フジテレビバスケットボール

第11回 アーリーカップ総括

「開催したことでプラス材料、今後への改善点や問題が見つかったアーリーカップ」

ジェッツとブレイブサンダースに競り勝っての関東アーリーカップを制したアルバルク

Bリーグの公式プレシーズンゲーム、アーリーカップ開催の話を耳にしたのは4月上旬のこと。正直なところ、プレシーズンでトーナメント戦を行うことについては、あまりいい印象を持つことができなかった。プレシーズンゲームは、チームの現状を知ること、ローテーション入り選手を誰にするかを判断する材料にするといった要素が、指揮をするコーチからすれば勝負よりも優先したくなるものだ。

レギュラーシーズンと変わらない執着心が見られた関東アーリーカップ

NBAのプレシーズンゲーム、特に最初の数試合は、スターターの出場が1Qと3Qの半分程度、トータルでも15分未満の場合が多い。
4Qの12分間は、若手の控えやロスター入りを目指しての競争に直面している選手たちがコートに立ち、ミスの多い試合になってしまい、面白みに欠けることもしばしば起こる。
NFLが日本でプレシーズンゲームを開催した際も、スーパースターのクォーターバックが登場するのは1Qで2回オフェンスを行う程度。試合の終盤になれば、NBAのプレシーズンゲーム同様、ロスター入りをかけた選手たちによる競争になっていた。

しかし、アーリーカップはプレシーズンゲームといえ、どのチームも勝負にこだわる戦いをしていたのはいい意味での驚き。実際に取材した関東アーリーカップは、多くのファンが駆けつけたことでレギュラーシーズンのような雰囲気になっていた。
それは、アルバルク東京のルカ・パヴィチェヴィッチコーチが決勝戦後、「プレシーズンにもかかわらず、満員の観客で埋まったアリーナで試合ができたことはよかった」というコメントでも明らか。選手たちはファンの熱心な声援に呼応するかのように、ボールのないところやリバウンド争いで激しい攻防を展開。
栃木ブレックスのベテラン、竹内公輔がルースボールにダイブしてマイボールにしようとしたプレイは、どんな状況でも全力を出すことを象徴するもの。「公輔のダイブで今年も大丈夫だと思った」と、田臥勇太はチーム内に正しいメンタリティが浸透していることを実感していた。

ホストチームを務めたジェッツの司令塔として存在感を示した富樫

優勝したアルバルク東京を筆頭に、多くのチームがレギュラーシーズンを想定したローテーションで選手を起用。
特にホストチームとして優勝を狙っていた千葉ジェッツは、アルバルクとの決勝でマイケル・パーカーの32分2秒を最高に、3人が30分以上プレイしていた。5位という結果に終わったといえ、サンロッカーズ渋谷の長谷川智也が3Pシュートで存在感を示すなど、新加入選手にとっていいアピールの機会になったのはまちがいない。

アーリーカップだからできるいい意味でのチャレンジということでは、川崎ブレイブサンダースは北卓也ヘッドコーチが佐藤賢次アシスタントコーチに2試合指揮させたことや、今季から112名になったレフェリーたちに経験を積ませる機会になったことをあげたい。特に、各地に派遣された90番台と100番台のレフェリーはルーキーであり、選手やコーチからの文句だけでなく、観客の不満を直に体感する機会が少なかった人たち。試合中にどのような対応や姿勢が求められるかを把握し、レギュラーシーズンで実践するためのプロセスにできることからすれば、アーリーカップの開催はレフェリーたちにとってプラスと言えるだろう。

観客たちを魅了した6チームのチアリーダーたちによるパフォーマンス

関東だけに賞金やアワードの賞品が出るといった開催地ごとに差があることへの異論が出るなど、明確となった今後の課題については、Bリーグの大河正明チェマンが「第2回目の本大会に向けては、トーナメント方式や演出内容、賞金、中継など、より多くのみなさまにお楽しみいただけるようにチャレンジしてまいります」という声明を発表。アーリーカップに限らず、Bリーグ全体の価値を高めるためにも、「BREAK THE BORDER」というスローガンのごとく、新たなチャレンジに挑み続けることを期待したい。