第11回 2003年5月13日(火)放送 あらすじ

第11話 待ち伏せ

 秋山大治郎(山口馬木也)は、父・小兵衛(藤田まこと)の古い知人の旗本・若林春斎(近藤洋介)を訪ねた。帰りの夜道で大治郎は若い侍に、「親の敵」と斬りかかられる。老いた侍もいた。かわして名を名乗ると二人は戸惑い、逃げ去った。
 翌日、若林家の門前で大治郎は、自分とよく似た背格好の男を見て尾行する。男は気づき、「何の用か」と尋ねる。二人は蕎麦屋に入り、大治郎は率直に昨夜のことを話す。近藤周蔵(長森雅人)と名乗る男はあっさりと自分が敵持ちであることを認め、「二度とご迷惑はかけない」と言った。好感の持てる男だった。蕎麦屋から出たところで大治郎は弥七(三浦浩一)と出会い、周蔵の尾行を頼む。深川に妻と住んでいた。
 その翌日、大治郎は小兵衛を訪ね、近藤周蔵について聞く。十五年ほど前まで若林家の家臣だったが、柳田という同じ家臣の妻を手篭めにして屋敷から逃げ、行方知れずになったという。柳田の妻は海に身を投げ、柳田も屋敷で首を吊って死んだ。大治郎には、周蔵がそんなことをした男には見えなかった。
 小兵衛宅の台所では、おはる(小林綾子)を三冬(寺島しのぶ)が手伝っていた。小兵衛も三冬の父の田沼意次(平幹二朗)も、大治郎と三冬に子が生まれる気配がないので待ちくたびれていたが、おはるの目は鋭く、三冬が身ごもっているのに気がついた。三冬は、大治郎が周蔵のことに気持ちを集中させているのを見て、言い出せないでいたのだ。
 小兵衛は、「かかわるな」と言ったが、大治郎は周蔵のことが気になり、ある夜、周蔵の家のある深川に行った。すると大治郎に斬りかかった若侍と老人が走ってくるではないか。大治郎は、二人が来た闇の方へ走った。材木置き場で周蔵が血を流して倒れていた。「あの二人に?」と聞くとうなずく。周蔵は刀を抜いていなかった。「わざと討たれたのですね」と言うと、うなずいて息絶えた。
 大治郎は木場の男たちに周蔵の遺体を戸板に乗せて運ばせ、妻のりく(蜷川有紀)に事の次第を報告した。りくは武士の女房らしく気丈に振る舞い、血がついた着物を来た大治郎を、夫の着物に着替えさせた。それから、驚くべきことを語った。
 周蔵は無実だった。柳田の妻を手篭めにしたのは春斎。妻は夫に遺書を残し、それを見た夫が春斎に詰め寄ると首を締めて殺し、自殺に見せかけた。周蔵は貧しい浪人暮らしを春斎に拾われた恩義があり、一切の罪を引き受けて屋敷を出奔した。侍女をしていたりくも逃げた。二人は相思相愛で、周蔵の無実を知っているのはりくだけだった。二人は人目を忍んで諸国をまわり、三年前、やっと江戸に戻った。そうして、柳田の息子に発見されたのだった。周蔵はそれを運命だと思っていた。
 春斎は、小兵衛が四谷に道場を開く時に資金援助もしてくれた恩人だった。大治郎は悩んだ末に春斎を訪ね、りくが話した事実をぶつける。春斎の表情が変わり、烈火のごとく怒った。「父が受けた恩を仇で返したな」と春斎が言うなかを、大治郎は辞去した。小兵衛は大治郎に、「わたしの恩人であることを知りながら、よくぞ筋を通した」と言った。 借りた着物を返しに行った三冬は、りくが夫の位牌の前で自害するところを止めた。小兵衛はりくを友人の小川宗哲(奥村公延)の診療所で働けるようにした。
 三冬がみごもったことが、ようやく話題に出来るようになった。大治郎も小兵衛も意次も、そしておはるも、まわりの皆が喜んだ。

キャスト

秋山小兵衛…藤 田 まこと
秋山大治郎…山 口 馬木也
佐々木三冬…寺 島 しのぶ
お は る…小 林 綾 子

不二楼 おもと…梶   芽衣子
四谷の弥七  …三 浦 浩 一
板前の長次  …木 村   元
傘屋の徳次郎 …山 内 としお
小 川 宗 哲…奥 村 公 延
生島次郎太夫 …真 田 健一郎
お  よ  ね…江戸家まねき猫 
飯 田 粂太郎…尾 上 寛 之 

近 藤 周 蔵…長 森 雅 人
お  り  く…蜷 川 有 紀
若 林 春 斎…近 藤 洋 介
田 沼 意 次…平   幹二朗
            ほか

スタッフ

■企 画
  市川久夫
  金井卓也(フジテレビ)
  武田 功(松竹)
■プロデューサー
  能村庸一(フジテレビ)
  佐生哲雄(松竹)
■原 作
  池波正太郎(新潮文庫刊)
■脚 本
  金子成人
■音 楽
  篠原敬介
■監 督
  井上 昭
■撮 影
  江原祥二
■照 明
  中島利男
■美 術
  西岡善信
■殺 陣
  宇仁貫三
■料理監修
  近藤文夫(銀座 近藤)

■ナレーター
  橋爪 功

■制作協力
  松竹京都映画株式会社
■制 作
  フジテレビ
  松竹株式会社

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