フジテレビジュツのスタッフ

アクリル装飾

アクリル造形の担当。
アクリル以外にもセットの床を敷いたり、大きいサイズの出力印刷や特殊印刷も担当します。

インタビュー

永山 淳さん

株式会社ナカムラ綜美 
フジテレビ担当マネージャー

永山 淳(じゅん) さん

アクリル装飾歴28年。担当は「FNS歌謡祭」「奇跡体験!アンビリバボー」「僕らの音楽」など。

ー「アクリル装飾」の仕事内容について教えてください。

永山

広く言うと、アクリル樹脂……プラスチック素材の透明や色付きの板ですが、これを扱う部分全般を受け持ちます。セットの床、MCテーブルの天板、アクリル製の飾りとか。
とはいえ、実際には、スタジオに建てたセットの「床」を敷く仕事が全体の8割でしょうか。
デザイナーから上がってきた図面に合う色・素材・模様の床を揃えて、現場で素早く敷く。『FNS歌謡祭』では100パーセントが
床仕事でした。

FNS床パネル各種

FNS床敷き段取り

ー『FNS歌謡祭』のような生放送で床を敷くのは、相当大変な作業なのでは……?

永山

そうですね。CMの間に床の上に載っている物を全てどかして張り替えなくてはならないので、緊張感はハンパないです。間に合わないと放送事故になりますから。しかも、床を敷いた後にドラムやパーカッション等のバンド台が入って、マイクが入って、音声さんがケーブルをつなぐ――それが全部CM中に終わってないといけないので、床は何よりも最初に整える必要があります。どのセクションの人達も、1秒でも早く自分の仕事を済ませたいですからね。

ー床を速く敷くコツはありますか?

永山

リハーサルを何度もするのはもちろんですが、それ以外にも、事前につなげられるものは何枚かをつなげた状態にしておきます。数枚を合わせたものを最低4人で運び入れるのですが、生放送では舞台裏でずっと作戦会議ですよ。誰が何番(のアクリル)を持ってどこに張るか、っていう。
ですから、チームワークも大事です。自分1人が理解していてもだめ。全員が張る場所、タイミングを理解して、呼吸を合わせないと、短時間に張り替えはできません。

ーこの仕事に求められるものは?

永山

細かさ、緻密さ、でしょうか。床を張る時には少しでもずれていたらいけないので、きれいに張れるセンス、そういう所をきちんとやりたい人が向いてると思います。
厳密にいえば、冬場、スタジオが寒い時は、「ミリ開け」といって、基本1ミリずつ隙間をあけてつなぐんです。塩ビ(塩化ビニル)は温度によって膨張するので、冷えている板が照明の熱で膨らんでも継ぎ目が盛り上がらないようにするためです。その微妙な感覚は経験で身に付けるしかありませんが。

ープレッシャーをはね除ける精神力も必要なのでは?

永山

生放送の緊張感がすごすぎて、最後の床転換が終わった途端、全員がへたり込みます。慣れない頃は、建て込み前日が精神的に辛かったですね。そんな時は「失敗しても死ぬわけじゃない」と自分に言い聞かせてました。
慣れてきた今では、どうすれば少しでも短い時間で出来るか、張り替えのやり方を考えるのが楽しいです。そこがテレビならではの、この仕事の醍醐味かな。大変な仕事を終えた後に飲むお酒は格別ですね(笑)。

(2018年12月)

鈴木 竜さん

株式会社ヤマモリ 主任

鈴木 竜(りゅう) さん

アクリル装飾歴18年。担当は「マスカレード・ホテル」「レ・ミゼラブル 終わりなき旅路」
「グッド・ドクター」「99人の壁」など。

ー仕事内容について教えてください。

鈴木

ドラマの場合、セットの中に置くアクリル素材の装飾品はほとんど作ります。棚や柱の装飾、オブジェとかですね。そしてもちろん床もやります。家のセットにはフローリングやカーペット、学校や病院ならそれらしい床材を揃えます。実際の建物に使われている本物の素材を使うこともありますし、塩ビ素材を加工して本物に似せたものを作ることもあります。

ーこれまでで大変だった仕事は?

鈴木

映画『マスカレード・ホテル』でしょうか。とにかく規模が大きい上に、何もないところから始めて2週間で全てのセットを建てるという突貫工事。ホテルにあるあらゆる表示板や、エレベーターのボタン、壁に貼り付けるホテル名の英字ブロック、踊り場に立てるホテルのロゴ入りフェンス、もちろん床も……アクリルを使っているもの全てを作るのは本当に大変でした。
ただ、その分、すごくやりがいがあって、終わった後の達成感も大きかったですね。でも、もう一度やってみるかと言われると、即答はできませんが(笑)。

ー守備範囲がすごく広いように思いますが……。

鈴木

そうですね。木とかでなければ、大概の物は作れます。アクリル板は透明なものだけでなく色付きももちろんありますし、表面もクリアなもの、半透明、ざらざら、凸凹……とあらゆるものを揃えられます。ステンドグラスをアクリルで似せて作ったこともあります。
塩ビ板の加工だけでなく、その上にカッティングシートというさまざまな色のシートを貼ったりもします。ドラマでよく、ビルの窓ガラスに「〇〇商事」とか書いてあったりするのも我々が作っているものです。
大道具の一部でもあるし、小道具の一部でもある。“何でも屋”ですね(笑)。

ー仕事上のこだわりは?

鈴木

「見えない所にも手を抜かない」。画面に映らない部分だから、といって手を抜くと、見えないようでいて、やっぱり何らかの形で表れるんです。あらゆる部分で“なあなあ”にならないよう気を付けています。

アクリル板

カッティングシート

ー仕事で楽しさを感じる瞬間はありますか?

鈴木

デザイナーがある程度任せてくれて、それに対しての提案がハマった時です。自分でも試行錯誤して、デザイナーと一緒に作り上げた結果、良い感じの世界観を生み出すものが仕上がった時は嬉しいですね。

(2018年12月)