フジテレビジュツのスタッフ

アートコーディネーター

現場での美術の責任者。担当番組の美術の全てを把握し、隅々まで目を配り、美術制作を進行します。

インタビュー

※所属・肩書きはインタビュー当時のものです

鈴木 真吾さん

株式会社フジアール 
アートコーディネーター

鈴木 真吾さん

アートコーディネーター歴19年。
担当番組『MUSIC FAIR』『FNS歌謡祭』『R-1グランプリ』など

ー仕事の内容を教えてください

鈴木

一言で言えば番組美術全般の現場監督なんですが、収録の前までは制作と美術の橋渡し役です。美術打ち合わせの時間や場所も段取りますし、打ち合わせに必要な資料があれば用意します。制作ディレクターのやりたいこと、美術デザイナーのやりたいこと、その両方を理解して、セットが成立するのかどうか客観的な立場で判断して、上手くいくように橋渡しする感じです。

鈴木 真吾さん

美術発注打ち合わせでは、デザイナーの隣で発注内容を確認する

美術発注の時は、デザイナーが描いた図面をスタッフの中で一番理解してなきゃなりません。大道具、アクリル、電飾、などなど、どこの部署が担当してやるのかっていうのを全体的に把握して、打ち合わせを進めます。
セットを建てるスタジオの現場では、打ち合わせと違っていないかどうかを一番先に確認しながら建て込んでいきます。

鈴木 真吾さん
鈴木 真吾さん

デスクでは、数々の番組に必要なものを整理する

ーこの仕事に就いたきっかっけは?

鈴木

もともとは建築設計事務所にいたんです。そこで図面を引いていたのですが、自分が建築業界に入った時が、ちょうど建築業界が下り坂というか、どんどん潰れていって、自分の会社も危うくなってきたので辞めました。次の仕事もそれまでの経験を生かした仕事がいいなと思っていましたが、テレビ美術の美術進行(アートコーディネーター)という仕事があると知って、やってみようと思い募集を見て応募しました。

ー初めて担当した番組を教えてください

鈴木

最初は報道・情報のデイリー番組を担当しました。バラエティー番組では『さんまの天国と地獄』を先輩から引き継ぎました。その時初めてさんまさんを生で見たのですが、普段から面白い人なんだなあとビックリしたのを覚えています。

鈴木 真吾さん

『FNS歌謡祭』の複雑なCAD平面図も作ります

ー一番きつかった仕事は?

鈴木

まあ『FNS歌謡祭』ですかね。セットの規模も大きいですし、ステージの設備をゼロから作らなきゃならないですし、フジテレビを代表する番組を担当するという責任感もありますし、いろんなことがきつかったです。体力的にも精神的にも。

鈴木 真吾さん

『FNS歌謡祭』の複雑なCAD平面図も作ります

ー今までやってきた中で、「これを見てほしい」という番組は?

鈴木

一番苦労して自分が成長できたなっていうのはやはり『FNS歌謡祭』なので、見てほしいです。他部署の研修で新人がスタジオ見学に来た時に、「これセットだったんだ!」と言っていたのを見て、「まあ、そう思うだろうなあ」って。セットの存在感も照明も歌も、上手く噛み合っているのかなって思います。
飛天の間のセットを建てる時は、シャンデリアの位置との関係から、1cmでもズレたら建たない大きなセットを、完璧に墨出しして建てられるのは美術チームのすごいノウハウだと思います。

ー過去に大きな失敗はありますか?

鈴木

えーと、、、寝坊したことがあります。

ー仕事上のこだわりを教えてください

鈴木

一番こだわるのはやはり「いかにセットをきれいに建てられるか」です。デザイナーが「何が狙いでこのデザインを描いたのか」を、どのスタッフよりも一番理解して仕事したいと思っています。デザイナーがもともとの意図と違う図面を描いていると感じた時は、「これはその狙いからしたらどうなんですか」って意見を言ったりもします。

ーきちんと意見が言えるというのは、アートコーディネーターの大きな力ですよね

ー仕事をする上でのモットーは?

鈴木

「何がベストなのか」を探り出して、実現させるってことですかね。

ーやりがいはどんな時に感じますか?

鈴木

建築と違って、毎回違うことをやれるところですかね。
あと、大きい仕事の生放送を終えた時は「やったなー」という充実感があります。

ー今後やってみたい番組は?

鈴木

音楽番組をやって思うのは、美術だけでなく照明などの技術面とか、いろんなことを知ることができるんです。飛天での『FNS歌謡祭』も続けてみたいですが、『フジロック』のような大きな音楽フェスなどもやってみたいです。

鈴木 真吾さん

ー日常生活で出る職業病はありますか?

鈴木

これは多分美術スタッフならみんな同じだと思うのですが、例えばポスターが曲がって貼ってあると直したくなるとか、額縁の飾り方がバランス悪いなとか、ライブとか見に行っても「舞台袖が見切れてるじゃねえか」とか(笑)。テレビでも映画を観ても、そういう欠点ばかり見ちゃう癖があります。

ー趣味は?

鈴木

庭いじりですね。今はガーデニングにハマってます。

ーありがとうございました

(2022年1月)

森田 誠之さん

株式会社フジアール 
チーフ・アートコーディネーター

森田 誠之さん

アートコーディネーター歴30年。
担当は「HERO」「のだめカンタービレ」、映画「翔んで埼玉」(2019年2月公開)など主にドラマ、映画。

ー「アートコーディネーター」とはどんな仕事ですか?

森田

デザイナー、美術関係各社間の調整をして収録に至るまでの段取りを組んで、収録現場では全スタッフの束ね役をします。現場責任者でかつ、すき間を埋めるために動きます。建て込みもする、飾り物も仕込む、スモークも焚く。メイクさんの代わりに演者さんの汗を拭くこともあります。「何でも屋」ですね。なので、各スタッフの仕事にも精通しているつもりです。

ー「特に大変だった担当番組は?

森田

『ファイアーボーイズ ~め組の大吾~』です。消防士のドラマで毎回火事場が出て来るのですが、 オープンセットで火事を撮るのはいつも夜から朝まで。で、火事以外の普通のシーンを昼に撮る。火事を撮った後に近くのホテルで2、3時間仮眠して、そのまま昼のロケに突入することもありました。あの時は体力的にしんどかったですね。
あとは『電車男』。登場するいろんな「オタク」をどう表現するかで悩みましたね。フィギュアや靴オタク、熱狂的阪神タイガースファンなどのオタクグッズを集めるのに苦労しました。

森田 誠之さん

ー思い出深い番組は?

森田

『のだめカンタービレ』ですね。スペシャルドラマの方で海外に行くことも多かったので。苦労したのは「パリのアパート」のセットを作った時です。真ん中が抜けているらせん階段を作るのに、支柱がないので構造的に建てるのが大変でした。ドアノブやコンセント受けも日本では手に入らないので、パリで買って来て付けました。

ー自信作は?

森田

『HERO』に登場させた大きなテミス(正義の女神)像です。監督に「裁判所とかにありそうなのを作って」と言われて、三面図を描いて作りました。テミス像でも目隠しをしているもの、していないものなどいろいろなバージョンがあって、かなり研究を重ねて仕上げました。あれだけ大きいものは実際にはないですね。

ー今後やりたいことは?

森田

海外ロケのドラマかな。『のだめ』の時もそうでしたが、文化が違う国の美術スタッフと一緒に仕事をすると、面白い発見がたくさんあるので。

ー好きな時間は?

森田

連続ドラマの仕事は収録が終わると休みがまとまってとれるので、行ける時は海外旅行に行くのが楽しいです。特にヨーロッパが好きです。でも、観光名所に行ってもつい、道端の消火栓の写真を撮っちゃったりしてるんですよね……(笑)。

(2018年10月)