ハコイリムスメ!
#2 涙の告白
花(飯島直子)が早朝からサル園でスケッチしていると吉太郎(地井武男)に頭を叩かれた。「灯、どこへ行った?」。まだ2人とも灯(深田恭子)が家出したことを知らない。「暇があるなら男と見合いでもしろ!」「この親父見たら、みんな逃げてくわよ!」。お決まりの親子ゲンカに、サルたちも姿を消した。
その頃、展望台のビアホールではキース(マーク・コンドン)が健(勝村政信)、十郎太(古田新太)、純平(玉山鉄二)ににらみつけられて困惑していた。サル園の花をながめていたら背後からサルの捕獲網をかぶせられたのだ。「また花から金せびるつもりだったんだろ?」「背が高くてビジュアル系だからって、いい気になるな!」。3人ともキースが花の新しい男だと決めこんで殺気立っていた。「二度と山登って来るなよ!」。下りのケーブルに無理やり押しこんで、3人がホッとしていると聞き覚えのある声が。「あの人に何したの?」。しっかり花に見られていた。
一方、大きなカバンを抱えた灯は徹郎(吉沢 悠)のマンションへ向かっていた。これまでついてきた嘘をどう打ち明ければいいのか、まだ決心がつかない。チャイムを鳴らそうとしたら、ドアが開いて見知らぬ女が出てきた。徹郎とは小学校からの友達だという。「ただの同級生です」。しかし灯はショックのあまり「お邪魔しました」と叫ぶとエレベーターに飛び乗った。短大の講義も上の空。徹郎に裏切られた思いでケータイの電源を切った。「今夜泊めてくれる?」。友達の恵理(石田香奈)に頼むしかなかった。
「なんでもない観光客に言いがかりつけて、なんなのよ!」。花のすごい剣幕に、十郎太たちはキースの前とは別人のようにうなだれた。かたや吉太郎は灯に連絡がつかずに苛立っていた。そのうちに灯が恵理のマンションから灯が電話をかけてきた。事情を飲みこんだ朝子(吉田日出子)は動じることなく花に言った。「明日、あんた迎えに行って来て」。娘の家出は花のときで慣れていた。
「私、帰らないからね」。強がってみせた灯だったが、迎えに来てくれた花の顔を見てホッとしたのも事実。「お姉ちゃん、あの山の人たちに似てきたね。暇だから人の詮索ばかりして」。痛いところをつかれて花はこたえた。とりあえず山に戻った2人を待っていたのは吉太郎の昔話。「俺が小学生の頃は毎日、麓まで歩いて通ったんだぞ」。姉妹そろって何回聞かされてきたことか。朝子だけ笑顔でうなずいているのもいつも通り。
数日後、2人は再び一緒にケーブルに乗った。麓に着くまで花は東京での12年間に体験した恋愛と失恋を灯にしゃべった。「私がどれだけ男運ないか分かったでしょ。灯も気をつけなよ」。灯はひっかかるものを感じた。婚約までした同僚のデザイナーの話だけは出てこなかったからだ。京王線の高尾山口駅。「学校、遅刻するよ」。花は特急に灯を押し込むと、ドアが閉まりかける直前に告白した。「私、赤ちゃんができたの。お父さんとお母さんにはまだ黙ってて」。驚きのあまり声の出ない灯を乗せた特急がゆっくりとホームからすべりだした。「すっきりした」。花は思いきり、伸びをした─。
灯は花の告白にショックを受けていた。男を信じるなと言った理由が飲みこめた。そして婚約者のことをしゃべらなかったことも。「でも私は信じて裏切られてもいい」。灯はすべてを打ち明ける決意で徹郎に会った。「連れて行ってほしい所があるの」。徹郎がかつて通った小学校。「どうしてこんな所に?」。首をかしげる徹郎に対して、今度は「一緒に来てほしい所があるの」と誘った。
花は産婦人科で診察を受けた。母子ともに順調。「このチビと2人で頑張ります」。花はその足でキースの勤める証券会社に向かった。十郎太たちにサル園で捕まった時に社名入りの封筒を落としていたのだ。花は受付に渡すと名前もつげずに出たが、キースが気づいた。やがて画材店で絵の具を選んでいる花を見つけた。キースは代わりに支払おうとしたが、花はぶ然とした。「二度と会うこともない人からお金を借りるわけにいかないの!」。しかしキースはひるまなかった。「一人でやれる事も二人でやる方が幸せ」。キースが祖母から教えられた言葉だという。「人生はそんなオメデタイ事ばかりじゃないの」。ぼう然と立ち尽くすキースを残して、花は何も買わずに店を出た。
灯は徹郎のクルマで高尾山の麓の小さな木造校舎に着いた。「ここ、私が通ってた学校なの。ごめんなさい。徹郎に嘘ついてたの」。灯はせきを切ったように実家の茶屋のことをしゃべった…。
その頃、展望台のビアホールではキース(マーク・コンドン)が健(勝村政信)、十郎太(古田新太)、純平(玉山鉄二)ににらみつけられて困惑していた。サル園の花をながめていたら背後からサルの捕獲網をかぶせられたのだ。「また花から金せびるつもりだったんだろ?」「背が高くてビジュアル系だからって、いい気になるな!」。3人ともキースが花の新しい男だと決めこんで殺気立っていた。「二度と山登って来るなよ!」。下りのケーブルに無理やり押しこんで、3人がホッとしていると聞き覚えのある声が。「あの人に何したの?」。しっかり花に見られていた。
一方、大きなカバンを抱えた灯は徹郎(吉沢 悠)のマンションへ向かっていた。これまでついてきた嘘をどう打ち明ければいいのか、まだ決心がつかない。チャイムを鳴らそうとしたら、ドアが開いて見知らぬ女が出てきた。徹郎とは小学校からの友達だという。「ただの同級生です」。しかし灯はショックのあまり「お邪魔しました」と叫ぶとエレベーターに飛び乗った。短大の講義も上の空。徹郎に裏切られた思いでケータイの電源を切った。「今夜泊めてくれる?」。友達の恵理(石田香奈)に頼むしかなかった。
「なんでもない観光客に言いがかりつけて、なんなのよ!」。花のすごい剣幕に、十郎太たちはキースの前とは別人のようにうなだれた。かたや吉太郎は灯に連絡がつかずに苛立っていた。そのうちに灯が恵理のマンションから灯が電話をかけてきた。事情を飲みこんだ朝子(吉田日出子)は動じることなく花に言った。「明日、あんた迎えに行って来て」。娘の家出は花のときで慣れていた。
「私、帰らないからね」。強がってみせた灯だったが、迎えに来てくれた花の顔を見てホッとしたのも事実。「お姉ちゃん、あの山の人たちに似てきたね。暇だから人の詮索ばかりして」。痛いところをつかれて花はこたえた。とりあえず山に戻った2人を待っていたのは吉太郎の昔話。「俺が小学生の頃は毎日、麓まで歩いて通ったんだぞ」。姉妹そろって何回聞かされてきたことか。朝子だけ笑顔でうなずいているのもいつも通り。
数日後、2人は再び一緒にケーブルに乗った。麓に着くまで花は東京での12年間に体験した恋愛と失恋を灯にしゃべった。「私がどれだけ男運ないか分かったでしょ。灯も気をつけなよ」。灯はひっかかるものを感じた。婚約までした同僚のデザイナーの話だけは出てこなかったからだ。京王線の高尾山口駅。「学校、遅刻するよ」。花は特急に灯を押し込むと、ドアが閉まりかける直前に告白した。「私、赤ちゃんができたの。お父さんとお母さんにはまだ黙ってて」。驚きのあまり声の出ない灯を乗せた特急がゆっくりとホームからすべりだした。「すっきりした」。花は思いきり、伸びをした─。
灯は花の告白にショックを受けていた。男を信じるなと言った理由が飲みこめた。そして婚約者のことをしゃべらなかったことも。「でも私は信じて裏切られてもいい」。灯はすべてを打ち明ける決意で徹郎に会った。「連れて行ってほしい所があるの」。徹郎がかつて通った小学校。「どうしてこんな所に?」。首をかしげる徹郎に対して、今度は「一緒に来てほしい所があるの」と誘った。
花は産婦人科で診察を受けた。母子ともに順調。「このチビと2人で頑張ります」。花はその足でキースの勤める証券会社に向かった。十郎太たちにサル園で捕まった時に社名入りの封筒を落としていたのだ。花は受付に渡すと名前もつげずに出たが、キースが気づいた。やがて画材店で絵の具を選んでいる花を見つけた。キースは代わりに支払おうとしたが、花はぶ然とした。「二度と会うこともない人からお金を借りるわけにいかないの!」。しかしキースはひるまなかった。「一人でやれる事も二人でやる方が幸せ」。キースが祖母から教えられた言葉だという。「人生はそんなオメデタイ事ばかりじゃないの」。ぼう然と立ち尽くすキースを残して、花は何も買わずに店を出た。
灯は徹郎のクルマで高尾山の麓の小さな木造校舎に着いた。「ここ、私が通ってた学校なの。ごめんなさい。徹郎に嘘ついてたの」。灯はせきを切ったように実家の茶屋のことをしゃべった…。