フジテレビバスケットボール

第6回 栃木ブレックス・田臥勇太選手

「揺らぐことのない一貫した姿勢からきているビッグゲームでの強さ」

この瞬間を再び味わうために、田臥は新たなチャレンジに挑む

能代工で過ごした3年間で9度の全国制覇、2010年に栃木ブレックスでJBL制覇。
田臥勇太は決勝、ファイナルという名のつく試合になると、負けないという印象があった。しかし、実際は昨年のオールジャパン決勝では、アイシン(現シーホース三河)に73対89のスコアで敗戦。
21分間のプレイで2点、1アシスト、2ターンオーバーというスタッツからも、田臥がフラストレーションを感じた試合だったのは想像できる。
また、「そもそもそんな決勝に行っていない、という印象が強いですね」と語るように、プロ生活で頂点に立った経験が一度しかない事実からも、決勝の舞台を踏んだ機会は確かに少ない。

肝心な局面でシュートを決められるのも田臥の強み

川崎ブレイブサンダースとのB1初代王者を決めるファイナルで、田臥は肝心な局面で違いをもたらすという点で存在感を示した。理由の一つは、5本中3本のアシストを4Qで記録し、そのすべてがこの試合で得点源となったジェフ・ギブスへのものだったこと。
マッチアップした川崎の篠山竜青の「今日の試合は本当に田臥さんに“まだまだ甘いよ”って言われているようなゲームになったなと自分の中で思っています」という言葉は、田臥が正にビッグゲームの大事な時間帯で、真の実力を発揮していたことを象徴するものだった。

フェニックス・サンズでのNBAデビュー戦を含め、田臥を何度も取材してきたことで感じるのは、バスケットボールに取り組む姿勢の一貫性である。
6月3日の優勝パレードと報告会の後に話を聞いた際も、B1を制覇するまでの道のりにおいても、「1試合1試合しか考えていないです」という言葉を繰り返していた。
レギュラーシーズンでは勝っても負けても、優勝するためのプロセスとして、決して一喜一憂することはない。
4月2日のアルバルク東京戦を3点差で制した後も、「連勝というよりも、目の前の1試合の勝利を目指して戦うことに重きを置いている」と話していた。
また、“危機感を持ってやる”という言葉も多い。田臥が口にする危機感は、無駄な時間がないことを意味している。
過去2シーズンで味わった悔しさを晴らし、B1初代王者という目標を達成するためでしかなかった。
「全部がそうですね。そこにつながりますね」と振り返ったように、悔しさをモチベーションに変えてハードワークを続け、それがチーム全体に浸透したから成果は、栃木のB1制覇と言っていい。
「チーム全員で戦うというのが、シーズンが進むにつれて強くなってきて、ファイナルの舞台でそれがさらに形となって優勝できたので、このメンバーで優勝できて本当にうれしいです」という田臥の言葉が、すべてを物語っていた。
来シーズン開幕早々に37歳になるといえ、バスケットボールへの熱意、プレイの質で衰えはまったく感じられない。
アワードショー後に「チームとして優勝目指してやっていきたいと思います」と話したように、2連覇という厳しいチャレンジに挑む覚悟が田臥にはある。
その道のりの始まりが、9月に船橋アリーナで開催される関東アーリーカップだ。
シードとなった栃木は、千葉ジェッツ対横浜ビー・コルセアーズ戦の勝者と対戦する予定で、勝てば川崎とのファイナルが再現されるかもしれない。

「カンファレンスやチームが変わり、今年よりも激しくなると思います。その分強いチームとやればやるほど、今回も本当に感じたのですが、東地区で揉まれたからこその優勝というのが絶対あったと思うのです。今回違うチームが入ってきて競争が激しくなりますけど、また揉まれるいい機会になるなと思います」

こう語る田臥は、アーリーカップでも今までと変わらず、1試合1試合に大きな意味を感じながらプレイし続けるだろう。今シーズンのようにいいコンディションを維持し、ファンを魅了する試合ができることを、田臥自身も楽しみにしている。

チームが一体となって戦うことは、成功を手にするための絶対条件と熟知している田臥