報道すると安倍政権にはマイナスに働く、ということをテレビ局が分かっているからではないだろうか。

さらに、安倍総理側のメディアとの関係についても注目する必要がある。今年1月1日から、安保法案が成立した9月19日までの間に、安倍総理がどの放送局の番組に出ているか(各社共同インタビューとか、インターネット番組は除いて「その放送局(系列局含む)だけの番組」への出演・インタビューに限ったもの)を知り合いのメディア研究者が調べたところ、NHK=2回、フジテレビ=2回、(ラジオ)ニッポン放送=1回、関西テレビ=1回、日本テレビ=1回、BS日テレ=1回、読売テレビ=1回・2番組であった。一目瞭然、自分を引き立ててくれる局、自分が好きに言える局ばかりであるとの指摘は免れない。安倍総理及び自民党関係者はTBSとテレビ朝日は、「偏向している」と思っているためか、「批判ばかりでイヤな事しか聞いてこないと思っているためか、(察するに依頼があっても)出てない。この総理の偏向な行動も見逃してはならない。
Q4. 回答する
メディア、特にテレビは、国民の「賛・否」が何によって、どれほどの理解度で意思決定されているのかを見極めて、「自分たちは一般国民に委ねられて、今、権力を監視しているか?」を不断に問いつつ、取材・報道にあたってほしい。

報道番組の担当者が、公式ツイッターで政権擁護に導くような書き込みをしてはならず、今後、「国会の審議中に総理を大阪の番組にまで呼んで腰巾着ばかりで周囲を固めて、おべんちゃらを言い合って盛り上がる」と言われるような番組を作ってはならない。その手の番組の作り手や出演者などの全ての者が、視聴者(国民)に背を向ける、いや、視聴者(国民)が見えない太鼓持ちに過ぎない。国民を見ず、所属先の上層部の立ち位置との違いなどを気にしながら仕事をしているような報道マンはすぐに職場を離れるべきである。
 
 
雨宮処凛
作家
Q2. 「3 - あまり評価しない」の回答理由
特にNHKは国会中継そのものを全部の審議にわたってしてほしかった。
それくらい重要な法案だと思うので。
民放でも、ニュースでの取り上げ方が「こんなに短いの?」ということが
多々あった。
安保特別委員会を何度も傍聴していたので、落差がよりわかった。
Q3. 回答する
報道していた番組もあったが、全体としては少なかった。
また、「とにかく早く成立させることが善」といった前提で
語られていたりして愕然とした。
メディアにかかわる人、出演している人の中に、この法案について
あまり知らない人がいるのでは、と思うことが多々あった。
それと、成立前より成立後の方が、より詳しく危険性を伝えている
番組があり、「それ、なんで成立前に言わなかったの?」と思うことも
たくさんあった。
Q4. 回答する
広くいろんな立場の人の意見を取り上げてほしい。
まず、問題を取り上げる時間を確保してほしい。
 
 
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4. 評価しない 

中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
議会制民主主義の原則と自衛隊の在り方にまで掘り下げた報道が見受けられなかったのは残念である。
議会制民主主義国家で議会で多数派を占める与党が提出した法案が多数決で可決されることは当然である。これは強行採決ではない。提出した法案が廃案になるなら、それは議会制民主主義が日本で機能していないことになる。また、日本人が世界中で活躍する現在、日本政府がその生命と財産を守り抜くことはこれもまた当然である。この意味で自衛隊の活動範囲は無制限となる。ただ、軍法を導入して自衛隊を軍隊組織に改組する必要がある。安保法制の整備はまだまだ先が長い。にもかかわらず、今回の一連の報道でこのような内容を指摘する報道は皆無に等しかったのではないか。残念である。
Q3. 回答する
論点を整理して要点を伝える報道は少なかった。大半の国民が反対しているかのような錯覚を煽る報道にはむしろ厳罰に値する。
Q4. 回答する
原理原則をまず報道することが重要で、国民感情に訴える報道は慎むべきだ。
 
 
潮匡人
国際安全保障学者,拓殖大学客員教授
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
被選挙権すらない若者の党派的な主張を「民意」と扱うのは妥当でない。
選挙権すら持たない十代の絶叫を垂れ流すなど、もってのほか。
そもそも議事堂周辺での拡声器使用は違法である。
Q3. 回答する
そのような報道はいっさいなかった。
NHK以下、報道する側が正しく法案を理解していない。
終盤国会で与党推薦の参考人(神保謙)が指摘した通り、
平和安全法制は「シームレス(切れ目のない)な安保法制」となっていない。
しかも土壇場の与野党合意でさらに「切れ目」が拡大した。
そうした実務的な問題を報じた番組は一つもなかった。
Q4. 回答する
党派的な主張や情緒的な意見ではなく、
現実的かつ理性的な分析や解説を加えるべき。
今回の報道で、現場(自衛隊)とテレビの距離はますます遠のいた。
 
 
クロサカタツヤ
株式会社 企 代表取締役/ 総務省情報通信政策研究所コンサルティングフェロー
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
〈何・なぜ・どのように〉が最後までさっぱり伝わらなかった
〈何〉ができるようになる/ならないの議論がほとんどで、〈なぜ〉それができるようになるべき/ならないべきか、の議論が深まらないように感じました。

また、デュープロセス、すなわち〈どのように〉についても、「憲法学者が違法と言った」というような現象面に終始していたような気がします。少なくとも、内閣法制局や憲法調査会(各会)、さらには最終的な判断の責任を唯一負っている司法、といったそれぞれの関係について、もっと丁寧に解説すべきでした。
Q3. 回答する
そのような報道にはなっていなかったと思います。その結果、本件に関し、マジョリティの関心そのものは徐々に失われ、残ったマイノリティ(の中でも反対派)が騒々しくなったという、極めて不毛な状態に至ったように感じています。
Q4. 回答する
目の前の現象やパフォーマンスを取り上げて一喜一憂するような取扱いではなく、問題の本質と背景について5W1Hを繰り返し解説するという、いわば原点回帰に尽きるのだと思います。また今回の安保法制のように、報道するために十分な時間が与えられている問題を扱う場合は、より丁寧な説明が期待されるはずです。
 
 
神保謙
慶應義塾大学総合政策学部准教授
Q2. 「4 - 評価しない 」の回答理由
安全保障関連法案は11本の法律を束ねる複雑な内容だった。これを一般視聴者向けに解説することが難しいのは理解できる。政府が示した事例説明や例え話が稚拙だったことも事実だ。しかし、テレビ報道において法案の内容を深く理解しわかりやすく伝えようという姿勢をどこまで一貫できただろうか。国会審議の終盤において、どこかで「合憲・違憲」論と市民運動論を焦点にすればよい、という姿勢に転じていたのではないか。

90年代・2000年代を通してPKO法、周辺事態法、対テロ特措法、イラク支援法など多くの法案が成立した。自衛隊の海外派遣にも20年以上の歴史を積み重ねてきた。本来であればこうした法律をどのように束ねて、日本にとって相応しい安全保障の法的基盤を作るべきかが、焦点となるべきであった。しかし、残念ながらテレビ報道が掲げた論点は90年代のPKO法を議論していたときと同じだった。時間が20年停滞している。
Q3. 回答する
問2と同じです
Q4. 回答する
テレビメディアにはアジェンダ設定(何が論点かを提示する)力が必要。そのためには、安全保障問題への基礎的な知識を踏まえることが不可欠。これまで20年間に日本をとりまく安全保障環境と、日本の安全保障政策にどのような変化があったのか。そして、何がいま必要とされているのか、ということの目線を合わせた報道姿勢が必要だと思う。もちろん憲法論や立憲主義への問題意識は重要だ。しかし、それを「入り口論」としてドアを閉ざし、安全保障政策そのものへの分析が不足するのは、メディアとしての責任放棄だと考える。
 
 
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5. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)

松野良一
中央大学総合政策学部教授
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
 そもそも、前の総選挙の際に、テレビはもうすこし議題設定(アジェンダ・セッティング)の機能を果たしてほしかったと思います。総選挙の時は、「アベノミクス」が前面に押し出されましたが、それ自体は国民的な争点になることはなく、関心も投票率も低いままで終わりました。
 本来ならば、総選挙の際には、各政党の政策のみならず、埋もれている議題、特に特定の政党が圧勝すれば、どのような法案が政治の舞台に登場してくる可能性があるのかについても、各党ごとに検証し、淡々と報道・解説すべきだったのではないかと思います。
Q3. 回答を控える
Q4. 回答を控える
 
 
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