フジテレビジュツのスタッフ
美術プロデューサー
番組制作側とやりとり、交渉をして、
美術セットの制作に関する予算を管理するアートプロデューサー(AP)。
インタビュー
※所属・肩書きはインタビュー当時のものです

株式会社フジテレビジョン
美術制作センター局次長職 兼部長
株式会社フジアール
執行役員部長 エグゼクティブ・アート・プロデューサー
三竹 寛典さん
入社29年目
ー美術プロデューサーとはどのような仕事ですか?
三竹
まずは予算管理。ドラマの場合は美術スタッフを決定するのも仕事です。
あとは安全管理、スタッフの労務管理といったところですね。

ー予算管理の業務はどのような内容ですか?
三竹
番組では大体予算が決まっているのですが、美術制作関連の内容を確認した上で、内容に見合った額を制作プロデューサーに投げて美術予算を交渉します。合わない場合は、内容をこうしたらどうか、こうして欲しい、など話合いをします。
番組のやりたいことと、それにかかる美術費用を調整する仕事ですね。
ー番組の安全管理とはどういう内容ですか?
三竹
最近は減ってきたのですが、ゲームの多いバラエティー番組では、打ち合わせの段階で制作側のやりたい企画内容を聞いて、「そのままでは危ないので、もう少し角度をこうしよう」だとか、「マット設置するとか、こういう安全対策をしなければいけない」という提案や確認をします。また、「事前シミュレーションは絶対必要だからやりましょう」ということを確認して準備し、現場で実行していきます。安全にかかる費用は削減できないので、「やるのであればちゃんと予算をかけないとダメだ」ということも制作側と事前に話し合います。
あとは、建て込みの時間の確保ですね。美術の細かいスケジュールはアートコーディネーターが作るのですが、その前に、例えば「スタジオにこのくらいの空き時間がないと、その収録時間には始められないから開始時間をずらして欲しい」などと要求することもあります。スタジオの空き状況と、セットを建てるのに美術が必要とする時間と、番組制作全体のスケジュールとの調整を制作側と行います。

ー美術プロデューサーの担当番組はどのように決まりますか?
三竹
デザイナーも同じだと思うのですが、過去に担当した時と同じスタッフがやる番組であれば、その組というか流れで決まることが多いですね。
また、制作プロデューサーやディレクターからの希望で決める場合もあります。美術デザイナーの方が先に決まっていて、そのデザイナーから一緒にやってくれませんかというリクエストで決める場合もあります。最終的には部長の承認で決定するのですが、現場の希望をひっくり返すことはあまりないですね。
あとは個々の美術プロデューサーが、オーバーワークにならないように調整するということでしょうか。
ー美術プロデューサーに向いているのは、どんな人でしょう?
三竹
色んな人がいていいと思っています。デザイナー出身の美術プロデューサーは、美術のことを細かいところまでよく知っているので、そういう人もいいと思いますし、美術以外の部署を経験してきている美術プロデューサーの場合は、前に所属していた部署とのつながりが強く、交渉などがやりやすかったりするので、いいと思います。
資質という面では、共通して言えるのはバランス感覚のある人ですよね。まあ、美術プロデューサーに限らず、求められる資質はどの部署でも一緒なのかもしれませんけれども(笑)。
それから美術でなくとも、ある程度マスコミ人というか、会社や社会での経験を積んでる人の方がいいと思うので、新入社員でいきなり美術プロデューサーというのは難しいかなあ。番組の美術全体を俯瞰で見る仕事だと思うので。
ー仕事をやるうえで大事にしていることは?
三竹
昔からいろんな番組を担当してきました。深夜の小さな番組から大型の特番まで大小様々な番組があるわけですが、各番組における美術スタッフは、その番組においてベストなスタッフだなと信じてやるようにしています。「人を信頼する」ということを大事にしています。
ー一人で何本かの番組を担当していると思いますが、番組数に比べて美術プロデューサーの人数は足りてますか?
三竹
今は丁度いいバランスだと思います。
ー美術プロデューサーを目指したい人は、どうすればいいのでしょうか?
三竹
一つはフジアールのような美術会社に入ることですね。フジアールは美術総合職といって、新入社員でも研修が終われば美術プロデューサーになれるっていえばなれるんですよ。ただフジアールに入ったにしても、現場を経験しておかないと言うことに説得力がありませんから、現場の人が動いてくれなかったりすることもあるので、いきなりだと大変だと思います。
ーフジアールでは、デザイナー志望と美術プロデューサー志望では募集が違うのですか?
三竹
確か美術プロデューサー、デザイナー、アートコーディネーター、イベント事業などと志望別で募集していると思います。

ー美術が関わっている番組で、デザイナーがいないケースはありますが、美術プロデューサーがいない番組はありませんね。
三竹
最近予算が少なくなってきたせいか、デザイナーがつかないオールロケの番組が増えていますね。ただロケ先での飾りだとか、ドッキリみたいな新しい装置の仕組みを考えるとか、セットがなくても美術デザイナーが必要な番組もあります。
ーオールロケなど、番組が多様化していく時代に合わせて、美術プロデューサーも色んなタイプの人がいるといいですね。
三竹
そうですね、色んな人がいればやり方も増えるのでいいと思います。
ーありがとうございました。
(2023年6月)