緋の十字架
没落する華族
昭和43年秋。薫が大河内の家を出て五年の歳月が流れた。大河内製鉄は直哉の奮闘もむなしく、多額の負債を抱え、倒産寸前だ。大河内の家庭も崩壊寸前で、浩一に続き、悦子までが家を出て行く。美也子は病気で寝込んでいて、雅美が看病をする。ある日、実業家の徹が直哉の家の下見に来る。直哉は、売却する気はない、と追い返すが、徹はあくどい土地の買占めで噂になっていた。直哉の魂の拠り所である教会の土地も狙われ、教会は潰され、商業施設になるという。結婚してもうすぐ子どもも生まれるという浩一は、ピアノバーで働いていた。そのバーに、新しいオーナーがやってくる。