第7回 2005年2月24日(木)放送 あらすじ

#7 息子

 勇吉(寺尾聰)は、梓(長澤まさみ)に連れて行かれた「皆空窯」で見た青年が、息子の拓郎(二宮和也)ではないかという疑問で頭がいっぱいだった。つい、窯元に電話を掛けてしまう。六介(麿赤兒)の妻・洋子(朝加真由美)が電話に出ると「間違えました」と切ってしまうのだが……。
 大晦日の「森の時計」はいつものように常連で賑わっていた。北海道の雑煮が丸餅か角餅かで盛り上がっている。そこへ初老の男が入って来た。中里(北島三郎)である。スーツ姿の中里は、窓のそばの席に陣取り外を見つめ始めた。
 しばらくすると、勇吉の商社時代の同僚・河合(佐々木勝彦)と妻・綾(田島令子)、その大学2年生の息子が現れた。スキーに来て、以前店を訪れた水谷の話で「森の時計」を訪ねたのだと言う。綾が、棚に置いてある勇吉の彩紋カップに気付いた。「皆空窯で買ったのか」と訊く。怪訝な顔の勇吉に「昨日似たようなカップをそこで買った」と河合が続ける。勇吉は、「皆空窯」の青年をまた思い出した。
 同じころ富良野駅前では、老いた木田敏子(佐々木すみ江)が、交番で道を尋ねていた。写真を見せて「この喫茶店を知らないか」と言っている。そこへ偶然、刑事の風間(山下澄人)が現れた。ふと見ると「森の時計」である。敏子は「息子がやっているんです」と言う。「?」の風間。
 昼になって、中里はカレーを食べ始めた。勇吉はミミ(高橋史子)に「ちょっと空ける」と言い残し車に乗った。行き先は「北時計」だった。
 座ってコーヒーを飲みながら勇吉は「このカップはどこのですか」と朋子(余貴美子)に切り出した。「皆空窯」であることを知りつつ、言い澱む朋子。間を空けながら会話が進む。「拓郎に似た人間を見た気がしたんです」「アズちゃんが『タク』って呼びました」……。朋子は、もはや言い逃れが出来ぬと知った。「悪かったわね、余計なことして。あの子が哀れで」と朋子。陶芸の修行をしていることなどを白状するのだった。と、勇吉が梓と拓郎の関係を訝り始めた。「あいつは梓を引っ掛けたんでしょうか」
 朋子は怒った。「あんたがそんな風に悪意で見るから仲を修復できないのよ。あの子は永遠に悪い子なの? 今まで一度でもちゃんと見てやったことあるの?」 勇吉は下を向いて「……ママが正しいです……」と呟くしかなかった。
 拓郎が近くにいたショックと朋子の指摘に消沈した勇吉が「森の時計」に帰ると、中里が外で薪割りをしている。「勝手にやってますから」と中里。すると、そこへ敏子が現れた。
 「安男がお世話になってます」と敏子。「経営者の木田安男はどちらに」と付け加える。勇吉は「お間違えでは」と答えるが、敏子が見せた写真には「森の時計」の前で微笑む安男が写っていた。
 店内に入ってミミに見せると「お客さんに頼まれて私が撮った」と言う。常連が覗き込むと、田村(正名僕蔵)と高松(山谷初男)が知っている人物だと言い出す。手紙から住所も分かり安西(田中圭)が近くへ送っていくことになった。敏子はどんどん不安になっていくようだ。
 敏子が出て行くと、初詣先を尋ねる美可子(清水美砂)や「変なばあちゃん来なかった?」と風間も登場し、「森の時計」は普通どおりに戻った。
 敏子は、安男の住所を訪ねた。そこには誰もいなかった。敏子は放心し町をさまよい始めた。
 一息ついた「森の時計」ではレジ脇で梓が拓郎にメールを打っている。が、リリ(森上千絵)に見咎められ、止める。そのころ、拓郎は六介から陶芸展の申込書を渡されていた。「新人登竜門だ。死ぬ気でやれ」。拓郎は興奮した。そこへ梓からのメールが入る。めげずにまた打って来たのだ。拓郎は「当分会わない。メールしないでくれ」と返信した。鳴り続ける拓郎の携帯。拓郎は電源を切った。
 夜になっても中里は「森の時計」に居座り続けた。そこへ風間が敏子を連れてやってきた。敏子は、息子が立ち上げようとしていた喫茶店を訪ねようとしていたところを保護されたと言う。その喫茶店も工事途中で投げ出されていた。夜逃げして、しかも万引きで捕まっていた、と風間が小声で言う。
 ストーブを挟んで中里と敏子が話し始めた。二人とも離農し富良野を離れたのだ。「森の時計」の周辺は中里の土地だったらしい。「貧しくてもあのころの暮らしが一番よかった」と中里。敏子も無言でうなずく。
 中里が気付いたように帰り支度を始めた。勇吉に「札幌から近くなりましたよ」と挨拶された中里は「道はね。私には遠い土地ですよ」と言い残し、去って行った。
 敏子も帰ると言い出す。だが、歩いてどこへ行けるものでもない。ペンションを取ってやろうとしても、駅で安男が待っているかも、などと言う。どこまでも信じたいのか。慌てた滝川(納谷真大)が車で追いかけるのだった。
 勇吉一人になった後、河合が入って来た。河合は、勇吉に会社に戻れと誘う。だが、勇吉は「今、振り返るという仕事をやっている。世界を相手にするのではなく、小さな周囲を見つめているんだ。大変なんだよ、この仕事は」と断るのだった。
 河合が帰って、めぐみ(大竹しのぶ)が現れた。勇吉は、朋子に諭されたことをめぐみに報告した。「俺は、お前のことも見ていなかったのか」と問う勇吉。めぐみは笑って「ちゃんと見ていたわ」。少しはほっとする勇吉。
 そのまま、勇吉は二年参りで賑わう神社に行き、お守りを買った。そして車に乗り「皆空窯」へ向かった。車中で年が明ける。到着し、静かに陶房を覗くと、拓郎が一心不乱に制作に没頭している。勇吉は、入り口の外にある彩紋のオブジェの下に、今買ってきたお守りを忍ばせるのだった。

キャスト

湧井勇吉 … 寺尾 聰
  ○
湧井拓郎 … 二宮和也
皆川 梓 … 長澤まさみ
  ○
井上美可子 … 清水美砂
  ○
中里 … 北島三郎
  ○
九条朋子 … 余 貴美子
  ○
湧井めぐみ … 大竹しのぶ

  ほか

スタッフ

■原作・監修
 倉本 聰
■共同 脚本
 倉本 聰
 田子明弘
■監督・演出
 宮本理江子
■音楽
 渡辺俊幸
■制作
 フジテレビジョン
 フジクリエイティブコーポレーション(FCC)

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