2012年09月22日 ザ・コンパスで放送
その他

緊迫!日中関係-今後の対処法は?

1:設問テーマの背景 (facts)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

9月11日、日本政府は閣議決定に基づき、沖縄県・尖閣諸島の魚釣島など3島について地権者との売買契約を行い国有化を完了しました。
この国有化に対して中国政府・国民による抗議行動が続いています。

9月13日、中国外務省は、李保東(リー・バオドン)国連大使が、尖閣周辺を領海とする海図および基点、基線の座標を潘基文(パンギムン)国連事務総長に提出したと発表しました。

9月14日、中国国家海洋局所属の海洋監視船計6隻が、尖閣諸島周辺の領海に侵入したことを第11管区海上保安本部が発表。6隻はこれまでに最も多い規模とされます。

9月15日以降、尖閣諸島国有化への抗議デモは、中国各地の100を超える都市で反日デモとして激化し、北京の日本大使館前には約1万人が押し寄せるなど1972年の国交正常化以降、最大規模となっていることが報じられています。
デモによって山東省青島市内では、日系のスーパーや工場が襲撃され、商品が略奪されるなどの被害を受けました。この状況を受け、キヤノン、パナソニックなどの日本企業は工場の操業を一時的停止、イトーヨーカドー、伊勢丹は休業するなどの対応をとりはじめています。


2:番組として (our aim)>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

40年前、1972年9月29日の日中友好宣言(日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明)以来、国交正常化し、一部の問題を棚上げしながらも、戦略的互恵関係を以て、その関係を育んできた日中両国ですが、領土問題をきっかけに中国政府が強硬姿勢を強めていることもあり、事態の動向によっては、大きな転換点を迎える可能性も考えられます。
しかし、これからの対中関係における有効な対処法は、日本国内で十分に議論されていません。
今後、憂慮される事態とその対処法について、オピニオンリーダーの皆さまからご意見をいただき、番組視聴者、ユーザーとともに議論したいと考えました。

・日中友好宣言(外務省サイトへのリンク)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html
(「両政府は、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」など今日の状況を考える上でも重要な内容となっています。)

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:これまでの日本(政府・民間問わず)による対中関係の築き方をどう考えますか?
Q2:問1の回答理由をお聞かせください。
可能であれば、今回のデモが拡大している背景も踏まえてご回答をお聞かせ下さい。
Q3:対中関係で最も憂慮される事態とその対処法についてご意見をお聞かせ下さい。対中関係は、「1:政治・外交」「2:安全保障(海上警備含む)」「3:経済」「4:民間交流」「5:その他の分野」など各分野によって異なった対応が想定されますので、分野を明示した上でお答えいただけると幸いです。複数の分野についてご回答いただいても結構です。
Q4:これからの日中関係について、ご意見をお聞かせください。

オピニオンリーダーの回答

( 26件 )
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1. 良かったと思う

竹田圭吾
国際ジャーナリスト
Q2. 「1 - 良かったと思う」の回答理由
回答:終戦から67年、講和条約から61年、平和友好条約から34年の間に対中関係において日本の国益、核心的な利益が一方的に阻害されたことはない(それだけをもってしても日米同盟の意義に一定の評価はせざるを得ない)。中国が歴史問題を政治利用して歪んだナショナリズムを植えつけても、7年前や今回のようにそれが反日デモという形で発露しても、日本が感情的にそれに反応することもない。倫理や市民意識を規範とする民主社会としてのモデルを、日本は中国との対比において示している。その現実こそ官民を問わずにこれまでの対中関係の築き方が正しかったことの証左であると思う。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
回答:「3:経済」
 将来いずれかの段階で日中間に武力衝突が起きる可能性はゼロではないが、アメリカや東南アジア、ロシアとの経済関係が日中双方とも急速に深まっている現状を考えると発生した後のリスクは拡大しているし、また、衝突を回避するための外交努力の余地は十分にある。ただし中国の経済的な影響力がここまで拡大すると、そうした外交努力の制約条件も増えていく。海軍力で日本が上回っているうちに、通貨協定や投資協定を多面的に強化することなどによってそうしたリスクをヘッジする措置を工夫していくべき。
Q4. 回答する
直接的な対中関係ではないが、中国が増設している原子力発電所の安全管理リスクは、
日本および韓国など中国の周辺国すべてにとって大きな脅威になると思う。
 
 
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2. まあ良かったと思う

南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「2 - まあ良かったと思う」の回答理由
華人史の大きな歴史のうねりの中に扶桑の小国が飲み込まれているに過ぎない。
大きな国を含めた広い地域で何かが始まっている、そんな気がします。
何も起こっていない、いつもの918のリアクションかも知れない、そうであってほしいとも思うのですが、大きな国の使命と言うか本性というか、永らく受け継がれてきた巨大なエネルギーが爆発する時期に差し掛かっているとすれば、それは大変な事態、言い換えれば我々は歴史の生き証人という立ち位置にある、と言うことだと思います。
文化大革命のときは人民のだれもが海外とのつながりがありませんでした。
ところが今回は違います。賢明な民族ですから既に十分に対策は講じられているようです。
もちろん、それはほんの一握りの人達でしょうが。これからはそういった富裕で海外のどこにでも出没し、足場を確保している有能な華人諸氏が世界をリードして行くのではないでしょうか。いわば、かつての宋三姉妹を生み出した宋家が数万の数、いらっしゃるのです。
そういった世界史、人類史、華人史の次なるフェーズの基盤造りの段階に日本は付き合わされている、ということなのではないかと思います。
従ってこのような大きな歴史の流れに一国の政府や政党政権ごときが流れを変えることなど決してできないのは当然ではないかと思います。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
1.政治、外交:何をやっても歯が立たないでしょう。先方を変えることなどできません。あの大国のエネルギーはまさに歴史にうねり。小国日本がやけどをしないように、日本らしさを存分に発揮し、のらりくらり、せいぜい努力するだけです。
2.安全保障:双方に国家間の戦争を企図する意志など全くないと考えるべきだと思います。偶発的事象として発生する事態は避け得ないかも知れません。その際の双方の被害を最小限に食い止める手立てと言うか心構えをしっかりと持っておくべきだと思います。何が起こっても報復は絶対に禁物です。
3.経済:粛々と経済の動向は誰にも止められない『潮流』ですでに進んでおり、今回の事態が想定外と言うわけで歯決してないはずです。ダイハツや大塚製薬が天津の工場を閉鎖して久しいのですが、すでに日本企業は相当な段階まで学習し、隣国を理解してると想像します。従って、何ら心配はないはずです。
4.民間交流は前項で述べたように今後さらに活発になるでしょう。賢明で予見性のある、そして勇敢で行動力がありつまらないこだわりを持たない優秀な華人の皆様は今後さらに活発に海外に進出し、地球上を席巻することでしょう。我が国は古式ゆかしき国家として、その利点を生かし、「和」の精神で対応していくしかありません。
Q4. 回答する
我が国は前項末尾で述べたように、いまどき珍しい国家らしい国家として、21世紀も末永く維持されるべく、国民一丸となって、あるいは一億二千万火の玉となって、広く知識を蓄え、知恵を絞り、世界と向き合う必要があります。それが我が国の唯一最大の利点ですから。そのためには抑止力としての軍備増強は致し方ないのかも知れません。
まともな、いや知恵のある教育という努力も必要だと思います。賊省・文部科学省はこれ以上、国民を衆愚にしておく必要はもうないでしょう。例えば少なくとも主要な歴史的事件については歴史教科書で相手国、当事国の解釈はどうなのか、教科書ではどのように教えられているのか、日本の教科書に併記すべきです。これが知恵のある教育というものではないでしょうか。一方的な世界観、歴史感を無理やり押し付けられ、考えることを失っている人が日本の学術的団体で高い位置を占めている例もあります。
程度の低い、視野極小の知識人を御用学者に仕立てるのはもうやめましょう。
学校でのイジメの隠ぺいに奔走していてさぞかしお忙しいのでしょうが・・・。
 
 
川上高司
拓殖大学海外事情研究所教授
Q2. 「2 - まあ良かったと思う」の回答理由
 これまでの日中間には尖閣列島に関して暗黙の了解があった。しかし東京都の尖閣購入計画、その後の国有化により、中国政府は政権維持のため反日運動を黙認した。同時に米国の出方をみるという側面があった。すなわち、米国が日米同盟を履行しないそぶりがあれば尖閣諸島を取りに行くという側面がある。
 日本は(米国もそうであるが)中国に対して、経済的には相互依存関係が深化しなくてはならない関係であった。しかしながら軍事的には脅威であり中国に対して米国とともに軍事的ヘッジ(囲い込み)をしてきていた。そういった「あいまいな関係」を継続しながら、なんとか中国を国際規範や国際法を守る「責任ある利害関係国(Responsible Stake Holder)」にしようとしてきた。しかしながら、日中関係においての紛争の火種は歴史問題であり、領土問題(尖閣諸島)であった。尖閣問題に関しては、これまでは棚上げにして紛争を回避することで問題を先送りしてきた。
 ところが、石原慎太郎知事の尖閣を東京都が買い上げる発言、東京都民の寄付、地権者の合意等々から、日本政府は買い取る必要に迫られた。ここに、これまでの「あいまいな関係」を維持することが不可能になった主たる原因がある。次の原因は、米国のパワーの低下、中国のパワーの向上にある。米中は2025年に逆転することに自信をつけた中国側は尖閣問題に対して、より高圧(assertive)にでるようになった。
また、日本政府の尖閣国有化は、中国国内のnet社会の進化もあり中国政府の予想以上に中国国民に中国のnationalizmに火をつけた。また、日本政府による国有化の時期が悪かった。共産党大会の前であり、政権を無難に乗り切るためには、中国政府は弱腰ではいられない。また、ハッキライ問題もあり対日政策には強硬にでる必要があった。また、9.18という満州事変の発端の日の直前になされた。中国政府は、ガス抜きをする必要もあった。そして何よりも、面子を保つためにも、中国政府は反日デモをある程度容認する必要があったのである。
 さらに、米国が尖閣問題を静観視するのであらばその機に乗じて、実質支配をする意図があることも否定はできない。尖閣諸島近辺には豊富な地下資源があり、豊富な漁業水域があり、さらには、第一列島線への突破口になるからである。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
1.政治・外交 → これまで培ってきた日中友好関係がこじれてしまった。今後どう解決するかが課題となる。懸念事項は、日中間に武力紛争が発生し、日中両国にナショナリズムが強まり、決定的に対立することである。政治・外向的対立は、即、日中両国にとり大きな経済的ダメージとなる。中国での反日デモはおよび日系企業への破壊発動は、中国人の職場である日経企業の中国以外の国への移転につながる。
2.安全保障 → 自衛艦による海上警備を野田総理が発令できるかどうかが、日米安全保障の行く末に大きく影響を与える。つまり、米国が日米安保第五条と発動し、日本を防衛するためには、自衛隊がまず行動し自国を守ることが先である。日中に武力衝突が起これば、当然ながら中国軍は沖縄や日本本土の自衛隊基地や米軍基地を攻撃することになるから、日米安保の発動となる。野田政権の自衛隊の海上警備行動の発令こそ最もやらねばならないことである。そうすれば、米国を巻き込むことになり日本は大きな抑止力を確保することになる。
3.経済 → 最も懸念される事項である。日中経済相互依存は相当すすんでおり、中国の日本企業の他国への移転(空洞化)となり中国人の雇用がなくなる。また、日本は生活必需品である農産物等々が中国から輸入できなくなり、輸入先の変更を余技さくされる。その間、農産物等々が品薄となり価格高騰をまねく。一連の経済的損失は、日米企業の株価に即影響する。
Q4. 回答する
 今回の尖閣諸島問題をめぐる日中間の争いをどう解決するかは、①日米両政府の冷静な対応、②米国の仲裁、③米国の日米安保発動、が鍵となる。そこでのポイントは、中国政府の面子をどう保たせるかである。それが落としどころとなろう。
 日米両政府は落としどころを見つけるべきである。日本政府の場合は、「尖閣諸島の国有化問題は、日中間のトラブルを少なくするためのものである」ことと中国に説明する。つまり、国内事情を説明する。中国政府は、反日デモおよび千隻の漁船を沈静化させることにある。しかしながら、落としどころ、理由がなければなかなか一度振り上げた拳を中国政府はおろせない。日本政府は落としどころをみつける必要有り。
 パネッタが日本~中国と歴訪し仲介役をかってでた。ある程度は効果があったかもしれないが、二頭追う者は一頭を得ないかもしれない。
 では、どう米国はことを有利に収めるか。それは、日米安保条約の発動しかない。つまり、米軍が自衛隊とともに尖閣諸島近辺で軍事演習をやるとか、尖閣諸島の一部である久場島(現在も米軍の射爆場)で爆撃訓練をするとか、自衛隊が中国軍と退治した場合には集団的自衛権を発動するとか、その場合には、中国軍は日米連合軍とは事を構えないであろう。
 その際も中国幹部の面子をどうmake upするかがKEYとなろう。

 ①~③の解決方法が失敗した場合、日中関係は悪化する。
 
 
本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「2 - まあ良かったと思う」の回答理由
戦後米国の庇護下にあった日米最重視の日本が、現在の日中関係を築いてきたことは評価できる。中国は自身の国内問題(経済格差•民主化の遅れ)から国民の関心をそらし国内をまとめるために、日本に対する厳しい歴史認識教育を行ってきた。その結果が今回のデモ拡大の最大の背景と考えられる。
 戦後米国の庇護下にあった日本が中国と良好な関係を築くことは、米国から見れば好ましくない面もあったことは事実。その中で現在の日中関係を築いてきたことは評価をすべきだ。しかし中国は自身の国内問題(経済格差•民主化の遅れ)から国民の関心をそらし国内をまとめるために、日本に対して厳しい歴史認識教育をするという立場を取らざるをえなかった。その結果が今回のデモ拡大の最大の背景にある。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
政治•外交:日米関係のみに軸足を置いた外交をいつまで続けるのか。米国には日中を分断して統治する思惑があることは否定できない。その構図があることを冷徹に見つめながら冷静な対応を模索すべき。

安全保障(海上警備含む):日中関係が冷え込み、防衛等が重視されることは誰を利するか?。中国政府と米国、そして日本では普天間基地やオスプレイ賛成派、さらに軍需産業••?。一部の報道に煽られない国民の冷静な反応を期待したい。

経済:日中関係を回復し経済関係を修復することは日中双方に必要なことだ。日本の経済人も労働賃金が安い等の理由で中国をはじめとして東南アジア等へ今後も進出せざるをえないだろう。経済界もぜひ日米だけでなく日中関係修復に建設的な発言と対応を期待したい。

民間交流:国家が過ちを選択しそうな場合、最終的に重要なのは日中両国一般国民の交流だ。政府の思惑に振り回されずに地道な民間草の根交流を継続したい。
Q4. 回答する
 米国の世界戦略である民主主義と市場原理最優先の社会は、昨年来米国内の金融機関の在り方への抗議や格差拡大に反発するデモで明らかだ。かつてパクスロマーナが終焉を向かえたように、パクスアメリカーナも「終わりの始まり」を向かえている。
 将来、間違いなくアジアが世界経済の中心となる。人類の俯瞰的な歴史認識をもって、日中関係がその基軸となれるように良好な関係を構築するべきだ。
 
 
有馬晴海
政治評論家
Q2. 「2 - まあ良かったと思う」の回答理由
これまで致命傷なことはなかったように思う。そう考えるとまあまあ良かったと思いますが、臭いことにはふたをし、めんどくさいことを後回しでよいところだけで付き合っていたという感じ。来るべくしてきた。中国は半日教育をしているが、これは隣国としてどうなのか。見過ごすしかないのか。中国が悪いと思うが、外交は相手が悪いと指摘して付き合えるものではない。相手は何をするかわからないところで付き合いを進めるしかない。今回のデモは、直接的には尖閣諸島を国の所有にしたこと。しかもコキントウに「困る」と立ち話でいわれた野田首相が3日後に国が買った。コキントウも国民に対し面目が潰れた。国として沈静化に動かない理由ではないか。
ただ、そもそもそういう国だ。本当に中国に市場を求めることがいいことなのかと考えてしまう。
経済を考えればそうするのだろうが、今回の損失や危険などを考えたら、国家としてどうかと単純に思う。正面から付き合う国なのか。反日教育を含めそのあたりは外交的に話し合いをすべきだ。民間での努力も積み重ねただろうが、政治的に出方を失敗したという感じだ。それにしても民主政権、とりわけ外務大臣、首相の対応には疑問を持つ。酷過ぎではないか。解決を急ぐ気持ちがあるのか。早急に対応が必要だったが、なかなか腰が重い。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
政治外交面では、まさか戦争に発展しないのか。政治的に対話が大切。
経済では、日本の必要性がかなりなくなった。むしろおいていかれている。
だから、関係が壊れて交易がなくなってもいいぐらいにしか思われていない。
民間交流があっても、簡単に壊す。この件での努力は難しい。日本経済の影響力の無さだ。
また、安全保障面でいえば、アメリカとの日米同盟があってよかった。日頃は批判の対象になりかねないが、アメリカが後ろにいるから、中国も中々攻めきれないとこもある。これが政治だ。だが、それにしても政府の対応は酷過ぎる。人災に値する。
Q4. 回答する
上記から、まさか国交断絶というわけにはいかないから、上手く対等に付き合う。反日教育をやめさせる。もっと密接な関係の構築に努める。昔の国際族議員はいないのか。政治家の個人的なつながりはないのか。田中角栄は、井戸掘った人として中国から尊敬されていた。未だに家族までも。
政治家のレベルの低さだ。人材はいるかもしれないが、少なくとも内閣に一員としては登用されてない。底の浅さ、人材不足もいなめない。
 
 
長田渚左
スポーツジャーナリスト
Q2. 「2 - まあ良かったと思う」の回答理由
根本的な認識に差があったのなら時間をかけてじっくりゆっくり話し合いをもたなくてはならなかった。
互いの考え方や想いを隣国とはいえ過去のこともあり、努力を惜しんではならないはず。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
「民間交流」
将来や未来に向かって民間交流で互いの存在を大切に思うことが最も大切だと思う。
例えば柔道の山下泰裕氏の率いる柔道ソリダニティーが中国青島で柔道交流を続けてきた。
子供たちに礼儀を教え、汗をかき、互いを大切に思うことが、将来へ向かう。
草の根交流が人と人の関係を築く。
Q4. 回答する
政治的な立場での交流も大切だが、何よりも民間交流で互いを分かりあっていかなくてはならないでしょう。そして分かり合えない点は、根気よく何度も話し合いの機会をもってゆく。短気はダメ!
 
 
にしゃんた
羽衣国際大学教授/落語家
Q2. 「2 - まあ良かったと思う」の回答理由
質問について「これまで」が、①1972年の国交正常化以降なのか、②1945年の日本の敗戦=中国からの軍事撤退、以降なのか、③.明治維新以降(日清戦争や中国を戦場にした日露戦争、さらに15年に及ぶ日中戦争を含めて)なのかによって評価も変わってくる(遣唐使やら鑑真和上苦難の訪日、などという時代もあった)。おそらく、設問は、1972年以降の41年を指していると思われるが、「まあ、良かったと思う」。

少し振り返れば、大陸中国に陸軍を進めていた日本は1931年9月18日の柳条湖事件をきっかけに、1945年8月15日の敗戦までのまる14年間、「中国大陸で」中国と「熱い戦争」を続け、その敗戦から1972年9月29日の国交正常化までの27年間は、「東シナ海を挟んで」中国と「冷たい戦争」を続けてきた。

1972年、ニクソンの訪中を見ていて、アメリカの後を追いかけ、「熱い戦争」のことについて話をする時間もないまま中国と握手した。それ以降のことは全て、「熱い戦争のことは、あまり話をしない」ことで済ませてきた。戦争で壊滅的な被害・損害を被りながらも、1億人が先に豊かになった日本は、「対中国」では中国と中国人の痛みに対して目をつむったまま、先輩面した「上から目線」であった。

戦争で壊滅的な被害・損害を被った中国は、国内の権力闘争もあって、13億の国民がなかなか豊かになれず、都市部の人間が日本に追いつくような生活ぶりになってきたのは、ほんの2~3年前からである。歴史認識に加え、この経済的な格差(日本との格差、中国国内での貧富格差)が、今日の中国人の日本人観にある。

中国に言うこと、言いたいことがあっても、ワシントンの了解がなければ口に出すことが出来ない日本の対中関係の流れも考えると「まあ、良かったのではないか」という答えになる。

評価すべきは、両国の若人の盛んな行き来を含む民際(民間)外交であり、ここにこそ期待したい。2000年に、私も500人の日本人の若人に混ぜてもらい、中国に行った時に日本人への接し方は、(少なくとも表向きは)十分「友好第一」であった。「ここでたくさんの中国人が死んだよ」と二百三高地なども案内して頂いた。祖父母や父親、母親、あるいは兄弟姉妹が日本軍に殺されたという人も多かったはずなのに、日本人に対しては握手と笑顔で「ルーリエ・ホワンイン(熱烈歓迎)」という言葉で迎えてくれた。日本の大学の中国の留学生がいないと立ち行かなくなっている大学も多い。民際交流が進み、「次世代の英知に委ねる」ことの出きる、民間大使が確実に育っている。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
「政治・外交」と「安全保障」は切り離すことはできない。1.から4.まで全てに言えるが、ハムラビ法典ではないが、『目には目を。歯には歯を』でやれば、それこそ最も憂慮される事態となる。特に1.と2.は控えめに穏やかに大人の態度で対応する必要がある。竹島も、北方領土とも同じだが、尖閣についても、日本の立場・考えと、その依って立つ理由、歴史的事実を、国際的に、諸外国に、あるいは国際機関に、もっともっと知ってもらうこと、訴えることが重要である。『理はどちら側にあるのか』と、国際世論に訴えることが大事である。1.も2.も、ちょっかいに手を出するのは、民主主義の先輩としてやるべきことではない。

今回は、中国側もやりすぎだったこと、破壊と略奪はまずかったと思っているし、デモ隊の中に尖閣の場所なんて全く分からないのが多くいることも知っているし、何より、「愛国無罪」と言いつつの破壊暴力略奪が、鎖国社会でならいざ知らず、情報化国際社会の中で通用しないことも、指導者も良く分かっているはずである。

しかし、国民の不満のガス抜きのためには、国際社会・民主主義国では通用しない行動にも目をつむり、それどころか彼らの暴力的行動、軽蔑的差別的発言に対しても、理解あるような中国側の指導者の姿勢を外国メディアに対しても示してみせた。しかも、アルバイト代をもらってデモに参加している人も多いとの情報も国外に漏洩している。

言うまでもなく、このような中国の国内事情も理解した上で、大人としての態度が何より望まれるところだろう。1.と2.が冷たい戦争をやっている時、経済だけは平和裏に進む、というのは、全体主義国との関係では考えにくい。民間の交流も同様に、冷たい戦争のさなかでは確かに難しい。しかし、それでも大人の対応が望ましい。たとえ右翼から「軟弱すぎる。毅然とすべきだ」と批判されようが、国際世論をバックにした穏和な話し合い外交に徹すべきである。
Q4. 回答する
「尖閣の場所も知らずに、反対デモをやっているのか」と、中国人の「レベル」を笑うわけにはいかない。「日本・日本軍・日本人は大陸中国で何をやってきたのか」を知っている日本人は、どれくらいいるだろうか?「南京大虐殺では30万人が殺された」と中国は言う。日本では「そんなにやっていない。」、その数は、「5万」とか「10万」程度と言っている。30万はいけないが、5万なら許されるのか。日中の熱い戦争の舞台・戦場は、日本でなく、中国であった。中国だけでなく、国際的にも笑われないためにも、私なども含む日本人は歴史をもっと勉強しよう。私は、日本政府が進んで「戦争で無くなった多くの人々への謝意と戦争を二度と繰り返さない」という意を表し、中国国内のあちこちで、戦争記念館を建て、日本の若人かつての戦争地帯のメンテナンスなどのためのボランティアとして派遣するようなことがあっても良いと考える。やはりドイツに学び、少しでも近づくことが実りが多いと考える。

これは民間外交のスタートである。国民が歴史を知ることが政府を動かすことにもつながると信じている。「国際問題」の解決のための「民際」出番である。そして「民際」としてのネット社会にも大いに期待したい。現状のネット社会で無責任な発言が目立つ「中国のネットで『日本を殺せ』と言っているから、『中国を殺せ』と言うのがなぜ悪いんだ」などと、現実と仮想現実の区別も何も理解できずに、言いたい放題、口から出放題になっている。日本の場合は、ネットの便利さ、ネットの優れたところを、大事にして育てていくという姿勢を望まずにはいられない。日本人には、アジアで民主主義が最も進んだ国家の民であることの自覚し、ネット含む、発信力を得た全ての人間はそれをありとあらゆる「垣根の越境」のために活用するのだという責任と志をもつことを強く求める。垣根を越えられる、これほどの便利な環境にいながら、狭き、国家権力などに翻弄されているようでは我々の先輩方と比べてもなんら成長していないことになる。
 
 
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3. あまり良くなかったと思う

坂野尚子
株式会社ノンストレス社長
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
ODAで経済支援をしてきたというのに、感謝されない。残念なことである。しかしながら、今回のデモ報道は一部偏向しているところもあり、実際は、中国の中でも様々な意見がある。実際、FBから得た情報によると同じ中国人として暴力的な破壊行動を非難する声も見られた。しかし、今のままの報道を受けると、日本人の中でも中国を一律に評価し嫌悪を持ってしまうのではと危惧する。まさに中国でおきていることと同じことが日本でおきることは避けなくてはならない。報道はいつも事実の一部なのだ。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
4民間交流

弊社も中国での店舗出店を考えていた。毎回、今こそと思う時に限って何らかの暴動がおき、出店を取りやめていた。しかし、今回、日本企業並びに日本式の中国企業が一律暴行を受けてしまう民度は一部といえ残念である。今後日本から出店を考える企業が極端に減ってしまうのではと感じている。
Q4. 回答する
政治と経済、政治と文化、政治と民間交流を分けて考えることのできる姿勢、体制、カルチャーを育みたい。
 
 
土居丈朗
慶應義塾大学経済学部教授
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
これまでの日中の協力により経済面で相互に発展・恩恵を受けてきたことは評価できる。しかし、ドイツが欧州諸国に対する関係の築き方と対照的に、日本は歴史問題をあいまいにしてきたために、逆に中国のわがままを受け入れざるを得ない状態になってしまっている。
今回のデモの拡大は、中国政府が政治的問題に端を発した治安悪化を食い止める能力に欠けていることを露呈した点で、外交問題よりも中国の内政問題というべきである。ただ、中国政府は、尖閣諸島に対する領土的関心をあきらめていないため、デモの有無にかかわらず、引き続き外交問題としては残ることになろう。

日本が、中国に領土問題で突き入る隙を与えている背景の一つに、歴史問題をあいまいにしてきたことが挙げられる。第2次世界大戦に関連して、ドイツはナチスの悪行を容易に認めたのに対して、日本はそこまで割り切ることができなかった。この差が、欧州諸国との間でドイツがいまや歴史問題で外交的につけ込まれるが少ないのに対して、日本はドイツほどにはなっていない状況として現れている。さりとて、日本は歴史問題をあいまいにする代わりに日本の立場を有利にする特別な方策を講じてこなかった。こうしたことが背景となって、中国において、政府批判の代わりに反日感情が悪用され、中国につけこまれる結果となっている。

中国政府は、ただでさえ、平時においても他国からのアドバイス(干渉ではなく善意的な助言)を素直に受け入れない態度をとる。だから、日本は中国に対しては、日本の言い分を聞いてもらえるような環境整備が通常以上に不可欠である。しかし、対中関係の現状は、ただでさえ言い分を聞いてもらえない環境である上に、中国が(勝手な思い込みも含めて)日本につけ込めると認識させることを作ってしまっている。そうした状況は、これまでの流れを断ち切る意味で、できるだけ早く払拭すべきである。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
3:経済

これまでにも対中関係が悪化した時期はあったが、「政冷経熱」といわれるように、経済関係まで悪化することは避けられてきた。しかし、今後は、中国人の反日感情が改まらない限り、経済関係までもが悪化する事態が憂慮される。

この事態を打開する対処法としては、外交的に平和裏に反日感情を鎮めることに越したことはない。しかし、もしそれがうまくいかなかった場合には、日本の資本や企業が、中国経済における実利を確保すべく「日本」を表に出さない形でうまく経営・営業する方策も真剣に検討しなければならないかもしれない。
Q4. 回答する
中国に、領土領海の拡大が資源確保の有効策ではないことを諭すことが必要である。

中国の政策スタンスは、「国家資本主義」などと称されることもあるように、国家権力を背景にして国際的に(金融的な手法ではなく)実物的な権益を獲得しようとするものである。領土領海の拡大はその最たるものと言える。しかし、このスタンスは、国家経営、政策面で極めて非効率なコストがかかるものである。

だから、先進諸国は、資本主義経済の中で、そうしたスタンスを今日では基本的にとっていない。典型例は、実物の機械を用いて生産・サービス提供をする企業が、実物の機械を自ら所有せずリースを活用して営業することである。資源の確保(自国の領土領海内の資源開発を除く)でも同様のことが言える。先進諸国が外国から資源を確保しようとする場合、外国から資源を確保する必要があれば、政府が直接的に関与するよりも(領土領海の拡大に走らないのはもとより)、民間企業が、先物取引やオプション取引やリースなどのような金融的手法を用いて、できるだけ実物的な権益の確保に伴うリスクのヘッジを図り、安定的に資源確保ができている。こうした手法により、コストの抑制が可能となっている。

中国政府には、こうした先進諸国で用いられた手法を活用することが、懸念する資源確保には最も効果的であることを認識させることを通じて、領土領海の拡大に対する関心を弱めさせ、ひいては日中関係を良好にする一助となると考える。
 
 
岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
日本の地方都市が抱える産業の空洞化、工場の中国移転の結果が今回の暴動に結び付いたのかと思うと、二重の意味で無念さを感じます。
しかし、今回のことは、大きな教訓になったとも思います。
外交は「諸外国と仲良くいい関係を築く」などという生易しいものではないことや、戦略的互恵関係などという言葉にはさして意味のないことや、中国の安い人件費や巨大なマーケットにはリスクも伴うことや、物事を行うタイミングや相手のメンツについてには十分考慮することや、日本の情報発信力の弱さが露呈したことなどもろもろです。
Q3. 回答を控える
Q4. 回答する
中国は10月に新しい執行部体制に移行しますが、そこでどのような日中関係のスタートを切れるかが重要になってくると思います。
 
 
細川昌彦
中部大学教授
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
・何故ここまでデモが激化するのか?

①中国の権力移行期の問題。カギは人民解放軍。戦前の日本の軍部のように、政府のコントロールが及ばず、どう掌握するかがポイント。胡錦涛(知日派)vs習近平(強硬派)の対立ととらえる向きもあるが、事はそう単純ではない。習近平が未だ軍を掌握するプロセスの途上であることから、強硬派の突き上げに合わせる必要に迫られている。
軍強硬派などが一般市民に扮して先導、挑発する動きも見られるが、こういう動きを指導部が必ずしもコントロールできていない。

②中国の経済格差。若者の失業者など社会不満の鬱積。経済開発に伴ってこれまでの沿海部中心から内陸部にも広がる。この不満を外に向けさせてガス向きをしようとの意図。

③今回の事態は、このような中国国内の状況把握も含めた日中間のコミュニケーションの決定的失敗。中国側の流動的な権力関係に応じて、日中間のパイプを単線ではなく複線化することが十分でなかったことによる見通しの甘さ。その結果、尖閣の国有化を日本側からの新たな攻勢ととらえて過敏に反応した勢力が動き出した。
④他方、米国は普天間、原発ゼロなど民主党政権には呆れているので、この政権へのシンパシーなし。中国はそこも見透かして強硬姿勢に。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
3:経済
①10年前の日中の経済関係とは大きく変化しており、中国は自信を持っているという認識からスタートしなければいけない。日中双方の相互依存が大きいので、双方にとってマイナスとよく言われるが、この認識は甘い。情緒的に「互恵」と叫んでも、中国側が日本と同じように思っていると思うのは自己満足。経済の現実は、日本の中国依存の方が圧倒的に大きくなってしまった。かつての米国がそうであったように、「市場こそ力」。それが世界経済の力学。中国市場では自動車産業もVW,GM、電機産業もサムスン、LGの存在感の方があり、日本企業は主導権を取れていない。観光客も1ケタ違う。

日本はインドネシア、タイ、ベトナムなどASEANとの戦略的結びつきをもっと強めるべき。インドも同様。
TPPもそういう対中戦略のうえで重要な牽制手段。

②日本企業の中国進出がかつての輸出拠点から中国市場を目的にした内需型産業にシフトしている現実も大きい。コンビニ、ショッピングセンター、スーパー、生活用品など。これらは直接中国市民と接するビジネスであり、目立つとともに、標的にされやすく、不買運動にも直結する。そういう意味で、これまで以上にビジネス上のチャイナ・リスクは大きい。

香港資本、台湾資本との協業などリスクを下げる努力が必要。

2安全保障
日本の「原発ゼロ」の方針は原子力関係の優秀な人材が中国にも流出することが懸念される。中国は明らかに人材獲得を狙っている。将来の原子力技術をいかに押さえるか、は安全保障問題に直結する。
Q4. 回答する
かつてのように情緒的に「日中友好」と叫んでいれば良かった時代は終わっている。
相手が冷徹なパワーポリティックスの世界で動いている限り、その土俵での対応が必要。

習近平が軍を完全に掌握できるまでには、時間がかかる。中国側には日本の民主党政権のうちがチャンスなので実績を積み重ねておこうとの意図も見える。今後、中国は尖閣への頻度、人数、船数をエスカレートさせていって、実効支配を世界にアピールする方針であろう。

その際、大事なのは世界への情報発信。世界への情報戦で日本は完全に負けている。もっと日本の正当性を世界に(特に米国世論に)アピールすべき。

また米国との安全保障関係を立て直さない限り、中国とのバーゲニング・パワーは出てこないのが悲しい現実。日中関係は米中関係の従属変数。

根本的には日本側の政権が交代してはじめて、米国との関係、中国との関係を仕切り直すことが始まるのか。
 
 
若狭勝
弁護士
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
 腫れ物に触らずの築き方であったように思う。
 確かに、これまで一部の問題を棚上げしながら、国交正常化後の両国間の関係を築き上げようとしてきたこと自体は致し方ないところもある。しかし、他方、それはあくまで単に棚上げ、ないし潜在化させていたに過ぎず、いつかは、その問題が表面化・現実化するという可能性を踏まえ、中国関係の築き方などをきちんと詰めておく必要があったと思われる。それにもかかわらず、いきなり尖閣諸島の国有化を宣言したことは政府の事前検討の不足感が否めない。つまり棚上げした一部の問題はやがては表面化・現実化するということに思いを致し、しかも、中国を激しく刺激することになることにつき様々な観点からあらかじめ検討しておくべきであった。その意味では、日本政府の対応に問題があったと言わざるを得ない。
 他方、中国側も、今回の日本による尖閣諸島の国有化宣言が、いわゆる柳条湖事件の日である9月18日に近かったことから、日本による圧力という側面で、その事件と共通した問題があるとの意識を中国国民に抱かせたことがデモの拡大化に繋がった一つの要因と思われる。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
1、政治・外交
 尖閣の問題は、今後の日中間における政治・外交に多大な影響をもたらすものと思われる。
 この問題を解決することは困難と思う。一見沈静化したように見えても、ちょっとしたきっかけで再び問題が現実化表面化し、両国間の激しいぶつかり合いが再燃する。
 ではどのように解決すべきか。とにもかくにも国際司法裁判所に持ち込むことだと思う。
 政府は、尖閣諸島につき領土問題は存在しないという立場をとっている。しかしながら、これだけ激しく対立している以上、尖閣諸島につき領土問題が存することは明らかである。政府は、領土「問題」の意味をはき違えている。というのは、領土「問題」というのは、日本の領有であることが明らかであっても、中国がそれに異を唱える以上、存在するのである。裁判の例でいえば、こちらが明確な根拠と資料をもってその主張が正しいと思っていても、不合理にも相手がこちらの主張を認めない以上、そこには紛争(問題)があるとされ、それが裁判となるのと同様である。
 その意味で、領土問題が存在するとして国際司法裁判所に持ち込むと言えば良い。
 国際司法裁判所という第三者において領有権につき判断してもらう。中国が国際司法裁判所に持ち込みたくないというのであれば、国際世論を使ってでも、中国を国際司法裁判所に引きずり出すべきである。日本の主張を国際世論に訴えて、尖閣諸島が日本の領土であることを第三者である国際司法裁判所に認定してもらう。それが、最も発展的・平和的な解決方法だと思われる。
Q4. 回答を控える
 
 
山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
・愛国(反日)教育と新中華思想が尖閣国有化をきっかけに反日デモとなった。
・稚拙な日本外交と戦略なき政治判断が日中間の火に油を注いだ。
経済の目覚ましい成長とともに中国は軍事力の強化近代化を図ってきた。その間、中国は強制的に低学年から高学年まで、間断なく愛国(反日)教育を進めてきている。こうした恣意的な反日的ナショナリズムが若年層に広く浸透している。加えて経済力・軍事力向上に意を強くしたことにより、新たな中華思想ナショナリズムが台頭している。
日本製品にあこがれていた時代から、日本に対する中国人の概念はすでに劇的に変化している。日本企業進出による雇用促進のメリットよりも、経済的に日本に侵略されていると考える人たちも多くいる。
にもかかわらず、日本は相変わらず40年前の互恵関係という経済優先外交に終始してきた。つまり、稚拙な外交や戦略なき政治判断が、尖閣問題を契機に激しい反日デモを引き起こしている。
日本にとって遅かれ早かれ領土問題は避けること、譲ることのできない問題だが、そこにはしたたかな外交と戦略が必要である。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
経済制裁などを含む日中間の確執は長期戦を覚悟する必要がある。一時的な経済関係悪化を恐れず、ひるまず、決してあきらめずに官民挙げて外交努力を進めるしかない。
Q4. 回答する
領土問題で反日ナショナリズムが炎上しているときは、民間交流は相手の状況を見ながら進めるべきだが解決することはできない。国家として粘り強く説明し続けることと、合わせて国際社会にきちんと説明し続けることが重要。それでも納得されない場合はハーグ国際司法裁判所へ提訴することを提案すべきである。
一方で、中国が推進しようとしている国際海洋法条約にかかわる大陸棚としての主張に対し、日本もデータを示し尖閣諸島が日本の固有領土と大陸棚としての権益をきちんと国連に主張すべき。
 
 
山田吉彦
東海大学海洋学部海洋文明学科教授
Q2. 「3 - あまり良くなかったと思う」の回答理由
 毅然とした態度が必要。
 また、中国の海洋侵出に関する研究不足を感じた。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
 中国の海洋戦略は長期的に作成され、着実に実効されている。
 第一列島線の確保を達成する仮定において、中国にとって最も大きな課題は日米により管理されている東シナ海の確保である。
 中国の東シナ海戦略を見直したのは、2010年であり同年8月から漁船団を使っての東シナ海戦略を始めた。
 2010年は漁船の領海侵犯、不法操業、漁業監視船の接続水域航行
 2011年、漁業監視船の領海侵犯
 2012年、海洋監視船の領海侵犯
 海洋監視船の航行は、EEZ、領海等、自国の海の管理をおこなっているという意味を持つ。
 国連への領海基線の届け出は、数年の準備期間を経ておこなったものだ。全て日本の動向をうかがいながらおこなっている。中国の海洋における動きは、石原都知事の発言、国有化の影響というよりは、長期計画のなかで日本側の動きを利用したに過ぎない。ただ、石原都知事の動きは、中国にとっても予想外。一連の動きに焦りがあり、漁船団のコントロールも成功しなかった。
 今回の漁船団を近づけない、海洋監視船の動きを押さえた海上保安庁の動きは成功した。今後は、改正された海上保安庁法のもと長期的な警備計画の作る必要がある。
 政府は、日中海洋協議を再開させるとともに、外交マターではなく海洋安全保障を重点にした実のある協議の場を作らなければならない。
Q4. 回答を控える
 
 
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4. 良くなかったと思う

中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
日本政府は「世界の工場」あるいは「巨大市場」として中国と、海洋国家としての中国という二面性を兼ね備えている点を十二分に認識しなければならない。海洋国家・中国との関係構築に失敗している。海洋国家としての中国は日本の永遠のライバルとなる。尖閣問題はその一端に過ぎない。
 今から40年前、日本はワシントンに追随して共産中国と国交を正常化した。国交正常化で米国が先行したことで、それが日本にとっての安全弁になると当時の日本政府は判断したのかもしれない。しかし、当時の大陸国家・中国は権力闘争が頻発した上に貧しかった。日本も米国も中国が経済的に追いつき、追い抜くことを想定していなかった。
 ところが、過去20年間、共産中国は世界から注目を浴びる存在に浮上していった。中国は「世界の工場」と位置付けられ、日本企業もその恩恵を享受した。反面、共産中国は海洋国家を標榜、ここで海洋国家・日本は対立要因を抱え込んでしまう。この点を日本政府は見抜いていなかった。この延長線上に尖閣問題がある。幸い、尖閣諸島は日本が実効支配、日米安全保障条約が適用される。とはいえ、領土問題は本来、当事国が解決すべき問題で外国に依存する問題ではない。
 日本は「世界の工場」、あるいは「市場」としての中国と、海洋国家としての中国という二面性を十二分に認識していなかった。ここに日本政府のミスがある。中国は日本にとって、永遠のライバルとなるだろう。ライバルとしての中国とどのような関係を構築していくのか、日本政府は処方箋を描き切れていない。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
安全保障:最も憂慮される事態は武力衝突、戦争。
 実効支配する日本の領海が侵犯された場合、武力行使はいわば正当防衛である。尖閣紛争勃発も視野に入れて、日本の軍事当局は防衛に努めなければならない。現段階では防衛力を強化することが最も肝要であろう。官邸は国民に武力行使の必要性を説明しなければならない。領土、領空、領海を防衛する手段として武力行使は当然の選択である。国民が武力行使を受け入れないのであれば、尖閣諸島は中国に、いわば略奪され、中国の実効支配を許す事態に発展することを覚悟する必要がある。
Q4. 回答する
海洋国家・中国、日本の永遠のライバル・中国との認識を深めて、今後の日中関係を模索していく必要性に迫られる。
 
 
沈才彬
多摩大学大学院フェロー(中国ビジネス研究所代表)
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
 デモに伴う、日本企業に対する破壊・略奪など違法行為には強く反対するが、なぜこの時期にこれほど大規模の反日デモが発生したかを日本側は重く受け止めるべきだと思う。
 反日デモの直接の引き金は野田政権の尖閣諸島(中国名:魚釣島)国有化措置である。APEC首脳会議での胡錦濤国家主席の強い反対にも関わらず、2日後の11日に閣議で国有化決定をした。中国側から見れば、野田政権の行動は重大な政策転換であり、中国への公然挑戦と受け止めている。日本の強硬姿勢に対し、中国も強硬姿勢に出る。反日デモは野田政権に対する強い反発と不信感の爆発と見て良い。
 周知の通り、日本の自民党政権と中国の共産党政権の間に、尖閣をめぐって、領有権問題の「争いを棚上げ」にし、外交問題にしないという「暗黙の合意」が存在していた。この「暗黙の合意」の下で日中国交正常化(1972年)と日中友好平和条約の締結(1978年)が実現された。日中間の互恵的な関係もこの「暗黙の合意」の下で発展してきたのである。たとえ小泉政権時代でも靖国参拝問題では日中が対立したが、領土問題の対立は避けてきた。1つの例として、2004年の中国人活動家が尖閣に上陸した時、日本政府は中国人を逮捕したが、即国外退去という政治決断したため、外交事件にならなかった。
 ところが、民主党政権が誕生すると、情勢は一変した。まずは鳩山政権は米軍基地問題で、日米関係がぎくしゃくした。続いて管政権・野田政権では自民党と中国共産党の間の「暗黙の合意」を破棄し、日中関係が俄かに険しくなった。いま韓国やロシアとの関係も悪い。外交問題での民主党政権の責任が甚だ重い。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
対中関係では、今すべてが憂慮される状態となっている。

 今のままでは、日中衝突のリスクが高まっている。衝突すれば、両国の経済が共倒れになりかねないし、国民の生命・財産も脅かされる。この事態は日本の利益にならないし、中国の利益にもならない。絶対に避けなければならない。避けるために日中双方は冷静に行動し、早急に関係の改善を図らなければならない。

 われわれは安全・保障とは何かを深く考えなければならない。実は、「安全・保障」は単純な軍事・国防ではなく、政治、経済、軍事、文化などを含めた総合戦略のことを指しているのだ。

 軍事・国防分野ではアメリカに大きく依存し、経済では中国市場に大きく依存する日本の現実から考えれば、「アメリカと親しく、中国と仲良く」という「親米睦中」戦略は日本の国益に一番かなう戦略であり、「安全・保障」戦略の基軸にすべきであると思う。

 アメリカ一辺倒ではなく、中国一辺倒でもなく、二つの超大国の間にバランスが取れる戦略は、日本にとってはベストだ。
Q4. 回答する
今回の日中関係悪化は「尖閣」領土問題に起因する。解決策として、次のいくつかの選択肢が考えられる。

①欧州の「北海油田」という成功例を参考に、主権問題を棚上げにする「共同開発」案。漁業・資源につい ては、双方が納得する形で利益を配分する。

②国際機関による仲介案。例えば、国際裁判所に仲介してもらう。

③双方に解決の知恵がない場合、再び「暗黙の合意」に戻る案。
 
 
木村太郎
ジャーナリスト
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
中国との「善隣友好」は幻想にすぎない
 「善隣友好の精神に基づき、かつ、平等及び互恵並びに内政に対する相互不干渉の原則に従い、両国間の経済関係及び文化関係の一層の発展並びに両国民の交流の促進のために努力する」という日中条約(第3条)を真に受けて、日本側は中国を近代国家として扱おうとしてきたが、中国側は「善隣友好」などは都合のよいときだけのお題目と考える国だということを見誤っていた。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
今回の事件と李明博韓国大統領の竹島上陸は、日本人の「平和ボケ」に冷水を浴びせることになった。
頼りの米国が「領土問題には介入せず」と言う以上は自前の自衛力を強化するしか日本のサバイバルの道はないだろう。
Q4. 回答する
新「脱亜」を奨める。
127年前、当時の清と李氏朝鮮が近代化を拒否し旧態依然たる体制にしがみついていたのを見て、時事新報は「悪友を親しむ者は共に悪名を免かる可らず」と、隣国だからと言って特別な関係を築こうとはしない方がよいと社説で「脱亜論」を展開した。
いままた中国と韓国が自分の都合で世界は動くと前近代的発想にしがみついている時に、日本が「悪友を親しむ」ことは日本の利益を損なうことになる。
もういちど、悪友との付き合いはほどほどにすべき時期にきている。
 
 
飯田泰之
明治大学政治経済学部准教授
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
領土問題の肝は実効支配
領土問題の交渉においては「実効支配」が覆ることはまれだ(あったとしても政変や戦争が中心)
その意味で実効支配の機会がいくらでもあった尖閣諸島を放置してきた自民党政権の責任は大きい.

さらに国有化に際しても,最も中華人民共和国を刺激する時期に刺激する形で行われたことも下策だろう.とうの昔に国有化しておくか,地権者との水面下交渉で「いつのまにか国有化されている」という進め方を選ぶべきであった.
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
2:安全保障(海上警備含む)
上記の通り

3:経済
中華人民共和国は民主主義とはほど遠い政体と資本主義を組み合わせた特異な体制下にある国である.今回は領土問題であったが,その他の話題においても着火点さえあれば民衆の不満はいつでも爆発しうる.今後の中国経済を考える上でもその政治リスクの大きさを十分織り込んでいかなければならない.
Q4. 回答を控える
 
 
潮匡人
国際安全保障学者,拓殖大学客員教授
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
「ごめんねって言うと、(相手も)ごめんねって言う」のはポエムの世界。国際社会では通用しない。謝罪外交は国益を損ねる自殺行為。そもそも海洋国家(日本)と、大陸国家(中国)は、戦略的な立場が相反する。自由、人権、法の支配など、海洋国家に普遍的な価値を掲げた外交で臨むべき。もう謝るのは止めよう。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
安全保障。このままなら、やがて尖閣諸島の島か岩を獲られる。日本としては、該船への立ち入り検査や公務執行妨害罪での立件など、法令が許す最大限の対応で臨むべき。入管法の「特例」によらない、原則的な対応が望ましい。「無害通航」でない中国公船に対処できる法整備も不可欠。
Q4. 回答する
「東アジア共同体」といった幻想を捨て、かつての「価値外交」に戻るべき。その上で、脅しに屈せず、挑発に乗らず、粛々と日米同盟を強化し、防衛力を高める。集団的自衛権の縛りを解き、自衛隊も兵隊の機能を担う。そうした政策変更が地域の平和と安定に繋がる。パシフィズム(厭戦平和主義)こそ戦争を招く。歴史の教訓を忘れてはならない。
 
 
武貞秀士
拓殖大学大学院特任教授
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
いま日中が国内世論を尊重し、長期的な観点から友好関係を維持し、技術、環境保護、工業生産、文化交流、災害支援などの分野で協力をしてゆくためには、短期的な緊張状態を覚悟せざるを得ない
「先に誠意を示して経済支援もして、相互理解を深めて、懸案事項解決の協議はそのあとで」という対中政策の基本方針は、中国に対しては効果が十分ではなかった。過去の歴史問題に関しては、日中間で決着がつくはずがないのに、信頼醸成の糸口になると信じて日本は一生懸命、「政府開発援助」(ODA)を中心に中国に支援をしてきた。日本人は「誠意を示せば、日本の謝罪の気持ちを理解してもらえる」と信じて対中政策を遂行してきた。そう説明してきた日本人も多かった。それが正しかったのかどうかが、いま問われている。結論を言えば、これまでの対中関係の築き方は良くなかったのである。
今回、中国でデモが拡大してしまったのは、日本政府の責任ではない。尖閣諸島を国有化しなければ東京都が買い上げただろう。そうすると日本政府が買い上げたときよりも早いテンポで日中摩擦は拡大していったに違いない。日本政府の買い上げ措置は間違っていない。また、東京都の動きが間違っていたのではない。国民の気持ちが東京都を後押ししたのだから。だから、騒動の発端となった東京都による買い上げ運動を非難する声は日本ではあまり聞かない。
 「中国や中国人は、誠意の通じない人々である」というつもりはない。中国人の対日意識は多様でありひとつではない。「日本人は親切で秩序を守る国民で、それが戦後いちはやく復興した理由だ」「日本人は根っからの平和主義者であり、中国人は誤解している」「日本が右傾化しているというのは、中国が創造した神話にすぎない」という中国人に会ったことがある。「日本には戦争主義者も平和主義者もいるが、中国が絶えず監視していなければ、日本はますます右傾化してゆく」「日本はいつ戦争を仕掛けるかわからないし、その能力があるが、いまはハト派が体制内(政治家、官僚、有識者)の主流だ」「日本は戦争を覚悟しているが、その能力と覇気はない」という人々にも会った。これらはすべて中国人の多様な対日観の一部である。私は中国東北部にある延辺大学で5、6回、3時間ずつ「日本の戦後防衛・外交政策」と題して朝鮮語で講義をしたことがある。また、上海、北京、青島、天津、長春の大学や研究所でも講演をして、いろいろな質問を受けた。先の多様な中国人のコメントはそのときに聞いた話の一部である。また1991年まで、当時、神田神保町にあった中国語研修学校の夜間コースに1年半通って、中国語を勉強したが、中国から教えにきている先生方は皆さんがしきりに日本人の国民性を称賛し、街の清潔さを指摘し、日中友好関係の将来を信じていたのを思い出す。私が大連に旅行する直前、「大連のバス停留所では中国人は、列を作ってバスを待ちます。満州時代、日本が教えてくれたのです」と話してくれたのは大連出身の先生だった。大連に行くと、本当に大連市民がバスの停留所で列を作ってバスを待っていた。中国は米国と同様に大国なので、本音ベースで話をすると様々な意見があることがわかる。
それに、日中の民間交流の成果が着実にあがっていることを否定するわけではない。まじめに日本で勉強をしたいという中国留学生が増えている。日本で仕事をして生活しようという向上心を持った優秀な中国の若者も増えている。日本への理解を深めてもらうための両国の努力はすこしずつ成果をあげている。知人の私立大学の教授は、大教室のなかで最前列に座ってノートをとり、積極的に質問をしてくるのは中国からの学生で、その次には韓国からの学生であり、日本の学生は勉強をしていないと嘆いていた。
 ただ、対日観は多様であるとして、中国には中央で国家の政策を動かすことができるシステムと、権力機関の大きな権限と、国家意思を迅速に実行に移すべく、さまざまな手段(有識者、マスコミ、党、軍を含めて)を使い、多様な国内世論を有機的に連携させて、ひとつの方向に収斂させる能力が備わっている。今回、中国全土でデモが拡大したのは、中国政府の外交部、国防部、その他ではメディアのほか、あらゆる部署が一斉に尖閣諸島の国有化措置を公然と批判し、「何が起きても日本政府の責任」というキャンペーンを開始したからだった。中国では容易にデモの規模は拡大する。政府が抑止するときデモは収束に向う。今回は政府が制御しないで、民間の不満をガス抜きしておこうと、一時、野放しにしたところ、その規模の膨れ上がり方に中国政府は、これはまずいと考え始めたということだろう。国民と国民の間の信頼関係とは別個のところで、中国政府が目標を「尖閣諸島を中国のものに」という点に定めた。日本が「まずは誠意を示して信頼関係を構築して」と対中政策で築いたつもりのものは、どこで機能したのだろうか。
 日本を知らない一般の中国民は、尖閣諸島に関する過去の歴史を教わっていないので、尖閣諸島国有化措置という日本政府の措置に憤慨して行動に走った。中国民の不満が爆発したとき、なぜこのように過激な破壊活動をともなうのかについては、中国の大衆運動の形態を研究している専門家に聞くほかないが、日清戦争勃発につながった1886年の清国北洋艦隊長崎事件(長崎での清国艦隊水兵の起こした騒動)と文化大革命がヒントになるかもしれない。
 中国民は尖閣諸島が中国領だと信じているが、1885年以降、日本政府が現地調査を行なったときは無人島であり、清国の支配が及んでいないことを確認し、1895年1月14日に現地に標杭を建設するという閣議決定を行なったあと、正式に領土に編入したことを一般の中国民は知らない。1895年5月発効の下関条約に基づいて日本が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれていないし、サン・フランシスコ平和条約に関しては、尖閣諸島は第2条に基づいて日本が放棄した領土のうちには含まれていない。第3条に基づき南西諸島の一部として米国の施政下に置かれ、1971年6月17日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)によりわが国に施政権が返還された地域の中に含まれている。そう指摘しても、その条文を読んだ中国民はほとんどいないだろう。米国政府はこの国際法的な背景を知っているので、尖閣諸島問題には深入りしない。どちらも傷つけたくないからだろう。当時、中国もサン・フランシスコ平和条約第3条に基づき米国の施政下に置かれた地域に同諸島が含まれている事実に異議を唱えなかったのは、「尖閣諸島は日本領土」を中国が受け入れたからだった。1970年後半、東シナ海の海底資源がクローズアップされてから中国が尖閣諸島の領有権を主張しはじめたことを中国政府は熟知している。だから、国際司法裁判所への提訴は回避したいのが、中国政府の立場である。
「そんな国際法など関係ない。日本がアジア侵略の過程で奪い取ったのだから、日本の解釈は間違い」という説明がある。これは歴史解釈の問題であり、日中間では結論はでない。歴史解釈と国際法解釈とは、アプローチが違うのだから、妥協点を見いだすのは難しい。「違っていても、誠意を示しながら、歴史解釈を接近させてゆこう」という日本の対中政策は、すれ違いを確認することに終わった。このことが証明されたのが、8月の日韓、日中間の摩擦の教訓であった。
 1970年代からの日中関係をふり返ると、日本政府の中国との関係の築きかたは良くなかった。尖閣諸島、南京事件などについて、日中双方の解釈がまったく平行線のまま、中国に対する政府開発援助を特別の基準で増額しながら、過去の歴史への償いという気持ちを込めて支援してきた。そして信頼関係を構築してゆくという路線を守った。遺棄化学兵器処理の案件も、誰かが日本軍から戦利品として接収したあと処理に困って遺棄したのかもわからないものも含めて、多額の経費を払いながら日本は誠実に処理をしてきた。そのような誠実さを理解してくれる相手だと思ってきたのである。相手がそのことに感謝して信頼関係を構築して、未来指向の日中関係を作りあげることができると、日本人は信じていたのである。
 しかし、「日本によるアジア侵略の歴史をどう解釈するか」という部分をあいまいにして残したのは、実は将来の火種を残したということになった。「貿易、技術、外交のどの分野でも、日本抜きで中国は大国の地位を維持できる」という自信を中国が持った時期と、地震、津波、原発事故が重なって日本の国力が低下する時期が重なってしまった。そして、中国がとった政策は、対日強硬姿勢であり、「尖閣諸島問題で何が起きても、日本の責任」という政策であった。北方領土、竹島、尖閣諸島・・・。今年の夏の日本の四面楚歌の状態を「水に溺れた犬は叩けということなのか」という嘆きの言葉をどこかで読んだ。
 繰り返しになるが、中国は国家としての戦略を建てて、関係機関が連携しながら、国内世論をコントロールしながら対外政策を繰り出すことができる国家である。中国が尖閣諸島を奪還すると決めたあとは、硬軟両用、あの手この手で、日本への政策を修正することができる。それに対応する日本は、国内に多様な世論、不十分な危機管理体制を抱えて、これからどうすればよいのか不明なまま当惑しているのが現状だろう。いままでの「先・誠意、後・解決」を追求してきた対中政策が正しければ、この当惑はなかったはずだ。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
 「2.安全保障」で最も憂慮する事態が起きるし、起きつつある。政治・外交、経済、民間交流、その他の分野で憂慮する事態がすでに起きてしまっているが、中国では安全保障という大枠のなかに、政治・外交、経済、民間交流、その他の分野が含まれる。中国では国益を追求して最高の結果をもたらすためのプロセスが戦闘であるが、その戦闘方法のなかに、通常戦、外交戦、国家テロ戦、諜報戦、金融戦、ネットワーク戦、法律戦、心理戦、メディア戦など25種類の戦いを含んでいるという研究書がある。それによると、普段の文化交流、相手の国の中国に対する貿易依存度を高めること、国連を舞台にしたスピーチ、外務省報道官の記者会見、漁業監視船の航行、海軍艦艇の派遣、新聞の社説なども「戦闘」の一部である。すべてが「戦闘」に含まれるという中国の発想を考えると、「安全保障についての憂慮する事態」を考えると、すべてを考えたことになる。
 いま中国は全力で尖閣諸島奪還に向っている。政治・外交分野では、日中首脳会談が当分、困難になるかもしれない。これからは国連総会、日中韓首脳会談など、多くの予定が控えているので、尖閣問題で首脳会談ができないとき、国際社会から「日本は何をしているのか」と見られるかもしれない。「外交戦」である。また、9月13日、中国外務省は、李保東(リー・バオドン)国連大使が、尖閣周辺を領海とする海図および基点、基線の座標を潘基文(パンギムン)国連事務総長に提出した。国連を舞台にした「法律戦」の開始である。あるいは国連での「外交戦」の展開である。経済では、中国での日本の工場の操業に支障が起きる。日本の対中輸出に影響が及ぶ。資源の日本への輸出を制限することなどが起きつつある。その損失は計り知れない。民間交流では、旅行を計画していた人々が取りやめる。旅館、ホテルは準備してきただろうから損失を受ける。様々な友好行事が中止になって、せっかくの楽しい気分が台無しになる。修学旅行の子供たちはとても残念だろう。奈良市、最高裁、その他の日本政府関係のホームページが書き換えられている。憂鬱な気分になる。「心理戦」である。私のところにも、奇妙なメールが毎日入ってくる。「中国のデモで発生した日本人の死傷者名簿です。添付ファイルを開けて下さい」とある。すぐに迷惑メールに登録しても、別のアドレスからはいってくる。開けたら終り。しっかりした諜報戦である。ヤフーのメールボックスなどは、定期的に北京の研究所のIPアドレスのコンピュ-ターから、開封されている。膨大な予算を使っているようで、いくらパスワードを変更しても、やはり開封されている。ただメールボックスは、開封した相手のIPアドレスから、どこに所在するかを追跡する無料サービスがあるから、どこの国、都市の人が何月何日何時何分に、他人のメールを開けたのか、5分で確認できてしまう。日に4回、同じ時間に、中国からアクセスしているという記録を出すまでに5分であった。
日中間で起きていることの影響は小さくない。いま中国は「心理戦」(日本の世論に訴える)「法律戦」(国連への書類提出)と「通常戦」(漁業監視船の航行)を同時並行して、教科書通りに実行しているのである。友好行事、交流行事を中止しながら、日本国民に対して「日本政府が悪いのです。だから、日本国内で政府に圧力を加えて、国有化を取り消すように、市民運動を起こしてください」というアピールは、心理戦の一つなのである。尖閣諸島周辺の中国の漁業監視船の出没も、いまの段階では心理戦である。「日本国民の立場で、日本政府の決断に反対しないと、次の一手は、もっと厳しいものになりますよ」というサインである。ひとつの意思のもとに、様々な「戦闘」を遂行し、最期は軍事力という伝家の宝刀を抜くのであれば、やはり安全保障分野の最悪のシナリオについて述べておく必要がある。

1 漁民風・民兵の上陸
中国は最終的には尖閣諸島を武力で取りに来る。南シナ海、東シナ海で中国が領有権を主張している島を奪還するための長期的な準備をしているので、中国の国防予算は異様に膨らんでしまった。いま漁船1千隻が日本に向かっているのは、人海戦術に日本がどう対処するかのテストだろう。やがてこの人海戦術は、漁民の上陸という事態に発展する。その場合、1千隻の漁船から20人ずつが下船して、2万人が魚釣島に上陸して、中国国旗をたてるとどうなるか。その漁民を退去させるために、沖縄県警、法務省、海保は汗だくになる。日本側の担当者は、がんばってもせいぜい、1千人。1千対2万。どうしょうもない。外務省が中国大使を呼んで抗議しても、「中国領です」という答えが返ってくるだろう。そのあと、中国の漁業監視船が、「自国民保護のために、中国の領海にはいる」といって、尖閣諸島に上陸する。沖には血ュヴ国の海軍艦艇が浮かんでいる。そのとき突然、2万人の漁民は中国海軍の服に着替えていて、中国が領土を回復したと宣言する。実効支配が中国側に移る。すると、米国は実効支配が日本側であったときと同様の対応をとるだろう。つまり「平和的に当事者が解決してくれることを望む」という現状容認の立場である。なぜなら、そこには、武力衝突、武力紛争、武力攻撃の形跡がないのだから。米国の立場は一貫性があるということになる。
 中国が確実に奪還した尖閣諸島を保持し続けるには、法律戦と外交戦と諜報戦と、軍事力が必要にてぐ。とくに航空母艦を中心にした空母機動部隊が必要になる。しかし中国が航空母艦2隻を運用するまでは、本格的な尖閣上陸作戦は困難なので、このシナリオは、中国海軍にとっていま直ぐは難しい。そのために中国は国産空母の完成を急いでいるのである。国産空母はまだ運用まで8年はかかるだろう。

2 日米安保発動の回避

 中国が米中での全面戦争を回避することは至上命題である。すなわち、中国は日米安保を発動させないような形で尖閣諸島を奪還する作戦を持っているが、能力の完成時期はまだ先なので、それまでは、絶えず漁民が周辺に現れるという「心理戦」を続ける。こうなってくると、日本にとって頼りになのは、日米安保条約である。
 日米安保とはいったい何か。第5条を見てみよう。解説によると、
「第5条は、米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である。この条文は、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している。第5条後段の国連安全保障理事会との関係を定めた規定は、国連憲章上、加盟国による自衛権の行使は、同理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの暫定的な性格のものであり、自衛権の行使に当たって加盟国がとった措置は、直ちに同理事会に報告しなければならないこと(憲章第51条)を念頭に置いたものである。」
 との説明だ。武力攻撃という事態でなければ、米国は傍観するということが、行間ににじみ出ているではないか。漁民1、2万人が上陸して、その後1日で海軍の服に着替えて、実効支配宣言をしたとき、米国は傍観するだろう。先日、訪日した米国防長官パネッタ氏は、「尖閣は日本の施政下にあるので日米同盟発動の対象となる」と言ったが、それは「武力攻撃があったとき」の話だ。先日、ワシントンのシンクタンクでの会議で「尖閣危機の場合、米国はどうするのか」という中国人記者の質問に対して、キャンベル国務次官補は、「米国はいずれの側にも組みさない、日中両国で平和裏に話し合いで解決してほしい」と答えたという情報が耳にはいってきた。そこで北澤・元防衛大臣は「尖閣は日本が独自に防衛する、米国の支援は求めない」と述べたそうだ。「中国漁民風・民兵による尖閣実効支配」に対しては、日米安保の下では米国は中立を守り、日本は領土死守のために、孤独な戦いをしますと述べたと、会場は理解したことだろう。
 日米安保条約によると、有事において尖閣が日米安保の対象となるという。しかし有事ではなく、あいまいな状態のときは、この安保条約は発動されない。米国は「平和裡に話し合いで解決をしてください」という。米国だって火中の栗を拾う考えはない。その結果、中国の実効実行支配が始まる。そのとき、死者がでても中国外務省は「すべての責任は日本政府が負うべきです」というだろう。
 まとめると、中国は武力紛争という事態にならないように、最初は1千、2千の漁船で1万2万の漁民を上陸させて尖閣諸島を占拠し、「中国による武力攻撃」ではないので、米国は静観する。米国は「両国で平和的に解決してください」と言う。日中友好宣言によると、「両政府は、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を 平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」となっているそうだ。やはり、中国は「武力」「威嚇」という事態を回避する。漁民が避難、上陸して、島から日本の担当者が追い出されたとき、国際社会は武力による解決とは見なさないだろう。

3 実効支配が続くのか

 しかしながら、2万人があそこで生活するのは至難の技。水、食糧、弾薬・・・。補給をしなければならない。そのために、中国は航空母艦、上陸用舟艇を建造してきた。唯一の航空母艦はまだ訓練用で9回の訓練航海を終えたばかりで使えない。しかし、そのほかの海軍艦艇は相当使える。自衛隊は「自衛権発動」「防衛出動」というかもしれない。しかし、そのうちに、中国の潜水艦が尖閣諸島周辺にうろうろしていて接近できないことが判明する。小型艦船も中国は動員し、この頃には中国本土からは、戦闘機、空中給油機が絶えず発進していることが確認されるだろう。
 2020年頃にこの事態は起きる。中国は軍事力を正面にして実効支配に向うのである。中国内の不満が高まってゆけば、作戦はもっと早い時期になるかもしれない。そのときジレンマに直面するのは米国だ。米国はどうするか。中国とは戦略的友好関係がある。その中国を説得することを試みるとしても、米国がオスプレイ配備でもめ続けた日本にどのような姿勢をとるだろうか。米国が中国を説得しようと試みたとしても、中国には米本土に届く大陸間弾道弾がある。さて米国はどうするか。米国は「平和的に話し合いで解決を」と繰り返して終わるのではないか。中国は「武力攻撃をした」と判断される行動を自粛しながら、巧みに米中友好関係を維持しながら島を奪取する。「そうなると日中関係は終わり。そんなことを中国がするはずがない」と、専門家は言うかもしれない。しかし、中国は「半世紀くらい日中関係が後退したとしても、尖閣諸島をとることができれば、そのほうがいい。中国はアヘン戦争から、170年も我慢してきた」と言うかもしれない。

4 日米同盟関係維持と、日中友好関係維持のために

以上のシナリオを回避するのは、漁民風・民兵の上陸が判明した段階で、自衛隊が総力で、尖閣諸島奪還に向うほかない。この場合は、この時点で日米安保第5条の該当例となる。武力紛争という事態である。このとき、日米は一体となるだろう。そのとき米国首脳が日米安保第5条の該当例ではないと判断するとき、その時点で日米安保条約は終わった、と日本は痛感するだろう。このような事態が起きないように、魚釣島に日米共同運用の駐屯地をおいて人が常駐すれば、以上のシナリオは、売れない小説のレベルで終わる。そしてそれは、日中と米中が正面衝突をすることを回避する道であり、中国の国益にも合致するのではないだろうか。長期的観点で論じるとすれば、日本の国力を考えると、中国と対等に、貿易、投資、軍事、外交を実施できるはずもない。核大国、ミサイル大国の中国である。日本の長期的備えということに関連して付け加えると、2000キロ飛ぶ巡航ミサイル、空母、弾道ミサイル、空対地ミサイルの保有、空中給油機と情報収集衛星の数を増やすことを検討するときだろう。
 これらの措置、対策はむしろ中国式発想に近いものであり、中国は賛成はしてくれないだろうけれど、日本人がいま何を考えているかを理解してくれるだろう。両国の正面衝突を回避するために、日本と中国の国家意思がどこにあるかをお互いが確認することから始めよう。冷戦時代、米ソが結局は核戦争に到らなかったのは、相手がどんな装備を持ち、何を考え、どのような事態で、どれだけの損害が生じるのかについて、米ソが互いに相手を理解していたからだった。
Q4. 回答する
 日中の友好関係が回復することを願っている。1972年の国交樹立以前でも、日中の間では様々な人的交流があった。そして、日中間には蓄積してきたものがある。日本には統計に出ない数も含めると100万人からの中国人が住む。多くは日本のファンだろう。なぜなら、中国に帰国しようとはしないのだから。その蓄積してきた人と人の交流、文化交流を続けながら、政治を絡めずに、中国の人々との交流を再開したいと願うが、相手次第である。経済関係では、中国は日本を追い出しても自動車産業では欧米、ヒョンデイがあると思っているだろう。エレクトロニクスでは、サムソンとつきあえば、日本はいなくとも良いという自信があるのだろう。モノレール技術、高速鉄道技術、自動車生産技術など、多くのものを日本は中国に移転し終えた。中国には、日中関係では失うものはなくなったという判断があるのだろう。日本は中国の人々に、静かに「井戸を掘った人を忘れないでくださいね」と語りかけても、もう遅いのかもしれない。中国との摩擦については、米国、欧州各国と日本が協調することも大事である。経済と政治を絡める手法が、自由貿易に反することを、欧米と連携して中国に提起してゆく。
 中国はまちがいなく大国である。上海の学者と、中国共産党と人民解放軍の艦船と、日本に在住している中国人留学生が連絡をしあうということはないのに連動して、国益というひとつの目標に向って、それぞれの仕事をすることができる。そして、情報収集力、金融資産、巧みな弁舌の能力、生産の規模、消費市場の大きさ、労働人口、どれをとっても日本が対抗できるはずがない。
日本は米国の教えを守って、(マッカーサー憲法のこと)、いざというときの神頼み(日米安保条約のこと)の強化をはかってきた。しかし、気づいたら経済が右肩下がりとなり、災害に苦しみ、領土警備はスキだらけであることが判明した。
吉田ドクトリンの趣旨に沿ってGHQの敷いた路線を守っていれば安全と考えていたのは昔の話である。隣の国々が、自信をつけて国際地位を上昇させて、装備を近代化して、日米同盟のアナを理解し始めた。いま、安全保障分野が最も危ない。このことを、次の総理の座を狙う人々は知っておいてほしい。
 
 
小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
石原都知事のスタンドプレイが引き起こした事件に過ぎない。
今回のデモは関係ない。

石原都知事のスタンドプレイが無駄な争いを起こさせただけだ。

日中両政府は、石原都知事を民事で損害賠償請求の提訴を起こすべきだ。

松下もトヨタもイオンも共同で原告になるべきだ。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
政治・外交と安全保障。

この2つは一体。分けるのはナンセンス。
Q4. 回答する
各個人レベルでは、今後も関係はみるみる良くなっていくだろう。
 
 
熊谷亮丸
大和総研チーフエコノミスト
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
民間は総じてよくやってきたが、原理・原則を貫かない、政府の態度には大きな問題があった。
Q3. 回答を控える
Q4. 回答する
日本政府は以下の2つのことをバランスよく行う必要がある。

第一に、過去の安易な妥協がここまで中国を増長させてしまったことを真摯に反省し、尖閣諸島が日本の領土であることをぶれずに主張し続けることが必要だ。法制上の様々な手当てなどを進めると共に、国際的な広報活動も強化するべきである。国際社会では、日本人の美徳である「思いやり」などは通じない相手がいることを強く意識せねばならない。

第二に、外交ルートをフル活用し、中国が振り上げたこぶしをおろす口実を与えてあげることも必要だ。中国も本音では落としどころを探っているはずである。
 
 
マリヨン・ロバートソン
都市開発会社Metplan社Chairman and CEO
Q2. 「4 - 良くなかったと思う」の回答理由
内向的で謙虚、不合理な事に絶え、そして争いを好まない国民性。決して悪い訳ではなく、むしろ平和的な愛される立場に有るべき日本国民だが、残念ながら国際社会は日本人のメンタリティや良識とは違う世界で形成されている。
事実とは異なっても、主張をして権利を勝ち得る仕組みで動く日本を取り巻く諸国。朝鮮半島の二国、そして更に巧みな中国。いつになったら、周りは非日本人に囲まれていると気がつくのだろうか。日本国内での手法は外では通用しない認識を強く持つべき。今回の暴動、決して精神的成熟度が高い日本では起こりえない。しかし、かの国では意識の低い人々を操り、煽動し、巧みに演出する組織がある。それが政府の中枢からと断定はできないが、無関係とは言い難い。一連の中国政府高官の高圧的かつ一方通行な発言は、対日デモを抑制しながら抑揚するダブルスタンダードの典型だ。一握りの輩、と云っても人口の多い国だけに半端な数ではないが、醜い国内の一面をさらけ出すのをいやがり、躊躇う中国人は絶対多数と思うが、政治の世界にその良識は無い。中国政府をそこ迄増長させた責任は、日本政府にも多々有る。経済、文化などの民間レベルで、中国側の影響力を持つ組織や個人とのネットワークを深くする方が、中国政府のイデオロギーの変換を望むより効果があるだろう。人が悪いのではなく、間違った情報やうがった事実を伝え教える組織が問題なのだから。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
政治・外交/安全保障。この二点は現時点ではリンクされた事。威嚇、暴力や破壊行為を容認する政治姿勢を持つ国との外交に対する手段は、従来通りの”話せば分かる”方式で無く、日本にとって理不尽な要求は決してのまない、そこに妥協は無いと示す態度と、腹を据えた外交を押し付け返すべき。更なる暴動がそれによって引き起こされた場合、中国の国際社会での信用は低下するはず。日本が問題を起こさない、穏健な国と世界は認めているから。
Q4. 回答する
政府間では、唯一の独裁政治組織、中国共産党との協調を求めるが故、第二次大戦後、戦争加害者でという立場に立たされ、遠慮がちにしか事を運ばなかった政治外交姿勢は改め、その弱点に振り回されていた過去を払拭し、強い外交方針を貫く。
民間では、。真に対等なレベルで(自薦・他薦の中国通有識人は数多くいるが、単なる中国マニアである場合が多いのでは)、マジョリティとなる、良識ある文化や経済界の民間人との関係をもっと発展させる。一朝一夕ではできないだろうが、このまま中国共産党が、ソビエトやかっての東欧共産諸国のように崩壊し自ら変革を待つわけにもいかない。
 
 
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5. その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)

浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
民間レベルで経済関係を中心に結びつきを強めてきたことは積極的に評価できるが、中国経済が未成熟であることや、歴史教育の在り方に関する日中のズレなど、見たくないものから目をそらしてきたことに対しては反省も必要。
民間レベルで経済関係を中心に結びつきを強めてきたことは積極的に評価できる。

他方において、中国経済が未成熟であることや、歴史教育の在り方に関する日中のズレなど、見たくないものから目をそらしてきたことに対しては反省も必要だろう。

また、中国の積極的な人材育成に対して、日本はどうだろうか。たとえば法務の分野では後れを感じる。中国人は多くの若者が海外に学び、成長しているのに対して、日本は内向きの教育になりつつあり、戦略的な発想の弱さが否めない。

今回のデモは、複合的な要因が絡み合っているようであり、現段階では全体としての評価が難しいが、直接的には、石原氏の尖閣諸島の購入への動きから国有化に至る日本政府の数々の失敗が重なったことが引き金となっていることは否めない。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
1:政治・外交 および 2:安全保障(海上警備含む)
最も憂慮すべき事態は武力衝突もしくは実力行使だが、そうした危機的な事態となれば、当面はアメリカとの連携の中で、とりあえずの棚上げを状態に戻すことを目指すしかない。ただ、そうならないような外交努力が不可欠であることは当然だが、相手方があることなので。

3:経済
中国経済にも未熟で不安定なところがあるので、法的な規律の整備などをさらに進めてもらうように、これまで以上に支援をしていくべきだろう。経済のインフラとして、法制度の整備に日本が何らかの影響を与えつつ(特に中国とと日本の法律専門家や留学生の交流強化等)、東南アジアの中でリーダーシップを発揮していくようにすることが重要な課題である。(ちなみに、日米同盟の背景として、日米において多くの法律家・留学生が交流して、日本の法制度が米国から強い影響を受けてきたことは極めて大きな意味を持っている)
Q4. 回答する
両国民とも、一般の人々にとって、領土問題は、ほとんど、まったく何の利益とも関係ないことを認識すべきだろう。それよりも、それぞれの平和な経済活動や生活の安定、相互の文化の尊重といったことが大事なことである。

権力闘争とか、ナショナリズムだとか、権益などによって、大衆が愚かな争いに駆り立てられることを食い止めることが必要だということを、日中両国民がしっかりと認識して、為政者をコントロールすることが期待される。過去の歴史においては、一部の人たちの愚かな選択が戦争によって多くの人々の命を奪ったことを忘れてはならない。

もっとも、近隣で紛争は避けられない。日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約 第1条2項は「両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」と定めているが、この平和的手段による解決には、外交的な解決のほか、司法的な解決を含むものと考えられるので、両国とも、そうした大人の解決ができるような成熟した国家になることを期待する。
 
 
原田曜平
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
回答を控えます。今回のデモが拡大している背景についてのみ回答いたします。

最も大きいのは、ここ数年、民衆の生活実感レベルで中国の景気が悪くなってきていることだと思います。
GDPの伸びが鈍化しているとはいえ中国経済は成長していますが、その一方で、経済成長に連動して
給料が上昇していかない人々がかなり増えています。
そのような状況にもかかわらず物価は上昇していますし、マンションなどの価格も下落しています。
今回のデモの拡大の背景には、中国が高度成長ステージから、低成長、そして成熟ステージへと向かう
過程における不具合の不満のはけ口という側面もあると思います。
Q3. 回答する(冒頭に分野をご明記ください。例:「1:政治・外交」)
「3:経済」
については、問4で回答します。

「4:民間交流」

若者研究家として憂慮しているのは、日本の若者たちの間で中国や中国人に対する無関心や苦手意識が高まっていることです。積極的な意味での反中意識を持つ子は一部に過ぎませんが、若者の多くは、ただなんとなく嫌いで接したくないといった状況になってしまっています。今回の騒動があるとはいえ、中国の若者の日本に対する意識は、大きなトレンドとしては良いものに変わってきているので、どちらかというと将来に向けての課題は、日本の若者の中国に対する意識だと思います。2015年にはASEANが経済統合されますし、今後、中国を含めたアジアエリアは、日本経済にとってもっともっと重要になってきます。そうした状況で、日本の若者たちがアジアの最大国家である中国に無関心になっている状況は好ましいものとは言えません。
Q4. 回答する
日本にとって、経済的に中国は大変重要な国になってきていることは間違いありません。しかしながら、両国には政治上の問題が今回のように年中行事のように発生してしまうので、日本企業や現地邦人にはそれが大きなリスクとなってしまっています。中国とは良好な関係を維持しつつ、6億人マーケットを抱えるASEAN諸国など他国への人的・金的投資についても、今後より意識をしていくべきだと思います。その一方、ここ数年経済成長が鈍化してきた中国にとっても、日本は経済上欠かすことのできない重要な国になっていますから、日本は意識も含めた中国への依存度を低めた上で、対等かつ良好な関係を築くことが大切になってくると思います。
 
 
朴斗鎮
コリア国際研究所所長
Q2. 「5 - その他(設問・選択肢以外の視点・考え方)」の回答理由
中国は三権分立の民主主義国家ではない。一党独裁国家である。また中国は社会主義を放棄したわけでもない。市場経済を取り入れながら今も中国式社会主義を追及している。そうした国家の市場経済と日本や韓国のような民主主義国家の市場経済を同一視して同じ船に乗れると考えたら間違いだ。また市場経済が拡大すれば自ずと民主主義へ向かうと考えるのも間違いだ。
北朝鮮や中国に対する政策を日本の価値尺度で推し量って立案すれば間違いが起る。発想の根本が異なるということを肝に銘じる必要がある。関係拡大はしっかりとした安全保障体制を前提にしなければならないということだ。特に中国の覇権主義が顕在化した今日の状況下ではそうだ。
平和憲法下の日本の安全保障は、日米同盟と日韓連携によって成り立っているといえよう。対中国経済利益の追求は、こうした同盟・連携関係に基づく戦略的視野での国益追求となるべきだ。
これまでの日本の対中国政策を振り返った場合、東西冷戦時代はおおむね妥当であったと思えるが、冷戦後、特に2000年以降のそれは経済利益追求に傾きすぎたきらいがある。その根底には、東アジアにおいても冷戦が終結したとの認識があったのではないだろうか。
しかし、東アジアの冷戦はまだ続いている。朝鮮戦争は「休戦」状態であり、北朝鮮にはスターリン独裁を極限化した一人独裁体制と冷戦思考がそのまま残っている。中国はこの体制を「核心的利益」に位置づけ支えている。
日本の対中国政策は、こうした東アジアの現実に照らして洗い直しが必要だと思われる。
Q3. 回答を控える
Q4. 回答する
経済関係の拡大と日米安保に基づく安全保障強化とのバランスをとる必要がある。
 
 
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