2013年02月16日 ザ・コンパスで放送
社会・公共

PC遠隔操作事件にみる
『犯罪捜査の光と陰』

《参考情報》
1:設問テーマの背景 (facts)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

警視庁は10日、パソコンの遠隔操作事件(PC遠隔操作事件)で、IT関連会社員 片山祐輔容疑者(30)を
ネット掲示板への書き込みで、イベント開催を妨害したとする、威力業務妨害の疑いで逮捕しました。

PC遠隔操作事件は、昨年6月から9月、大量殺人や爆破などの予告が掲示板サイトに書き込まれたり、
幼稚園にメールで送りつけられる事件が発生し、警視庁、大阪府警、神奈川県警、三重県警が男性4人を逮捕。
その後、10月に真犯人と名乗る者からの犯行声明メールによって、4人の誤認逮捕が発覚、警察庁長官が
謝罪することになりました。

さらに、今年1月1日、複数の報道機関などに真犯人を名乗るものから5つのクイズを読み解くと事件に関連する資料が
入手できるという内容のメールが送付されましたが、該当する場所(東京都奥多摩町の雲取山)からは
何も見つけられませんでした。
続く1月5日、真犯人を名乗るものから新たなメールが送付され、
その内容を読み解くと江ノ島の猫の首輪が答えとして浮かび上がり、同日、警察は首輪からチップを回収しました。

逮捕の決め手となったのは、防犯カメラの映像に、江ノ島で男が猫に首輪をつける前後の様子や、酷似した男が
東京都江東区に移動した状況が映っていたことでした。
サイバー空間ではない、実際の社会での行動から片山容疑者が割り出され、逮捕に繋がりました。

逮捕された片山容疑者は警視庁の取り調べに対し、「逮捕状に書かれたことは事実ではありません」と容疑を否認しています。


2:番組として (our aim)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

今回の事件は、いわゆるネット犯罪、サイバー空間での犯罪でしたが、容疑者逮捕の決め手になったのは、
実際の社会の防犯カメラに写ったことでした。
このことは、警察などによる犯罪捜査の2つの側面(光と影)を
映し出しているように思われます。

まず、防犯カメラ等による捜査から、逮捕に結びついたことは実際の社会での捜査力の強さを示したものとも言えます。
これは防犯カメラの映像が犯罪抑制に有効なことを改めて
示す一方で、日本の社会では、防犯カメラなどでの監視が非常に強くなっていることも改めて浮き彫りにするものです。
防犯カメラに関しては、プライバシー保護の観点からの批判があるほか、平成20年5月に京都府舞鶴市の女子高校生が殺害された事件では、防犯カメラの画像が立証の柱となったものの、昨年12月の大阪高裁の判決では、立証不十分として、一審の有罪判決から逆転無罪となり、被告は釈放されました。
この事件の裁判は検察が最高裁に上告し係争中です。

一方、サイバー空間での捜査では、逮捕に結びつかなかったことから、ネットを対象にした捜査の現時点での限界を
露呈したとも言えます。
また、捜査の過程で誤認逮捕が相次いだことも問題になりました。
スマートフォンの普及などにより、
ネット、サイバー空間はさらに日常化してゆくと考えられますが、ネット犯罪に対する捜査の在り方については、
多くの課題があるようです。

そこで、番組では、現在とこれからの犯罪捜査について、コンパス・オピニオンリーダーの皆さまからご意見をいただき、
番組ユーザー及び視聴者とともに議論しつつ、これからの犯罪捜査のあり方、課題を考える機会をつくりたく今回のテーマを
企画致しました。
ご意見をいただけますようお願い申し上げます。

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:今回の事件ではネット犯罪への捜査の限界を露呈したと言えますが、
この問題をどう考えますか?ご意見をお聞かせください。
Q2:(問1つづき)ネット犯罪への捜査の限界についてご意見をお聞かせください。
(コメント欄-文字数に制限はありません。)
Q3:今後、ネット犯罪に対する捜査を改善するためには、どうすればいいと思いますか。
問2で指摘された問題点も含め、お考えをお聞かせください。
Q4:防犯カメラなどによる監視が強化され、犯罪捜査で効果を上げています。
一方で、プライバシー保護の観点から監視強化については批判もあります。
こうした(防犯カメラの一般化による)社会の在り方について、どう思われますか?
その是非と、今後解消すべき課題を含め、お考えをお聞かせください。

オピニオンリーダーの回答

( 30件 )
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1. コメントする

安冨潔
慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)教授,弁護士
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
>一方、サイバー空間での捜査では、逮捕に結びつかなかったことから、ネットを対象にした捜査の現時点での限界を露呈したとも言えます。

今回の事件ではTorが用いられており,送信先の同定は不可能である。その意味で,サイバー空間での捜査がやり方によっては逮捕に結びつくと考えているとすれば,認識不足である。

なお,昨年の「誤認逮捕」については,威力業務妨害という刑法犯で逮捕したことから,担当部署が刑事部門であって,サイバー犯罪には十分な捜査態勢をもっていなかった。他方,いわゆるサイバー犯罪捜査は,生活安全部門が対処することから,当時は,警察内部での十分な連携が図られずに,逮捕にいたった。しかし,逮捕状を発付したのは,裁判官であり,また,一部の事件では,検察官が起訴したり,家裁送致の結果,保護観察になった。これらは,警察捜査だけに問題があるのではないことを示唆している。

今回も,威力業務妨害罪という刑法犯で逮捕しているので,サイバー犯罪の専門的知見を活用する技術支援がどこまで得られるかが今後の捜査の展開において重要となろう。
Q3. コメントする
サイバー犯罪の特性を考慮して,警察における総合的な捜査態勢の整備と,捜査員の教養を高めることが重要である。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
防犯カメラは,その利用目的によって,民間が設置するもの,警察が設置するものとに大別される。プライバシーという憲法上の権利・利益についても,無制約であるわけではない。犯罪の抑止・犯罪の捜査という警察権行使において,プライバシーについての一定の制約は正当化される。そこで,どこに設置するか,どのように運用するか,撮影したデータをどのように管理するかというった観点から,設置目的に照らした検討が必要となろう。
 
 
岩渕美克
日本大学法学部教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
 警察ばかりでなく、公的機関の情報化をはじめとする時代に即した変革がなされていない。統治システムに問題があるのであれば、見直す時期に来ているのではないか。
日本の公的組織は硬直し、既得権益の擁護が主であるため、組織の情報化や情報化に伴う対策が大きく遅れています。ネット選挙がようやく実現しそうなことはその最たるものです。その意味で、ネット犯罪に対する対策を政府は総合的に本格化しなくてはならないでしょう。
 たとえば、スポーツ界は体罰問題でにぎやかですが、これも旧式の肉体的苦痛ばかりが議論されています。メールや掲示板等での名誉棄損、いじめについても同様に議論する、よい機会であるにもかかわらず、運動部の昔ながらの体罰に限定されて議論されているかのようです。
 時代に即した対応ができず、後手後手に回っている印象を受けます。サイバーテロについても同様ですし、人工衛星についてもアメリカの助けを借りなくてはならない状態です。技術が世界有数なのにもかかわらず、です。政策面での対応が必要と思われます。それには、昔ながらの政治家や官僚、それを支えた有権者ではだめかもしれません。統治システム全般について考える時期に来ていると思います。もう過ぎているかもしれませんが。
Q3. コメントする
 過渡期の現象ではあると思われるが、想定される犯罪、それに使われそうなソフトなどのウオッチを常にできる体制を整える必要があります。しかしながら、PCにしろ、SNSにしろ展開が早いので、完全に追いつくことは無理でしょう。厳罰化することによって、一時的には犯罪が減るかもしれませんが、根本的な解決策は難しいと思います。
 政治の力で明るい日本をつくることしかないかもしれません。NYは景気がよくなってから、きれいになったと言われます。景気ですかね。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
 監視社会は、テクノロジ―の発達と表裏一体をなすものです。国際社会を見れば、日本が監視体制を嫌っても、諸外国が監視体制を強めています。北朝鮮の核実験などは、その成果であり、今更なくすわけにもいかないでしょう。その中での生活を余儀なくされているのですから、所与のものとして生活を送るように意識の変革も必要でしょう。
 
 
南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
誰でも匿名で好き勝手なことを書き込めて、それを多くの人が見ることができる。そんなネット社会の不備が問題であって、そちらの対策が追い付いていない、ということだと思う。
捜査の限界というより、ネット社会の不備というべきか。
誰が書いたかわからない掲示板で大騒ぎしている、という見方をすればどうだろう。
トイレの落書きであって、そこに殺人予告があれば見る人は少ないから問題なし。
ネットだと大量の人が見るから問題、と言うことであるのでそんなに多くの人が見れるものを誰だかわからない人が書き込めてしまう、ということろの問題だろうと思う。
それにしてもこういった
自分が誰だかわからない状況で何かをしでかす、こんなbehaviorが蔓延してしまう理由は卑怯で無責任な大人のせいだろう。「この組織では誰の責任か、絶対にわからないようなしくみになっている。自分で言った事にもやったことにもなーも責任を取らないでいい、みなが透明人間でいれるんだ」、的なモデル組織である、賊省、文部科学省や教育委員会が身を持って全国の児童、生徒に熱心に教育している「保身学」の賜物とも言える。
Q3. コメントする
書き込んだ人が誰だかはっきりと記録が残るシステムにすればいい。ただしそれを後で閲覧する側の行為もすべてしっかりと記録が残るようにすれば公平だ。
Q4. いいことだと思う
今後アベノミクスで公共事業の恩恵を被れなかった人たちや貧困層がより厳しい状況に追いやられ、格差が広がり、治安が悪化する。防犯カメラを随所に配備して徹底的に犯罪抑止に努めるべきだ。赤坂の料亭の入り口にもしっかりと配備し、公共事業の受注で国会議員が賄賂をもらうところもばっちりと記録してほしい。「秘書が勝手にやりましたのよーん!」と言い訳できないように。
 
 
伊東乾
作曲家・指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
米国のとりわけ軍やCIAなどを考えるとき、比較にならないほど幼稚な守りしかない日本の情報社会は、ネット犯罪者にとって天国のようなもの。限界など最初からあまりに明らかで言うべきことなどない。
米国のとりわけ軍やCIAなどを考えるとき、比較にならないほど幼稚な守りしかない日本の情報社会は、ネット犯罪者にとって天国のようなもの。限界など最初からあまりに明らかで言うべきことなどない。今回の犯人などはどうでもいい小物で、これをキーに予算など倍増してきちんとした対策を立てるというのであれば評価に値すると思うが、そもそもプロジェクト指導できる人材がいまの警察にどれだけいるのかが疑問だ。
Q3. コメントする
サイバーテロ対策と一体の徹底した防犯基礎研究と対策の実施。ネットに国境はない。グローバリゼーションの死角の一つで、日本は先進国内でもネット安全保障がそうとう手薄な国と認識されている。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
防犯カメラは今回の小物逮捕に一定の役割を果たしたが、ネット犯罪そのものへのセキュリティとしては王道でも側道でもなくほとんど無関係。監視カメラの是非以前に、サイバーセキュリティに関する丸腰フルチン状態をまず何とかしなさい、というのが言うべき事。
 
 
本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
 ネットは今後も発展し、身近な生活に入り込んでその利便性を発揮するだろう。当然種々の犯罪が発生し、知らないうちに自身が犯罪に巻き込まれる等の危険性も増大すると思われる。問題解決にはそれなりの対応(人材と予算等投入)をするという覚悟が必要。
 ネットは今後も発展し、身近な生活に入り込んでその利便性を発揮するだろう。当然種々の犯罪が発生し、知らないうちに自身が犯罪に巻き込まれる等の危険性も増大すると思われる。問題解決にはそれなりの対応(人材と予算等投入)をするという覚悟が必要。
Q3. コメントする
捜査にいかにプロの協力をえるかがポイント。民間と公的機関それぞれの力を最大限に発揮するために、プロの育成・処遇する体制作りが急務。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
 防犯と犯罪捜査という観点からは、カメラの存在は致し方ない面がある。しかし人権と民主主義を擁護する観点から、プライバシーが流出し悪用されるという危険性は、最大限の防止策を講じなければならない。防犯カメラ等のプライバシー流出対策を早急に国民的に議論すべき。
 
 
山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
遠隔操作ウイルス事件は、匿名ソフトをはじめネットソリューションの発展スピードに対し、捜査機関のガラパゴス化を露呈した。しかし、これは一捜査機関だけの問題ではない。海外が発信元とみられる中央省庁、衆参両院、防衛関連の企業等への相次ぐサイバー攻撃、重要機密情報漏えい。これは官民あげて国家としての危機管理がすでに時代遅れとなっていることの証左である。
Q3. コメントする
ネット犯罪対策として、第一は人材補強。有能なネット技能者を即時多数採用し、新たな角度のネットGメングループを発足させることが焦眉の急。
また、今回も容疑者浮上後、ウイルス保管罪適用を主張した警察当局と、犯罪構成要件が整わずとする検察当局との間で調整が難航し結果として威力業務妨害罪の適用となった。ことほど左様に、ネット犯罪に対する法令の不備も露呈している。よって第二は、国家の危機管理としても将来を見通したネット犯罪法を細分化し天網恢恢疎にして漏らさぬ体制作りが必要である。
第三は、ネット犯罪通報制度の拡充。ネット犯罪の可能性を予見、または目撃した場合に通報する義務を設けるなど、国民の協力体制を強化すること。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
監視社会が決して良いとは思わないが、現時点の状況下において犯罪抑制、犯人検挙のためにはやむを得ないと考える。ただし、その利活用等の運用方法については一定のモラルと個人尊厳的規制が必要である。
 
 
長田渚左
スポーツジャーナリスト
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
大変に無気味な感じがする
Q3. コメントする
ネット社会という今までにない環境の中で生きていることを実感した。
やはり犯罪環境そのものも変化しているので、その道のプロもしっかりブレーンに
していかなくてはならない。
後手後手に回らないようにしてほしい。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
(どちらかと言えばいいことだと思う/ちらかと言えば問題だと思うの両方を選択したい。)
防犯カメラも抑止力になると信じたいが、常にどこかで視られているというのは良い感じではない
 
 
潮匡人
国際安全保障学者,拓殖大学客員教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
現実社会での古典的なアナログ犯罪と異なり、そもそも匿名性が高く、証拠が残りにくい。グローバルなサイバー空間が舞台となるため、警察署の所轄はもとより、警視庁(東京都)や道府県警の管轄、さらには刑法の国内犯・国外犯の区分も、時代遅れの感がある。加えて被害が瞬時に拡大するため、伝統的な捜査手法では追いつかない。
Q3. コメントする
上記特性を踏まえ、最低でも国家単位で対処する必要がある。国家的な専門機関を設置し、必要な法整備を図るべき。国際社会との連携強化も必要。先日の一般教書演説で敷衍されたように、オバマ大統領はサイバーテロ対策を強化する大統領令に署名した。他方、日本にはアメリカの国土安全保障省に相当する省庁すらない。
Q4. いいことだと思う
もはや、水も安全もタダではない。そもそも自由は代償を伴う。監視体制の強化はやむを得ない。ただし防犯カメラの映像など、得られた情報は、憲法上の要請を最大限、尊重して取り扱われるべき。かつての「年金記録、不正閲覧」に類した不祥事をけっして起こしてはならない。
 
 
有馬晴海
政治評論家
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
できる範囲でやるしかないでしょう。犯罪者は逮捕されない様な手口を考えてくるのでしょうが、
いたちごっこであることはしょうがないことでしょう。
政府のIT設備の入札に於いても、妥当な落札金額を出すために専門家を雇うことになる。
だが、更に上をいく設備ができた場合に何処までのグレイドが必要なのかもエスカレートすると、
かつての建設工事の設計者、技術者レベルでは追い付かない奥の深い技術が必要になるのと同じだろうが、
敵のテクニックを熟知できるだけの専門家を雇えるかどうかだ。
専門家なら民間にいても受けた方がいいと考えるから、公務員が雇えるレベルは限界があろう。
Q3. コメントする
限界があるだろうが、犯罪者より上をいく専門家を雇うしかない。いたちごっこだろうが、追いかけていくしかない。
Q4. 問題だと思う
いいとは思わないが、犯罪の防止や犯罪者の逮捕につながるのであれば否定できるものではない。
暴力指導と同じだが、問題が解決するのであれば、やるしかないのではないか。
プライバシーも大切だが、犯罪に巻き込まれた場合は、どうにかして解決してほしい身の潔白を晴らして欲しいという思いは私だけではないと考えると、そのために多少の不都合があっても、必要ならやるべきだ。
 
 
浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
IT専門家の起用は質量ともに増強する必要があるだろう。
また、IT戦略については、他の部署との連携も必要であり、その中でネット犯罪に対するリスクについても対応していくべきである。
当然のことながら、IT専門技術者の起用は質量ともに増強する必要があるだろう。

また、IT戦略については、他の部署との連携も必要であり、その中でネット犯罪に対するリスクについても対応していくべきである。

IT環境がグローバル化していることから、国内だけでの対応も限界があるので、海外との連携を可能にするための国際的な協定も充実させていく必要がある。

もっとも、今回のようなケースもあるので、伝統的かつ合理的な捜査手法の高度化・強化が必要であることに変わりはなく、総合的な取り組みが必要である。また、後になってから法的に維持できなくなるようなことのないように、法的なバックアップも向上が求められる。
Q3. コメントする
IT専門技術者を活用するため、世界的な連携も重要。国際的な最高水準の技術を結集して対応する体制が期待される。

IT戦略においては、民間部門との連携も考えられるが、そこで働く人材の育成、待遇の改善も求められるだろう。ITに関する人材育成においては、単なる技術だけではなく、リーガルマインドや倫理観をも涵養することも必要である。

伝統的かつ合理的な捜査手法の高度化・強化に関連して、おとり捜査や司法取引の是非や要件についても検討する必要がある。それを実現するためには、刑事捜査の可視化や刑事弁護人のあり方についての国民全体のリーガルマインドの向上も不可欠だと考えられる。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
プライバシーを絶対化することはできず、総合的なバランスの中で考える必要がある。

国民の安全・安心の確保が大切なのであり、プライバシーを理由に人命が危うくされるというのでは本末転倒だろう。そもそも、守られるべきプライバシーについての範囲が必要以上に拡大して、個人がバラバラに孤立していくような状況は決して望ましいことではない。

少なくとも公的な生活分野においては、それなりの透明性が公正な社会のために有用だということも踏まえると、防犯カメラなどについて、適切な場所において設けられることに反対する合理的な理由はない。

ただ、それらの情報管理については厳格にするとともに、その取扱者の職務規律をしっかりと維持することが不可欠でもある。
 
 
武貞秀士
拓殖大学大学院特任教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
監視カメラは、犯罪捜査の能力を高めてきたし、犯罪に対する抑止力にもなっている。
今回の事件でネット犯罪への捜査の限界があったのは確かだが、社会は捜査側に点が辛すぎると思う。子供のころからパソコンに親しみ、ネット犯罪のノウハウを磨いてきた犯罪者が、毎日新しい手口の開発に没頭し、新手の犯罪を考案してゆく。それに対処する警察の捜査はいつも守勢に回り、捜査は後手に回ってしまう。裏をかかれるということも発生する。知能犯を相手に捜査し犯人を逮捕するために、常に知識を身につけ、新しい手法についてアンテナを張っておかなければならない。監視カメラを増やせば捜査の効率は高くなるが、人権問題だという批判が出てくる。ネット犯罪捜査には常に限界があると考えておかねばならない。
Q3. コメントする
 第一に、ネット犯罪専従班の人数を増員する。ネット犯罪の手口が高度化するのに対処するため、捜査員の研修を十分に実施する。そのための予算を確保する。
 第二に、犯罪者が更生したあと、そのIT技能を国家のため、国際社会のため、地域社会のために発揮する場を提供する。ネット犯罪者には、更生してもらって、優秀なネット捜査員になってもらうのである。
 第三に、監視カメラの数を増やす。人権問題だという声があるが、監視カメラが増えれば人権が侵害されるという説明はおかしい。そのデータの保管、活用の仕方が問題なのだ。中国の空港に到着したら空港ビルの天井を見上げていただきたい。大型の監視カメラが連なっている風景に衝撃を受けること間違いない。韓国のショッピング街、地下鉄、バスの車内、大学の教室内の監視カメラの数には圧倒されてしまう。ロンドンの街の監視カメラは、瞬時にデータを解析して過去の犯罪者の記録と照合しながら不審者の追跡を開始し、犯罪を未然に防いでいる。安全の確保のための高性能のカメラを活用してデータを迅速に処理するシステムは、確実にロンドン市民の安全を守っている。世界と比較すると日本社会はこの分野は遅れていると思う。
 
Q4. いいことだと思う
 プライバシー保護は大事だ。人権擁護の観点からプライバシーを守ることには、いままで以上に注意を払いながら、犯罪捜査と犯罪に対する抑止力のために、防犯カメラ増設が必要になっている。
 
 
山田秀雄
弁護士
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
犯罪の科学的捜査の問題は今回のようなネット犯罪について捜査能力の限界を露呈した。これはいつの時代にも起こりうることで巧妙な新種の犯罪に対して捜査側が犯人逮捕できずに苦悩した歴史的事実がある。とはいえネット犯罪の被害は深刻で放置しておくことはできない。民間の最先端の技術を積極的に導入して間接証拠ではなく直接証拠を獲得する体制を作ることが急務である。  
 なお今回の報道で犯人特定したうえでプライバシーや実名を出し週刊誌に至っては犯人の父親の職業等も開示している。やや過剰ではないかと危惧感を抱いた。本人は否認しているし過去に誤認逮捕を犯していることを踏まえると相当に慎重な報道が望まれるのではないだろうか。
Q3. コメントする
サイバー犯罪についての対策が我が国は遅れていると思う。民間企業や個人の専門家の方が優れた技術を有しているのではないか。まずは警察、検察が捜査能力を高めることが前提である。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
犯罪捜査をつき進めていくと予防が重要になってくる。社会防衛を徹底すれば町中に監視カメラを設置することが望ましいことになる。しかしそれではプライバシーをはじめとする人権の問題が無視されることになる。つまり社会防衛と個人の人権の接点をどこに求めるかが問題の本質である。個人的には監視国家に傾くことは抵抗がある。防犯カメラをどこまでどの範囲におけるかはこの利益考量を精密に行う必要がある。
 
 
渋谷和宏
作家・経済ジャーナリスト
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
遠隔操作ウイルスの登場によってIPアドレス頼みの捜査は限界に陥った。私たちがサイバー犯罪や冤罪被害に遭うリスクは高まっている。
PC遠隔操作事件で発覚した4人の誤認逮捕は、いわばインターネット上の番地であるIPアドレスの特定を決め手とする従来の捜査が、遠隔操作ウイルスの登場によって成り立たなくなってしまった事実を象徴するものでした。今回は容疑者の現実空間での行動が手がかりとなり逮捕に至りましたが、もし彼がサイバー空間にじっと潜んでいたらその特定は困難だったはずです。遠隔操作ウイルスに対しては依然無力、とまでは言えなくても司法警察の強みを発揮できない状況は続いています。
 情報セキュリティ会社のシマンテックによれば、昨年1年間に作られたウイルスは約4億種類で、その6~7割が遠隔操作機能を持っているとのことです。まだ記憶に新しい、インターネットバンキングを悪用した不正送金事件にもこの種のウイルスが悪用されました。
 このままでは私たちがサイバー犯罪や冤罪被害に遭うリスクは高まりこそすれ、減少することはありません。
Q3. コメントする
 警察庁がこの1月に策定した「緊急プログラム」にも盛り込まれているとおり、民間企業との人材・情報交流など民間の英知の活用が不可欠です。そのためには優れた民間の人材を登用する人事制度の構築や、閉鎖的な体質・カルチャーの改善を警視庁・警察庁は急ぐべきでしょう。海外の組織・人材との連携についても同様の取り組みが組織的に必要です。
 サイバー空間はだれにとっても開かれており、その開放性がもたらす負の側面の究極の現われがサイバー犯罪だと言えます。
 だとすれば、それに対峙する捜査当局も、広くサイバー空間から人材や情報を集め、開放性がもたらす正の効用を最大点に取り入れるしかありません。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
 防犯カメラなどによる監視強化がどこまで犯罪を抑止し得るのか、また容疑者逮捕にどこまで資するのか、定量調査も含めた公平・客観的な知見がないままに、なし崩し的に防犯カメラ設置が一般化するのはプライバシー保護や社会的コストの面から見て問題ではないでしょうか。
 その効果と副作用をある程度まで明確にして、議論の俎上にのせる――そうした国民的・社会的なプロセスがあってしかるべきだと思います。
 
 
岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
今回の事件の、報道の多さに注目しました。
PCの遠隔操作という新しい形のネット犯罪だったということとともに、誤認逮捕があったことも大きいでしょうし、犯人からのネット上の問いかけを読み解かなければならなかったこと、また、そうはいってもネット上だけでは犯人の特定が難しかったことなど色々あると思われます。
犯罪も、ネットと実際の社会をまたがったものになりつつあるのかもしれません。
今回のように、ネット上での犯罪予告、あるいは非常に巧妙にネット上で特定の個人を攻撃して、その人を自殺に追い込んでいくような場合、ネットの意図的な操作で、捜査を撹乱するなど、ちょっと考えてもいくらでも浮かんできます。
それでなくても、昨今の犯罪は、かつての犯罪捜査には最優先事項だった「動機」がなかったりして(誰でもいいからやってやろうと思った)難しくなっているのに、捜査はさらに大変になりそうです。
今回の捜査も、最後は、監視カメラの映像分析や、犯人の自己顕示欲という性格分析が決め手になったとか。ゆえに、ネット捜査と従来型の捜査の両面でいくしかないように思います。
Q3. コメントを控える
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
いいこととは思いませんが、仕方がないと考えます。
防犯監視カメラの設置が、犯罪の抑止になるかもしれませんし。
 
 
小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
ネットは関係ない
常に捜査には限界があり、うまく行くときもうまく行かないときもある。

ネットが特別ではない。

したがって、何ら新しい事件ではない。
Q3. コメントする
ネットの有識者を警察内に増やすこと。それだけ。
Q4. いいことだと思う
犯罪防止はプライバシーに優先する。
 
 
中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
サイバー犯罪は今後、巧妙化していく。対処するには治安当局内部にサイバー犯罪専門家を配置することが必要である。
サイバー犯罪に対処するには治安当局内部にその分野の専門家を配置しなければならない。そうでないと、今回のようなケースに対応できない。また、今後、サイバーテロも含めて、犯罪の手口が巧妙化していくと考えられる。外国の治安当局との連携強化を図ることも必要だろう。
Q3. コメントする
サイバー犯罪専門のプロフェッショナルを治安当局内部に配置する。
Q4. いいことだと思う
犯罪を未然に防ぐには防犯カメラの設置は不可欠である。たとえプライバシーが少々侵害されたとしても、防犯のためには致し方ない。
 
 
松野良一
中央大学総合政策学部教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
警察は、現場百遍、地取り、聞き込みと、現実空間での地道な捜査を主してきた。しかし、仮想空間では、その本来の捜査方法が有効に働かない。デジタルは、1か0であるため、捜査員も本来の力を発揮しようがない。

今回は、劇場型犯罪でもあり、当初、警察にも焦りがあったのではないか。サーバー捜査技術の乏しさや思いこみなどで、誤認逮捕や偽りの供述をさせてしまうなど、捜査のまずい面が露呈された。

そもそも、サイバー系は、民間企業の方が進んでいる。このため、警察の捜査は、現実空間では進んでいても、仮想空間が関係する事件では、後手後手に回っている。

サイバー系の犯罪は、どこにいても実行が可能である。都道府県の各警察が、ばらばらで捜査して、ばらばらで資料を押収し、ばらばらで逮捕していれば、捜査による冤罪被害者が再び発生する可能性がある。警察庁が中心となり、技術と情報を集約し、サイバー捜査のノウハウを蓄積していく必要がある。

サイバー系の犯罪は、実行犯の痕跡が消されることがあり、物証も乏しく、立証していくことが難しい面がある。本人が否認した場合、公判維持ができるのかどうか、多くの課題が出てきている。今回の事件も、冷静に見守りたい。
Q3. コメントする
警察のサイバー系の操作能力を、技術、人員ともに充実させる必要はあると思うが、最も大事なことは、市民やユーザーからの協力を大事にすることだろう。それに、対応できる体制を整備すべき。いろんな苦情や情報を警察に寄せても、対応してくれないという声を聞く。

民間の技術者との協力体制を作るべき。そうしなければ、いつまでも後手後手に回る。さらに、デジタル時代には、警察の中の特殊なセクションだけが対応するのではなく、全警察職員が、サイバー系の知識を習得しておく必要がある。警察内部の教育や研修も必要。

人間は、仮想空間だけでは生きていけない。必ず現実空間に姿を現す。両方の空間における捜査の連携が必要である。警察内部の組織の壁を取り払って、伝統的なアナログ系捜査とデジタル系捜査の連携、関係部署の情報交換を、強化するべきだ。

都道府県別の捜査体制は、サイバー系では通用しない。都道府県の壁、さらには国境の壁を越えた捜査協力、情報交換、技術向上が必要となる。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
防犯カメラに録画された映像に関する捜査は、令状に基づき、淡々と行われるべきで、けっして権力の乱用があってはならない。

犯罪捜査で効果を上げていることは評価できる。しかし、公共の利益を強調することで、プライバシーへの無制限の介入が許されるとなれば、大きな人権侵害になる。

官民どちらにおいても、録画データの濫用や漏洩の可能性があり、憂慮される。録画データの管理や取り扱いに関する規則については、まだまだ不十分で不整備。

防犯カメラの設置については、きちんと「防犯カメラが監視してます」「防犯カメラが録画しています」などの表示をすることが本来あるべき姿(欧米では表示が義務付けられている国もある)。そちらの方が、犯罪の抑止効果があがる。大半の人は、犯罪と無関係の人であり、みだりに映像を記録されない権利もあるのではないか。
 
 
朴斗鎮
コリア国際研究所所長
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
今回の犯人検挙は、ネット捜査の技術向上というよりも犯人の「ミス」によるところが大である。また犯人に前科があったことから、猫好きの性癖からの割り出しや防犯カメラの映像との照合などが容易だった点も検挙につながったといえる。
今回の「幸運」を無駄にしないためにもネット捜査技術の画期的向上を急いでもらいたい。今後ネット選挙の解禁も予定されており一日も早い体制の整備が求められる。
選挙と関連して言えば、候補者に対する匿名での言われなき中傷誹謗も多発することが予想される。現在においてもそうした誹謗中傷で名誉を毀損されるだけでなく多大な精神的、物理的苦痛を受けている人たちがいるが、捜査が困難なためほとんどの人が泣き寝入り状態となっている。
Q3. コメントする
ネット犯罪への対応は、警察だけの体制では対応しきれないところがあると思われる。ネットに精通する技術者や会社との提携が急務ではなかろうか。また警察をはじめとした司法関係者の採用においてもネット技術分野の採用枠を広げ優秀な人材を早急に確保する必要がある。
法整備も急ぐ必要がある。たとえば言論の自由やプライバシーを盾に、発信人や発信サーバーの開示を拒否するケースも頻繁に見られるが、明らかに法に触れている場合は、強制捜査を行なう法整備も必要だと思われる。徐々に整備されつつはあるが、ネット犯罪を取り締まる法律はまだまだ立ち遅れている。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
犯罪防止など公共の利益を守る上で、ある程度個人のプライバシーなどが犯されるのは、安全に対する「経費」と考えて甘受する必要があると思われる。ただその運用においては悪用できないシステムと法の整備、運用側の徹底した倫理観の向上が必要だ。
 
 
石川和男
社会保障経済研究所代表
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
ネット犯罪が、ネットに関する知識や技術を駆使して行われるものだと考えると、捜査当局においては、犯罪者たちと同等又はそれ以上のネット知識・技術を備えておくことが最低限必要な態勢となるだろう。我が国の警察機構がまだその域に達していないのか、それとも、達してはいるが犯罪者たちの“進歩”の方が常に先んじてしまうのか、様々な事情が想定される。いわゆる、“いたちごっこ”なのかもしれない。
Q3. コメントする
警察当局として日進月歩のネット知識・技術を持つ人材を育成することが考えられるところだが、それだとコスト的でも時間的にも、犯罪者たちに追従できない可能性があると指摘される。そうであれば、警察当局としては、人材を自ら育成するのではなく、既に数多いると思われるハッカーなど高度なネット知識・技術を持つ人たちの能力を背局的に活用していくべきであろう。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
防犯カメラ等による監視強化については、確かに個々人のプライバシー保護云々の問題はないとは言えない。しかし、防犯という視点で考えれば、監視強化によるメリット・デメリットを比較衡量し、デメリットの克服策を同時に施しながら、最終的には犯罪抑止の効果を重要視すべきであると考える。警察当局に監視される機会が多くなることは気持ちの良いものではないが、防犯・犯罪抑止のためには、一国民として、それも仕方ないと思う。 
 
 
稲増龍夫
法政大学教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
そもそも限界というほど、対策を講じてこなかったので、これを機に本格的にサイバー犯罪に対する施策を考える必要性を自覚せざるを得ないだろう。今までのように、過去の犯罪パターンから推理するデータ蓄積型の捜査手法ではなく、起こりうる未知の犯罪を予見しながら、先取り的に犯罪抑止を模索するやり方を導入すべきである。
Q3. コメントする
何より、ネットに強い人材を内部に育てるか、外部から迎えるかして、まさに、過去に例がないネット犯罪を構想し、自らそれに対する対策を構築するなどの、大胆な犯罪先取り捜査を展開すべきである。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
プライバシーと利便性のどちらを取るかだが、現代社会の諸状況を勘案すると、利便性の方がやや分があるだろう。個人の検索ワードが残ることがわかっても、われわれはGoogleの窓に検索キーワードを打ち込む。それによって得られる情報の価値が高いからである。同様に、防犯カメラによる犯罪抑止効果は、万が一のプライバシー侵害のリスクより意味があるなら、社会的コスト的には、防犯カメラを選ぶだろう。
おそらく、ポイントは、防犯カメラで得た個人情報をどう利用し、管理していくかで、ここに対する信頼性は、時の政府に対する信頼度に比例するだろう。
 
 
細川昌彦
中部大学教授
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
技術上の限界(プライバシー保護のための技術進歩に捜査現場が追いついていない)と法制度上の限界(ネット犯罪の捜査に通信傍受ができない。ログの保存期間が短い)がある。その結果、「リアルの世界」での従来の捜査手法が必要になっている。
 「技術上の限界」と「法制度上の限界」がある。その結果、「ネットの世界」だけでは捜査は難しく、今回のように従来の捜査手法が通用する「リアルの世界」での対応が必要になっている。

① 技術論について

一言で言えば、プライバシー保護のための技術進歩に捜査現場が追いついていない。
特に最近は世界中に多数存在するサーバーをリレーしていくことによってネット上での匿名化する技術が高度に進化している。その結果、発信者を特定化することは不可能に近い。しかもそのためのソフトは無償で公開され、だれでも利用可能で、犯罪への悪用は容易。

② 法制度論について

犯罪捜査にための通信傍受が、憲法上の権利である「通信の秘密」を侵害することのないよう、法律で麻薬捜査、組織的犯罪など極めて限定されている。その結果、ネット犯罪の捜査に通信傍受は事実上できないのが日本の現状。米国では国家安全保障局(NSA)が海外の電子メールの盗聴などを合法的に行っている。
また通信会社のアクセス記録であるログの保存期間が3ヶ月程度で、捜査に支障をきたしている。EUではプロバイダーに対してもう少し長期の一定期間の保存を義務付けているようだ。
Q3. コメントする
①技術的限界については、各国ともに悩ましい問題で、解は今のところ見い出せないでいる。

②法制度論については、現在の法律は14年前のもので、今日のネット犯罪を想定していない。憲法の権利侵害に当たらないよう細心の注意は必要ではあるが、犯罪捜査のための通信傍受ができる対象にネット犯罪も加えるべきではないか。

③ネットには国境がない。従って捜査も他国との連携、協力が不可欠。そのためにも欧米並みの法制度の整備は必要。

④捜査当局だけでは技術進歩への対応は無理。民間の専門家の協力、連携が必要。その際、協力を得るために捜査情報をどこまで出すかのルール整備を事前にきちっとしておく必要がある。

⑤いずれにしても、ネットの世界だけでは限界は払拭できないので、従来の「人に焦点を当てた捜査手法」で容疑者の些細なミスを丹念に捜し出すことも重視すべき。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
 かつて警察に勤務していた経験から言えば、地域コミュニティが崩壊しつつある社会の構造変化が捜査手法の変革を迫っていると言える。人間関係が希薄になり、かつてのような聞き込み、目撃情報を得にくくなっている。その結果、かつてあった「周囲の人の目」を「機械の目」で肩代わりさせる必要がある。
 
昨年の元オウム真理教幹部の逮捕など、防犯カメラが犯罪捜査に効果を発揮した事例が相次いでいる。画質、録画時間など性能など技術進歩も著しい。

世界の監視カメラ大国は爆弾テロのあった英国だが、それに比べれば日本は2桁少ないレベルでまだまだ十分とは言えない。
プライバシー侵害のリスクから法規制すべしとの意見も一部ではあるようだが、今の国民の意識は「プライバシーからの抵抗感よりも安心感」であろう。

 ただしプライバシー保護の観点から、目的外に使用されないよう、運用上の一定のルール作りは必要。例えば、場所によっては、「設置者がむやみに見ることのないよう、画像を暗号化して、住民などの合意のうえで専用ソフトを使って見る」といった運用ルールが今後整備されていくことが望ましい。
 
 
竹田圭吾
国際ジャーナリスト
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
今回の事件が「ネット犯罪への捜査の限界を露呈した」と言えるかどうかは、まだ何とも言えない部分があると思います。今回判明しているのは、「少なくとも事件の発生から監視カメラで容疑者が割り出されたまでの期間では、ネットでの行為について挙証することができなかった」ということまでと思います。
 トーアを使った犯罪の捜査が困難なのはおそらく日本の警察に限らないわけで、それを防ぐためにアメリカなどのように情報がネットに入っていく段階から監視追跡可能なシステムをはめ込んでいくという選択肢もありますが、それは「警察」による犯罪「捜査」とは別な次元になってくると思います(詳しくは下記)。
Q3. コメントする
1: サイバー犯罪の進化と捜査体制の強化は「いたちごっこ」の一言で片付けられることが多いですが、具体的に検討・議論すべきポイントはさしあたり4つあると思います。
 まず、警察の体制をどう強化というか、調整していくべきか。発生件数の増加、犯罪内容の多様化、悪質化を考えれば強化は必要でしょうが、報道や警察白書等で確認するかぎり現状でも組織制度的、人員はそれなりに拡充しているようであり、予算のバランスや費用対効果から考えてやみくもに水平的に組織を広げていくのもどうかと思われる。対応組織や人員の「質」を基準として優先する、例えば都道府県警レベルのサイバーポリスを拡充するのではなく、ナショナルセンターとして設置されている警察庁情報通信局情報技術解析課を後方支援ポジションから格上げし、地域・部署横断的にサイバー犯罪に対応する専門組織にするような発想があってもよいのではないか。今後、防犯面でも捜査面でも対策のカギとなっていくであろうデジタルフォレンジックを同課が担当していることを考えても、そうした垂直的な制度改変も有効ではないかと思う。

 2点目は、上述したように捜査当局の対応が物理的、予算的な制約があるなかで、民間とどのように、どの程度まで協力していくか。情報管理の面から連携が難しい点が指摘されているが、データやスキルの蓄積は民間のほうが広範に行われているはずで、それを活用することが警察予算の効率運用(税金の節約)に資するのであれば、守秘義務契約を結んだ上で連携を進めていくことに世の中の理解も得られるのではないかと思う(警察のほうがよほどデータの管理が心配だ、という意見はとりあえず置くとして)。

 3点目は、サイバー捜査についての法的な整備。「できること」と「できないこと」がさほど明確にはなっていない中で、検挙率が低いのは警察のせいだ、みたいな評価がされるのはフェアとは言いがたい面もある。

 4点目は、捜査権限の強化をどの程度まで許容するかという市民感覚的なしきい値のようなものを確認するプロセスが必要ではないかということ。アメリカやヨーロッパの国々のように原理主義組織などのテロの脅威が顕在化しているのとは状況が異なるので、正直言って今回のような威力業務妨害のような犯罪を契機にネット犯罪の捜査がどうとか騒ぎになるのは「ちょっと違うんじゃないか」という感覚がぬぐえない。
それを大々的に報道するメディアが世論をミスリードして、「こういう犯罪がサイバー犯罪の中で最も脅威なんだ」という誤った印象を植え付けかねないと案じてしまう。日本の実情からすればむしろ(あまり表に出ない、しかし表に出たケースだけでも大変な問題が生じている)企業をターゲットにしたサイバー犯罪の対策を強化したほうが公益にプラスになるのでは、という見方ももちろんできると思います。

 いずれにしても、今回の遠隔操作事件では警察が自己弁護的に容疑者を「晒した」ように見え、それは問題視すべきことと思うが、サイバー犯罪の捜査、摘発を行う上で、技術的、制度的、組織的、経済的、法律的な問題のそれぞれ何が障害になっているかをまず整理して、それらをどう調整していくかの議論を警察組織、立法府とメディア、そしてセキュリティーの専門家を交えた中で行っていくことがまず必要ではないかと思います。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
監視カメラの普及については犯罪捜査(抑止はともかく)に貢献していることは確実であり、
同時にプライバシー的な問題をはらんでいるのも明白であり、純粋にトレードオフの関係なので、
単純にいいとも問題であるとも言えないと思います。
 プライバシーの問題で言えば、今後、監視カメラよりさらに問題になるであろうことは、
いわゆる「ビッグデータ」の取り扱い。デジタルフォレンジックのさらなる技術的進化、
ICカードや電子マネーなど個人情報の標準装備化、スマートフォンの爆発的な普及拡大と
いった状況を背景に、「誰が、いつ、どこで、何をしたか」という位置情報と行動履歴が
すでに個人単位で収集され、蓄積されて始めていると言われています。
そこに含まれる情報は、監視カメラのように、外形的な画像映像情報として単に
「誰がそこにいたか」を確認するというレベルではなく、しかも将来的にマイナンバー制度の
導入や、医療用に遺伝子情報がカードに含有されるようになったりすれば、スマホに蓄積される
ログと合わせて個人のすべてが犯罪者にも、警察などにも把握され得る状況が現出する可能性も
否定できません。
プライバシーのことを言うなら、そちらの心配をしたほうがよいのでは、と思います。
 
 
結城未来
灯りナビゲーター/新潟大学非常勤講師
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
ネットの世界に浸り、泳ぎ回ってきたウェブ界のプロに、
どちらかというと足を使った現実的な犯罪に取り組んできた俗世のプロが
これまで使ってきた武器で戦いを挑むには限界があるように思います。
Q3. コメントする
専門のネット対策室を警察内に作るのはもちろん、 
外部の優秀なプロの力を借りながら動くなど、
徹底した取り組みが大切だと思います。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
もろ刃のやえ刃(良いところもあれば、落とし穴もある)

今や、防犯カメラ導入先進国として成果をあげているイギリスでも、
当初はプライバシー侵害の問題が勃発していました。
しかし、今の日本では、それ以前に優先して考えなければならない課題が
山積しているはずです。
 たとえば、スイカなどの電子マネー。
 防犯カメラは、使い方によってはプライバシー保護の問題が発生します。
しかし、こちらは「警察」という基本的に機密性の徹底している組織が
管理し介入しやすいテリトリーです。

 ところがその一方で、スイカなどの電子マネーには 買い物や行動パターンなどの
個人情報があふれています。
 それなのに取り扱う人種はさまざま。
 ときには個人情報保護などについて教育を受けていなりいアルバイトなども
気軽に扱っているのが電子マネーなのです。
 つまり、情報を扱う側が機密性の保持を徹底し、
管理システムをしっかりとしない限り、
犯罪の可能性という爆弾を抱えているものともいえます。
 
 今回のような事件で、防犯カメラに特化してプライバシー保護云々を
考えるよりも、その他の危険性を見直すことが大切なのではないでしょうか?
 
 
クロサカタツヤ
株式会社 企 代表取締役/ 総務省情報通信政策研究所コンサルティングフェロー
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
限界はまだ見えず、闇は深まるばかり
正直に申し上げて、現在の被疑者が本当に真犯人なのか、まだ確信を持てていません。

実際、その後の報道で漏れ伝わる話は、現在の被疑者を真犯人とみなすには、杜撰なものです。今回の事件の高度な手口や意図を考えると、真犯人がそれらのミスを本当に犯すのか、疑わしいと思います。これは捜査関係者も同じ印象ではないでしょうか。

もしこれで、現在の被疑者が起訴された直後、あるいは判決がでた直後に、もう一度同じような手口の犯行が始まったとしたら、これは警察当局はもちろん、社会全体にとって悪夢というより他にありません。

ネット犯罪への捜査の限界というのが、「犯罪実態と捜査手法のギャップ」を正しく認識した、ということを意味するのであれば、まだその限界は見えていないような気がします。つまり、まだまだギャップは大きく、それは日々大きく複雑化している、と考えるべきでしょう。
Q3. コメントする
おそらく、専門の法体系、それに基づく捜査手法の確立、それを正当化するための国民的合意が必要でしょう。

たとえばクルマの運転には道路交通法、金融取引には金融商品取引法が、それぞれあります。それぞれ独自の構造を持つ対象において起きうる事件・事故に対し、個別の価値観をもって判断することが必要であり、また違法行為についてもそれぞれに適応した形での捜査手法が必要であることから、このように細分化され、それぞれ運営されています。

ネットに関しても、これだけ国民の情報インフラとして普及した一方、特に日本においては、社会の中での位置づけは定まらないまま、ここまで来ました。しかし今回の事件がいみじくも示しているように、もはやそうした状態は限界を迎えています。

ただ、実空間との対比で「ネットが特殊だ」という認識を前提にしたら、おそらくそうした法治の整備は、実効性のないものになるでしょう。ネットは実空間を投影しつつある現状を踏まえつつ、ネットが実空間とは異なる構造を有しており、それゆえに独自の体系が必要だと思います。

捜査手法はあくまで〈手段〉であり、まずは社会におけるネットの位置づけという〈目的〉を定めなければ、本末転倒になると思います。

黎明期からネットに触れてきた人間としては、ある種の自由な解放感がネットの活力であったことも理解はしており、私自身も個人的にはこうした議論に複雑な感情を抱いてはいます。しかし、ネットがこの先、さらに社会の中で有用な存在として能力を発揮するために、そうした基本的な整備は不可欠です。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
都市生活は、多くの人が集団で生活を行うことによって、匿名性を得ることに、魅力の一つがあります。よく「都会の森」という言い方をしますが、人間同士の密結合でコミュニティが形成されている地方部に比べ、人混みに紛れやすい、ということです。

一方で、都市生活における匿名性を、悪意を以て使う人が増えると、犯罪の温床になります。それゆえに「都会は怖いところだ」という物言いも成立します。おそらくこのトレードオフの間で、監視カメラの是非は問われるところでしょう。

犯罪の抑止力となったり、あるいは誤認逮捕や冤罪を防ぐという物証の確立という観点もあり、監視カメラの普及は、社会にとって一定程度は一定程度の利益になると思います。従って、私自身はそのすべてを否定するものではありません。

ただ、そもそも都市に暮らすということは、そうした匿名性の獲得と、それに伴うリスクを引き受けることを、前提としているはずです。そう考えると、監視カメラが街中の至るところに設置されている状態は、必ずしも受け容れられるものではありません。

またプライバシーというのは、従来は「放っておかれる権利」であったり「自分の権利に対する自己決定の権利」として、従来は理解されてきました。しかし最近は欧州委員会などから「忘却される権利」という新しい概念が提起されています。

これは、情報システムの高度化に伴い、システムの中に格納される「プライバシーに関する情報」の長期保存が、新たなプライバシー侵害を生み出すことをいかに抑止するか、という議論です。具体的には、システムに保存されている情報は、一定期間を過ぎたら、問答無用で削除することを求める、というようなものです。

監視カメラの広がりがある程度やむを得ないのだとしたら、そうした運用面でのプライバシーの配慮や、その運用実態の透明性の確保が、同時に必要だと思います。
 
 
村沢義久
合同会社Xパワー代表/ 環境経営コンサルタント
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
残念ながら、なりすまし、遠隔操作を含むサイバー犯罪は増加する。まずは、捜査当局の姿勢をただし、能力アップを図ること。
いくつかの点で捜査の限界を露呈した。
一つは、サイバー犯罪防止の難しさ。
もう一つは、捜査当局の能力の低さと安易な姿勢。もう少し言えば「冤罪体質」。

当初の誤認逮捕が全てを物語っている。素人でも遠隔操作や「なりすまし」を疑うのは常識。同様の事案で4人も逮捕されて気がつかないのは異常。
Q3. コメントする
まずは、警察の能力アップと体質の改善。
Q4. どちらかと言えばいいことだと思う
犯罪の抑止、捜査のための「必要悪」と考える。
ディジタルな犯罪に対するアナログな対応だ。
ただし、「国民監視」のような間違った使用に対する監視体制の整備も必要。
 
 
松田千恵子
首都大学東京教授/マトリックス株式会社代表
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
法律ができたときに想定されていなかった環境が現出していることを軽視し続けて
きた結果、ついに具体的な事件における被害者(誤認逮捕者)が出たということと
認識している。
Q3. コメントする
現在の環境に合わせた法律の改正、および捜査におけるホワイト・ハッカーの育成と活用。
雑誌で取り上げられるなど公表情報の範囲で述べると、以前在籍した外資系コンサル会社では
ホワイト・ハッカー・チームを米国防総省に提供していた。こうした民間の力の活用も含めて
合目的的に体制を考えるべき。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
良いか悪いかというよりも、現在の犯罪状況を考えれば「必要」である。カメラの存在を
すぐにプライバシーの侵害や監視強化で問題である、と短絡的に結び付けるのもどうかと
思われるし、本当にそれが心配されるのであれば、カメラの取り付けを問題視するよりも、
そこで撮影された映像の使用・管理に対して監督が行き届くような体制作りを問題にすべき。
 
 
原田曜平
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
日本のネット犯罪への対策の弱さが露呈されたのは事実ですが、ネット犯罪はイタ
チゴッコに陥り易い傾向にある(対策を立ててもまたすぐに抜け道ができてしま
う)ので、法改正も含め、フレキシブルに対応できる体制を普段から整えておくこ
とが重要だと思う。
Q3. コメントを控える
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
今回の件に限らず、最近で言えば、六本木の関東連合の事件に関しても、その他
様々な事件に関しても防犯カメラが犯人発見の決め手になっている事件が多々出て
きている。凶悪事件のみ閲覧や公開を可能にするなど、一定のルール決めが必要な
ように思う。
 
 
江川紹子
ジャーナリスト
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
サイバー犯罪だからこその問題と、あらゆる事件捜査に通じる問題があって、
それをごっちゃにしてはいけない、ということです。
サイバー犯罪だからこその問題と、あらゆる事件捜査に通じる問題があって、
それをごっちゃにしてはいけない、ということです。

1)失敗から十分に学んでいるか?
 4人を誤認逮捕し、2人に虚偽の自白をさせた事件では、各警察が「検証」を行った。
しかし、すべて警察自身で行われ、「外の目」が入っていない。虚偽自白をさせた
警視庁の検証報告書を見ても、警察の言い分しか書いておらず、被疑者が自発的に
嘘の自白を述べ立て、警察がそれに振り回されたかのようである。
 こうした失敗をした時に、内輪の調査だけでは、本当に問題点を把握して、そこから
きちんと教訓を学んでおらず、効果的な対策に結びついていないのではないか。
 サイバー犯罪についての知識や技能が乏しい警察の捜査の問題を、サイバー犯罪に
ついての知識や技能に乏しい警察自身が検証して、本当に問題点を把握できたのだろうか。

2)ネット犯罪に対する取り組みが遅い&甘いのではないか
 サイバー犯罪の増加については、だいぶ前から言われていたが、警察のそれに対応する
人材確保や人材育成、民間との協力の仕組み、県警を超えた全国的な捜査態勢作りなど、
すべてが遅れているのではないか。

3)裁判所が自白に影響されやすい体質があるために、捜査機関が
自白偏重の従来型捜査からなかなか脱却できないのではないか
 捜査機関の自白偏重の責任は、裁判所にもある(むしろ、裁判所に一番大きな責任が
あると言っても過言ではない)。
Q3. コメントする
 サイバー犯罪については、都道府県警単位ではなく全国1区と考え、警察庁の下、もしくは管区ごとに専門チームを複数つくり、初動の段階で当該捜査担当警察に派遣する、などの対応が必要ではないか。

 こうした問題は、民間の連携が必要な場合が多いだろうが、警察が情報を出し渋るなどするために、民間企業は適切な協力ができきない、という。捜査情報を安易に流出させてはならないので、保秘のための仕組みを早急に作るべき。

 虚偽の自白を防ぐ対策も必要。自白の任意性や信用性に争いがあった場合、検察が取り調べの全課程の録音や録画を提出するなど、客観的に適正な取り調べだったことを立証しない限り、裁判所が証拠採用しないようにすれば、警察や検察も、無理な取り調べや利益誘導などを行えなくなる。
 今回の事件に関しては、とりわけ全課程可視化の必要性は高い。

 サイバー犯罪に限ったことではないが、直接証拠が少なく、状況証拠に頼らざるをえない事件で、捜査機関が恣意的に情報をマスメディアに流すなどして、世論や裁判官、裁判員を誘導するようなことはやめるべきだ。
 職業裁判官は、ネットに関しては、むしろ一般人より無知と言えるかもしれない。印象操作には弱いと考えるべきで、今回のように事前に情報を流して被疑者の生活ぶりや姿を撮影させるなどの操作は厳しく批判されるべきだ。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
今の社会状況の中では、必要悪と言わざるをえない。
 ただ、監視カメラの数が増えるほど、そこからプライバシー侵害が起きる危険性も高くなる。
また、これが警察のためだけの監視カメラではなく、あくまで真実発見のために利用されるの
でなくてはならない。捜査機関の主張に反する事実を立証するためには利用できないなどの問題もある。
 ルール作りがなされないまま、台数がどんどん増えている。しかもその実態も分からない。
設置されている台数などの情報は、もっと開示され、その利用方法などのルール作りが議論されるべきだ。
 
 
にしゃんた
羽衣国際大学教授/落語家
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
今回の犯行、犯人は絶対に許されるべきことではない。しかし捜査側が実社会に追いついていないこと、その未熟さを見事に露呈してしまったことは恥ずべきだろう。今回は、当初捕まった人たちが誤認逮捕であることを親切に「新犯人」に教えてもらい、アナログな段階までハードルを下げて、下げて、過ぎるぐらいヒントを出した犯人の優しさに助けられた御蔭で逮捕に至ったのであって、捜査側の能力は決して褒められるようなものではない。国家、国民の安全を一身に受けている警察は、犯人を必死に追っかけるようでは格好悪すぎる。是非「何でもお見通し」で、先回りし、安易に犯人を捕獲できる能力をもち合わせて頂きたい。・・・今の最新ニュースに、遠隔操作「真犯人別にいる」って出ているが、、、また誤認逮捕!?

ネット犯罪に限らず、捜査側の能力のなさにより、相次ぐ誤認逮捕や冤罪事件が目立つ。さらに今回の事件は、誤認逮捕により現在刑に服している人がもっといるのではないかと警察側が疑われてもおかしくない。家族がばらばらにされ、人の人生を台無しにしてしまい、だいぶ後になって冤罪とわかっても、時計の針は戻せない。そこまで人権を侵害しておいて、誤認逮捕と解ったところで、捜査側は知らん振りでは済ませられないのでは。相手の人間も人生がかかっている以上、捜査側も面子をかけて捜査に挑み、誤認逮捕と判明したら、責任者は職を辞するぐらいの覚悟がせめて必要だろう。
Q3. コメントする
大事ことの一つには、警察捜査官の人的な多様化があろう。20年以上も前だが、日本の大学生だった私は、格闘技系の体育会のクラブに所属していた。クラブの先輩の警察への就職の割合が実に多かったが、(バブル崩壊して)私たちが社会人になる年では、希望しても体育会系の仲間の警察への就職は全滅で、採用が決まったのは同期の「クイズ研究会」のメンバーだった。安定を求め、公務員希望する頭脳系・暗記系の学生が警察に流れ込んだ結果だが、組織内の多様化が進んだ点は評価できる。言うまでもなく、これからはそのような偶然に頼るのではなく、意識的に警察側も、多様な人材を確保すべきだろう。その点、暗記や勉強が出来なくても、腕っ節が立たなくても、「インターネットに関しては任せとけ」という人材の確保が急がれる。そのためには、警察もおそらく代々続いているであろう、画一的な人事採用試験だけではなく、多様な人材が確保出来るような方法も導入すべきだろう。ネットと同じく、国際犯罪も増えており、現状とられている、日本人が外国語を覚えたり、留学生をアルバイトで雇ったりと、いう次元の対策では限界があるのではないか。警察も、外国にルーツのあるような人材を組織に積極的に受け入る時が来ているのではないか。
Q4. どちらかと言えば問題だと思う
悲しいが、民主主義と物質文明が高度に発展した日本は、ワルがのさばる国で、そこに、蔓延る無関心な対人関係では、肉眼は到底あてにならず、鉄の目玉に頼るしかないってことだろうか。いつの間にか世界有数のカメラ大国になりつつある日本だが、成果も上がっているようで、商店街なんかも、もろ手を上げて賛成している以上、カメラと付き合っていくしかないだろうか。カメラが氾濫し、知らないところで知らないうちにプライバシーを侵害されているわけだから、まず、愉快なことではない。いや、不愉快、いや、それ以上の存在である。

現状の防犯カメラのあり方についての改善の余地は大いにあることは言うまでもない。まず犯罪が減っている中で、防犯カメラだけが増えており、その数が把握されていない。つまり放任主義である点が最大の問題で、カメラの目的は「防犯」なのか「傍観」なのかの線引きすら出来ていない。諸外国の例も合わせ、カメラが人権侵害をもたらし、犯罪目的で使用された例も報告されている。日本の場合、設置基準も不明確で、国民のコンセンサスを得ている訳でもない。公的なカメラももちろん不愉快だが、民間カメラはそれを上回る。盗撮用のカメラも多いのではないか。都合よく利用しようと考えるだけではなく、当局による「監視カメラの監視」をカメラの数の把握などと合せて早急に行う必要だろう。善し悪し双方に関して、カメラ監視先進国イギリスが参考になるに違いない。カメラ天国イギリスと合せて設置基準の厳しいドイツなどが何が違うのか比較する必要もある。さらに、現状での防犯カメラは、犯行後の後始末のためにのみ活用されており、事前防止や再発防止に役に立っている話は聞かない。せいぜい心理的な抑止力が働いているぐらいだが、本当だろうか。顔認識による犯人を捕らえたニュースもまだ聞かない。「人権侵害」と言われているのだから、そうではないということを結果と共に国家に示して頂きたい。
 
 
石黒不二代
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役兼CEO
Q2. 「1 - コメントする」の回答理由
今回のネット犯罪の捜査の限界には、世界レベルの技術の限界と日本の技術の限界と2つに分けて考えなくてはいけないと思います。

一般的に言って、世界レベルの技術に限界があるかどうかは、犯罪との追いかけっこですから、限界があるものもあります。サイバーテロというもの起こりえて、それが通常のテロより大きな損害を及ぼす可能性は0ではありません。

しかし、今回の捜査の限界というものは、もっとレベルが低い日本の捜査の限界の議論だと思います。そもその遠隔操作ができると知っていれば誤認逮捕はありえませんでした。遠隔操作ができるということはIT業界のものであれば、誰でも知っていることです。警察が基礎知識を持っていなかったということです。そして、誤認逮捕をした人たちを強制自白に追い込んだという事実は恐ろしいことだと思います。

後者の強制自白に関しては、私の専門外なのでこれ以上のコメントはしませんが、複数人が自白したという事実は、罪もない人を自白に追い込むことが日常茶飯事に行なわれいてるということを想像させるに足る事実だと思います。

前者の「日本の警察にはITの基礎知識もない」と思わせる事実は、ITが日常のインフラになっている時代には、急速な変革が求められることだと思います。専門家が警察内にいなかったということでしょう。
Q3. コメントする
そもそも、インターネットは軍事技術が商用化されたもので、それゆえ、発祥のアメリカでは、商用化当時(1990年代前半)からインターネットセキュリティーに関して深い関心がよせられ、対策を講じています。国家全体でこのセキュリティーに取り組み、政府機関のインターネットの利用は、一般企業よりも進んでいます。一般のインターネット犯罪に対してもFBIが関与することも多々あります。日本も国家として、IT犯罪の防止にとりくむべきで、警察組織や中央政権にITの専門家を組成すべきだと思います。
Q4. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)
回答を控えます。
 
 
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