フジテレビジュツのスタッフ

CG

テレビ画面に映る文字テロップからドラマのVFXまで、
さらに出演者以外はすべてCGの“バーチャルセット”も担当。
番組の世界観やスタジオセットとマッチさせるビジュアルセンスが要求されます。

インタビュー

※所属・肩書きはインタビュー当時のものです

宮下 幸恵さん

株式会社デジデリック 
オンエアーグラフィックディレクター

宮下 幸恵(ゆきえ) さん

CGディレクター歴9年。これまでの担当は『めざましテレビ』『とくダネ!』『バイキング』
『直撃LIVE グッディ!』など主に情報番組。

ー宮下さんの肩書きは「オンエアーグラフィックディレクター」ですが、仕事内容はCG制作ですか?

宮下

広い意味ではCG制作ですが、主に生放送のテロップを担当しています。その中でアニメーションのあるCGテロップを制作、送出していますが、各番組で異なる演出に対して、放送対応できるテロップシステムの設計も行っています。

宮下 幸恵さん

ー具体例は?

宮下

『めざましテレビ』や『とくダネ!』では人の名前、場所の情報、ニュース項目名、生放送を表す「LIVE」という文字など、画面に出ている動きのあるCGすべて対応しています。放送前に制作スタッフより発注される原稿を元に、テロップの仕込み作業を行い、使用する順番に並べ、放送時に番組演出や流れに合わせて送出作業を行っています。

ーこれまでで特に大変だった番組は?

宮下

『FNS27時間テレビ』です。生放送されている27時間中、常に担当チームが交替でテロップを出し続けていました。いくつもの場所から各コーナーの放送が行われるので、本社スタジオ数ヵ所、湾岸スタジオ、中継車にそれぞれ2人から4人のCGオペレーターを配置し、総勢20人ほどのスタッフで対応しました。
『27時間……』の構成にはレギュラー番組も入るので、普段は事前に作ってVTRに入れているテロップと同じものを生放送対応でどれだけ再現できるか、そこも苦労のしどころでした。

ー特に活躍した番組は?

宮下

AKB48選抜総選挙の中継でしょうか。司会の徳光和夫さんの発表に合わせて、データマンが所属チーム名、名前などの情報を絞込み、瞬時に順位と得票数を入力するんです。そのデータをグラフやランキングなどを出すそれぞれのテロップマシンが受信し、紐付けている他の情報――顔写真、年齢、前年の順位、一言メモなどと一緒にまとまった情報として瞬時に送出する、という流れです。300人以上のメンバーのデータベースから該当するメンバーを一人一人選択していくので、オンエア中はスタッフ全員、緊張の連続です。

ー生放送対応では反射神経が求められるということですね?

宮下

はい、それと生放送では何が起きるかわからないので、先読みをして予備のテロップをスタンバイしておくこともあります。たとえば演者さんの名前を出す際に、「Aさんが左、Bさんが右に立つ」と言われていても「A B」「B A」の両方を用意したり、「Aさんの後にBさんが出る」と聞いても「A→B」「B→A」のどちらにも対応できるようにしておいたり。

ー仕事中に注意していることはありますか?

宮下

番組の内容に入り込みすぎないように気をつけています。わかりやすい例ですとスポーツ中継で試合に見入ってしまうと得点を出すタイミングが遅れますし、歌番組でも曲に聴き入っていると曲タイトルを出し忘れてしまいますから。

ー番組ディレクターからCGを出すタイミングの合図はあるんですか?

宮下

指示をいただくことがほとんどですが、番組によっては待つと出すのがワンテンポ遅れることもあるので、こちらでもタイミングを見計らいます。特に歌番組では、曲名テロップを出すのにもリズム、“間(ま)”を非常に気にします。二小節だけ出す、カット変わりの前に落とす、とか。曲の世界を作る映像の一部にもなると思っているので気をつけています。

宮下 幸恵さん

ーこの仕事が楽しいと思うのはどんな時ですか?

宮下

番組スタッフの方から「生放送なのに何でそんなに
早く出せるの?」とお褒めの言葉をいただいたときは嬉しかったです。
また、スタジオの演者さんが我々の出しているテロップをいじってくれることもあって、以前、生(放送)のコント番組で、“お父さん”がその場の思いつきで言った「我が家の家訓」をテロップとしてその場で出すシチュエーションがありました。
その演者さんがわざと、長い家訓を聞き取りにくくしゃべって、こちらがテロップを出すのに手間取っていると、「早く打てよ!」と裏方なのにイジられて(笑)、その“遅れ”が逆に笑いを誘いまして。そういう、演者さんと生でコラボしている瞬間はとても楽しいですね。

番組ディレクターが「こういう事がやりたい!」と希望を言ってきた時に、そのイメージをどうビジュアルとして表現できるかを考えて答えを出すのが私たちの仕事です。難しい依頼がきても、様々なシステムを駆使して、演出の意図に合う形として出せた時は、とても達成感がありますし、自信につながりますね。

(2019年7月)

髙橋 康之さん

株式会社テレサイト 
CGディレクター

髙橋 康之さん

CGディレクター歴14年。
担当はスポーツ番組(サッカー、フィギュアスケートなど)、『SMAP×SMAP』など。

ー 「CGディレクター」の仕事内容を教えてください

髙橋

番組で打ち出したいテーマやイメージを視聴者に伝わりやすく見せるためのグラフィックを作る仕事です。番組のタイトルロゴやコーナータイトル、テロップなど、セット内のモニターに映るグラフィックを、専門のコンピューターとソフトを使って制作します。

CGアイディアコンテ

ーこれまでに担当した番組は?

髙橋

フジテレビで初めて携わったのは『SMAP×SMAP』で、最終回まで10年以上にわたって担当しました。1つの番組の中で歌、コント、クイズ、スポーツといろいろなジャンルのコーナーがあって大変でしたが、非常に勉強になりました。その後、他のバラエティー番組やドラマ、スポーツも担当するようになりました。
ここ数年はサッカーの番組のCGを作ることが多いです。企画段階から番組ディレクターと打ち合わせを重ねて、自分たちができる、やりたい表現を提案して一緒に作り上げていきます。ここ数年は毎年1回、Jリーグ・ルヴァンカップのオープニングVTR制作のために、選手の撮影に行ったりもします。撮影現場に行くのは、CG加工のための素材として問題ないかをチェックをするためでもありますが、これに関しては撮影の仕方なども提案しているので、非常にやりがいがあります。普段のデスクワークでは学べない現場での経験はとても貴重です。個人的にサッカーが大好きなので、選手に会えるというのも、楽しみの一つですね。

CG
キリンチャレンジカップCG

ージャンルによって、CGの使い方や目的も違ってきますか?

髙橋

そうですね。例えばスポーツ番組であればカッコよさ、“真剣勝負”感だったり、大会の熱さが伝わるように見せ方を工夫します。バラエティーなら「賑やかに、ポップに」。たまにバカバカしさを出したりもします。報道や情報番組は「シンプルに、わかりやすく」。ドラマの場合はその作品の世界観を打ち出すデザインや、実写で撮影したかのようなリアルな合成など。視聴者にはCGとはわからないカットも、実はたくさんあるんです。

ー例えば、バラエティーで作ったCGの例としては?

髙橋

思い出深いのは、少年合唱団のCG合成で、全員の顔がある有名タレントさんの顔になっている!というコントです。子供たちの顔の輪郭と髪形は生かして、タレントさんの顔を合成するのですが、同じ顔なのに、髪形や輪郭が違うだけで、子供に見えなかったり、そのタレントさんじゃなく見えてしまったりして、そのバランスが難しかったです。誰これ?みたいな(笑)。ほかには、歌っているアーティストを別の背景映像と合成したり、ゲームコーナーのCG全般のデザインをしたり。バラエティーでは割と自由に、いろんな作風で作れて、飽きることがなかったです。

ー見てほしい作品は?

髙橋

去年のサッカーロシアワールドカップのオープニングVTRでしょうか。世界各国のサポーターが皆でワールドカップを盛り上げる、というコンセプトのVTRです。実は撮影の前に、予定していた演者さんがNGになってしまって、どうしようか番組ディレクターと話し合う中で、子供たちに夢を与える大会でもあるから子供を出演させるのはどうか、とアイデアを出して採用してもらいました。CGスタッフも外国人サポーターに扮して出演しています。こういったエピソードも信頼関係あってのことだと思いますし、結果喜んでいただけたので、思い入れのある作品です。

ー今の職業に就いたきっかけは?

髙橋

小さい頃『機動戦士ガンダム』が好きで絵を描き始めて、小学生になるとファミコンの『スーパーマリオ』とか『ドラゴンクエスト』にハマってコンピューターやデザインの仕事に興味を持ち始めました。その後、ハリウッド映画のCGに魅了されて、「これからはコンピューターさえあればCGで何でも作れる時代だ」と思い、独学でソフトの勉強をしてCGの仕事に就くことができました。

髙橋 康之さん

ー仕事で喜びを感じるのはどのような時ですか?

髙橋

やはり、できたものを見てもらって、すごく良かったと褒めていただいた時です。デザインには正解がないので、悩む中で、こう表現するんだ、と自分のやり方を信じて進まないとできません。だから、それが他の人にも認められると、大変だった時でも「やって良かった」という思いの方が強くなりますね。
CGで番組をさらにいいものにできる、100パーセントの番組を120パーセントにすることに貢献できる、というのはCGデザインの魅力だと思います。

ーこれからの仕事のビジョンを聞かせてください。

髙橋

今の時代は、かつてのような高価な機材などなくても、誰でもデザインや編集ができるようにもなってきているので、我々がプロとして、テレビでCGの仕事をする意義をつくっていかなければ、という危機感はあります。新しい技術を日々勉強していくのはもちろん、技術も流行り廃りがあるので、それに頼りすぎない柔軟な発想で仕事をしていきたいです。テレビという括りにとらわれず。
でもその一方で、若い後輩たちの感性も大事にして、導いていくのもやるべきことだと思うんです。私には思いつかないような新鮮なアイデアを持っていることもありますし。
自分も常にセンスを磨いて、引き出しをたくさん持たないと、と思います。「この間みたいなのを作って」と言われた時に、同じ技を使うんじゃなくて、「こう来たか!」と言わせたい。相手の期待を超えるものを作っていきたいですね。

(2019年6月)