2011年09月03日 新・週刊フジテレビ批評で放送
社会・公共

民主党代表選におけるテレビ報道

 今週の『新・週刊フジテレビ批評』では、テレビによる政治報道を考えることを企画しました。

 8月29日に行われた、菅首相退陣に伴う民主党代表選挙は、告示から投開票まで3日という短期間で行われ、
報道番組、情報番組など各番組がそれぞれの視点で、放送を行いました。
 テレビによる政治報道の現状を検証することは、テレビという
マスメディアの発展のみならず、政治の質の向上に繋がると考えられます。

 そこで、次のことをオピニオンリーダーのみなさまにお尋ねします。
報道する側/される側 双方に『改善』の余地

オピニオンリーダーへの問いかけ

※コンパスで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
Q1:8月末に行われた民主党代表選におけるテレビによる政治報道は、
どのように評価できるでしょうか。下記からひとつお選びください。
Q2:問1の選択理由などについて、ご意見をお聞かせください。
回答の要点
民主党代表選におけるテレビ政治報道について、オピニオンリーダーからの評価は、
大きく3つに分かれました。

「評価できる」「まあ評価できる」と、今回の報道を肯定的にとらえる回答では、その理由として、画像によって各候補者の「雰囲気」や「イメージ」を知ることができた点、政治情勢を迅速に正確に伝えようとしていた点などが挙げられました。

一方、「やや問題がある」「問題がある」と、否定的な回答を寄せたオピニオンリーダーのほとんどは、政策的な掘り下げが不足していた点を指摘しています。

また、「どちらとも言えない」「そのほか」という回答では、政策論よりも政局論についての報道が先行した要因が、そもそも代表選に3日間という短期間しかとらなかった民主党の姿勢そのものにある、という別の角度からの見方も提示されました。

報道される側の問題とともに、
テレビによる政治報道には、更なる『改善』の余地があることが
オピニオンリーダーのコメントから浮かび上がります。

オピニオンリーダーのみなさんの回答をご覧ください。
あなたのご意見も〈コメントを投稿する〉からご投稿ください。

オピニオンリーダーの回答

( 17件 )
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1. 評価できる

若狭勝
弁護士
Q2. 「1 - 評価できる」の回答理由
国民は、報道によって、候補者の主張の詳細はともかく、少なくとも各候補者の雰囲気や政治情勢を感じ取ることができる。何も報道されないとしたら、それこそ停電状態での物探しと同様となる。
 
 
南淵明宏
医療法人社団 冠心会 大崎病院 東京ハートセンター  心臓外科医
Q2. 「1 - 評価できる」の回答理由
人間の情報の理解はまず感性である。テレビは映像を広く万機に伝える手段だ。今回、普段とは打って変わって必死の形相の野田氏をはじめ、落ち着き払ったトーン抑え目の前原氏や、優等生っぽい海江田氏、大志みなぎる馬淵氏、誠実さを訴える鹿野氏、以上は私の勝手な受け止めだがこういったロゴス的理解を超越した「イメージ」が画像から伝わったことは極めて重要だと思う。日本社会には見てくれやパフォーマンスを揶揄、蔑視する典型的な「負け犬の妬み」エネルギーがごく一部にはびこっているが、少なくとも首相は日本の顔であり、「この顔を世界に出せるか!?」という視点は極めて重要だ。顔を出せばリスクも取らなければならなくなる道理が世の中にはある。顔は決して出さないで既得権益を死守して美味しいところをがっちりいただくことが「成功」と考える卑怯な輩を排除する意味でも、ハイビジョンで顔をしっかり見てもらう、という規範を今回の代表選は示したわけだから、そんな風に理解すればテレビの意義は大きいし、これからも何が何でも「顔」をしっかり画面に収めてほしい。そういうことだから、被写体である首相や要人も、大事なところで原稿棒読みはさらにみっともなくなるわけで、小学生にバカにされないためにもとにかく「原稿棒読み」の体たらくだけは今後一切やめてほしい。
でもダメでしょうね。所信表明演説も原稿棒読みなんでしょうね。
海外メディアの取材に世界各国の首相みたいに当たり前に英語で回答できない、世界でもまれにみる異例の国という汚名に、国民は「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んでいる」のだから、日本語ぐらいは原稿読まないでしっかりと自分の言葉で話してほしいですね。新首相が原稿に目を落とさないでしっかり前を向いたままで所信表明やり、その映像が日本の全世帯、そして全世界に流れたら、それだけで日本は変わるんだけどなぁ・・。無理でしょうね。ガイジンを雇って首相をやってもらうのはダメなんでしょうかね?
 
 
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2. まあ評価できる

鈴木豊
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授・公認会計士
Q2. 「2 - まあ評価できる」の回答理由
代表選後の新聞等の詳細な報道では、映像で知った内容と異なるあるいは深掘りした事象もでており、映像で捉える部分は限界があるともいえる。しかし大きな流れを迅速に正確に伝えようとしている趣旨は、理解できるので‘まあ’評価できるといえる。
 
 
岸本裕紀子
エッセイスト,政治コラムニスト
Q2. 「2 - まあ評価できる」の回答理由
各候補者について政策ごとにどのようなスタンスなのかを整理していて、わかりやすかった。票読みに関しても、告示前から状況がいろいろ変わったが、その都度分析が加えられ、代表選へのさらなる興味をかきたてたと思う。
一方で、政策にしろ票読みにしろ整理しすぎて、ちょっとパターン化されてきているとも感じた。
投票直前の候補者の演説については、個性が出ていて面白く聞いたが、それぞれの演説について、自由にコメントしてもいいのではないか(アメリカ大統領選の際の各候補者や支持者の演説に対して、マスコミがするコメントのように)。また、投票の際は、投票箱に票を入れる瞬間の国会議員の名前を一人一人表示してもらえたら、と思った。
 
 
山田吉彦
東海大学海洋学部海洋文明学科教授
Q2. 「2 - まあ評価できる」の回答理由
マスコミが特定候補者の支持色はなく、中立であったと思う。また、前原氏の外国人献金問題を指摘したことも、禍根を残すであろうことを考えると適切であった。
決選投票によるどんでん返し、ショーとしては楽しかったが、今後の政権運営はショーでは困る。
 
 
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3. やや問題がある

中津孝司
大阪商業大学総合経営学部教授,国際問題評論家
Q2. 「3 - やや問題がある」の回答理由
夏休み中ということもあって、普段よりもテレビ報道を見る機会が多かった。各局が情報番組やワイドショーでリアルタイムで状況を伝えていた。
迅速性という点ではテレビ、あるいはラジオは優れている。いつになく有権者は民主党代表選挙の行方に関心を持っていたと思われる。多くが前原氏が新首相に就任すると予想していたのではないだろうか。予想に反する結果となって一層有権者の関心が高まったかもしれない。
テレビ放送を見ていると、誰が選出されるか、代表選終了後は誰がどのポストに就任するのかに報道が偏っていたように思われてならない。政策が大切だと主張しながら、政策を軸とする報道は少なかったように思われる。また、国際比較、外国の事例と日本のそれを比較する視点も欠如していたように思われる。要するに、報道が誰がどのポストにという点のみを伝えることに終始していたのではないか。掘り下げた分析が少なかったのが残念だ。
 
 
山村武彦
防災システム研究所所長
Q2. 「3 - やや問題がある」の回答理由
全体としての報道は評価できますが
1、一部の報道姿勢は、やや偏向していたように思えました
  小沢・鳩山詣でを批判めいて報道していたが、恣意的に感じました。
  以前、政権交代し民主党政権にさえなれば、すべてが良くなるような風潮報道が思い浮んでしまったのです。
2、代表選候補討論会は各社マンネリ
  テレビ局各社で同じ質問、同じ答えであるなら合同で行うべきでは。
  ねじれ国会問題を、大連立の有無に答えを求めようとするのはナンセンスのような気がします。
  せめて、現状の政治体制の是非にも切り込んでほしいと思いました。
3、新幹事長談話に反応しないメディア
  呉越同舟の党運営に意を注ごうという気持ちはわかりますが、
  政権政党幹事長が「目標は党内融和、その一点」の第一声では
  震災復興、原発事故対策、歴史的円高対策などよりも自分たちの
  船(党)の船員対策を優先すると宣言しているようなもの。
  その船に乗せられている被災者、避難者など乗客(国民)への
  視点は、党としても必要ではないでしょうか。

  
 
 
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4. 問題がある

浜辺陽一郎
青山学院大学大学院法務研究科(法科大学院) 教授,弁護士
Q2. 「4 - 問題がある」の回答理由
あいかわらずの政局なのか、政策的な話や長期的な展望などがあまり見えてこなかった。
確かに、各候補の一応の政策の対比は報道されていた。しかし、なぜそうなのかとか、どちらが優れているのか、あるいはどうすべきなのかといった議論の深まりがなく、とにかく各候補者の見解がどう違うかという結論が何度も紹介され、見ている側は「本当にそう言っている通りにするつもりなのかな?」と疑問を抱いてしまい、しかも多くの報道内容は、民主党がいかに内向きであるかを示すもので、政治不信を募らせたように思わせる。
民主党の代表選そのものも、そういう実態だったから仕方がないという面もあるのだろうが、誰が何票取ったといった戦況に注目するから、政治家たちも一生懸命にその辺りの駆け引きに熱中し、それが面白おかしく、あるいは興味深く報道されていたようにも感じられる。結局、どじょうだとか、金魚とか、演説のパフォーマンスだけが印象に残る代表選に終わってしまった。
時間が短かったから難しかったのだろうが、国民のために、代表選に対する注文をテレビがもっと吸い上げて、政策論を掘り下げるように促すことを期待するのは、ないものねだりであろうか。
 
 
夏野剛
慶応義塾大学特別招聘教授
Q2. 「4 - 問題がある」の回答理由
各候補に対する質問や評価が、小沢氏との距離や処遇問題に集中し過ぎていた。もっと各候補の政治信条や過去の言動、リーダーとしての資質に踏み込むべきだったのではないかと感じる。
 
 
藤巻健史
株式会社 フジマキ・ジャパン代表取締役社長
Q2. 「4 - 問題がある」の回答理由
人事面に焦点を当てるなど、あいかわらず「面白いドラマ」仕立でしかなかった。例えば「日本が戦争に巻き込まれるか」の時のリーダー選びだったとしたら、このような報道をしたかを考えて欲しい。
新政権は、財政破綻という第2の敗戦に遭遇する可能性の極めて高い政権であり、日本の命運を握っている政権だ。日本の将来の浮沈に対するマグニチュードは、戦争突入と同程度だと私は思っている。それだけの緊張感が全く伝わってこなかった。もし、その理由が、マスコミに財政破綻に対する危機感が欠乏しているせいならば、それは世論をリードすべきマスコミの怠慢である。
 
 
森信茂樹
中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員
Q2. 「4 - 問題がある」の回答理由
政局的な視点が強く、政策的な視点に欠けていた。民主党のマニフェストに対する自らの立ち位置、復興財源を建設国債で調達すると財政リスクは大丈夫なのか、円高はなぜ生じ、デフレはなぜ長引いているのか、候補者自身の見識を問うような問いかけをして、その資質を国民が評価できるような報道が欠けていたように思う。
 
 
本田宏
医療制度研究会副理事長
Q2. 「4 - 問題がある」の回答理由
 親小沢、反小沢という対立のみがクローズアップされ、その根底にある親小沢=脱官僚(マニフェスト維持)と反小沢=官僚主導容認(マニフェスト見直し)という、本来は国民生活にとって一番重要な違いを埋没させてしまった。
 過去にも政治家の人間性やスキャンダル等ばかりがおもしろおかしく繰り返し報道される傾向が強かったが、今回も政治家の人間関係(派閥)等ばかりが強調され、国民生活にとって一番重要な政策の差を明確にできなかったのではないか。
 そのような報道のあり方は、国民の政治家や政治への不信を増大させて政治への関心は低下し投票率も低下、衆愚政治に近い状態となり、結果的に官僚主導体制を強化させてきた。
 戦前に「日本の禍機」を著し、日本が誤った方向へ進むことを繰り返し警告した「朝河貫一イェール大学教授」は第二次世界大戦前から『「戦いのことについての日本の記事は当地の新聞より短く、本国の日本人には何も知らされていないのではないかと心配です。(事情がよく知らされていない日本では)罪のない忠実な一般の人民が最も気の毒であります。」』と嘆いた。
 日本はかつて「大戦突入と敗戦(+原爆投下)による国民生活破綻」という轍を踏んだ。そして現在は「経済最優先(+原発事故)の結果の国民生活破綻」という轍を踏もうとしている。
 メディアには日本を真の民主主義国家に成熟させる社会の木鐸としての責任がある。日本国民が抱えた多くの問題の「本質」を明らかにする報道を熱望したい。
 
 
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5. どちらとも言えない

坂野尚子
株式会社ノンストレス社長
Q2. 「5 - どちらとも言えない」の回答理由
正直、独自の視点で放送を行ったというほど、差別化された報道と受け取れませんでした。いずれにしろ、テレビも、批難から、提案という姿勢も持ってほしいと思います。ただ、代替案もなく批難するだけなら簡単ですので。勿論、1つの主張をするというのは立場からできにくいとは思いますが、少なくとも、何らかの意見を持たない人への着眼点はいくつか提案できると思います。
 
 
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6. そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)

宮家邦彦
外交評論家,株式会社外交政策研究所代表
Q2. 「6 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
テレビ局が意図するか否かに関わらず、テレビという媒体が各種選挙キャンペーンの重要な要素となって久しい。その意味でテレビの政治報道には印刷媒体以上に高い職業意識が求められると思う。真の問題はテレビの政治報道一般ではなく、個々のテレビ局とその関係者各自の自覚の有無ではなかろうか。
 
 
伊東乾
作曲家・指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督
Q2. 「6 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
「テレビによる政治報道」全体をひと括りにして「評価できる」「できない」といった判断を下すこと自体に、どれほどの意味や有効性があるのか、やや疑問に思います。

間違いなく言えることは、政局の風を読むような情報は、中長期的にみた国政の本質に大きなプラスの影響を与えるとは考えられない事でしょう。政権首班を選ぶ選挙とはいえ、民主党内の代表選挙であり、三日という短い期間も深く関わると思いますが、一般論として、より具体的な政策、人が変わればどう現実に変化があるか、明確でリアルな観点からの政治報道がなされることで、テレビはより中長期的に、見識ある公衆を育て、それがひいては政治の質の向上に繋がるのではないかと思います。
 
 
木村太郎
ジャーナリスト
Q2. 「6 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
問われるべきは、次期首相選出に3日間という短期間しかとらなかった民主党の姿勢だ。
その結果、政策論議もほとんど行われず「反小沢対親小沢」という力学で首相が選出されることになった。
マスコミは、その経緯を伝えるのが務めで、政治を演出する立場にない。
政治の結果が悪ければ、政治の責任でありマスコミの責任ではない。
 
 
石川和男
社会保障経済研究所代表
Q2. 「6 - そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)」の回答理由
『報道される側の問題』

国の最高権力者を選出するのに、告示から投票まで実質数日しかないような制度になっていることを是正しないといけないと考える。
選挙には数が最重要なのは当然だが、毎度こんな短時間でトップを決めるような仕組みをいつまで続けるのか。
(欧米諸国などを見れば一目瞭然。)

 このような状況では、政策論よりも政局論に終始する報道が氾濫するのも無理はない。報道する側であるマスコミ各社の報道姿勢も正すべきところは多いが、それ以前の問題として、そもそも報道される側である政治の世界(=「政界」)の仕組みを改正すべきである。

 報道に内容については、自民党政権時から言えることだが、今回の民主党代表選でも、政策論ではなく政局論を中心とした報道が先行し過ぎている。
 当初の段階では、「大連立」や「小沢氏処遇」を争点にする報道ばかりであった。確かに政策に比べて政局の方がドラマチックで面白いという面はあろう。だからマスコミ各社が政局報道に傾きがちなのは理解できなくもない。
 しかし、国民生活や市場にとっては、政局よりも政策の方が重要であることもまた事実。
 難しい問題は多々あろうが、来年の民主党代表選、再来年の衆院選の際には、マスコミ各社政治部の皆さんの重きを、政局一辺倒をせめて半分にして頂き、半分は政策論争の時間に充てて頂きたい。
 
 
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