第6回 2003年3月4日(火)放送 あらすじ

第6話 誘拐(かどわかし)

 佐々木三冬(寺島しのぶ)はこのところ、秋山大治郎(山口馬木也)のことばかりを想っている。三冬の父親の老中・田沼意次(平幹二郎)も、最近娘が女っぽい表情をすることが気になっていた。
 ある夕方、町を行く三冬の前で女が倒れた。斬られていて、苦しい息の下で帯の間から細長い革の袋を取り出し、「深川蛤町に届けて・・・・」と言って息絶えた。そこに数人の男が近づいた。三冬が応戦し、通行人も来たので男たちは立ち去った。
 三冬は遺体を近くの寺に運ばせ、供養を頼む。その後大治郎の道場に行った。秋山小兵衛(藤田まこと)の友人の医者・小川宗哲(奥村公延)がいた。小兵衛はおはる(小林綾子)の実家に行って留守だった。三冬が革袋を開けると中には筆が一本。仕掛けがあり軸から黒い丸薬状のものが出てきた。練り香だった。宗哲はそれをかいで、「異国の禁制品」と言った。弥七(三浦浩一)が証拠の品を預かった。
 事態が急展開する。寺に賊が入り、遺体を持ち去った。よほどの秘密を持った連中のようだ。弥七は禁制品の抜け荷、つまり密輸事件が背後にあるとにらんだ。となれば相手は大組織、三冬の身も危ういと弥七は言った。不安は的中、三冬が誘拐された。
 三冬はある屋敷の地下蔵に監禁された。一味は、「女から預かったものを出せ」と三冬を追及したが、三冬は何も言わない。一味は三冬が女と気づき、辱めを与えればしゃべると服を脱がせかけたが、毅然とした態度に、舌を噛むかもしれないと思い直した。
 大治郎は三冬が誘拐された責任を感じ、深く後悔した。三冬の身に起こることを考えるといたたまれない。しかし、何の手がかりもない。弥七は、抜け荷の一味は事件以来ずっと三冬を監視しており、当然大治郎の顔も知っているはずだと言った。大治郎は賭けに出た。一日中、あてもなく江戸の町を歩いた。
 やがて、自分をつけている男を発見した。大治郎は不二楼に行き、長次(木村元)にその男・繁造(大村波彦)をつけるように頼んだ。そして頃を見て長次と協力し、繁造を捕まえた。大治郎は道場で、繁造の脳天すれすれに刀を振り下ろす。たまらず繁造は、品川のお匙屋敷に三冬が捕らわれていると言った。お匙屋敷は、将軍家かかりつけの医者・山路寿仙(山本昌平)の別邸だ。
 奉行所も動いたが、待ちきれない大治郎は単身屋敷に入る。中にいる浪人やならず者たちとの激しい斬りあいになる。一人が火のついた薪を投げ、屋敷が火事となった。大治郎は敵を斬り、炎と煙の中へ飛び込んで三冬を助けた。事態を知った小兵衛や奉行所の捕り方らが到着した。死んだ女は抜け荷を探索する隠密で、持っていた丸薬状のものは練り香。海上で抜け荷の品を受け取る時、相手の香と匂いを合わせる割符だった。しかし事件は、将軍家の医者がかかわり、表沙汰になれば幕府の威信が落ちるとしてうやむやになった。田沼意次の屋敷に小兵衛と大治郎が招かれた。大治郎の働きで、三冬の命が助かったことへの感謝の宴である。その席で意次は、三冬を大治郎の嫁にしてほしいと頼む。「この度のことで、大治郎殿以外に三冬を頼める人物はいないとわかった」と意次は言う。ポカンとする大治郎と小兵衛。赤くなってうつむく三冬。
 頼みを繰り返す意次に、「はっ」としか言えない大治郎に小兵衛がたまりかね、「殿様。両人に成り代わりまして、秋山小兵衛、ありがたくお受け仕る」と手をついた。意次が「かたじけない」と頭を下げた。あわてて大治郎も三冬も手をついた。二人の祝言は一月後に不二楼で行われた。

キャスト

秋山小兵衛   ・・・・ 藤田まこと
秋山大治郎   ・・・・ 山口馬木也
佐々木三冬   ・・・・ 寺島しのぶ
おはる     ・・・・ 小林綾子

不二楼 おもと ・・・・ 梶 芽衣子
四谷の弥七   ・・・・ 三浦浩一
板前の長次   ・・・・ 木村 元
傘屋の徳次郎  ・・・・ 山内としお
小川宗哲    ・・・・ 奥村公延
生島次郎太夫  ・・・・ 真田健一郎
嘉助      ・・・・ 多賀勝一
おみね     ・・・・ 佐藤恵利
およね     ・・・・ 江戸家まねき猫
飯田粂太郎   ・・・・ 尾上寛之

室伏伊十郎   ・・・・ 鷲生 功
繁造      ・・・・ 大村波彦
友次郎     ・・・・ 立川貴博
山路寿仙    ・・・・ 山本昌平
能登屋 七兵衛 ・・・・ 諸木淳郎
おつぎ     ・・・・ 田辺ひとみ
円常寺 和尚  ・・・・ 窪田弘和
    小僧  ・・・・ 近藤礼崇

田沼意次    ・・・・ 平 幹二郎

スタッフ

企  画 ・・・・ 市川久夫
        金井卓也(フジテレビ)
        武田 功(松竹)
プロデューサー ・・ 能村庸一(フジテレビ)
          佐生哲雄(松竹)
原  作 ・・・・ 池波正太郎
        「品川 お匙屋敷」より
         新潮文庫刊
脚  本 ・・・・ 金子成人
音  楽 ・・・・ 篠原敬介
監  督 ・・・・ 原田真治
撮  影 ・・・・ 江原祥二
照  明 ・・・・ 中島利男
美  術 ・・・・ 西岡善信
殺  陣 ・・・・ 宇仁貫三
料理監修 ・・・・ 近藤文夫(銀座 近藤)

ナレーター ・・ 橋爪 功

制作協力 ・・・・ 松竹京都映画株式会社
制  作 ・・・・ フジテレビ
        松竹株式会社

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