第10回 2003年5月6日(火)放送 あらすじ

第10話 剣の師弟

 ある日、湯島界隈の居酒屋にいた秋山小兵衛(藤田まこと)は、そこに黒田精太郎(隆大介)が入ってくるのを見て驚いた。精太郎と一緒にいた仙助(曽我廼文童)という男が、しばらく前に近くで侍ともめごとを起こしている現場を目撃していた小兵衛は身を隠し、店を出る二人の後をつけた。二人は「楠屋」という旅籠に入った。それ以来小兵衛はため息ばかりつくようになり、おはる(小林綾子)が心配する。
 小兵衛に頼まれた弥七(三浦浩一)が報告に来た。仙助が争った侍はある旗本の下屋敷詰で、その屋敷では賭場が開かれている。一方「楠木屋」は格式のある旅籠だった。
 秋山大治郎(山口馬木也)の道場を精太郎がのぞいている。三冬(寺島しのぶ)が問われるままに説明すると、小兵衛のことを「息災で?」と聞く。大治郎が顔を見せると逃げるように立ち去った。大治郎は、十数年前に父の愛弟子だった精太郎だと思い出した。
 二人を見張るように言われた弥七だが、小兵衛の真意が分からずに戸惑う。小兵衛は、「隠していたことがある」と謝り、弟子だった精太郎が十数年前、医者で金貸しでもある男とその妻らを斬殺して金を奪い、江戸から姿を消したことを弥七に言う。小兵衛は精太郎がまた何か悪事を働くのではと気になっていた。
 精太郎が江戸へ戻ったのは、事件後身を隠していた大阪にある旅籠「津の国屋」の主人から、丸屋勘蔵(久賀大雅)という足袋問屋を殺すように依頼されたためだ。「楠木屋」にも「津の国屋」の紹介で泊まっていた。だが精太郎は勘蔵が何者で、背後に何があるのかを知らない。ただ金のためだけだ。仙助が勘蔵の行動を調べ、囲った女のところから帰るところを襲うのがいいと言う。
 精太郎と仙助が「楠屋」を出て、仙助の愛人の家に泊まる。それを弥七と徳次郎(山内としお)が見張る。「津の国屋」は大阪では裏の稼業にも手を染めているという。動きがあって、徳次郎が不二楼で待機する小兵衛を迎えにきた。
 勘蔵が愛人のところから店に帰る駕籠が人気のない林の中を行く。覆面をした精太郎がそれを待ち伏せる。異変を知って駕籠から出た勘蔵に、刀を抜いた精太郎が斬りかかろうとしたその瞬間、小兵衛の投げた小柄が精太郎の腕に刺さる。
 「黒田精太郎。おのれが師匠の顔を見忘れたか」との小兵衛の声に、精太郎は息を飲んだ。思わぬ展開に逃げようとした仙助は、張っていた弥七と徳次郎に縄を打たれる。
 小兵衛と精太郎は向き合ったままだ。歩を進めた小兵衛は、「神妙にお上の裁きを受けるか」と精太郎に迫る。「刀を捨てよ」と言う小兵衛に精太郎が刃を向けた。「これまでじゃな」と小兵衛も刀を抜いた。
 やがて、精太郎が小兵衛に突進する。小兵衛も走り、両者がぶつかる寸前に刀が閃く。精太郎が倒れた。その覆面を取った小兵衛に精太郎は、「先生」と言いながら息絶えた。 弥七が色々調べた。勘蔵も裏では悪事に手を染めていたようだが、誰が殺しを頼んだかは分からない。精太郎には金のかかる女がいて、それが悪事に走る動機になったらしい。小兵衛は精太郎は当時、剣にだけ打ち込んでいたと思っていたが、そうでなかったことに気づかなかった自分を悔いた。
 小兵衛は弥七に頼んで伝馬町の牢に仙助を訪ね、黒田について知っていることを聞く。多くは知らなかったが、精太郎は、「江戸には一人だけ、顔を見たいと思う人がいる」と言っていた。「生きているなら、六十を超えたじい様。俺が師匠よ」と。小兵衛の目から涙がこぼれた。

キャスト

秋山小兵衛  ・・・ 藤田まこと
秋山大治郎  ・・・ 山口馬木也
佐々木三冬  ・・・ 寺島しのぶ
おはる    ・・・ 小林綾子

不二楼 おもと・・・ 梶 芽衣子
四谷の弥七  ・・・ 三浦浩一
板前の長次  ・・・ 木村 元
傘屋の徳次郎 ・・・ 山内としお
飯田粂太郎  ・・・ 尾上寛之

黒田精太郎  ・・・ 隆 大介
藤川の仙助  ・・・ 曽我廼文童
文蔵     ・・・ 北見敏之
丸屋勘蔵   ・・・ 久賀大雅
おしま    ・・・ 恋塚ゆうき

ほか

スタッフ

■企 画
  市川久夫
  金井卓也(フジテレビ)
  武田 功(松竹)
■プロデューサー
  能村庸一(フジテレビ)
  佐生哲雄(松竹)
■原 作
  池波正太郎(新潮文庫刊)
■脚 本
  金子成人
■音 楽
  篠原敬介
■監 督
  高瀬昌弘
■撮 影
  江原祥二
■照 明
  中島利男
■美 術
  西岡善信
■殺 陣
  宇仁貫三
■料理監修
  近藤文夫(銀座 近藤)

■ナレーター
  橋爪 功

■制作協力
  松竹京都映画株式会社
■制 作
  フジテレビ
  松竹株式会社

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