フジテレビバスケットボール

第3回 レバンガ北海道・折茂武彦選手

「選手と経営者を両立するためのカギは、時間のマネージメントとコミュニケーション」

講演会直前

筆者がNBA専門誌HOOPの編集者だった90年代、折茂武彦のプレイをライブで見る機会はほとんどなかった。
しかし、月刊バスケットボールの誌面やいろいろな人の話を聞いて、日本で最高レベルの選手という認識はあった。
取材の準備として様々な記事を読み返してみると、トヨタ時代の折茂は孤高の天才という印象が頭に入ってくる。
しかし、プロ選手としてのキャリアを続けるために北海道の地を踏んでから、折茂のメンタリティは大きく変化した。

札幌市長への表敬訪問

「トヨタ時代は本当に当然のことながら自分のためにバスケットボールをしていて、勝つためにはやっていましたけど、自分の数字にこだわり過ぎたところがあった。孤立していたとは思っていないですけど、そういうところもすごくあって、応援してくれる人たちから見ても、あまり目標とされる存在ではなかったのかなと自分で思っていて、北海道に来てから、非常にたくさんの人たちに支えられていることがわかった」

孤高の天才のままではいけないと感じた折茂は、コミュニケーションの大事さを知り、バスケットボールがチームスポーツだと再認識。レバンガの代表になってからは、しっかりコミュニケーションを図ることが、チーム経営でいかに重要であるかを改めて知ることとなる。

「歳をとって自分が若い時みたいにできなくなったときに何か気付いて、本当はこういう人たちに支えられて自分はここにいられるとわかりましたし、北海道に来て気付かされることが多かったですね。それはチームメイトもそうで、やはり、もちろん、練習の時も試合の時もそうですけど、プライベートの時もコミュニケーションをとっていかないと、やっぱチームはできないんだなということも非常にわかった。バスケットボールは本当に個人スポーツではなく、チームスポーツだなということを改めて認識したということですね」

バスケットボール選手の折茂は、自主練習を基本的にやらないことが多くの選手との違いとしてあげることができる。
過去のコメントから理由を突き詰めていくと、練習で自分の持っているものを最大限出し切り、時間を無駄にしたくないと気持が強いと感じた。
時間のマネージメントは、バスケットボールでも勝敗を左右する要素。経営者兼選手として多忙な日々を過ごすことに加え、試合で勝つということでも、時間のマネージメントがいかに重要かを、折茂は理解していた。

「今シーズンも、ガード陣には口酸っぱく言ってきたことなんです。第4クォーターの残り5分から、時間があと何分残っているか、何点差なのか、追いかけなければいけないのか、逃げなければいけないのか? そこのマネージメントができないと、やはりクロスゲームは勝てない。口酸っぱく言ってきたのも正にその通りであり、それは恐らくというよりも、バスケットボールという競技だけでなく、経営のほうも同じなんだろうなと。無駄な時間を使いたくないというか、僕は自主練をしないんですけども、本当にやるときはやる、やらないときはやらないと、オンとオフがバシッと自分の中で切り分けられている。プレイヤーとしてもそうですし、代表としてもそうです。僕はここで混合しないことを自分できっちりできていると思うので、だからこそプレイヤーでもいられるし、チームメイトともしっかりした付き合いができる。そこを分けていなければ選手も僕に気を遣ってしまうし、いろいろなことが出てくることにより、チームにとってマイナス要素が増えてしまう。だから、そこは自分なりにきっちり分けて、若い選手に自分から歩み寄ってコミュニケーションを図っていくことを大切にしています。コミュニケーションと時間のマネージメントは重要ですね。どんなことでも、それが重要になってくると思います。組織である以上」

2017-18シーズンも現役続行を決意した折茂は、レバンガのため、北海道のためにハードに戦う覚悟がある。B1の頂点、夢だったオリンピックが東京で開催されることもあり、強いモチベーションと勝利への貪欲さは失われていない。経営者兼選手として日々チャレンジし続ける姿勢は、正に人と違うことを恐れない折茂武彦の象徴と言えよう。
北海道が出場する東海・北陸アーリーカップは、2017-18シーズンで成功を手にするための第一歩になるだろう。

9000得点目