2011年03月05日 新・週刊フジテレビ批評で放送
社会・公共

ニュージーランド地震-災害報道の在り方

 2月22日にニュージーランド南島のクライストチャーチで発生した地震は、発生から1週間以上経った現時点で、死者、行方不明者が240人に上る大きな災害となり、日本人28人の安否も不明となっています。日本の各メディアは地震発生直後から現地に取材チームを派遣し、日本政府の対応、被災状況など刻々と変化する現地の情報を克明に伝えるべく活動しています。
 しかし、一方で、日本人ジャーナリストが、メディア規制が敷かれていた病院に侵入し逮捕されたと現地メディアが報じたほか、ネット上では、日本のテレビ局による、被災した日本人留学生へのインタビューについて、配慮不足ではないかとの見方が指摘されるなど、災害時における報道姿勢が問われる出来事も一部で起こっています。
 災害報道は、正確かつ迅速に事実を伝えるとともに、被災者をはじめとする関係者への配慮など、そのあり方について、常に自己検証されねばなりません。フジテレビのメディア検証番組『新・週刊フジテレビ批評』(毎週土曜日朝5時〜6時生放送)では、『災害報道と被災者支援やヘルスケア』(仮)と題して、ニュージーランドで発生した大地震から、今後の災害に対するテレビ報道の在り方を考えたいと思っています。

 
節度を守り、『今後』を見据えた報道を。

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:ニュージーランド地震に関するこれまでのテレビ報道を、どうお考えですか。
Q2:問1の設問について、回答の理由、改善すべき点など、テレビの災害報道は、今後どうあるべきかご意見をお聞かせ下さい。
回答の要点
オピニオンリーダーの回答からは、現地の被害状況、被災者の安否という災害報道の基本となる情報を迅速かつ正確に伝えるという点では、各局の報道を肯定的に捉える一方、そのうえで、何を取材し、報道したかという見地からは、「改善すべき点がある」という回答が多く寄せられました。
特に、日本人被災者関連の取材についてマイナスの指摘が数多くあり、今回、ネット上で議論のあった日本人留学生へのインタビューに対しても、プライバシーや人間性への配慮不足は否めないとの厳しい評価がみられました。
より慎重なスタンスを持ちながら被災者への取材を行い、一方で被害への対策など今後の災害を見据えた広い視点での報道が求められており、さらには日本の災害経験から、どのような貢献が可能かといった主体性のある報道を行うべきとの意見もありました。
テレビの災害報道は、いたずらな自己規制に陥るのではなく、今回の報道から、教訓を見いだし、いつか起こるであろう災害に向けて、常に事前の準備を怠らないことが求められていると言えます。

オピニオンリーダーのみなさんの回答をご覧ください。
ご意見があれば、コメントをご投稿ください。

オピニオンリーダーの回答

( 19件 )
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1. 改善すべき点がある

浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
72時間の壁など、何度も同じ事を繰り返して時間を費やすのは疑問。だからといって、どうしようもできない。
海外の被災にたまたま日本人が多数含まれていたことから報道量が多いが、同じような映像の繰り返しも多すぎないか。
災害時の教訓とか、今後の救済の具体的なあり方が重要ではないかと思う。
 
 
坂野尚子
株式会社ノンストレス社長
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
救出された女性のインタビューがもう少し配慮があればと思った。彼女自身がまだ若く、そして深く考えることのできない特別な状況でのインタビューだったので視聴者からの反応を予想した配慮が必要であった。また、報道とは直接関係ないが、視聴者被災者の家族が現場にバスの中から3分しか訪問できないのに報道陣は被災現場を取材できるというのが何となく立場が違えど、家族を思うとしっくりこない部分が残った。以前より、家族への取材が代表に統一されやみくもに行われていないのはほっとする。被災した家族へのインタビューは報道側が思うほど実際の視聴者が求めているものではないので。むしろそっとしておきたい気持ちになるものなので。
 
 
本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
 健康で平穏な時にも、一般人がテレビカメラのインタビューを受けることは抵抗がある。その意味で地震という非日常的なストレスで、心に傷を受けた現地の方や日本人被災者にカメラを向け、テレビで放送することは、慎重の上にも慎重を要すると考える。
 できれば今回の地震から、私たち日本人が何を学び、日本国内で何を早急に見直すべきか(建築の耐震性や被災者対策)等の、今後を見据えたより客観的で冷静な報道を期待したい。
 
 
 
鈴木豊
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授・公認会計士
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
事件を取り扱うような姿勢が強く見受けられるが、むしろNZ側の当局の救出や対応の活動を深く検証できるような報道がもっと有って良いのではないか。
 
 
伊藤隼也
医療ジャーナリスト,写真家
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
災害報道に即時性が重要なのは分かるが、発生から何日も経った状況においても、他社とのスクープ競争なのか?現地から新たな悲劇のネタ探しや、寝た子を起こすような報道があったのも事実である。特に被災者やその家族の生活の様子などを、必要以上にことさら詳細に追跡する事が真に報道する価値があるかどうか大いに疑問を感じた。同様に、我々日本人が海外での被災の情報や災害現場の様子だけでなく、日本という国家が阪神大震災という未曾有の経験を踏まえて、どのような貢献の可能性があるのか、また今後も何をすべきなのかを他国の支援体制の実態などを含めた検証の必要性を感じた。
 
 
山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
 3月1日から5日までの予定で、クライストチャーチに滞在し現地調査をしております。過去150か所以上の災害現地調査を行ってきましたが、今回ほど情けない思いをしたことはありません。パスをもらって中心地に入る際、警備の兵士や警官は「日本人」と聞いた途端、それまでの穏やかな態度を一変させるのです。日本人だけでの単独行動は許さないという警官もいるほどでした。
 日本人ジャーナリストは病院事件だけでなく、警備の目を盗んで規制区域内で禁止されている撮影を平気で行うなど公表されている以外にもトラブルが多く、警備陣のミーティングで要注意指示が出ているそうです。
 一部のジャーナリストなのでしょうが、規則に厳しいNZのお国事情も調べず、国内と同じ態度で取材合戦を行っているものと推察されます。それは特派員だけの問題はなく、日本から指示を出す報道責任者たちにこそ責任があると思われます。
 もう一つの課題は、CTVビルなどで日本以外の外国人も多くの安否未確認者がいますが、日本のジャーナリストは日本人犠牲者関連取材だけに偏る姿勢があからさまなのではないかと、現地ジャーナリストから非難めいた教育的指導を受けました。
 海外取材時だけでなく国内でも、報道により日本の名誉を損なわないようにモラルを大切にしなければ、犠牲者や家族をさえ辱めることになるのです。国事情の事前調査と配慮、被災地における報道姿勢の客観的検証とジャーナリストの教育研修が焦眉の急と思われます。(クライストチャーチにて)
 
 
 
南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
情報は過不足なく伝わっていて不満はないが、強いて言うなら、そろそろ日本の報道のやり方(ニュースの作り方)も刷新するべきではないか。海外報道を見ていると、現地のレポーターが主体性を持って時間を取って熱弁しているのが印象的だった。日本の報道はどうしても「現場の絵」「当事者の絵」など、定番のコンテンツに徹底的にこだわる姿勢だ。だから事情の違う海外では取材に無理も生じるし(立ち入り禁止区域への侵入)、結果的にメッセージ性のはっきりしない、瞬間だけを捉えた当事者(現地の地震体験者など)のコメント映像で尺を埋めたつもりになってしまうのではないか。製作側の古ぼけた徹底的な形式主義の産物だと思う。型にはまらず、せっかく現地に行ったのだから、そのチームに「好きなようにやりなはれ」と報道させてあげたらどうだろうか。それと、もっと熱弁する現地レポーターがいて欲しい。
 
 
宮家邦彦
外交評論家,株式会社外交政策研究所代表
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
 日本の一部テレビ局のような行過ぎた取材を欧米先進国で続けたら、恐らく告訴された上で、最悪の場合完全敗訴する可能性もあるのではなかろうか。
 関係者のプライバシーや状況への配慮のない報道を視聴者は本当に望んでいるのか?途上国の二流メディアならともかく、日本ではもうやらなくても良いと思うのだが。
 
 
夏野剛
慶応義塾大学特別招聘教授
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
被害者、被害者家族のプライバシーがまるでない状態になってしまっているのが問題。例えばかなり早い段階で被害者の顔写真が報道されていたが、意味があるのか。さらに、NZ当局の規制を無視したスクープ合戦などもってのほか。政治案件や社会問題ならともかく、自然災害の場合、正しいことを正しく伝えるという報道の姿勢を貫いてほしい。
 
 
牛尾奈緒美
明治大学情報コミュニケーション学部教授
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
今回の被災者報道のなかで、足の切断を余儀なくされた被害者の方に対する取材姿勢に疑問を感じた。不測の事態にあっても常に前向きに歩もうとする彼の強い精神力や気概、明るさは、インタビューを通して十分に浮き彫りにされたと思う。反面、そんな彼の強さに乗じたのか、高校時代にサッカー部に所属していた当人に対して、右足を失ったことをどう思うかといった内容の質問が行われていた。不慮の事故で心身ともに大きく傷ついている者に対して適切な質問であったとは言い難い。「真実を伝えること」が何よりも優先され、被取材者の人間性への配慮が軽視されることはあってはならない。
 
 
渋谷和宏
作家・経済ジャーナリスト
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
 僕はテレビに限らずマスメディアの報道について、以下の姿勢を取るべきだと考えています。

 取材相手にはきちんと取材意図を伝え、取材相手の立場や心情を最大限思いやり、伝えなければならないことを勇気をもって伝える。

 単純ですが、これを自らに律するのは生半可なことではありません。誠実さと想像力、勇気を問われるからです。しかしマスメディアの一翼を担う者がそこから逸脱した行動を取れば、時に取材相手を傷つけるばかりか、報道の内容さえ歪めてしまいます。それはひるがえってメディア自身の手足を縛ることにもつながりかねません。
 今回の日本人ジャーナリストの逮捕(報道)や被災した日本人留学生への配慮不足の指摘は残念ながら功を焦るあまりの、あるいは未熟ゆえの想像力の欠如だと言わざるを得ません。
 今回のニュージーランド地震についてのテレビ報道については──すべてを視聴したわけではもちろんありませんが、その取材努力には頭が下がる思いです。そうしたなかで浮上した上記の問題は残念でなりません。もしその背後に「決定的な絵を取れ」「抉るようなインタビューをしろ」とのプレッシャーがあるのだとしたらテレビ報道全体の問題として考えなければならないと思います。
 
 
稲増龍夫
法政大学教授
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
日本人の被災者が多数出た、外国における自然災害という、過去にあまり例がない事例だけに、土地勘のなさや言葉の壁もあって、困難な取材=報道であったことがうかがわれる。
ただ、一般論として、自然災害の被災者やその家族は、純粋に人為的な事故と違って、自然の不条理に対して当惑しているだろうから、自分だったら、インタビューなどされたくないと感じると思う。実際、阪神淡路大震災の際も、レポーターが殴られるなどが日常茶飯事だったというが、無神経な取材に対して殴りたくなる気持ちはよくわかる。
しかし一方で、災害報道が多くの人の関心を呼び覚まし、行政へのプレッシャーになったり、民間の援助が寄せられるという側面もあり、お節介のようでも、節度を守った報道は絶対に必要だろう。今、言えることは、めったに起こらない事例だけに、今回の災害報道の内容をしっかり検証し、反省すべき点を語りついでいくことだろう。
 
 
前田宏子
政策シンクタンクPHP総研国際戦略研究センター 主任研究員
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
 今回のニュージーランド地震に限ったことではありませんが、海外で事故や災害が発生した際、「邦人の安否」に焦点を絞りすぎる報道に違和感を覚えます。
政府やご家族、ご友人の方々が特に関心を払うのは当然ですが、日本人ではない被災者の方々と日本人とを、これほど区別する必要はあるのでしょうか。意地の悪い言い方をすれば「ほかにも多くの犠牲者がいるのに、自国民のことばかり気にかける狭量な国民」と思われないでしょうか。
 また、日本に滞在する外国の方々も、テレビから情報が得られれば便利なはずです。外国人ではありませんが、私自身、今回の地震のニュースに初めて接したとき、まず心配したのはクライストチャーチに住む友人のことでした。現状では、彼らは、海外メディアから情報を得ているのだと思いますが、日本のテレビ報道も、全体の被害状況や救援活動に関する報道の割合を、もう少し増やせばいいのではないかと思います。
 
 
伊東乾
作曲家・指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
「テレビ報道」という言葉で一元化して問題の所在が不明になることを恐れる。テレビが高い公共性を持つ報道機関としての側面を持つ一方、とりわけ民間放送には企業広告費で賄われ視聴率を争わねばならないという二律背反的な状況がある。とりわけ定時ニュースなど以外の番組枠で、現在も救出や捜索が続く被災地の情報が、より多くの視聴者の興味を惹くような形で紹介されるのは、率直に大変望ましくないと考える。法律による禁止でもなく、やみくもな自粛でもない、局としての倫理の基準が随時問われ続けるべきではないか?

特に今回は、倒壊建物からの救出に当たっての身体部位切除など極限状況での「個人情報」が、スクープのようにして放送に流れた観があり、私個人は率直に正視できない意識を持った。パパラッチ的な行動をとるジャーナリストが出るのも、オンエアの基本姿勢から問い直す必要がある。

かつて(第二次世界大)戦後、戦地からの復員者の名前を告げるラジオ放送には、「対岸の火事のスクープ」をするような姿勢は決して存在しなかったのに、とは、亡くなった母が豊かになってからのテレビを見てこぼした一言だった。

災害や事故の報道については「日本人」を強調しすぎる点が常々気になっていたが、今回は状況が見えないなか、報道の勇み足がとくに目立つ気がする。

折しも地デジ移行の年である。放送法・電波法制定の精神に立ち返って、(とりわけ民間)放送の固有の役割と使命、守るべきモラル=CSR企業としての社会的責任を、正面から議論してもらいたいと思う。
 
 
江川紹子
ジャーナリスト
Q2. 「1 - 改善すべき点がある」の回答理由
 報道を見て義援金を送ろうと考える人は多いので、災害報道は本来、被災者にとっても大いに助けになるはず。
 阪神淡路大震災の報道の量が、2ヶ月後の地下鉄サリン事件発生によって激減したところ、それとともに義援金も少なくなったという声もずいぶん聞いた。
 ただ、事件と同じように発生時に大量の情報を送って終わりだったり、日本人のことにしか関心を持たないような報道が多いのは残念だ。
 日本人の被災者に集中豪雨的な取材、相手の状況を考えない取材が起きるのは、そのためでもある。
 行方不明の日本人だけでなく、地域全体が被災地であり、そこの人々は被災者だという認識が必要。日本人に主な関心が行くのはある程度仕方がないが、報道を見ていると、日本人だけが被災したような錯覚にすら陥るほどだ。日本の救助隊のがんばりを伝えるのも大事だが、これでは日本人が日本人を助けに行っただけ、というふうな印象すら受ける。
 現地が、日本とは違ってどういう対応をしているのかなどの情報を伝えることも、今後の日本の災害準備のためにも役に立つだろう。なるべく多様な観点からの報道をしてもらいたい。そうでなくて、日本人ばかりを追いかけようとするから、過剰な取材も起きる。
 被災者やその家族・遺族に対しては、発生直後は代表取材でよい。その後、追跡取材の時に個別で申し込みをするというふうにすれば、被災者や家族・遺族も、少し落ち着いたところで、自分の判断で受ける受けないを決めることができる。
 また、国内の災害でも、自宅が崩壊したり、避難勧告を受けたりした被災者ばかりがクローズアップされる傾向がある。その災害によって、直接家は失わなくても、地域全体の経済が地盤沈下を起こすことはある。「見えやすい被災者」「分かりやすい被災者」の映像や音声を録ることばかり考えているのではないか。そういう報道が続き、「見えやすい被災者」の対策ばかりが優先されると、取り残された「見えにくい被災者」の不満がたまり、地域の中で「見えやすい被災者」と「見えにくい被災者」が対立するような不幸も生まれる。
 それから、「分かりやすい被災者」を求めているうちに、そういう「被災者像」を被災者に求めることにもなりかねない。被災者もできる限り、普通の生活をしたいはずなのに、それが求められている「被災者像」に合わせてしまい、やりたいことも「不謹慎だ」と押さえてストレスをため込んでいく人もいる。プライヴァシーへの配慮だけでなく、そういうことも考えてみて欲しい。
 
 
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2. 改善すべき点はない

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3. そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)

木村太郎
ジャーナリスト
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
今回の地震の取材はCTVビル周辺に集中したため日本の報道陣の数の多さが目立ったことはあったと思うが、現地から伝わってきた限りでは特に大きな問題があったとは聞いていない。
入院中の留学生への取材競争の問題も、警備陣との衝突の中で起きたことで患者や関係者に迷惑をかけるような「取材の行き過ぎ」とは違うはず。
救援活動を妨害したり、行方不明者の家族を執拗においかけまわしたというのなら別だが、過酷な状況の中でこの地震の悲惨な現状を伝えようと一生懸命に頑張っていた取材陣に過大な自己規制を求めたくない。
 
 
石澤靖治
学習院女子大学長
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
 この種の報道では、まず現地の情報を早く正確に伝えること、そして被害の状況を把握した上で、外国の場合、日本人はどのようになっているかをリポートするということに尽きる。その意味では各局それなりにやったと思う。その中で今回指摘されたような問題点が生じるのは、時間がたってある程度事態が落ち着いてきた際に、各局が他以上のものをやろうとか、他とは違ったことをやろうとした場合である。ただそれは日常の報道でも見られる光景であり今日の報道の構造的な問題である。またこうした災害は常に起きるわけであり、その際にどのような報道のポイントやパターンがありうるのか、どのような点で失敗を犯さないようにすべきかなど、局で十分な準備があってしかるべきである。だが日常の多忙な業務の中で、たぶんそうしたことはなされていないように思う。そこが問題である。
 
 
萱野稔人
津田塾大学学芸学部国際関係学科准教授
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
今回の地震報道では、日本における自然災害の報道との落差がはっきりあらわれた。今回の地震報道では、現地当局からの情報がほとんど公式の記者会見からのものに限られており、被災状況や救出状況についてなかなか十分な情報を報道できていないからである。これは逆に言うなら、日本での災害報道が非公式のチャンネルにいかに依存しているのか、あるいは情報の収集にあたって公式のチャンネルと非公式のチャンネルの境界線がいかにあいまいなのか、ということを示している。この落差はある意味でやむをえないところもあると思うが、その一方で、日本のメディアが外国での情報収集ではいかに非力か、あるいは日本における当局とメディアのあいだの情報流通の仕方が外国特派員の目からみると不透明にうつるのではないか、という点は、再検討すべきだと思う。
 
 
中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
報道の世界では先手必勝の功名心が先行する傾向があるように思われる。それが良い結果をもたらすか、そうでないかは後の判断に委ねるしかないだろう。ただ、今回の場合、被災地が外国であったことから、その国の方針が優先されたが、ニュージーランド政府の対応が必ずしも適切ではないように思われる。この温度差が今回の結果をもたらしたのではないか。
筆者は先の阪神淡路大震災の際、西宮在住であるため、また、地震発生当時起床していたため、地震発生当初から経験した。被災者の立場から見ると、同じ地域に住む同じ被災者でもその被害規模がまったく異なる。一般には社会的弱者の被害が大きいように思われる。経済的に豊かな層は地震直後から大型トラックを呼び、家中から瓦礫を運び出していた。一方、そうでない層は公民館といった公共の場所しか行き先がない。そこへ遺体が運ばれてくる。災害発生後のケアは平等である必要はない。弱者のほうがさまざまな面で援助を必要とする。
より迅速により正確に、が報道の基本姿勢であることは致し方がないだろう。加えて、災害発生後の社会的弱者の状況を正確に伝え、世論を喚起することも報道の使命ではないか。今後の報道を注視したい。
 
 
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