＃1『悲しき出会い』
　ソウルオリンピック後の韓国。ジュンヨン少年は、米軍基地脇にある歓楽街、いわゆる「基地村」に住み、同級生とケンカの絶えない日々を過ごしている。父親がおらず、母親のヒャンジャが基地村で水商売をしていることで、同級生のミンホたちにいじめられているのだ。
　そんなある日、ミンホ達とのケンカに負けたジュンヨンは、近くの少女に気付く。負けたのを見られたと思ったジュンヨンが、怒って靴を投げつけると、少女はよける素振りもなく倒れ、ネックレスを落とす。彼女は盲目の少女ヘイン。しばらく前に両親を亡くし、今は、おばでステージ歌手のミスク（芸名：オードリー）に育てられている。この日ヘインは、ヒャンジャのクラブで働くことになったミスクに連れられ、基地村へ引っ越してきたのだった。
　事情を知らなかったジュンヨンは、ヘインに悪いことをしたと思いながらも、素直に謝ることができない。彼女の送り迎えをするよう担任に言われても、恥ずかしさから従うことができず、公園で拾ったネックレスを返すときも、無愛想な物言いになってしまう。そんな中、ヘインは電車の踏切りで轢かれそうになるが、それでもジュンヨンは声を掛けることができない。ところが数日後、下校途中で雨が降ったのをきっかけに、とうとうジュンヨンはヘインを自転車に乗せたのだった。こうして、ヘインの送り迎えがジュンヨンの日課となったり、2人は急速に接近する。そんな彼らの様子に、同級生で近所に住むファジョンは苛立ちを募らせる。彼女は、ヘインが現れる前からずっとジュンヨンが好きだったのだ。誕生日プレゼントをあげたり、弁当のおかずを分けてあげるなど、事あるごとに彼の気を惹こうとするのだが、いつも空振りに終わっている。
　惹かれ合うジュンヨンとヘインだったが、ある日、2人を引き裂く「事件」が起きる。「付き合ってる」とミンホ達に冷やかされたジュンヨンが、恥ずかしさの余り、「かわいそうだから一緒にいるだけだ」と言ってしまったのだ。クラスメイトの心無い言動、そして何よりも「かわいそうだから」というジュンヨンの一言に深く傷付くヘイン。それ以来、彼女はジュンヨンの自転車に乗らず、1人で登下校するようになる。
　ジュンヨンとヘインの仲違いに気を良くしたミンホ達は、ヘインに対するイジメをエスカレートさせ、ある日、彼女の弁当にミミズを入れる。その様子にとうとう我慢できなくなったジュンヨンは、ミンホ達に殴りかかり、「ヘインを2度といじめるな」と告げる。この事をきっかけに、ジュンヨン達は仲直りするが、ジュンヨンに加勢したファジョンは、意中の彼から感謝もされず、悔し涙を流す。
　2人の楽しい毎日が戻ったのも束の間、今度は金貸しの女スクジャ達が店に押しかける。ギャンブルにはまったミスクが、借金をして逃げたと言うのだ。事態を察したミスクは行方をくらますが、スクジャ達は諦めない。「ミスクが出てこないならヘインを連れて行く」とすごむが、ヒャンジャは「勝手にしろ」と取り合わない。偶然、母親の言葉を聞いたジュンヨンは、ヘインと秘密の隠れ家へ逃げるが、彼女の具合が悪くなったため、深夜になって帰宅する。「ヘインをどこへもやらないでくれ」と泣いて訴えるジュンヨンにさすがのヒャンジャも根負け。ミスクの借金を肩代わりし、騒動を治める。
　こうして、ミスクは借金を完済するまでヒャンジャの店で働くことになり、ジュンヨンとヘインも共に過ごすこととなる。やがて時は経ち、2人は10代の若者に成長する。