フジテレビジュツのスタッフ

特殊効果

ドラマでの火事や爆発・雨のシーンから歌番組でのスモークまで、特殊効果の技術で
リアルからファンタジーまで多岐にわたるシチュエーションを創り出します。

インタビュー

※所属・肩書きはインタビュー当時のものです

大里 健太さん

有限会社 東京特殊効果

大里 健太さん

特殊効果スタッフ歴9年。
担当は「コンフィデンスマンJP」(ドラマ・映画)「貴族探偵」「翔んで埼玉」など主にドラマ・映画。

ードラマや映画での「特殊効果」とはどのようなことをするのですか?

大里

一言で言えば、シーンの風景の演出です。1つは雨や雪を降らせる、風を吹かせる、桜の花びらを舞わせるといった自然現象の演出。そのほか、殺人シーンで血を飛び散らせたり、銃に火薬を仕込んで打った後の煙を出したり。家や施設のセットで水やガスが出るようにするのも我々の担当です。お風呂に湯も張ります。

大里 健太さん

ーこれまでで大変だったシーンは?

大里

オープンセットの住宅街一帯に土砂降りの雨を降らせた時でしょうか。ハイライダー(高所作業車)3台に散水車も借りてきて、普段の倍の人数のスタッフで作業しました。当然、水も大量に必要で、タンカーに給水する会社にお願いして、数十トンの水を降らせました。

ー特に苦労した特殊効果は?

大里

ギャングが出て来るドラマで、監督から「拳銃が落ちた時に暴発するようにして」と言われた時は結構苦労しました。仕組みをどうしたものかと悩みましたね。結局、モデルガンを解体して、外側に見えないぐらいの小さいスイッチを付けて、落ちた時にそのスイッチが押されると中の火薬が割れる構造にしました。本番で監督から「いい!いい!これこれ!」と言ってもらえた時はホッとしました。

ー特殊効果でとりわけ気を付けるものは?

大里

火事のシーンですね。火事だけはシミュレーションできないので一発勝負でやります。演出的にはどのくらい燃やすのがベストかを考えなくてはなりません。でもそれ以前に安全面に最も配慮しておく必要があります。特に、演者さんが火の中で芝居をする場合は、火が大きくなってもすぐに外に出られる通路を確保しつつ、速攻で消火できるスタンバイもしておきます。火は広がりが速くて非常に危険なので、細心の注意を払いますね。

大里 健太さん

ー仕事でのこだわりは?

大里

できる限り“リアル”に近づけることを目指しています。“自然現象”を作り出すことが多いので、台本に書かれていないことが多くて、台本を読み込んでそのシーンを自分でイメージするんです。屋外の設定なら「風が吹いている方がいいのかな」とか、病院であれば「オペシーンの血もオペ前室の手洗い場の水も要るな」とか、教室なら「窓際にカーテンがあるだろうから、風が要るかな、扇風機を用意しておくか」とか。常に先回りして想像することが求められます。
以前担当したドラマで、スタジオ内のベランダのセットで主婦が一人、遠くを見ながらアイスを食べる、というシーンがありました。その時、特に指定はなかったんですが、大きめの扇風機で離れた所から風を柔らかく当てて、髪が風にそよぐようにしたんです。そうしたら収録の後、カメラマンが「ロケ(撮影みたい)だったねー」と言ってくれて。あの言葉は嬉しかったですね。

大里 健太さん

ー雨や雪の設定は台本に書かれているんですよね?

大里

「雨が降っている」とは書いてあります。でも小雨なのか、ザーザー降りなのか、横殴りの雨なのかまでは書いてないので、どんな雨がそのシーンに求められる画(え)なのかを考えます。それと、雨の翌日のシーンなら、まだ道が濡れているか、もう乾いているか。雪の翌日なら積もっているか、解けているか。どうするのが一番リアルに見えるか、想像を巡らせます。

ー日常生活で職業柄、ついやってしまうことはありますか?

大里

雨や雪を見ます。ボーっと(笑)。前に先輩から言われたんです。「雪が降っていたらよーく見るんだ。どういう風に降ってるか、道のどこに溜まるか」と。それ以来、雨を見て、しずくがポストに当たって跳ね返るのがカッコイイな、とか(笑)思っちゃいますね。道路の排水溝の下の水の流れ方を見たり、桜が散ったら「花びらってこういう所に溜まるのか」とかも見ますね。

大里 健太さん

ーこの仕事の魅力は?

大里

「こんな変なことを必死にやってるのは俺らぐらいだ」と思えるところですね(笑)。「風船が自然に割れるようにして」だとか、「女優さんがイメージシーンで入るチョコレート風呂を用意して」だとか、「掃除機から急に火が上がって壊れるようにして」だとか、そんな変なことを一生懸命考えられるのって、この仕事くらいだと思うんです。
それでも何とか、監督の撮りたい画を作りたい、できる限り監督のムチャ振りに応えたい、と思ってやっています。“変な誇り”がやりがいですから。

(2019年2月)