第3回 2004年7月20日(火)放送 あらすじ

#3 見知らぬ過去

 記憶喪失になってからはじめて出社した光彦(椎名桔平)は突然、児玉(モロ師岡)と名乗る男から殴られた。順子(木村多江)の説明によると、児玉の会社と契約上のトラブルがあったものの、すでに裁判で伍代物産が勝訴している。「だから気にされることはありません」。しかし児玉の怒声を光彦は忘れることはできなかった。
 奈緒(観月ありさ)は人気アーティスト、堤エリカ(上原多香子)から新曲のジャケットの衣装を依頼された。スケジュールは立て込んでいるが、奈緒は引き受けた。めまぐるしく1日の仕事をこなしてマンションに帰宅すると、光彦と祐輔(広田亮平)のために夕食を作った。しかし光彦は児玉の一件が引っかかっているらしく食欲が無かった。
 心身ともに疲れきった奈緒の心を慰めてくれるのは和也(玉山鉄二)の存在だった。出張先から「あんまり無理すんなよ」との電話が。そして翌日の夜、いつものバーで久しぶりに顔を合わせることができた。「お兄さんの調子はどう?」「少し落ち着いてきたみたい」何気なく手帳を見ていた奈緒はハッとした。今日は祐輔の誕生日だった。「ごめん、帰っていいかな」「え、いいよ」。あわただしく店を出て行く奈緒を和也、弘樹(藤崎大悟)、優子(中山恵)そして、ちひろ(加藤あい)は、あっけにとられたように見送った。
 今朝、祐輔が沈んだ表情だったわけはこれだった。「今からお誕生会しよ」。奈緒が慣れない手つきでケーキを作り始めると、光彦も手伝ってくれた。「奈緒おばちゃん、ありがとう」。初めて名前を呼んでくれたことに奈緒は胸が熱くなった。3人だけの深夜のパーティー。祐輔が寝室に下がると光彦は復職したいと奈緒に打ち明けた。「一人前の人間になりたいんです。祐輔の父親として。」もちろん奈緒は賛成した。
 数日後、奈緒の選んだ明るい色のスーツを着て、光彦は出社した。職場となる資料室で仕事の説明を受けていると、専務室に呼ばれた。「君はシンガポールで地下鉄工事を進めていたんだ。」柏木専務(平泉成)によると、光彦が日本側の責任者だったという。「ゆっくりやってくれ」だが光彦が部屋を出て行くと、柏木は部下の杉山(山口馬木也)に耳打ちした。「忘れたままのほうが幸せなこともある。目を放さないよう頼む」。
 光彦は資料室で見つけた社内レポートを持ち帰ると奈緒に見せた。どうやらあの児玉の会社にまつわる内容らしい。奈緒は小野寺(松崎しげる)に判断をあおいだ。バーのマスターになる前は商社マンだったのだ。伍代物産が持ちかけたタイのリゾート開発に児玉の会社はのった。しかし伍代物産は突然、開発を中止したため、児玉の会社は莫大な負債を抱えて倒産した。商社に正式な契約は無かったから、裁判で児玉は敗れた。「お兄さんが悪いわけじゃない」。奈緒は励ましたが、光彦の表情は晴れなかった。責任者は光彦だったのだ。
 光彦が児玉に会って「謝罪したい」と言い出した。「私もいきます」。アパートの荒れた室内で光彦と奈緒は児玉に向かい合った。「もう手遅れなんだよ」。会社は倒産、家族も児玉を見捨てた。「帰ってくれ!」仕方なく2人が玄関に向かいかけると、児玉が胸を押さえて倒れた。「児玉さん!」
 帰り道、光彦は奈緒に問いかけた。「私は自分の仕事が好きだったんでしょうか?」光彦は奈緒のスタイリストという仕事がうらやましかった。奈緒が選んでくれたスーツのおかげで出社する勇気がでたからだ。「素敵な仕事ですね」
 奈緒はスタイリストという仕事が好きだったし、自信もあった。だからエリカの仕事で本人が首をかしげたのを意外に感じた。これまで奈緒の選んだ衣装は一目で気に入ってくれたのに。
 原因がわかった。エリカから手渡された新曲のMDを事務所に置きっぱなしにしていたのだ。慌てて聞いた奈緒の表情が変わった。これまでとはイメージが違う。撮影は明日だ。「今からショップ回りをするわ」奈緒は事務所を飛び出した。和也からかかってきた電話も片言で切ってしまった。閉店間際のショップをはしごし、挙げ句徹夜して自分で衣装を作った。
 奈緒が荷物を抱えて事務所に戻るとちひろだけがいた。「ただいま」「お疲れ様でした」2人の間に気まずい空気が生まれた。というのは奈緒は最近光彦と祐輔にかかりっきりで和也のことはなおざりになっていた。そのことをちひろは非難めいた口調で指摘したからだ。「和也だってウチの事情はわかってくれているし」奈緒はそう信じていたが、まさかちひろが和也に思いを寄せていることまでは気付いていなかった。
 「手伝います」。ギクシャクした空気を振り払うようにちひろが奈緒の荷物を受け取ろうとした瞬間だった。「奈緒さん!」めまいに襲われた奈緒は崩れるように倒れた。

キャスト

佐伯奈緒 … 観月ありさ
望月光彦 … 椎名桔平
富田ちひろ … 加藤あい
結城和也 … 玉山鉄二
阿久津順子 … 木村多江

堤 エリカ … 上原多香子

児玉 … モロ師岡

望月祐輔 … 広田亮平
杉山 悟 … 山口馬木也
長峰弘樹 … 藤沢大悟
村岡優子 … 中山 恵
中沢紀子 … 若月彩子
小野寺慶 … 松崎しげる
柏木孝行 … 平泉 成

ほか

スタッフ

■脚本
  清水友佳子
■プロデューサー
  笠置高弘(関西テレビ)
  小椋久雄(共同テレビ)
  谷古浩子(共同テレビ)
■演出
  河野圭太(共同テレビ)
■音楽
  西村由紀江
■制作
  関西テレビ
  共同テレビ

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