2011年11月24日 プライムニュースで放送
社会・公共

オリンパス・ショックと日本の企業統治について

英国人社長の解任劇からはじまったオリンパスの損失隠しは、オリンパスの上場維持か上場廃止かを
東京証券取引所が判断するほどの事件に発展しました。10期以上に渡る、1000億円以上の損失隠しは、
日本の企業統治の問題点が露呈した事件とも言われます。
発表されている損失隠しの内容は、近年における
ライブドア(約50億円の自社株売却益計上により証券取引法違反となり上場廃止)や
日興コーディアル(約190億円の社内評価益の計上により課徴金5億円が課せられるも上場維持)
よりも悪質という指摘もありますが、内視鏡の世界シェア75%を柱に、企業収益そのものは堅調であり
売上高約1兆円を誇る企業の社会的影響に配慮すべきという意見も見られます。
また、
オリンパスの損失隠し問題など昨今の大企業の不祥事を受け、民主党は、党内の財務金融部門会議の下に、
「資本市場・企業統治改革ワーキングチーム(WT)」の設置を正式に決定しました。
企業経営の在り方を会社法、金融商品取引法のほか、民主党の提唱する公開会社法、証券取引等監視委員会の
あり方からも検討すると報じられています。
この事態をどのように捉えるべきでしょうか。
オピニオンリーダーの皆さまのご意見をお聞かせください。
ステークホルダーとの「信頼構築」がすべて

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:今後、日本社会にとって、オリンパスがどのような形で株式市場と関わることが、有益と言えるでしょうか。
下記からひとつお選びください。
Q2:問1への回答理由をお聞かせください。
Q3:オリンパス、大王製紙に見られる不祥事は、日本の企業統治によって生じる問題とも指摘されます。
再発を防止するには、具体的にどのような法規制、制度改革などが有効でしょうか。
下記から選択肢をお選びのうえ、ご意見をコメント欄にご記入ください。
回答の要点
第三者委員会による調査途中(11月24日現在)であり事件の全容は明らかになっていませんが、オリンパスの損失隠しに対して、コンパス・オピニオンリーダーの見解は大きく分かれました。

回答のほぼ半数は、オリンパスが「上場廃止(株式市場との関わりを止める)」ことが日本社会にとって有益であるという選択肢を回答しています。
しかしながら、ほぼ同数の回答は、「上場維持(株式市場との関わりを継続する)」と、「そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」を選択しています。

回答では、監査法人の在り方や、代表権付会長という役職の在り方の限界を指摘する意見のほか、「飛ばし」ができる会計制度の問題を指摘する意見もあります。
また、今後の対策として、上場会社は取締役の過半数を独立取締役(社外取締役)とすることで、経営陣が株主の利益を尊重する体制のほか、企業から特定の第三者機関にお金を拠出させ、監査法人、公認会計士はその機関から報酬を得ることで、客観的な行動ができるという
具体的な提案も提示されています。

不祥事の解明を丁寧に行いながら、企業と株主、経営陣と従業員といったさまざまなステークホルダーとの信頼関係を適切に構築する方法が待たれていると言えそうです。

オピニオンリーダーのみなさんの回答をご覧ください。
視聴者の皆さまのご意見をお待ちしております。
《コメントを投稿する》から、ご意見を投稿ください。

オピニオンリーダーの回答

( 19件 )
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1. 上場維持(株式市場との関わりを継続する) 

上山信一
慶応大総合政策学部教授
Q2. 「1 - 上場維持(株式市場との関わりを継続する) 」の回答理由
 調査結果を見ない段階では断言はできないが制裁的意味で上場廃止にするのは過剰対応。生業がメーカーであり投機や金融操作を事業とする業態ではなかった。大部分の社員は無関係であり、組織ぐるみの犯罪ではない。過去との決別、関係者の厳正な処分、経緯の調査と情報公開、再発防止の体制整備さえ行えば再生しうる余地は否定できない。今の段階では政治や行政やマスコミが上場是非を批評すべきではない。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
本件は特定企業が起こした一事件に過ぎない。米国や欧州でも経営者の倫理次第で起きうる話であり、特に日本の制度が間違っていたから起こったとは言い難い。設問にある「日本の企業統治によって生じる問題」という指摘そのものがおかしいのではないか。企業犯罪はどういう制度のもとでも起こる。したがって本件のような個別事案に対していちいち政治が過剰反応して介入するべきではない。資本主義はこのような犯罪の発生をそもそも明示的にではないが想定している。過剰規制は慎むべきである。投資家と経営者には自己責任、自己防衛のセンスを磨くことを、政府には規制の自重を求めたい。
 
 
竹中治堅
政策研究大学院大学教授
Q2. 「1 - 上場維持(株式市場との関わりを継続する) 」の回答理由
上場廃止をしたら、すでに株の価格が下落して損をした株主は保有株を処理できなくなり、さらなる不利益を被ることになるのではないでしょうか?
Q3. 回答を控える
 
 
牛尾奈緒美
明治大学情報コミュニケーション学部教授
Q2. 「1 - 上場維持(株式市場との関わりを継続する) 」の回答理由
株主の利益を尊重するならば、現在の経営陣は上場維持のために全力を尽くすべきである。
とはいうものの、これまでの組織内部にはびこってきた誤った考え方、社会的正義・公正よりも組織の存続のためには不正行為も辞さないという閉鎖的で反社会的な思考は徹底的に改められなければならない。
企業は株主のものであると同時に、従業員、消費者、地域社会、金融機関や取引先等、あらゆる利害者集団と密接な関係をもつ社会の公器であるという認識を経営者は強くもつべきであり、会社経営のトップに立つものたちの独断により会社が私有物のごとく扱われることがあってはならない。
今後は経営者の暴走や不正を未然に防ぐための監査機能の実質的な
強化も検討していくべきであろう。
Q3. 回答を控える
 
 
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2. 上場廃止(株式市場との関わりを止める)

夏野剛
慶応義塾大学特別招聘教授
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
日本の株式市場は、上場会社の半数近くが純資産を割る時価総額であるということをみても健全とは言い難い。これは、経済全体の状況が悪いということだけでなく、インサイダー懸念や情報開示の不足、経営体制に対する懸念、株主の権利の曖昧さなど、市場の運営に対する不信による部分もある。今こそ市場のルールを厳格に運用することが求められている。事業が健全であるからと言ってオリンパスを例外扱いしてはいけない。一度上場を廃止し経営陣を総入れ替え、事業体制を根本から見直した上で再上場すればよい。
日本の資本市場が信頼に値するかどうかを世界が注目している。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
上場会社は取締役の過半数を独立取締役(社外取締役)とする。経営と執行を分離し、取締役会が株主の利益を尊重する体制とすべし。
 
 
伊東乾
作曲家・指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
オリンパスの持つ技術、そのコアコンピタンスは非常に重要なもので、実際それがあって維持されている患者の命も決して少なくない。その経営体質には以前から医療現場で多くの批判があると、日々内視鏡を手にする医師からの言葉として、予て耳にもしていた。
確固たる安定を持つべき医療技術が証券市場の乱高下に巻き込まれ、結果的におかしな事になるのを強く憂慮する。上場「廃止」は断言できないが、いったん取引の停止など、モラトリアムの配慮が必要ではないかと思われた。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
率直に、コンプライアンスでギチギチに固めればよい とは思わない。それは企業の自由な競争力をそぐ働きをすると思う。法規や制度改革で縛らねば このような末期的な状況を防げないなら、日本企業全体がある種の金属疲労状態にある証拠といえそうだ。事が金融やサービス業なら違う事を言うと思うが、とりわけオリンパスは技術立国日本を支える大きなブランドの問題であり、行政のシバリ以上に企業の社会的責任を各社が自ら情報開示し、健全化につとめる方向で対策を立てるべきだと考える。
 
 
坂野尚子
株式会社ノンストレス社長
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
当然、上場廃止。この会社の罪はかなり重い。ホリエモンが実刑で服役していて、この会社の10年以上に渡る犯罪が罰せられなければ、理解に苦しむし、グローバルの観点からは笑いものになるでしょう。維持できる道理がない。新規上場においては様々な基準があり、厳しいプロセスを踏むというのに、お手本になるべき上場企業がこのような状態で、かつ、それが罷り通れば株式市場は崩壊する。この会社の事業内容や商品の魅力は別の話である。様々な法律上からも検討の必要があり。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
オリンパスは監査すべき監査役が事件の中枢にいたということが問題。大王製紙に至っては上場企業の経営とは到底思えない、オーナー企業のお粗末な経営実態が明らかになった。いくら社外取締役を増やしても、結果きちんと意見が述べられなければ意味がない。仕組みはこのままであっても、運営面で見直しが必要と思われる。
 
 
中野晃一
上智大学教授
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
そもそもが、日本の「文化」への理解が足りなかったことを、旧経営陣が英国人社長(ウッドフォード氏)電撃解任の理由とし、それを日本のマスコミがこぞって無批判、無検証に垂れ流し、ウッドフォード氏の言い分に一顧だにしなかったことが今に至るまで問題の質を規定していることを見落としてはならない。ウッドフォード氏が海外メディアや捜査当局にアプローチをしてからも、なお日本メディアの反応は鈍かった。
こうした経緯のため、問題は既にオリンパスという企業のガバナンスに留まらず、日本の企業「文化」、それを取り巻く監視・規制機関の「文化」はたまたマスコミ「文化」に対する不信と批判にまで広がっている。皮肉にも、旧経営陣がこの問題を「文化」問題として規定したことが国際的に受け入れられてしまったのである。迅速で適切な反応に欠いた結果、もはや厳正すぎるかもしれない対処のほかありえないのではないか。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
法規制など制度改革だけで、根底にあるこうした「文化」問題が解決できるとは考えられない。容易に予想がつくのは、制度面での改革だけでは、すでに拡大しつつある警察・検察OBの企業への天下りのさらなる増大がもたらされるだけということである。
時間がかかっても、より効果が期待できるのは、外国人の採用と登用の拡充である。これはもとよりガバナンスのためというよりは企業の競争力のために必要不可欠のことであるが、日本型「シューカツ」をはじめ合理性のない差別的な人事慣行により、旧態依然とした企業「文化」がはびこり、日本企業をダメにしていると考える。
 
 
山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
巨額の損失隠しが、コンプライアンスの推進を図るべき経営陣によって引き起こされた悪質犯罪。
長期にわたり内部監査、外部監査(監査法人)が機能せず、株主を欺き続けてきたことに対し、厳しい姿勢を打ち出さなければならない。世界が注目している中、あいまいな対応をすれば、日本の株式市場そのものの信頼を失い長く禍根を残すことになる。また、長期にわたり不正を見逃してきた監査役、監査法人などの責任も明確にすべき。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
監査すべき監査法人が不正会計に手を貸し、米国株式市場の信頼を失墜させたエンロン事件、ワールドコム事件などを教訓に、米国ではサーベンス・オクスレー法(SOX法)をつくった。その後相次いだ会計不祥事防止のため、日本でも米国SOX法にならい「証券取引法等の一部を改正する法律」(日本版SOX法)が成立。内部統制強化、監査法人のチェックシステム基準などを明確にしたが、権力をもつ経営者が不正を主導し、監査役、監査法人、公認会計士を巻き込めば、電子化された提出資料だけで外部から不正をチェックすることは極めて困難。
経営と監査が慣れ合いになれない仕組みの抜本的法改正が必要。
不正者に対する厳罰、抜き打ちの会計査察、内部統制監査が行える「会計Gメン」など、監査役、監査法人もチェックできる新しいスキームが求められる。
 
 
海老原嗣生
株式会社ニッチモ代表取締役 HRmics編集長
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
一罰百戒です。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
代表権付会長という役職のあり方について、再考すべきだと思う。商法でも何らかの規制を設けたらよいのではないか。
本来トップの交代時に前責任者の過誤が明らかになる。ところが、代表権を持ったまま会長職に居座ると、結局、院政となって経営刷新が図れない。オリンパス問題は、下山→岸本→菊川と続いた院政による隠蔽保全が問題だったのではないか?
ギリシャ問題も2年前にパパンドレウに政権交代が起きて、前任者の問題が明らかになった。政治の世界も同様だろう。自民党政権は、首相経験者が長らく権威を保ちすぎたために、反省と改善が進まなかった。
 
 
中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
粉飾決算や飛ばしで投資家を騙す企業に上場する資格はそもそもない。ただ、上場廃止は廃業と同義ではない。企業活動そのものは継続できる。悪しき前例を作らないためにも上場廃止は当然の措置。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
問題は個々の企業にとどまらない。監査法人に対する社会からの厳しい眼が必要。企業統治の透明性を確保するためにも監査法人に対する規制を強化する必要がある。企業(経営陣)、金融機関、監査法人、投資家それぞれに対する規制そのものを総点検しなければならない。
 
 
南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
上場企業が株式市場という、一般労働者の世界とは隔絶された、いわばゲームの空間で実業とは直接関係なく株価を上げ下げし、一喜一憂する不耕丼貪食の輩には、日夜額に汗して実業に従事できる私からすると同情を禁じえず、また無産階級である私個人に関心は乏しい。そもそも投資の損失は自己責任だろう。ただし厳格なルールなくしては誰ももうゲームには参加しようとは考えない。インチキをひた隠しにして参加者を欺いたルール違反のプレーヤーにレッドカードを出さないでこれからどうするのか?今までどおりのゲームをとりあえず維持したいなら迅速にレッドカードを出すべきなのだが、もともと公平さなど求めるべくもない、常態的な大企業えこひいきの構造的インチキが株式市場や証券取引所、金融庁、監査法人業界に蔓延しているのだろう。強きを助け、弱いものには容赦しない、そのような行政の本質は世間一般、特に若い人たちの夢を打ち砕く、国家凋落を加速させる最悪の演出だ。今回、「それ以外に仕事はない」はずなのだから、監査法人の責任もしっかりと問われるべきだ。とにかく、本当はあちこちの会社で、金持ちの年寄りが監督官庁と結託してどうせうまいことインチキやっているのだろう、と国民のほとんどが感じたはずだ。
ちなみに上場廃止でも悪い奴らはしっかりと生き延びるに違いない。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
内部告発を金融庁や監査法人がどうもみ消してきたかをまず実態調査し、公表すべきだ。再発防止などと声を上げてもどうせ監督官庁が利権を伸ばすチャンス以外の意味はないだろう。
ところで、所詮、私企業の栄枯盛衰は自業自得だ。今回の大企業の不祥事がそれにあたるかどうか知らないが、隆盛を極めた企業のアホ息子か悪家老が信じられないような浪費や放蕩で自滅する様はまさしく盛者必滅の理だ。ただし企業は公器でもある。威厳や権力に迎合する情けない企業も多いが、一部の企業は国の誇りであり、国民の誇りでもある。社員の生活もかかっている。ある程度の倫理性、具体的には「小学生に鼻で笑われることはしてはいけない」程度の道徳は持ち備えるべきだ。
一般に、企業の発展のごく自然な方向として、国際化が必定だ。海外で製品が売れ、国際社会に受け入れられたのなら、スタッフや資金、経営のルールが国際化していくのはごく自然で健全なダイナミクスだ。つまり、「日本人だけでやっていこう。日本の中だけで生き残っていこう」はもはや企業として不健全なドグマである。事実、多くの企業が国際市場に進出し、海外からの研究開発スタッフを導入し、もちろん経営陣にも「その道のプロ」として起用され、活躍している。この潮流がなんとか医療者、医療業界にも起こってほしいものだ。
今回の老舗光学メーカーの場合、外資が技術と販売ルートを狙うだろうと言われているが、粉飾決算の共同正犯として連座すべき奸僚も、自分たちの利権を漁ろうと天下りの降下地点を探していることだろう。ハイエナに屍を曝す事態となるなら本当にお気の毒だ。
例えば今回オリンパスが多国籍企業となるのなら、それはそれで一つの優れた業績の褒章としてのあるべき姿であろうと思うし、将来オリンパスが「この素晴らしい会社はいったいどこの国の会社?」との声が医療現場で聞こえたとしても、それはそれで一つの誇り高きサクセス・ストーリーなのではないか。
 
 
藤巻健史
株式会社 フジマキ・ジャパン代表取締役社長
Q2. 「2 - 上場廃止(株式市場との関わりを止める)」の回答理由
株主の信頼を失ったのだからペナルティーを受けるべき。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
オリンパス問題は、会計制度の問題に尽きる。簿価会計から時価会計にシフトする際に不正が行われたと思われるが、昔から時価会計が法的に強制されていれば不正は起こらなかったはず。時価会計は最高のコーポレートガバナンスである。その観点からもIFRs(包括利益会計)の早期導入が望まれる。東日本大震災でIFRsの導入を遅らせようという動きがあるが、これが最大の問題。私は邦銀と外銀の経験があるが、米銀が1990年代に輝いていたのは時価会計のせいだと思っている。会計がいかに企業の行動、そして国力に影響するかを日本人が理解していないのが日本の不幸。
米国では企業は株主のもの。したがって株主が一番求める時価会計が徹底している。時価会計のもとでは「飛ばし」は出来ない。日本は社会主義国家であるため会社は株主のものとは言えない。経営者のものかもしれないし、労働組合のものかもしれないし、株主のものかもしれない。会社が経営者のものなら経営者にとって都合のよい簿価会計に執着し、今後とも損失は隠され「飛ばし」は又、起こる。
 
 
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3. そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)

本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
 医療界から見れば、オリンパスは検査用内視鏡や内視鏡治療に用いる多くの機器をほぼ独占してきた。
 現在先進国最低レベルに抑制された日本の診療報酬点数では、内視鏡治療等を行った際に、オリンパスの治療用具を購入し用いると用具代が高くて、赤字になることも珍しくなかったのが現実だ。
 そのような現場から見れば、同社の損失を補てんするために、医療側に、その分を上乗せした高額な治療機器を販売してきた構図が明らかとなる。
 内視鏡検査や治療にあたる医師・検査技師・看護師は医療事故の危険というストレスと対峙しながら日々治療にあたっている。医療現場を支えるという「社会的責任」があるはずの同社が、機器をほぼ独占する体制を作ることよって、医療界から利潤をあげてきた構図は大変残念でならない。
 企業体質を一新し、医療現場から利潤を搾取することのない価格設定に改めてほしい。
Q3. 回答を控える
 
 
小幡績
慶應義塾大学ビジネススクール准教授
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
まだ事実関係の把握が不十分。この時点で、上場廃止かどうかの判断をするのはまだ早い。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
社外取締役の責任強化、報酬の増加、社会的尊敬の増大。
損失隠しは、引き継いで発覚した人ではなく、最初に行った経営陣を最も厳しく罰するよう、制度を改正する。
 
 
若狭勝
弁護士
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
上場維持か廃止かは、市場の公正性がどの程度侵害されたかによって判断されること。現時点では、その調査・捜査が急がれる時であって、今、維持とか廃止とかいうのは、結論先ありきの感を受け、公正性・透明性・説明責任に問題があり、諸外国からの調査捜査の公正性に対する信頼を損ねることになる。なお、特に、証券等取引監視委員会の関係者が、現時点で、維持とか廃止とかに言及することは、その関係者からその情報を聞き及んだ者のインサイダー事件にも発展しかねず、将来、そのインサイダー事件を調査する証券等取引監視委員会が自分の首を絞めることにもなりかねず、厳に慎むべき。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
監査法人の在り方を変えるべき。依頼会社の報酬で監査法人が監査する現行システムには無理がある。報酬をもらって会社の存続を危ぶむ意見を言うことには限界がある。人間心理として無理がある。そのため、現在、監査法人に報酬を払っている会社から、特定の第三者機関にお金を拠出させ、監査法人ないし公認会計士は、そこの機関から報酬を得られる方法にする。報酬につき、いわゆる依頼会社との紐付きをなくす。これにより、思い残すことなく、客観的な忌憚なき意見を監査法人ないし公認会計士が会社に言えるようになり、不正を事前に暴くことができる。要は、なれ合いを事前に防止するシステムの構築である。
 
 
浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
上場には値しない企業のようである。内部通報などによって寄せられた問題提起を、ことごとく退けて、問題の先送りに加担してきた経営陣は全員退陣しなければならないし、しかるべき責任をとってもらわなければならない。
しかし、上場廃止にしたからといって、経営者の責任が直ちに明確になるわけでもないし、それで問題が解決されるわけでもない。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
第一に、公益通報者保護法の強化と、企業の側における内部通報制度の充実が必要。オリンパスは、内部通報者に対する取扱にも問題があったようであるが、それに対する法規制が甘すぎる。米国の金融改革法(Dodd Frank法)ではwhistleblowerへのbounty(報奨金)なども追加されたが、そうした制度も参考にする時機である。なお、公益通報者保護法は施行から5年たって見直しのはずだが、どうなっているのか?

第二に、独立社外取締役の義務化。韓国などの法規制を導入している例もあり、日本はまだまだ遅れていて、自主的な採用を待っていては、いつまでたっても変われないようである。ただし、これは実質的に、機能する人材と、受け入れ側の意識改革が、それがうまくいくための不可欠の大前提であって、形式的な取り繕いでは何も改善はできない。この点では、あわせて経営者の意識改革がないと看板倒れになる。だからといって、それが全く無意味というわけでもない。義務化しないよりはマシである。

そのほか、制度改革というよりも、現行制度の運用改善によるものとして、監査役を機能させるための環境整備とか、その人事のあり方、コンプライアンス・プログラム(内部統制)の向上など、総合的な施策が求められる。

なお、現在、法制審議会会社法部会では、「監査・監督委員会設置会社」なるものの「解禁」という、現行制度を退化・骨抜きにするような案が議論されており、そういう妙な改革がなされたら、ますます悪くなる可能性がある。
 
 
森信茂樹
中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
第3者委員会の報告を待つ必要があるが、これまでの報道を見る限りでは、不祥事は投資家には見抜くことは難しく、上場廃止をすることは制裁として行きすぎで、東証による課徴金などの対応で様子を見てはどうか。その後、事実関係が判明した段階で、上場廃止も含めた判断が必要。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
このような不祥事は、エンロン、ワールドコム、AIG(保険会社)など、米国でも相当数見受けられる。会社の私物化という意味では、日米にそれほど相違があるとは思えない。したがって厳密にいえば、今回の問題は、制度の問題とはいえない。現にオリンパスは、日本企業としては米国型ガバナンスを導入していた会社である。
しかし、日本企業の方が、上司や会社の不祥事を見逃しやすい体質・土壌があることは事実だ。制度的に、「お友達でない社外取締役」を増やして「実質的な独立性」を確保する方向に向かうしかないのではないか。同時に、取締役の資質の問題なので、ビジネススクールの教育などで人材育成の見地から対応することも必要。
 
 
宮家邦彦
外交評論家,株式会社外交政策研究所代表
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
 独立した第三者委員会の調査を踏まえ、グローバルスタンダードを念頭に、慎重に判断するのが良いと思います。拙劣な手法で「魔女狩り」的に同社を市場から追放することには賛成できません。
 オリンパス以外にあるかもしれない類似のケースについて自発的な矯正を阻害することになり、将来にわたって日本市場の健全性を担保出来なくなると思うからです。
Q3. 回答を控える
 
 
鈴木豊
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授・公認会計士
Q2. 「3 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
監理銘柄に当分の間おいておく。その間に経営者・関係者に対する責任関係を明らかにし、即決をもって厳しい処分を決める。その後上場維持を検討する。理由は、発生した事由は、第一に経営者の倫理性の欠如であるが、第二にその周辺に存在するこれらを誘引させる関係者の存在とその責任もある。これらを一掃しないと稀有であるがまた起きる可能性があるからである。
Q3. 再発防止策について意見を述べる
第一に、これらを引き起こす経営者に対する責任処分を重くする。第二に、取締役会・監査役の責任処分を重くする。第三に、これらに関与する関係者の責任処分を重くする。第四に、これらの監視・規制機関の責任も重くする。これは民・官・政全体に倫理性の欠如があり、これも遠因になっているものと思われるからである。
 
 
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