フジテレビジュツのスタッフ
電飾
テレビジュツにまつわる全ての電飾を担当。
昔ながらの豆電球から、今主流のLEDまで、あらゆるものを駆使してセットを輝かせ、華やかにします。
インタビュー
※所属・肩書きはインタビュー当時のものです

株式会社テルミック
TV・メディア3課業務部
窪田 紗彩さん
入社8年目
担当番組『梅沢富美男のズバッと聞きます!』『新しいカギ』『FNS歌謡祭』『FNS27時間テレビ』
ーこの仕事に入ったきっかけは?
窪田
学生の頃コンサートを鑑賞した時に、舞台の構成はもちろんですが、照明や電飾で作る舞台の世界観を目の当たりにして、「一つの場所なのにこんなにもシーンごとに変えられるんだ」って感銘を受けたのがきっかけです。そういう世界をつくり出す仕事に就きたいなと思って調べていって、辿り着いたというカンジです。
ー照明も就職の選択肢に入っていたのですか?
窪田
はい、そうです。専門学校(東京工学院)では照明のコースを勉強してきました。
ーかつて電飾と言えば「大道具に埋め込んだ電球を点滅させる」のがメインでしたが、今は照明に近いですよね。
窪田
そうですね。LEDが増えているということもあって、照明さんと使い方は似ていると思います。
ー機材も同じものを使っていますか?
窪田
はい、コントロールする操作卓はまさに同じ機材ですね。
ー昔ながらの大道具に埋め込む電飾は、今もやっているのですか?
窪田
少ないですけど、大道具の工場での共同作業は今もあります。ただ最近は、電球の配線もするのですがLEDのテープライトを使うことが多いです。直で見せる場合もありますし、間接光として使うこともありますね。基本的に現場で仕込める量であれば、スタジオで建て込み当日にやりますが、私たちが仕込んだ後に大道具さんが建てるとなると間に合わないとか、効率が悪いとなった時は事前に工場の方で仕込みをやります。建て込みの効率については、主に営業担当が判断しています。
ーチーフとして最初にやった仕事は何ですか?
窪田
『梅沢富美男のズバっと聞きます!』です。電飾の仕事というのは、やはりバラエティが多いですね。
ードラマも(装飾・照明取り付け配線など)やっていますか?
窪田
はい、特殊な“作りもの”が要求される時のみ担当します。
ーテルミックの仕事は、テレビ番組の他にもコンサートなど色々とありますね。
窪田
私もフジテレビ担当なんですが、会社全体のシフト調整によっては、コンサートの現場に応援で行くこともあります。
ーコンサートなどの仕事は、テレビと比べて面白いと思うことはありますか?
窪田
それはありますね(笑)。まず規模が違うというのがありますし。でもテレビは色々なことが経験できるので、面白いのはテレビの方かなと思います。

電飾送出卓・ブース

FNS歌謡祭 送出オペレーションブース
ー過去を振り返って、よくできたと思う仕事はありますか?
窪田
『FNS歌謡祭』ですね。
ーあれは大変ですね(笑)。テルミックはセットのLEDビジョンに映す映像制作も担当していますね。
窪田
映像制作はCG課が担当しています。送出のオペレーションをするのは業務部が担当になります。どういう映像にするかなどデザイナーとの打ち合わせはCG課が中心で、現場での送出リハーサルや生放送本番は業務部中心に動きます。もちろんCG課も立ち合います。リハーサルなどで変更や修正があった場合は、CG課がその場で修正して取り込んで送出ということもよくあります。現場での送出担当は基本1人で、交代要員を入れて2、3人という人数でやっています。

テルミックオリジナル LED管
ーLEDビジョンの他に、電飾の機材にはどんなものがありますか?
窪田
開発部という部署がありまして自社の新商品を開発しています。最近だと、昔の蛍光灯の形状のLEDバージョンが出ました。長さも3種類ぐらいあります。LEDでも電球の粒が見えないのが特徴です。

テルミックオリジナル LED管

テルミックオリジナル LED管

テルミックオリジナル LED管
ー10年ぐらい前に、コンサートでムービング・ライティングというのを見ました。半円形のレールに取り付けた何台もの照明機材がモーターで動く装置で、その動きがライティングと連動するというすごいものでしたが、装置はテルミックが作ったと聞いたことがあります。さすが電飾だけでなく特殊装置を手掛けている会社だなと思いました。
窪田
そうですね。メカと電飾を組み合わせた「動く電飾」を作る部署もあります。
ー以前は特殊装置の仕事も多かったかもしれませんが、最近は電飾の仕事もかなり増えてきたと思います。仕事量に対して人員は足りていますか?
窪田
そうですねぇ、足りていないのではないでしょうか(笑)。
ーじゃあどんどん若者に入ってきてもらいたいですね。入社するのはどういう学校の人が多いのでしょうか?
窪田
そうですね。実際は理系出身とかはあまり関係ないですね。専門学校で照明を勉強していたとか、電気系の工業高校出身の人が入っているというイメージですけれど、全然関係のない文学部とか経済学部とかもアリで、専門的なことは入社してから勉強すれば大丈夫という感じです。
ーそれでもこれは必要ってことは何かありますか?
窪田
運転免許だけあれば大丈夫です(笑)。PCとかCADができなければダメとかは特にないです。
ー配線の知識とかはなくて大丈夫ですか?
窪田
私も最初は全く知識がなかったので大丈夫です!
ー現在テルミックには何人ぐらいのスタッフがいるんですか?
窪田
およそ300名です。フジテレビ担当は30人ぐらいで常駐しています。
ーこれまでに失敗したという経験はありますか?
窪田
そうですね、まあ色々ありますが(笑)。歌番組でオペレートをミスしてしまったりとか…。私はCGなど映像の送出よりも電飾のオペレートを担当することが多いのですが、“拍”を間違えて早めにキーを叩いてしまいタイミングが合わなかった、とかですね。ちょっと本番の空気にのまれたのかもしれませんが、リハーサルまでは上手くいっていたのに本番に限ってですね。

送出オペレーションする窪田さん
ーでは、この仕事をやっていて良かったと思う瞬間は?
窪田
直接お客さんの反応を感じた時でしょうか。バラエティでは客入れもあるので、スタジオが盛り上がっている雰囲気を見ると、やっていて楽しいなと感じます。
ー仕事のモットーは?
窪田
建て込みの時も電飾っていろんな美術会社の人と絡みがすごくあるので、コミュニケーションが大事だと思っています。営業担当同士で事前に打ち合わせはしているですが、やはり現場に来ないとわからないこともたくさんあって、現場の人間として効率よく建てるためには細かなコニュニケーションが必要です。もう人見知りとか関係なく、他社の担当者が誰かを調べて、「ここはどうしますか」など積極的に声をかけて相談するように心がけています。
ー今後やってみたい仕事は?
窪田
今年の『FNS27時間テレビ』は『新しいカギ』チームがメインになります。自分が担当してきた番組が大きな生放送スペシャルになるので、まずはきっちりやり遂げたいと思います。
ー入社のきっかけになったコンサートの仕事はどうですか?
窪田
コンサートには一度オペレートで参加したことはあります。雰囲気もテレビと全く違いますし、ものすごい人数のお客さんが近くにいる中で仕事をして、すごく刺激を受けました。スケールの大きい仕事もやっていきたいなと思います。ライブでも、現場でオペレートして盛り上げる仕事をやっていきたいですね。

ー最後に趣味を教えて下さい
窪田
音楽番組に携わっていることもあって、音楽を聴くのが好きなんです。あと韓国が好きなのでKPOPのコンサートに行ったりします。韓国旅行とかも。
ーありがとうございました
(2024年8月)

株式会社コウシン
菅田 重樹さん
電飾担当歴17年。
ーこの仕事に入ったきっかけは?
菅田
電飾って仕事をそもそも知らなかったんですが、テレビの裏方という内容で高校に求人が来ていたので面白そうだなと思いました。それが興進電化でした。
ー工業高校とのことですが、技術的な方面の仕事を目指していたのですか?
菅田
そうですね。求人広告を見て、入社試験を受けました。
ー最初にやった仕事を教えてください。
菅田
初めての現場はドラマでした。渋谷スタジオで収録していた頃です。スタジオの建て込みと本番付きの仕事を、先輩と一緒にやりました。ドラマの建て込み準備は、工場で大道具に仕込むというよりは、スタジオで建てられた大道具に蛍光灯や間接照明などを取り付けたり、装飾が飾ったシャンデリアなどの配線をしたりという感じです。
ー最初に担当チーフになった番組は?
菅田
ニュース・情報番組です。日曜日10時枠で『Mr.サンデー』の前にやっていた番組です(注:『情報エンタメLIVEジャーナる!』)。最初の担当チーフで、何をやったらいいのかも実はあまり分かってなくて(笑)。大道具セットへの工場での仕込みもありましたし、LEDのテープライトが流行りだしていたので、そういう仕込みが多かった記憶があります。事前の仕込みは大道具さんの工場でやったり、時間があれば興進電化の工場に搬入してもらって仕込んだりしていました。
ー大道具の事前仕込みの際に「あれ?これは発注された仕様と違うんだけど?」ということはありますか?
菅田
ありますね(笑)。そういう時は大道具の工場に戻して直してもらうか、時間が無ければ間違った道具に合わせて仕込みを変えることもあります。

大道具に仕込まれた電球
ー今までで一番大変だった仕事は?
菅田
『FNS歌謡祭』です。量的にも時間的にも両方大変ですね(笑)。オペレートの方もやらせてもらっています。
ー70曲くらいのオペレートをするし、事前仕込みと機材セッティングもあって、大変ですよね。

FNS歌謡祭の電飾オペレーションブース

FNS歌謡祭の電飾オペレーションブース
ーこれまでの仕事の中で見て欲しい番組、自信作は?
菅田
やはり歌番組が多いですね。今は『MUSIC FAIR』のオペレーターをさせてもらっています。


ー電飾のオペレート卓は、照明卓と同じ機材だと聞いたことがあるのですが。
菅田
そうですね。「グランドMA2」という機材を使っています。
ー東京オリンピックの時、海外の放送局が日本にセットを建てて放送するという企画があって、その時も「照明卓で電飾もコントロールする」って話で、興進電化に聞いたら照明と同じ機材なので問題ないということでした。電飾スタッフなら照明のオペレートも可能ってことですか?触る機能が違うんですか?
菅田
そうですね、照明とは少しいじる部分が違いますね。
ー昔に比べると、照明と電飾で共通する部分が増えて来たように思うのですが。
菅田
昔に比べて、境目が無くなってきた感じはありますね。
ー照明チームが持っていない機材を興進電化が持っていたりするので、照明チームとしても電飾担当と一緒に組んでやれば世界が広がる、とずっと言っています。すでに一緒にやってることも多いのではないかと思いますが。
菅田
そうですね。細かい「灯体」も扱えますので、一緒にやらせてもらっています。
ー「失敗したなー」ということがあれば教えてください。
菅田
まあ、いろいろありますね(笑)。やらかした数も多いので…。
ー差支えのない範囲で(笑)。
菅田
配線を間違えるとか。生放送の本番10分前くらいに気が付いて、その時はなんとか間に合いましたけれども。
ーキッカケ間違いとかは?
菅田
まあ、ありますね。事前プログラムでやることもありますが、生演奏ライブだとアドリブが入ることがあるので、生対応します。ちょっと拍数が変わったりして、最後のあおりがずれてしまったり。
ーそれは失敗というよりは仕方ない部分では?
菅田
まあ、その拍数を間違えて叩いちゃったとかもあります。
ーこの仕事をやっていてよかったと思う時は?
菅田
現場でまわりのスタッフに電飾を、「きれいだね」「かっこよかった」みたいな感じで褒めてもらった時が、一番やっててやりがいを感じます。
ーモットーは?
菅田
コミュニケーションですね。1人だとできない仕事なので、演出家やデザイナー、照明、カメラマンなどが何を追求して作っていくのかというところが、しっかり共有できていないとダメです。
ー電飾をどういう仕込みにするかについてはデザイナーから注文があると思うのですが、どんなオペレーションにするかは任される部分が大きいですよね。音楽番組なら曲から受けたイメージを形にしていくって感じですか?
菅田
照明チームが作る“明かりの世界観”を守って、電飾オペレーションを考える感じですね。
ー楽曲ごとの電飾オペレーションのプランを最初に見せるタイミングは、スタジオセットが建って、リハーサルの時ですか?
菅田
そうですね。
ープランを考えるにあたっては、誰とコミュニケーションをとりますか?ディレクター?
菅田
まあ、照明チームと一番話をしますね。どんな感じで考えているか、それならこのタイミングでこれを点滅させようとか。そんな感じですね。

ー今後やってみたい仕事は?
菅田
昔の27時間テレビのような番組をまたやりたいなと思っています。
後は、番組に限らず、アーティストのライブの仕事とかはやってみたいですね。
ー趣味を教えてください。
菅田
漫画やアニメ、それとゲームです。グッズを集めるとかよりは、ひたすら読んだり見たりが好きです。
ーありがとうございました。
(2022年8月)

株式会社コマデン
テレビメディアカンパニー主任
小林 賢次さん
電飾担当歴20年。
担当は「バイキング」「芸能人が本気で考えた!ドッキリGP」など主にバラエティ番組。
ー普段の仕事内容について教えてください。
小林
基本的には、バラエティ番組であればセットにユニットのLEDを仕込んで本番で点ける作業です。それと、コマデンはCG制作にも力を入れています。普通は電飾を電飾卓で操作しますが、コマデンでは、CGで作った映像の通りに電飾を発光させる電飾オペレーションもしています。

ー「CGを使った電飾オペレーション」の作品例は?
小林
『FNS歌謡祭』で使った演出ですが、ステージ上のダンサー達が全員、バラバラの映像が流れているLEDビジョンの板を持って踊っていて、全員が集まってLED板を合わせるとおおきな一つの画(え)になる、という作品は自信作の一つです。
ーどのようなオペレーションが最も大変ですか?
小林
集計システムを使う時が一番神経を使います。スタジオの観覧者が集計ボタンを押すと、押した人数や平均値、「イエス」「ノー」などが出るものです。あれで正しい数が出ないと大変なことになりますから。
あとは、クイズ番組で「問題」の映像や解答者がタブレットに書いた答えをモニターに映し出す時でしょうか。これも、映し出せないと大変な支障をきたすので、毎回ものすごく緊張しますね。
ー今の職業に就いたきっかけは?
小林
昔からゲームが大好きで、それが高じて学校でCGを専門に勉強して、卒業後はゲーム制作をしていました。その後、CGコンテンツを作っているコマデンを知って、まずアルバイトから入って、しばらくして社員採用してもらいました。

ー職歴20年で、昔と今とでは仕事は大きく変わりましたか?
小林
全然違いますね。電球からLEDになって軽くなったのはもちろんですが、配線が簡略化したのも非常に助かってます。かつては電球の数だけボタンを押さなくちゃならなかったのが、今はプログラミングで、1番のボタンを押すと赤、2番のボタンで赤と青、10番を押すと全色点く、というように組めますので。昔、男性チームと女性チームがお見合いして、大きいテーブルの電光掲示で誰と誰がカップルになったかわかるシステムが流行りましたよね。当時はきっと、大量のケーブルをつなぐ大作業だったと思いますよ。今なら何十分の一の配線で済むのに(笑)。
ー仕事で喜びを感じるのはどんな時ですか?
小林
番組打合せで新しい企画システムのサンプルを見せて、驚いてもらえた時です。最近では、センサーで人の動きを追跡して照らすムービングスポット(ライト)をお披露目した時、とても好評で嬉しかったですね。
自分がセットに取り付けた新しいシステムで、スタジオのお客さん達が驚いたり喜んだりしてくれるのを見る時が、この仕事をしていてよかった、と思える瞬間ですね。
(2019年3月)