フジテレビバスケットボール

第7回 山形ワイヴァンズ・エクゼクティブコーチ / ジョセフ・クック

「指揮官として迎える初めてのシーズンは、チームの一体感と勝者のメンタリティー構築に全力を注ぐ」

指揮官として勝利のカルチャー構築と組織の成長を目指すクック

26勝34敗。B1昇格を目指す山形ワイヴァンズにとって、昨シーズンは不本意な1年だった。
このオフ、勝てるチームに変貌するために進めた改革の一環として、秋田ノーザンハピネッツで3年間アシスタントコーチを務めたジョセフ・クックを指揮官として招聘。
外国籍選手の選定といったバスケットボール関連事項の決定権を与えられたことで、肩書きはエクゼクティブコーチとなる。

目標を明確にし達成するために、全力で練習に取り組む

32歳の若き指揮官といえ、クックはサクラメント州大を卒業して以来、ずっとバスケットボールに関わる仕事をしてきた。
NBAのサクラメント・キングスではビデオコーディネーターとして働き、2013-14シーズンにカナダNBLのブランプトンA’s(オレンジビルA’s)でアシスタントコーチを務めた経歴を持つ。
NBAのチームでビデオコーディネーターになることは、将来コーチとして出世する可能性があることを意味する。
その代表的な人物が、ヒートで2度NBAタイトルを獲得したエリック・スポールストラであり、クック自身もハードワークの積み重ねと実績次第では、NBAでコーチになれる可能性が出てくると思うのが自然。
そんなクックが、なぜ日本に来たのか?
その答えは、トロント・ラプターズのヘッドコーチを務めるドウェイン・ケイシーとの出会いだ。
「どうして彼と出会ったのかといえば、パスポートを更新するためにアメリカ領事館内で列に並んでいた際、彼は私の真うしろにいた。NBAでつながっていたわけじゃないけど、そこで会話が始まったのがきっかけ」
と振り返ったクックに対し、日本でコーチした経験と人脈を持っていたケイシーが、秋田の関係者に紹介したのがすべての始まり。キングスでハードワークがどういうものかを学び、秋田で成功と苦難のシーズンを経験した後、B1昇格を目指す山形で指揮官としてのキャリアをスタートさせることに、躊躇することはなかった。
「山形の人たち(経営陣)に会った時、オファーを受け入れるという予感はあったし、それが自分にとってベストと感じた。他にもオファーがあったけどね」
そんなクックにとって最大のチャレンジは何か?
と質問すると、正直わからないという答えが返ってきた。
すべてのことが新しいという理由をあげる一方で、目標を明確に定め、それに向かってきちんと準備し、達成するために全力で、正しい方法でやり続けて浸透させること。
7月から日本人選手を集めて練習を行っているが、クックは今シーズンに向けての手応えをすでに感じている。
「今シーズンをすごく楽しみにしている。我々にはいい選手たちがそろい、この1か月の練習で勝てるシーズンにするために必要な部分があり、お互いにうまくフィットしているのもわかった。サイズもスピードも強靭さもあり、必要とされるものはすべても持っていると思える。昨シーズンよりも若いチームという事実も気に入っている。その理由は、みんなで成長し、向上できるからだ。彼らと一緒に過ごせるのをすごく楽しんでいるし、ゲームへの熱意とエナジーがあり、この1か月でポジティブな要素を数多く見てきた。成功のシーズンになることを楽しみにしているし、ここ山形で勝利の文化を作り上げ、組織の成長を継続させることができればと思っている」
9月8日に開幕する東北アーリーカップで、山形はホストチームとして出場する。
ワイヴァンズのファンからしてみれば、同じB2東地区のライバルに勝って優勝してほしいと思うはずだ。
しかし、クックは長いレギュラーシーズンを戦うための準備として、若いチームが成長するプロセスとして、集中を失わずに正しいプレイをチームが一つとなってできるかを重視する。
それは、今季のスローガンとなった“WE” is greater than “ME”(WE>ME)、「チームの力は個々の力を上回る」ことを体現できれば、結果がついてくるという自信の表れ。
B2東地区のライバルに対し、“今シーズンの山形は違う”ことをアピールする絶好の機会と言えるだろう。

選手を自ら指導し、確実に向上への手応えを感じ取っている