剣客商売(2003年)
第6話 誘拐(かどわかし)
佐々木三冬(寺島しのぶ)はこのところ、秋山大治郎(山口馬木也)のことばかりを想っている。三冬の父親の老中・田沼意次(平幹二郎)も、最近娘が女っぽい表情をすることが気になっていた。
ある夕方、町を行く三冬の前で女が倒れた。斬られていて、苦しい息の下で帯の間から細長い革の袋を取り出し、「深川蛤町に届けて・・・・」と言って息絶えた。そこに数人の男が近づいた。三冬が応戦し、通行人も来たので男たちは立ち去った。
三冬は遺体を近くの寺に運ばせ、供養を頼む。その後大治郎の道場に行った。秋山小兵衛(藤田まこと)の友人の医者・小川宗哲(奥村公延)がいた。小兵衛はおはる(小林綾子)の実家に行って留守だった。三冬が革袋を開けると中には筆が一本。仕掛けがあり軸から黒い丸薬状のものが出てきた。練り香だった。宗哲はそれをかいで、「異国の禁制品」と言った。弥七(三浦浩一)が証拠の品を預かった。
事態が急展開する。寺に賊が入り、遺体を持ち去った。よほどの秘密を持った連中のようだ。弥七は禁制品の抜け荷、つまり密輸事件が背後にあるとにらんだ。となれば相手は大組織、三冬の身も危ういと弥七は言った。不安は的中、三冬が誘拐された。
三冬はある屋敷の地下蔵に監禁された。一味は、「女から預かったものを出せ」と三冬を追及したが、三冬は何も言わない。一味は三冬が女と気づき、辱めを与えればしゃべると服を脱がせかけたが、毅然とした態度に、舌を噛むかもしれないと思い直した。
大治郎は三冬が誘拐された責任を感じ、深く後悔した。三冬の身に起こることを考えるといたたまれない。しかし、何の手がかりもない。弥七は、抜け荷の一味は事件以来ずっと三冬を監視しており、当然大治郎の顔も知っているはずだと言った。大治郎は賭けに出た。一日中、あてもなく江戸の町を歩いた。
やがて、自分をつけている男を発見した。大治郎は不二楼に行き、長次(木村元)にその男・繁造(大村波彦)をつけるように頼んだ。そして頃を見て長次と協力し、繁造を捕まえた。大治郎は道場で、繁造の脳天すれすれに刀を振り下ろす。たまらず繁造は、品川のお匙屋敷に三冬が捕らわれていると言った。お匙屋敷は、将軍家かかりつけの医者・山路寿仙(山本昌平)の別邸だ。
奉行所も動いたが、待ちきれない大治郎は単身屋敷に入る。中にいる浪人やならず者たちとの激しい斬りあいになる。一人が火のついた薪を投げ、屋敷が火事となった。大治郎は敵を斬り、炎と煙の中へ飛び込んで三冬を助けた。事態を知った小兵衛や奉行所の捕り方らが到着した。死んだ女は抜け荷を探索する隠密で、持っていた丸薬状のものは練り香。海上で抜け荷の品を受け取る時、相手の香と匂いを合わせる割符だった。しかし事件は、将軍家の医者がかかわり、表沙汰になれば幕府の威信が落ちるとしてうやむやになった。田沼意次の屋敷に小兵衛と大治郎が招かれた。大治郎の働きで、三冬の命が助かったことへの感謝の宴である。その席で意次は、三冬を大治郎の嫁にしてほしいと頼む。「この度のことで、大治郎殿以外に三冬を頼める人物はいないとわかった」と意次は言う。ポカンとする大治郎と小兵衛。赤くなってうつむく三冬。
頼みを繰り返す意次に、「はっ」としか言えない大治郎に小兵衛がたまりかね、「殿様。両人に成り代わりまして、秋山小兵衛、ありがたくお受け仕る」と手をついた。意次が「かたじけない」と頭を下げた。あわてて大治郎も三冬も手をついた。二人の祝言は一月後に不二楼で行われた。
ある夕方、町を行く三冬の前で女が倒れた。斬られていて、苦しい息の下で帯の間から細長い革の袋を取り出し、「深川蛤町に届けて・・・・」と言って息絶えた。そこに数人の男が近づいた。三冬が応戦し、通行人も来たので男たちは立ち去った。
三冬は遺体を近くの寺に運ばせ、供養を頼む。その後大治郎の道場に行った。秋山小兵衛(藤田まこと)の友人の医者・小川宗哲(奥村公延)がいた。小兵衛はおはる(小林綾子)の実家に行って留守だった。三冬が革袋を開けると中には筆が一本。仕掛けがあり軸から黒い丸薬状のものが出てきた。練り香だった。宗哲はそれをかいで、「異国の禁制品」と言った。弥七(三浦浩一)が証拠の品を預かった。
事態が急展開する。寺に賊が入り、遺体を持ち去った。よほどの秘密を持った連中のようだ。弥七は禁制品の抜け荷、つまり密輸事件が背後にあるとにらんだ。となれば相手は大組織、三冬の身も危ういと弥七は言った。不安は的中、三冬が誘拐された。
三冬はある屋敷の地下蔵に監禁された。一味は、「女から預かったものを出せ」と三冬を追及したが、三冬は何も言わない。一味は三冬が女と気づき、辱めを与えればしゃべると服を脱がせかけたが、毅然とした態度に、舌を噛むかもしれないと思い直した。
大治郎は三冬が誘拐された責任を感じ、深く後悔した。三冬の身に起こることを考えるといたたまれない。しかし、何の手がかりもない。弥七は、抜け荷の一味は事件以来ずっと三冬を監視しており、当然大治郎の顔も知っているはずだと言った。大治郎は賭けに出た。一日中、あてもなく江戸の町を歩いた。
やがて、自分をつけている男を発見した。大治郎は不二楼に行き、長次(木村元)にその男・繁造(大村波彦)をつけるように頼んだ。そして頃を見て長次と協力し、繁造を捕まえた。大治郎は道場で、繁造の脳天すれすれに刀を振り下ろす。たまらず繁造は、品川のお匙屋敷に三冬が捕らわれていると言った。お匙屋敷は、将軍家かかりつけの医者・山路寿仙(山本昌平)の別邸だ。
奉行所も動いたが、待ちきれない大治郎は単身屋敷に入る。中にいる浪人やならず者たちとの激しい斬りあいになる。一人が火のついた薪を投げ、屋敷が火事となった。大治郎は敵を斬り、炎と煙の中へ飛び込んで三冬を助けた。事態を知った小兵衛や奉行所の捕り方らが到着した。死んだ女は抜け荷を探索する隠密で、持っていた丸薬状のものは練り香。海上で抜け荷の品を受け取る時、相手の香と匂いを合わせる割符だった。しかし事件は、将軍家の医者がかかわり、表沙汰になれば幕府の威信が落ちるとしてうやむやになった。田沼意次の屋敷に小兵衛と大治郎が招かれた。大治郎の働きで、三冬の命が助かったことへの感謝の宴である。その席で意次は、三冬を大治郎の嫁にしてほしいと頼む。「この度のことで、大治郎殿以外に三冬を頼める人物はいないとわかった」と意次は言う。ポカンとする大治郎と小兵衛。赤くなってうつむく三冬。
頼みを繰り返す意次に、「はっ」としか言えない大治郎に小兵衛がたまりかね、「殿様。両人に成り代わりまして、秋山小兵衛、ありがたくお受け仕る」と手をついた。意次が「かたじけない」と頭を下げた。あわてて大治郎も三冬も手をついた。二人の祝言は一月後に不二楼で行われた。