フジテレビバスケットボール

第4回 琉球ゴールデンキングス・岸本隆一選手

「苦戦したB1での今季は、新たなミスター・キングスになるためのプロセス」

9月22日、代々木第1体育館で行われたBリーグ開幕戦、岸本隆一は琉球ゴールデンキングスの中で注目度の高い選手だった。
2014年のbjリーグ・ファイナルで秋田ノーザンハピネッツ相手に34点の大爆発をするなど、ビッグゲームに強いことを示した過去がある。
レンジの広いシュートが当たり出すと、だれも止められないスコアラーになることも忘れてはならない。
しかし、アルバルク東京は元NBAのディアンテ・ギャレットにマッチアップさせるなど、厳しいディフェンスで対応。29分28秒のプレイでわずか4点と、岸本は仕事をさせてもらえなかった。
また、今までに経験したことのない緊張感から、開幕戦を「きつかったなということですね。マジで吐きそうだったんですよ。あの試合は疲れました」と振り返る。
クォーターファイナルでシーホース三河に敗れるまでの約8か月間、岸本はチームとしても個人としても結果が出ないことに苦しんだ。昨季までのbjリーグから一気にレベルが上がったことに、なかなか順応できなかったのである。

ピック&ロールの奥深さを改めて実感。

「Bリーグになってからというか、旧NBLのチームにはなんでもできる選手が多いかなと思いました。bjリーグの時ってシュートは上手だけど、ディフェンスはそんなしないとか、逆にディフェンスはすごく上手だけど、オフェンスがさっぱり…。それはそれで役割があってのことですし、そういうバスケットボールとして成り立っていました。バランスのいい選手が多い中で、自分としては、例えばオフェンスがうまくいっていない時に、ディフェンスで貢献できないというのはダメだなと。そういう意味では、どっちかがダメでも貯金がある選手がすごく多いと思いました」

持ち味である得点力を筆頭に、スキルの部分でやれる自信はシーズンを通じて実感していた。
琉球がシーズン終盤に勝ち星を増やし、レギュラーシーズン最終週で大阪エヴェッサに連勝し、逆転でチャンピオンシップ進出を決めたのは、岸本がプレイの質を上げたことも理由の一つ。
スコアラーとしてだけでなく、得点機会をクリエイトする機会を増やしていたことだ。

「ピック&ロールのところでもう少し自分の仕事をしなければいけない。それがうまくいっているときは、チームとして得点するパターンもいい流れでしたので、そこはすごく意識してやっていました。これからもっと増やしていかなければと思います」

こう語る岸本は、ピック&ロールの奥深さを改めて実感。
シュートを打たなければいけないというこだわりがなくなり“チームメイトを生かす”、“いい得点シーンを生むため”という意識を持つことにつながった。
シーズン終盤でプレイの質を上げた要因は、生きていくために必要だと思っていた点を奪うことへの強い執着心が少し薄れたと同時に、持ち味を引き出すための選択肢を増やせたことが大きい。

結構長かったというB1での1年を終わった後、長年チームを牽引したアンソニー・マクヘンリーがチームを去った。
また、佐々宜央がヘッドコーチに就任するなど、琉球は来季に向けた新たなチーム作りをスタート。
それは、沖縄で生まれ育ち、キングスでプレイすることを夢見ていた岸本が、ミスター・キングスとしてチームの顔になることを意味する。

「あるとは言えないですけど、その都度必要なことをしっかり探して、遂行していけば、自ずと必要な選手になると思います」と、岸本は佐々新コーチの信頼を勝ち取ることが最優先という気持が強い。
チームが生まれ変わる琉球にとって、関西アーリーカップに参加することは大きな意味がある。

「全然どうなるかわからないですが、僕の今のイメージでは新しいキングスというのがおっしゃる通りなので、相手を負かすというよりは、プレイタイムを勝ち取るために自分をいかにアピールできるか、ということかなと思っています。チーム内での競争の場という位置付けになるかなと」

こう語る岸本は、これまで2、3試合しかなかったプレシーズンの試合が多くなることを歓迎。
その理由は、今まで自身が感じていたシーズン前の準備における物足りなさを解消できることに加え、
「やるからには優勝したい」と語るように、公式トーナメントということでモチベーションを保てるからだ。B1でトップレベルのガードに成長し、新時代のミスター・キングスになるということでも、岸本にとって来季が今季以上に重要な1年になるのは間違いない。

岸本自身プレイの質を上げたことがチャンピオンシップ進出の理由の一つ。