フジテレビバスケットボール

第10回 秋田ノーザンハピネッツ・田口成浩選手

「秋田で続けることへの迷いはなし。目標は県民の期待に応えてのB1復帰を実現することのみ」

シュート力については日本でもトップクラス

横浜ビー・コルセアーズの川村卓也が決めた逆転ブザービーターで、秋田ノーザンハピネッツは衝撃的とも言える敗戦でB2降格が決まった。ファンだけでなく、プレイしていた選手たちのショックも想像を絶するものだったのは、得点源の一人である田口成浩の言葉が象徴している。 「最初の1週間はほとんど家で引きこもっている感じでした。切り替えることができたのは契約し、新しいヘッドコーチが決まったりした時に、“やるしかない”という感じになったと思います。ちゃんとということになると、結構厳しかったですね。(bjリーグで)優勝できなかった時もへこみましたけど、それはやり遂げた結果、決勝の舞台だったので。今回は落ちるという、自分だけでなく県民の人たちの分も背負っていたので、すごくこたえましたね」

今季の田口は覚悟をテーマにアグレッシブな姿勢で戦う

ポジティブで明るい人間性が特徴の田口でも、バスケットボール人生で最も辛い出来事であり、精神的に立ち直るまで相当の時間を要した。
それでも、秋田に残ることへの迷いはまったくなかったという。昨季平均11.5点、39.1%の3P成功率がリーグ9位というスタッツからすれば、他のB1チームからの勧誘があっても決して驚くべきことではない。
しかし、「1年でB1に上がるというのが責任として自分の中にある」という気持、県民に対する思いの強さがあるからこそ、秋田に残留するという決断は難しくなかった。
B1復帰という明確な目標の下、このオフの田口は「個人的にはケガしない体を作っていますし、また連続試合出場記録(2012-13シーズンから全試合出場中)もあります。
フィジカル負けをしないように体をデカくし、かつキレのある体を作ること」と語るように、タフな選手に成長するための日々を過ごしている。

もちろん、スキルの向上でも貪欲なことは、「ピック&ロールのところで確率のいいパス、ミスをしないようなプレイを増やしていけるようなこと。オフの間、ファンダメンタルやフットワークなどはかなりやっていました。その部分が試合中に出れば、いいパフォーマスが出ると思っています」という言葉でも明らかである。

B2で戦う今季、田口に求められるものは何か? と問われれば、その答えは肝心な局面での勝負強さ=川村のようなビッグショットを決められる存在になることだろう。
勝負強さは努力の賜物だけでなく、天性のものがあるかも大事なポイント。
昨季のオールスターにおける3Pコンテストで、田口は最後の1本で金丸晃輔を逆転して頂点に立ったことからすれば、ビッグショット・メーカーのポテンシャルがあると言えよう。

「あれは集中が高まりましたね。ただ、試合中のプレイというのはまだまだ確率を上げていなければならない。あのようなお祭り騒ぎの時はいいのですが、真剣勝負の時にまだ低いので、お祭り騒ぎのような感じを試合に持っていきたいのはあります」

と話すように、チームプレイを重視しながらも自分でやるという姿勢を前面に出し、肝心な局面でシュートを決められる選手になることを望んでいる。
今季の秋田は新指揮官としてジョセップ・クラロス・カナルス(愛称はペップ)を迎え、外国籍3人もすべて新加入ということで、チームが大きく変貌する。
ペップが目指すバスケットボールを開幕までに体現できるように、これまでの練習で重視していることを田口に聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

「激しいディフェンスから速いオフェンスに切り替えて、それで相手を苦しめるというのが、今やっている中で感じられることです。それに向けて体力もそうですし、ファンダメンタルの部分も必要になってくると思いますので、オフェンスだけでなく、ディフェンス、リバウンドなどすべてにおいて、一人一人が自分の役割を全うするようにかなり追い込んでいますので、すごくいい感じで仕上がってきている感じはあります。自分はすごく期待しています」

9月8日から行われる東北アーリーカップは、田口と秋田にとってチームの現状を知るうえでいい機会になる。
同じB2東地区の相手に探りを入れながらも、優勝という結果を出し、勢いがついた状態でシーズンを開幕することが理想。

「勝って得るものも負けて得るものもあると思いますけど、勝った経験というのが一番の自信になると思っている」と、田口はプレシーズンゲームでも勝利にこだわる。これこそがB1復帰への強い思いを示すものであり、実現するためのカギについては“覚悟”と表現した。

「自分は今シーズン覚悟というものをテーマとしてやっています。B2で戦う覚悟、B1上がる覚悟、その覚悟すべてにおいて覚悟を持って、目の前のことを妥協せずにやることがカギだと思います。厳しいと思いますが、“それにアジャストして一人一人がチームになるんだ”、“コーチの言うことをやれば一つになる”と信じて、ポジティブになっていくことがカギになると思います」