第5回 2004年11月4日(木)放送 あらすじ

#5 囚われた尼君

 ある日の京都。尼寺・慶光院の新院主(瀬戸朝香)の天皇に対するお披露目が行われていた。慶光院は、公家出身で、心根の優しさ、人望の高さ、信仰の篤さそして美しさと、非の打ち所のない尼僧であった。仲の良い尼僧見習い・お玉(星野真里)と共に院の門外に出て活動する慶光院を物陰の駕籠から三代将軍家光(西島秀俊)が見つめていた。
 そのころ江戸城では、おふく改め春日局(松下由樹)の権勢はさらに拡大し、政治にまで大きな影響を及ぼすようになっていた。ただ、家光に世継ぎのできぬことだけが春日局の心労の種。正室の孝子(木村多江)に麝香を焚き染めた寝間着を着せてもまったく効果がない。孝子も家光に情などまったく感じている節もない。そんな折、中臈の村雨(小松みゆき)が、家光が京で慶光院院主のお披露目にお忍びで出かけ、長い間眺めていたと報告してきた。春日局の目が光った。
 それからしばらくの後、慶光院院主やお玉ら慶光院の尼僧たちは江戸の拝領屋敷に滞在していた。家光に跡目相続の挨拶とお礼に訪れたのだ。春日局の配慮により下にも置かぬもてなしである。春日局から贈られた菓子などを食べながら、一行は遠謀など知る由もなく、春日局の噂話などに花を咲かせるのだった。
 江戸城謁見の間で、家光と慶光院が顔を合わせた。家光の江戸への逗留を促す言葉を、慶光院は即座に拒絶し春日局を唖然とさせる。しかし、家光は快さを感じる。春日局は苛立ちを隠せず、なぜ尼僧になったのかと攻撃の手を変えた。すると慶光院は、尼寺は女の駆け込み寺。心の傷を負った女が逃げてくるところ。この世の機微は、自分より春日局の方が知っているはずと切り返す。返す言葉のない春日局を見て、家光は笑いをこらえ切れない。謁見が終わるころ春日局は、一計を案じ、淡路守に金子を用意し拝領屋敷に持っていくようにと命じた。受け取った慶光院は、あまりにも高額な金子に不安を覚える。
 その夜、慶光院が仏への勤めを行っていると外が騒がしくなり、尼たちの悲鳴まで聞こえてきた。お玉が慶光院に危険を知らせに来るが時すでに遅く、多数の武士が部屋に上がり込んで来た。そして、その中から春日局が現れる。「明日からは仏ではなく上様にお仕えしていただきます」という春日局の言葉に、慶光院は怒りをあらわに詰め寄るが、武士に抑えられ、連れ去られてしまう。
 お玉は、ほかの尼僧のように京に戻る気にはなれなかった。姉以上に慕う慶光院を助けようと江戸城に赴くが、武士たちにはまったく相手にされない。とうとう、大奥の女中になると申し入れる。お玉はやっとの思いで春日局にお目通りがかなうが、春日局は、「慶光院は側室となったので、女中になっても会えない」とお玉を追い返そうとする。だが、お玉は「這い上がって、いつか会ってみせる」と大奥入りを果たすことになった。
 実際、廓で苦労してきたお玉は、古参の女中のいじめなど意に介さず、頭角を現していく。そんな中、家光の正室・孝子が、中の丸に追いやられたと聞く。慶光院が現れたので、春日局の厄介払いなのだろうか。
 ある日、大奥のさらに奥にある座敷牢に膳を持っていく春日局。扉を開けると慶光院が静かに座っている。数カ月の幽閉に疲れきった様子で、自分は死ぬのかと慶光院。夜になると女の泣き声が聴こえるというのだ。春日局は微笑し、髪が伸びるまでの辛抱とその場を去るが、別の座敷牢にも足を運ぶ。そこにも女の影が……。
 春日局が自分の部屋に戻ると怒りに震える家光が待ち受けていた。家光は京都の慶光院からの手紙を突き付け、寺に返してやれと続ける。だが、春日局は冷静に、還俗すれば寺には戻れない、自分は地獄に落ちる覚悟と家光を見据える。家光は興奮を収め、好きにしろと背を向けた。
 居室に戻った家光は、笛の奏者の半井隼人(金子昇)に女性についての悩みを語り始める。隼人は、自分には菩薩に似た姉がいるが行方不明だと話す。家光は、隼人に東の櫓の前で笛を吹いて来るように命じた。隼人は笛を吹きながら、キリシタンだった優しい姉のことを思い出していた。
 まさにその時、慶光院は行く末をはかなみ自ら命を絶とうとしていた。そこに聴こえてくる笛の音。耳を澄ます慶光院は、死を思いとどまるのであった。それから毎夜聴こえてくる笛の音に慶光院は慰められ、生の喜びを聴き取るのであった。
 ある夜、ついに慶光院は窓の下で笛を吹く隼人に声を掛けた。そして身の上を話し始めるが…。

キャスト

春日局 … 松下由樹
慶光院(お万) … 瀬戸朝香
徳川家光 … 西島秀俊
お玉 … 星野真里
孝子 … 木村多江
半井隼人 … 金子 昇
葛岡 … 鷲尾真知子
吉野 … 山口香?里
浦尾 … 久保田磨希
村雨 … 小松みゆき

スタッフ

■脚本
 浅野妙子
■企画
 保原賢一郎
■プロデュース
 林 徹
 樋口 徹
 手塚 治
 若松 豪
■演出
 林 徹
■音楽
 石田勝範
■主題歌
 サザンオールスターズ
■制作
 フジテレビ
 東映

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