剣客商売(2003年)
第3話 ぶんたろの命
江戸近郊にある秋山小兵衛(藤田まこと)の家を訪ねる途中の佐々木三冬(寺島しのぶ)は寂しい道で、身なりの良い幼い男の子を、怪しい男が短刀で刺そうとするのを見た。三冬はとっさに石を投げ男の顔に命中させた。男は逃げた。
小兵衛の家でおはる(小林綾子)にあやされた子供はやっと泣きやみ、名前は「ぶんたろ」で四歳だと言った。小兵衛は、文太郎という大店の子だと考えた。その時、不審な男が家の様子をうかがっているのを見逃さなかった。
その夜、小兵衛は三冬に留守番を頼み、文太郎を連れておはるが櫓を漕ぐ小舟で家を出た。途中で息子の大治郎(山口馬木也)の道場に寄り、向かうのは船宿不二楼。女将おもと(梶芽衣子)に文太郎を預けた。おはるもしばらく不二楼に留まる。翌朝、大治郎が来て三冬にこのことを伝える。二人は一緒に朝食をとる。三冬はうれしいが、大治郎はまだ三冬を意識していない。
文太郎は、日本橋の木綿問屋、伊藤屋の跡取り息子だった。主人は勘次郎(中村正)で、三年前に文太郎を生んだ妻を亡くし、おさい(園英子)という美人の後添えをもらっている。おさいは最近、男の子を産んでいた。
そのころ、香具師の元締、白金の徳蔵(長門裕之)は焦っていた。子分たちを使って文太郎を誘拐し、殺害しようとしたのは徳蔵だった。同業の芝の治助(笹本俊志)から請け負った仕事だ。同業だけに、失敗したとも言えずに、約束の百両を受け取っていた。
徳蔵は腕の立つ浪人の大野庄作(立川三貴)と、他の手下を連れて小兵衛の家の様子をうかがう。徳蔵は、「爺いをしめあげれば、すぐに子供の居場所を吐く」と言ったが、遠くから小兵衛の姿を見た大野は驚いた。まだ剣一筋で生きていたころに、四谷で道場を開いていた小兵衛と一度立ち会ったことがあったのだ。大野は手を出せない。
小兵衛は、一人で家にいて悪党が襲って来るのを待ち、正体を突き止めようとしたが、うまく行かない。弥七(三浦浩一)から、おさいが治助の愛人だったことを聞いた小兵衛は、おさいが生んだ赤ん坊は治助の子供だと思った。文太郎を殺して、伊藤屋の財産を思いのままにしようという企みだ。小兵衛は別の作戦を考える。
おはるが文太郎と小兵衛の家に戻った。それを知った徳蔵は、何としても文太郎を殺さなければと決意する。やがて、おはるが文太郎を籠に入れ、小兵衛に見送られて再び家から出てくる。きっと文太郎を伊藤屋に届けるためだろう。そう思った徳蔵とその手下たち、そして大野は、江戸へ通じる道を見下ろす小高い丘でおはるを待ち伏せた。
突然小さな荒れ小屋の陰から、ワラ束を山積みにした荷車を二人の農民風の男が引いて現れ、おはるの後を追う。嫌な予感がした大野だが徳蔵にせかされ、徳蔵の手下三人と丘を駆け降りた。その時、徳蔵の後ろに小兵衛が現れた。はっとする徳蔵だが、体が凍ったようになって動けない。
荷車をひいていたのは弥七と徳次郎(山内としお)。続いてワラ束の中から大治郎と三冬が現れた。大治郎が大野と戦う。大野が秋山父子と同じ無外流なことを見た大治郎は、「これ以上、流儀の名を汚してはならない」と言って大野を斬った。他の手下はすべて三冬に峰打ちで倒された。
丘の上で一部始終を見ていた徳蔵だが、「丸腰のわしは斬れねえでしょう。先生の腕なら百両で雇う」とうそぶく。小兵衛の刀が一閃。徳蔵は絶命した。事件の筋書きは、すべて小兵衛が読んだ通り。芝の治助もおさいも捕らわれた。
小兵衛の家でおはる(小林綾子)にあやされた子供はやっと泣きやみ、名前は「ぶんたろ」で四歳だと言った。小兵衛は、文太郎という大店の子だと考えた。その時、不審な男が家の様子をうかがっているのを見逃さなかった。
その夜、小兵衛は三冬に留守番を頼み、文太郎を連れておはるが櫓を漕ぐ小舟で家を出た。途中で息子の大治郎(山口馬木也)の道場に寄り、向かうのは船宿不二楼。女将おもと(梶芽衣子)に文太郎を預けた。おはるもしばらく不二楼に留まる。翌朝、大治郎が来て三冬にこのことを伝える。二人は一緒に朝食をとる。三冬はうれしいが、大治郎はまだ三冬を意識していない。
文太郎は、日本橋の木綿問屋、伊藤屋の跡取り息子だった。主人は勘次郎(中村正)で、三年前に文太郎を生んだ妻を亡くし、おさい(園英子)という美人の後添えをもらっている。おさいは最近、男の子を産んでいた。
そのころ、香具師の元締、白金の徳蔵(長門裕之)は焦っていた。子分たちを使って文太郎を誘拐し、殺害しようとしたのは徳蔵だった。同業の芝の治助(笹本俊志)から請け負った仕事だ。同業だけに、失敗したとも言えずに、約束の百両を受け取っていた。
徳蔵は腕の立つ浪人の大野庄作(立川三貴)と、他の手下を連れて小兵衛の家の様子をうかがう。徳蔵は、「爺いをしめあげれば、すぐに子供の居場所を吐く」と言ったが、遠くから小兵衛の姿を見た大野は驚いた。まだ剣一筋で生きていたころに、四谷で道場を開いていた小兵衛と一度立ち会ったことがあったのだ。大野は手を出せない。
小兵衛は、一人で家にいて悪党が襲って来るのを待ち、正体を突き止めようとしたが、うまく行かない。弥七(三浦浩一)から、おさいが治助の愛人だったことを聞いた小兵衛は、おさいが生んだ赤ん坊は治助の子供だと思った。文太郎を殺して、伊藤屋の財産を思いのままにしようという企みだ。小兵衛は別の作戦を考える。
おはるが文太郎と小兵衛の家に戻った。それを知った徳蔵は、何としても文太郎を殺さなければと決意する。やがて、おはるが文太郎を籠に入れ、小兵衛に見送られて再び家から出てくる。きっと文太郎を伊藤屋に届けるためだろう。そう思った徳蔵とその手下たち、そして大野は、江戸へ通じる道を見下ろす小高い丘でおはるを待ち伏せた。
突然小さな荒れ小屋の陰から、ワラ束を山積みにした荷車を二人の農民風の男が引いて現れ、おはるの後を追う。嫌な予感がした大野だが徳蔵にせかされ、徳蔵の手下三人と丘を駆け降りた。その時、徳蔵の後ろに小兵衛が現れた。はっとする徳蔵だが、体が凍ったようになって動けない。
荷車をひいていたのは弥七と徳次郎(山内としお)。続いてワラ束の中から大治郎と三冬が現れた。大治郎が大野と戦う。大野が秋山父子と同じ無外流なことを見た大治郎は、「これ以上、流儀の名を汚してはならない」と言って大野を斬った。他の手下はすべて三冬に峰打ちで倒された。
丘の上で一部始終を見ていた徳蔵だが、「丸腰のわしは斬れねえでしょう。先生の腕なら百両で雇う」とうそぶく。小兵衛の刀が一閃。徳蔵は絶命した。事件の筋書きは、すべて小兵衛が読んだ通り。芝の治助もおさいも捕らわれた。