第7回 2003年3月11日(火)放送 あらすじ

第7話 騙された男

 新婚の秋山大治郎(山口馬木也)と佐々木三冬(寺島しのぶ)のところに、秋山小兵衛(藤田まこと)の旧友で一刀流の達人、学者でもある笠原源四郎(石田太郎)が居候をしていた。さすがに新婚と気づいて退散し、不二楼に移った。
 秋山父子とも付き合いのある中沢春蔵(矢崎滋)という浪人がいた。腕は立つが人生に投げやりだ。中沢は賭場で知り合った平吉(谷口高史)という男から、「悪い侍を叩きのめして欲しい」と前金五両を渡され、詳しい事情も聞かずに引き受けた。
 二日後の夜、中沢は平吉に手引きされ、酔って歩いている侍を棍棒で殴り気絶させた。翌日中沢は大治郎を訪ね、借りていた一両を返した。そこに小兵衛と弥七(三浦浩一)が来て、不二楼を出た笠原が、夜道で殺されたと告げる。棍棒のようなもので殴られ、倒れているところを背中から刺された、と言う。中沢は耳を疑った。
 小兵衛と弥七は不二楼に急ぐ。中沢も後を追う。その理由をしどろもどろに、「殺されたお方が先生のお知り合いと聞き、座視できないので」と言った。小兵衛と弥七は、中沢の態度が尋常でないのを不審に思った。
 中沢は自分が殺人の片棒をかついだことで良心の呵責を感じ、平吉の行方を探す。やがて半月ほど前、浄心寺の境内に平吉が女連れでいたとの情報を賭場で得る。雲をつかむような話だが、それしか手がかりはない。中沢は翌日から浄心寺の参道の茶店に編み笠をかぶって張り込む。その中沢を小兵衛、弥七、徳次郎(山内としお)が監視していた。
 中沢は不運な男だった。剣の腕で将来が期待されていたが、ある日、溺愛していた三歳の娘が、妻が目を離したすきに、野良犬に噛まれて死んだ。その自責の念で、妻も川に身を投げて死んだ。以来中沢は、酒びたりの生活となった。
 笠原の世話をしていた不二楼の女中お千(筒井真理子)の様子が最近おかしい。浄心寺の境内で人を探しているお千を中沢が見つけ、問い詰めた。お千は二月前に病気の亭主を亡くし、三歳の娘を抱えて借金を抱えていた。そんなお千に平吉が近づき、ついには所帯を持とうとまで言った。そうしてある日、笠原のことをあれこれと聞き、仕事のことで話をしたいので、笠原が不二楼を引き払う日だけでも教えて欲しいと迫った。
 それを教えたことの罪の意識でお千はいたたまれない。お千の長屋で話を聞いた中沢は、自分に任せろと言って財布をお千に渡し、眠っている三歳のおみつ(尾上瑞季)の髪に、いつも懐に持っていた赤い櫛を挿した。死んだ娘の櫛だった。
 平吉は高橋又十郎(佐藤仁哉)という道場主のところに身を隠していた。高橋は以前、酒に酔って笠原にからみ、斬りかかったが軽くあしらわれ、堀に投げ込まれた。その恥辱と、それが世間に知れたら、道場の人気が落ちることを恐れ、裏社会を知る平吉に百両で笠原殺害の手助けをするように依頼、あの日、倒れた笠原を背中から刺したのだ。
 平吉がお千の長屋に現れ、外で遊んでいたおみつを殺そうとする。そこに石つぶてが飛んでくる。大治郎だった。平吉が逃げる。浄心寺の境内を行く平吉を中沢が見て後を追う。平吉は高橋道場に入り、江戸を去るので餞別を百両出せと言い、出さなければ・・・と、高橋の悪行を話す。それを中沢が聞いていた。中沢が刀を抜き、高橋や門下生が刀や木刀を持って集まる。そこに大治郎と小兵衛、弥七らが到着して激しい戦いとなるが、小兵衛が木太刀で高橋を撃ちのめし、弥七がお縄にする。中沢は平吉を斬り捨てた。
 裁きの結果、高橋は死罪。中沢も騙されたとはいえ罪は免れず島送りとなった。お千は取調べの対象にならなかった。小兵衛と大治郎は中沢に、「過ちは犯したが、か弱い親子を救った。償いが済んだら人生をやり直せ、力になる」と言うのだった。

キャスト

秋山小兵衛   ・・・・ 藤田まこと
秋山大治郎   ・・・・ 山口馬木也
佐々木三冬   ・・・・ 寺島しのぶ
おはる     ・・・・ 小林綾子

不二楼 おもと ・・・・ 梶 芽衣子
四谷の弥七   ・・・・ 三浦浩一
板前の長次   ・・・・ 木村 元
傘屋の徳次郎  ・・・・ 山内としお
およね     ・・・・ 江戸家まねき猫
飯田粂太郎   ・・・・ 尾上寛之

笠原源四郎   ・・・・ 石田太郎
お千      ・・・・ 筒井真理子
平吉      ・・・・ 谷口高史
高橋又十郎   ・・・・ 佐藤仁哉

中沢春蔵    ・・・・ 矢崎 滋

ほか

スタッフ

企  画 ・・・・ 市川久夫
        金井卓也(フジテレビ)
        武田 功(松竹)
プロデューサー ・・ 能村庸一(フジテレビ)
          佐生哲雄(松竹)
原  作 ・・・・ 池波正太郎 「敵」より
        (新潮文庫刊)
脚  本 ・・・・ 田村 惠
音  楽 ・・・・ 篠原敬介
監  督 ・・・・ 高瀬昌弘
撮  影 ・・・・ 江原祥二
照  明 ・・・・ 中島利男
美  術 ・・・・ 西岡善信
殺  陣 ・・・・ 宇仁貫三
料理監修 ・・・・ 近藤文夫(銀座 近藤)

ナレーター ・・ 橋爪 功

制作協力 ・・・・ 松竹京都映画株式会社
制  作 ・・・・ フジテレビ
        松竹株式会社

バックナンバー