フジテレビジュツのスタッフ

美術管理

究極のウラカタ!すべての美術セクションが円滑に動くようにあらゆる業務を行います。
大道具ユニット・平台・箱馬の管理、装飾品の貸し出し、トラックの手配、
美術の行事の準備、局内の連絡事項伝達や倉庫の管理などなど、業務は多岐にわたります。

インタビュー

※所属・肩書きはインタビュー当時のものです

佐野 幸孝さん

株式会社フジアール 
美術事業部 装飾管理課

佐野 幸孝 さん

ーまず、「装飾管理」とはどういった仕事ですか?

佐野

はい、主に「装飾小道具」の貸し出しを行っています。小道具や装飾(小道具の飾りつけ)を担当している美術協力会社は他にありますが、フジアールが扱っているメインの小道具は、家電製品全般、AV機器、そして家具類ですね。フジアールの美術管理が、フジテレビの美術制作に関わる管理業務の全般を担当していますので、ある意味フジテレビの美術現場に一番近いところにいるセクションの一つだと思っています。番組からの急な発注や様々な要望に迅速に応えることができます。

“プラダン”の箱

ー大量の小道具を揃えていますよね。

佐野

はい、フジテレビ本社と湾岸スタジオの装飾倉庫内に、大量の小道具のストックを保管・管理しています。ちょっとした博物館の倉庫みたいですよ。大きなものはそのまま棚に置いていますが、小さなものは種類などに応じて“プラダン”(プラスチック製段ボール)の箱で保管しています。“プラダン”の箱がずらっと並んでいるのが、装飾管理ならではの風景です。小道具を保管するのに、他の装飾小道具担当の会社ではよく“のりダン”を使っていますが、家電機器は壊れないよう、より丈夫なプラ段を使います。

“プラダン”の箱
イスのストック

佐野

また最近では、番組側がドラマやコントの内容に合わせて購入した小道具を、番組制作後に装飾管理が引き取ってストックに加えることも多くなってきました。引き取るのは主に家具ですが、イス類が何故か多い!今200脚くらいあって、ここはイス専門の家具屋!?ってくらいで(笑)。

イスのストック

ー家電製品はどのように管理していますか?

佐野

特に家電は日々進化しているので、年度予算を組んで購入しています。ドラマはその時代を象徴する鏡ですから、「あ、それありません」とは言えないです(笑)。逆に、過去の時代が舞台となる場合や回想シーンなど、様々な時代設定に対応できるよう歴代の家電製品も取り揃えています。例えば時代の変遷がよくわかるものだと、携帯電話ですね。肩掛けが付いた大きな携帯電話から、ガラケー各種、スマートフォンまで、かなりのものを揃えています。肩掛けタイプはもはや貴重品です。もちろん全て本物ですけど、小道具なので実際に通話はできませんが(笑)。

携帯電話
携帯電話 肩掛けタイプ
パソコン入りプラダン

佐野

ドラマやコントで、オフィスのシーンがある場合に、そこに配置されているノートパソコンは大体装飾管理から貸し出したものです。今やどんな仕事でもノートパソコンは欠かせないですよね。装飾管理では70台ぐらいのノートパソコンを保管していますが、連続ドラマなどでオフィスフロアのセットが組まれる場合は、一気に全てのノートパソコンが出払ってしまうことも珍しくありません。

パソコン入りプラダン

ー小道具の貸し出しはどのように行われるんですか?

佐野

発注を受けて用意した小道具を直接スタジオに運び込むこともありますが、主に美術倉庫内にあるロケ棚の「貸出」スペースに、日付や番組名を記入した紙を張り付けた小道具を出しておき、番組スタッフがそれを持って行きます。使用後は「返却」のスペースに戻してもらい、それを回収してまた保管します。

ー話を聞く限り、そこまでの大量の小道具を保管するのも大変そうですね。

佐野

大変です(笑)。本社の装飾管理の倉庫スペースの場合、240平方メートルの面積に数万点のモノがありますから!倉庫スペースは限られているのにモノは日々増えていくので、スペースの確保と物品の入れ替えに追われています。これは永遠の課題ともいえます。それらの物品を台帳に記載し、日々情報を更新しながら管理することも重要な業務です。

ー「装飾管理」ならではの、ちょっと変わった小道具があったら教えてください。

佐野

はい、まずはテレビ局ならではと言うと、パッと見は普通のこの冷蔵庫なんですが…。

ーあ、後ろの面が外れますね。

佐野

そうなんです。これは主にドラマで、出演者が冷蔵庫の中を覗き込むシーンなどで使われる冷蔵庫です。実際には冷蔵庫の中に食品などを配置して、この後ろの穴からカメラで狙うと、出演者を正面から撮ることができるわけです。

くりぬき冷蔵庫
くりぬき冷蔵庫

ーあるある。見たことあります、こういうシーン。他には何か?

佐野

はい、他に変わったものですと、こちらにニュースなどの取材で使われるENGカメラと呼ばれる、肩に担ぐタイプのテレビカメラ(ハンディ)が2台ありますが…。

ー緑っぽい色の方は持ってみると、めちゃくちゃ軽い!

佐野

はい、こちらはダミーつまり作りモノで、スチロール製なんです。もう一方のカメラは、実際にはもう撮影できませんが一応本物です。テレビカメラ自体かなり高価なものですので、ドラマなどリアリティが必要な場合は本物の方を、コントなどではこちらのダミーを使います。実際にお茶の間のテレビに映る段階では、どちらも見た目は変わらないですね。

テレビカメラ
テレビカメラダミー
アメリカン・アンティーク

佐野

他にもコントなどで、アメリカっぽいシチュエーションで使われるのが、この清涼飲料や新聞、切手、薬などの自動販売機です。店内セットに置くだけで、1950~60年代のアメリカっぽい雰囲気を出すことができます。このようなアメリカン・アンティークの小道具も、大事に保管しています。

アメリカン・アンティーク

ーなかなか多岐にわたる小道具を揃えているんですね。最後に「装飾管理」としての心構えを教えてください。

佐野

はい。「常に現場目線を心掛け、番組側のニーズに応え、かゆいところに手が届くような装飾管理でありたい」と思っています。

ーありがとうございました。

(2022年4月)

馬場 啓友さん

株式会社フジアール 
美術事業部 執行役員部長

馬場 啓友 さん

ー「美術管理」の仕事内容を教えてください。

馬場

業務内容を大きく分けると4つになりますね。①「美術協力会社との調整・管理業務」、②「倉庫管理業務」、③「大道具管理業務」、④「装飾管理業務」です。

馬場 啓友さん

ー「美術協力会社との調整・管理業務」というのはどういった仕事ですか?

馬場

はい、これこそ美術管理の存在意義といいますか、大事な仕事で、「フジテレビに常駐している美術会社のスタッフの職場環境を改善し、安全衛生を向上させること」です。
というのも、テレビ美術の現場は、いわば建築現場と同じような環境。一つ間違えば大事故につながるような危険とも隣り合わせですから、安全第一の職場です。また美術制作には、様々な業種の人が携わっているので、美術全体の業務がスムーズに進行するよう「交通整理」が重要ですし、安全面も含めた職場環境の改善は、作業全体の効率化につながります。
ですから各社からの様々な意見や要望をとりまとめてフジテレビへ提案したり、また逆にフジテレビ側からの連絡事項等を各社へ伝えたりと、フジテレビと各社の中継地点になることが美術管理の大事な仕事なんです。

美術管理室

ー具体的にどのようなことをしていますか?

馬場

はい、フジテレビ本社にはスタジオや美術倉庫と同じ階に、美術協力各社の常駐ブースが集まるコミュニティースペースがあって、そこの運営、管理をしています。各社への業務上の諸連絡や、休憩スペースの安全衛生管理の業務で、バラエティー番組などで美術倉庫内のロケがある場合は、撮影スケジュールを各社へ連絡して業務の調整をします。

ー「倉庫管理」とはどのような業務なのでしょう。

馬場

フジテレビには本社と湾岸スタジオにそれぞれ大道具倉庫がありまして、広大な面積に所狭しと莫大な量の美術セットが保管されています。そんな倉庫全体の管理を任されています。日々番組はどんどん作られていきますから、保管するセットもすごいスピードで増えていきます。あっという間に、頑張って整理して空けたばかりのスペースもすぐに埋まってしまいます。
次から次へとセットが置かれてしまうので、奥の方にあるセットを取り出そうとしても、なかなかそこまで美術スタッフが行きつけなかったことがあるくらいでした。そこで、各倉庫内での搬出入の導線を作り出すために床面に線を引きました。この導線上にセットや道具を置かないよう徹底することで、奥の道具もスムーズに出せるようになりました。

馬場 啓友さん

ー増やすだけではなく、当然減らさないと倉庫の収納力にも限界がありますよね?

馬場

そうです。言い方は悪いですが、ちょっとでも気を許すと「ゴミ屋敷化」しかねない勢いなのです。定期的に、使わなくなったセットを廃棄し、整理を行い、場所を空け、新セットの保管場所を指示するのも大事な仕事です。毎日違うセットが倉庫を出入りするので、倉庫内の環境改善は常に継続している問題です。またスムーズな搬出入という意味でも、倉庫にあるフォークリフトのメンテナンスや修理依頼なども重要ですし、倉庫とスタジオの間を運行している輸送トラックの手配、シフトのコントロールも大事な管理業務です。

ー倉庫内にある「ロケ棚」管理について説明してください。

馬場

はい。「ロケ棚」とは、スタジオ収録ではなく、スタジオ外のロケーション撮影で使う小道具などを貸し出す際に使う場所です。発注を受けた各社が「ロケ棚」に小道具を置き、番組のADなどがここから持ち出して、ロケ終了後に返却することになっています。まだ取りに来ていない、置きっぱなしになっている小道具がないか、また未返却のものはないか、と常にチェックしています。
でも、テレビ各局は同じような“ロケ棚方式”で運用しているのですが、改編期や特番・単発番組が多い繁忙期にはロケの数も増えて、ロケ棚がものすごく散らかってしまうというのが各局美術セクション共通の悩みなんです。
フジテレビも以前は、「棚」といっても「置き場」といった感じのスペースでした。そこで積年の悩みだったロケ棚の効率的運用を実現すべく、整備に動き出しました。まずは、ある程度のスペースを美術倉庫内に確保してスチール棚を多数配置、さらに「貸し出しエリア」と「返却エリア」を分かりやすく色分けしました。棚だけでなく、床面も色分けして、新しく運用を開始したところ、以前のように散らかることも返却に関するトラブルもなくなりました。きれいで分かりやすい表示の「ロケ棚」を作ることで、番組スタッフもきれいに使おうと心掛けてくれているようです。

ロケ棚「貸し出しエリア」

ロケ棚「貸し出しエリア」

ロケ棚「返却エリア」

ロケ棚「返却エリア」

ー他にも倉庫管理でのエピソードはありますか?

馬場

はい。美術倉庫は様々な搬出入のために、スタジオに接した天井がかなり高いエリアにあります。その天井近くに、なんと鳩が巣を作ってしまいまして…。我々が巣を見つけたときには、巣の中でヒナがかえっていて、皆で鳴いているような状況でした。日本に生息している鳥獣は鳥獣保護法で守られていて、許可なく捕まえたり駆除したりしてはいけないんですね。なので保健所に巣の撤去を依頼することにしたのですが、さすがにヒナを見てかわいそうと思ってしまいましたので、しばらくそのまま見守り、ヒナが巣立ち、母鳥も戻ってこないのを確認してから巣の撤去をお願いしました(笑)。

ー心優しい美術管理!では「大道具管理」について教えてください。

馬場

美術管理ではユニットパーツという使い回しのセットパーツを管理しています。箱馬、平台や柱、パネル、幕などが含まれます。時代劇やコントなどで使う和風建築セットを組むための、柱、壁、襖(ふすま)、建具や鴨居、欄間(らんま)なども、ユニットパーツとして倉庫にたくさん保管されています。これらは「和骨」と呼ばれています。普段の生活ではあまりなじみのない単位、「寸」「尺」というサイズで作られています。このようなパーツを受注に応じてスタンバイし、貸し出します。また収録後に解体され、返却されたもののメンテナンスなども行います。

馬場 啓友さん

ーでは「装飾管理」についても教えてください。

馬場

装飾・・・というのはセット内を飾り付けたりする小道具のことで、こちらもユニットパーツと同様、受注に応じて貸し出しをします。主にドラマで使われる家電が多いですね。大型テレビ、パソコンといった、我々の生活でもよく使う家電はもちろんですが、ドラマの内容によっては必要になるブラウン管のテレビなど、懐かしの「昭和レトロ家電」のストックもかなりありますよ。

「大道具管理」や「倉庫管理」には専門の担当者がいますので、次回さらに細かく、詳しく説明してもらいます!!

(2021年10月)