フジテレビバスケットボール

第5回 仙台89ERS・志村雄彦選手

「小さな体に大きなハート。仙台で成功したい思いはだれよりも強い!」

小さいけどいい選手と思われたいという気持が志村の中には常にある

NBAには160cmの身長ながら、ポイントガードとして14シーズンプレイしたマグジー・ボーグスという選手がいた。
ボーグスと同じ160cm、Bリーグで最も身長の低い志村雄彦とのの共通点を考えてみると、大きなハートと心身両面でのタフさがあげられる。
bjリーグからB1所属に変わった今シーズン、仙台は開幕から最終戦まで苦戦を強いられ、14勝46敗でリーグ最低成績に終わる。
そんな状況でも、志村はキャプテンとしてチームの一体感を失わないために最大限の努力をする中で、今までにない苦労を味わった。

オンコートでのリーダーシップも抜群で、仙台で結果を残したい思いも強い

「負けているとみんながやっていることが正しいのか? ということに疑問を考え始めて、それがどんどん自分じゃないところにベクトルが向いてしまうところがあるので、そう言った意味では非常に大変はシーズンであったけれど、覚悟はしていたので…。その中で自分の中でやることをぶらさずにやることが一番だったと思います」

自分の言葉や態度が、周りにどう影響するかを考えられる能力。
これをリーダーシップだと思っている志村は、決して前向きな姿勢を失うことがなかった。
2011年3月11日の東日本大震災によって、“やりたくてもできない”という事態を経験していたことからすれば、プレイできることへの喜びを感じていたことが大きい。
そんな志村に対し、強いメンタルタフネスがどこから来たのか?を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

東芝(現川崎ブレイブサンダース)から移籍した2008-09シーズン以降、志村は故郷にフランチャイズを置く仙台89ERSの中心選手として、コート上だけでなく、オフコートでも存在感を示し続けている。
震災でチームがbjリーグでプレイできなくなった後、琉球ゴールデンキングスへレンタル移籍した際に背番号89でプレイしたのは、正にチーム、故郷に対する強い愛着の表れ。
それは、「震災の後というのがすごく大きいですね。生まれ育った故郷でもあるし、家族もいる。震災があるまで、仙台人とか宮城県人って思う瞬間は今までほとんどなかったですね。何県民とか何市民とか、普段思わないですよ。あの時地域のコミュニティがダメージを受けたからいろいろなことを考えて、そのために自分は何ができるかと言ったらバスケットボール。それが表現の方法であるんじゃないかなと思います」という言葉でも明らかだ。
B1開幕前のロスターを見た時、志村は相当厳しい戦いになることを予想。それが現実となった結果は、B2降格だった。
しかし、残留プレイオフを前に一発勝負のおもしろさについて質問してみると、「これは僕らの仕事でしか味わえない。
1個の仕事で来年の飯食えるものが変わるものはないし、こんなスリルがあるのは僕らにとって最高の舞台。
負けたらサヨナラ、勝ったら王様じゃないけど、チャンピオンシップのレベルじゃないけど、それくらい変わる。
この感覚をやっぱりできるのは僕らの仕事、特権なので、僕は非常に楽しみです」と答えている。
来シーズン開幕前に行われる東北アーリーカップは、参加する全6チームがB2東地区で戦う。
志村の語る一発勝負の魅力とは違う心境で臨む試合になるだろうが、「失敗したチームはテコ入れできるから、そのあたりは重要。ライバル関係構築につながる。近場のチーム同士なので、ファン同士のやりとりにもプラス」と前向きに捉えている。
1年でB1復帰を目指す志村と仙台にとって、東北アーリーカップが大きな意味を持つ試合なのはまちがいない。

クイックネスと視野の広さを生かしたゲームメイクが志村の持ち味