フジテレビジュツのスタッフ

衣裳

出演者の着る衣裳を担当します。考証に合った服やキャラクターの扮装で、役がらにリアリティを与え、
出演者の魅力を引き立てます。

インタビュー

佐藤 七さん

松竹衣裳株式会社 
フジテレビ担当衣裳チーフ

佐藤 七(なな) さん

衣裳担当歴22年。「踊る大捜査線」シリーズ、「コード・ブルー」(1・2シーズン)、
「コンフィデンスマンJP」などドラマを担当。

ー衣裳担当でもドラマとバラエティ番組とでは、仕事のやり方は違いますか?

佐藤

ドラマの担当は台本を読み込み、役柄を掘り下げて、役の性格を衣裳でリアルに作り上げていく手助けをします。それに対して、バラエティ番組では面白く見せるために衣裳をデフォルメすることも多いですね。たとえば警察官など職業ものの場合、ドラマでは実際に近づけようとしますが、コントではわかりやすく、時には誇張したものを用意したりもします。『リーガルハイ』の衣裳担当者は傍聴券をとって裁判まで見に行っていました。私はそこまで熱心ではないですが(笑)。

ーかねてから洋服関係の仕事に就きたいと?

佐藤

いえ、実は幼稚園教諭になるための学校に通ってまして、その頃、友人に誘われて松竹衣裳にアルバイトで入ったのがきっかけです。3日目であまりのつらさに「辞めます」と言ったら、「二十歳を過ぎた大人は、一度引き受けたことを簡単に放り出すものではないよ」と言われて、そういうものかな、と……。そこから徐々に責任ある仕事を任されていくようになって、不安だと言えば「大丈夫、大丈夫」と乗せられて(笑)、そんな感じでここまで来ちゃいました。
とは言え、洋服も昔から好きでしたね。小2、3年生の頃から、翌日着る服や髪に留めるリボンの組み合わせを自分で決めてました。こだわりはありましたね。

ー見て欲しい作品は?

佐藤

『コンフィデンスマンJP the movie』です!連続ドラマ同様、コスプレがふんだんに出て来ますが、衣裳スタッフ総がかりで作りました。誰もが知っている世界的俳優のコスプレなどもあるので、楽しんで頂けると思います。

ー過去の失敗談があれば聞かせてください。

佐藤

失敗というか、恥ずかしい話としては、衣裳を何着も抱えて本社から湾岸スタジオまで小走りで運んでいる時に、何度か警察官に職務質問されたことはあります。「何をしてる方ですか?」と(笑)。ほかにも、燃えかすの汚しを付けるために、公園で衣裳をバーナーで焼いていたら、通報されて公園警備員が来てしまったこともありました(笑)。

ー仕事をしていて幸せを感じる時はありますか?

佐藤

役者さんに「この衣裳だったから役に入ることが出来た」と言われた時です。褒められると、もっとこだわりのある衣裳を用意して、もっと役者さんを驚かせたい、と思いますね。

ー座右の銘は?

佐藤

「誠意は裏切らない」。

ーその心は?

佐藤

以前、シーンに合わせてかなり風変わりな衣裳を作ったんですが、それにピッタリのポーチをどうしても揃えたくて、何とか用意して、中にアメを入れたんです。そうしたら本番で役者さんが、そのポーチを手に取って、開けて、アメまで口に入れたんです!台本にない芝居をしてくれたんです。役者さんもこちらの苦労を汲んで、それに応えてくれたんですよね。そういうことだと思います。

ー仕事をする上で大事にしていることは?

佐藤

とにかく、役者さんへの気配りです。衣裳・メイクは役者さんと一緒にいる時間が美術スタッフの中で一番長いので、それが出来ないと、どんなに衣裳センスが良くても仕事になりません。衣裳のクオリティはもちろんですが、それに加えて、役者さんが気持ちよく現場に向かえるよう心を砕くことが大事ですね。衣裳の見た目だけでなく、着心地とか。それに通じることでもあるのですが、画面に映らない衣裳にもこだわります。靴下の色とか。それでお芝居が生きてくると嬉しいですし。
それから、“泣き”芝居の時には衣裳が曲がっていても直しません。衣裳を整えることよりも、その瞬間のドラマの世界観を崩さないことの方が大事なので。

私は家族に仕事のことをあまり話さないんですが、ある時ふと母の携帯を見たら、待ち受け画面に、ドラマのエンドロールに載った私の名前のテロップがあったんです。口にはしなくても、誇りに思ってくれてるんだな、って胸が熱くなって……。あれって、会社名だけでもいいのに、個人名を載せてもらっているのは、それだけ尊重してもらっているということだと思うんです。その責任の重さを肝に銘じて、頑張らなくちゃ、と思いますね。

(2018年11月)

林 春来さん

東京衣裳株式会社

林 春来(はるな) さん

衣裳担当歴1年半。「関ジャニ∞クロニクル」「志村でナイト」「ENGEIグランドスラム」などバラエティ番組を担当。

ーバラエティ番組の衣裳の仕事内容について教えてください。

出演者の衣裳と、シチュエーションコントなどで着るものを用意します。警察官や看護師の制服とか。まずディレクターから企画内容を聞いて、そこから自分なりにイメージを膨らませて衣裳の提案をします。何度かやりとりをした後に決定したら、“ありもの”を使う・買う・リース・作るなどして揃え、それを演者さんのサイズに合わせて作り直して出す、という流れです。

ーこれまででやりがいがあった作品は?

『2018FNSうたの夏まつり』のミュージカルメドレーです。“ありもの”を加工してオリジナルに最大限近づける作業だったんですが、サスペンダーに1800年代風の二股クリップを探して付けたりと、リサーチを繰り返しながらかなり苦心して作りました。本場の衣裳のように仕上げていくのはとても挑戦しがいがありました。

林 春来さん

ー現場で慌てたり困ったりした経験はありますか?

はい。一度決まった衣裳を演者さんが着たら、ディレクターから「やっぱり違うのがいいな」と言われたり、急に出演者が替わって大慌てでサイズを直したりすることもありました。
ある時は「普通の女の子の服を用意して」と言われて、“普通の女の子”って?と悩みましたね。考えた末に提案したら、「“女の子”を誇張し過ぎ。もっと普通で」と却下。そのあと、街なかや雑誌で“今どき女子”を猛チェックして、結果、[ピンクのセーター+トレンドのフレアスカート]でOKをもらいました。ディレクターと私の「普通」の感覚が違ってたんですね。

ーやはり普段から人の服はチェックしますか?

もちろんです。歩いている人や電車内のサラリーマンの格好も、お店の店員さんの制服も、あらゆる人の身なりをじろじろ見ちゃいます。というのは、ざっくりした発注もあるからです。たとえば「会社員のスーツを用意して」と言われた時にどう見せたらいいのか、「カフェ店員の服一式」と聞いたら今どきのカフェの服にするか、クラシックカフェの服ならどうするか、とか考えます。日頃からいろいろな服装を見て、頭の中に引き出しを持っておく必要がありますね。

ー昔から洋服には興味があったんですか?

はい。小4の頃から雑誌の好きな服の写真をスクラップしたり、自分の服をコーディネートした写真を撮ってファイリングしたりしてました。小学校の卒業アルバムに「将来は服をコーディネートする人になりたい」って書いたぐらいです。おしゃれな叔母によく洋服をもらっていたので、そこから興味が湧いてきたのかも。

林 春来さん

ー憧れの職業は思い描いていた通りでしたか?

いえ、私がイメージしていたのは「スタイリスト」で、トレンドファッションに関わる仕事だったんですが、番組の衣裳の仕事は、それ以外にも職業服、時代もの、「モジモジくん」のような全身タイツ……と着るもの全てを作れるんです。幅が無限のこっちの方が私は好きです。

ーそれでも衣裳の仕事にセンスは必要ですよね?

私は自分のセンスやこだわりよりも、着る人の思いに歩み寄ることが一番大切だと思っています。こういう衣裳を着たい、という気持ちを汲み取ることを第一に考えていきたいです。衣裳が演者さんのモチベーションアップの助けになってくれれば。
テレビに自分の考えた衣裳が映っている、自分の作品が大勢に見てもらえている、というのはすごく誇らしいです。もっと勉強して、自分の引き出しを増やして、着る人に歩み寄りながら自分の色も徐々に出していける機会があれば嬉しいです。

(2018年11月)