君が想い出になる前に
#11 君を忘れない
シンガポールに到着した奈緒(観月ありさ)と光彦(椎名桔平)はホテルにチェックインすると、すぐに美穂(森口瑤子)と暮らしていたマンションに向かった。無人の室内はガランとして手がかりになりそうなものはない。しかし管理人がハウスキーパーだったリン(宋湘平)の所在を知っていた。リンは光彦との再会を喜ぶと同時に釈明した。「旦那さんが奥さんを殺したなんて一言も言ってないよ」。リンは夫婦ゲンカを目撃したことを正直に警察に言っただけで他意はなかった。そして光彦が事件直前の空き巣のことをたずねると、リンはいぶかしげな表情になった。室内は荒らされ放題だったのに結局何も盗まれていなかった。「それに旦那さんも妙だった」。光彦は警察に通報しなかったのだ。
それは光彦があらかじめ空き巣を予想していたからではないか。「あなたに何か預けてませんか?」。けれどリンは首を横にふった。最後の手がかりはベビーシッターのサフィア(アドリナ・アリ)だったが、リンとの連絡は途絶えていた。「親のない子で、どこかの施設から通っていたはずだけど」。奈緒と光彦がホテルに戻ると、ロビーで順子(木村多江)が待っていた。「どうしてもお伝えしたいことがあって」。柏木専務(平泉成)が腹心の杉山(山口馬木也)をシンガポールに向かわせたという。奈緒と光彦は気づいていなかったが、シンガポール到着後の行動は杉山に監視されていた。「あの2人が美穂さんの事件に関わっているのは間違いありません。私にも手伝わせてください」。順子の申し出を奈緒と光彦は受け入れた。
3人は手分けしてサフィアの手がかりを求めて異国の地をたずね歩いた。「サフィア」。彼女は小さな教会のある施設にいた。光彦が手渡したあのペンダントを下げていた。「事件の前日に今度会うときまで預かってほしいって」。光彦がふたを開けるとミニディスクが入っていた。事件の真相はすべてこの中に入っている。「やめろ!何するんだ!」。サフィアと別れた奈緒と光彦がホテルへ向かっていると、現地人グループに拉致された。人気のない廃屋に連れ込まれると、待っていた杉山にミニディスクを奪われた。「返せ!」。飛びかかろうとした光彦に向かって、拉致グループの1人が発砲した。「お兄さん!」。地面に倒れこんだ光彦の脳裏に、まざまざと銃撃現場の記憶がよみがえった。光彦は柏木の横領の事実をつかみ、その証拠をミニディスクに収めた。光彦は告発の姿勢をゆずらなかったために、口封じのため柏木が雇った男たちに襲撃されたのだ。「あなたの余計な正義感のせいで、亡くなったんですよ、奥さんは」。 杉山は酷薄な笑いを浮かべた。「俺は出世しますよ、どんな手段を使っても」。拉致グループの男たちが一斉に光彦と奈緒に銃口を向けた。「それじゃ、さよなら」。杉山は2人に背を向けた──。
それは光彦があらかじめ空き巣を予想していたからではないか。「あなたに何か預けてませんか?」。けれどリンは首を横にふった。最後の手がかりはベビーシッターのサフィア(アドリナ・アリ)だったが、リンとの連絡は途絶えていた。「親のない子で、どこかの施設から通っていたはずだけど」。奈緒と光彦がホテルに戻ると、ロビーで順子(木村多江)が待っていた。「どうしてもお伝えしたいことがあって」。柏木専務(平泉成)が腹心の杉山(山口馬木也)をシンガポールに向かわせたという。奈緒と光彦は気づいていなかったが、シンガポール到着後の行動は杉山に監視されていた。「あの2人が美穂さんの事件に関わっているのは間違いありません。私にも手伝わせてください」。順子の申し出を奈緒と光彦は受け入れた。
3人は手分けしてサフィアの手がかりを求めて異国の地をたずね歩いた。「サフィア」。彼女は小さな教会のある施設にいた。光彦が手渡したあのペンダントを下げていた。「事件の前日に今度会うときまで預かってほしいって」。光彦がふたを開けるとミニディスクが入っていた。事件の真相はすべてこの中に入っている。「やめろ!何するんだ!」。サフィアと別れた奈緒と光彦がホテルへ向かっていると、現地人グループに拉致された。人気のない廃屋に連れ込まれると、待っていた杉山にミニディスクを奪われた。「返せ!」。飛びかかろうとした光彦に向かって、拉致グループの1人が発砲した。「お兄さん!」。地面に倒れこんだ光彦の脳裏に、まざまざと銃撃現場の記憶がよみがえった。光彦は柏木の横領の事実をつかみ、その証拠をミニディスクに収めた。光彦は告発の姿勢をゆずらなかったために、口封じのため柏木が雇った男たちに襲撃されたのだ。「あなたの余計な正義感のせいで、亡くなったんですよ、奥さんは」。 杉山は酷薄な笑いを浮かべた。「俺は出世しますよ、どんな手段を使っても」。拉致グループの男たちが一斉に光彦と奈緒に銃口を向けた。「それじゃ、さよなら」。杉山は2人に背を向けた──。