第1回 2005年1月13日(木)放送 あらすじ

#1 雪虫

 湧井拓郎(二宮和也)は、3年前交通事故を起こし、同乗していた母・めぐみ(大竹しのぶ)を死なせてしまった。父・勇吉(寺尾聰)は商社のニューヨーク支店長を辞めた上拓郎と別れ、めぐみの故郷・富良野に喫茶店「森の時計」を開いた。だが、それを知っためぐみの親友・朋子(余貴美子)は、拓郎を父の近くにと、美瑛町の陶芸窯「皆空窯(かいくうがま)」に住み込みで就職させた。朋子も富良野で喫茶店「北時計」を開いていた。勇吉は拓郎と事件以来連絡を取っていなかった。拓郎も父が自分を許しているかいないか確信がなかった。
 ある日、「皆空窯」の主人・天野六介(麿赤児)が拓郎に「北時計」の届け物をするように言い付けた。富良野と聞くと父を思い出す拓郎だった。「北時計」に着くと、拓郎は朋子に、自分が初めて作ったマグカップを父への贈り物として託した。その日は勇吉の還暦の誕生日だったのだ。拓郎は自分からのプレゼントであることを秘するように念を押した。
 その帰りにスーパーに寄った拓郎は、買いに来た皿類をそそっかしく割ってしまう少女・梓(長澤まさみ)に出会い、皿が欲しけりゃ「皆空窯」まで来い、と連絡先を教えてやった。梓は「森の時計」の店員だった。
 店には勇吉のほかにリリ(森上千絵)とミミ(髙橋史子)が働いており、客の立石(國村隼)がコーヒーを挽いていた。そこへ、水谷三郎(時任三郎)と美子(手塚理美)の夫婦が入って来た。水谷は商社時代の勇吉の後輩であった。
 水谷は会社を辞めて美子の故郷・秋田でペンションを開くと言う。それは美子の夢であった。夫婦は、まさに先輩である湧井の暮らしぶりを参考に見に来たのだ。
 そこに朋子もやって来た。朋子は件のマグカップを誕生日プレゼントとして勇吉に渡した。勇吉は朋子が誕生日を知っていることを不思議がる。朋子は天を指差し「メグに頼まれたのよ」と笑って誤魔化しながら「息子さんのこと気にならない?」と拓郎のことをそれとなく切り出す。勇吉は「向こうから連絡してくるでしょう。男は一人でやっていくものです」と静かに語る。
 テラスでコーヒーを飲みながら水谷は美子と語らった。美子は穏やかな顔になった勇吉のことを「めぐみさんの気持ちに従っているのよ。めぐみさんは、こんな腰の据わらない生き方は辛いって言ってたわ」と想像する。二人は店を出て、空知川の川原に降り立った。ふわふわと雪虫が空を舞っている。その時、美子が突っ伏して倒れてしまった。
 そのころ、「森の時計」には常連の田村(正名僕蔵)と滝川(納谷真大)がいて、そこへ立石が戻って来た。立石は娘が恋人を連れて帰って来たうえ、できちゃった婚をするのだと嘆く。あまつさえその男は自分より年上。だが立石は「所有権が移ったと確信した」と納得した様子を見せる。そこに常連横山(水津聡)も姿を見せ賑やかになったところで、全員が雪虫に気付いた。すると勇吉の耳にめぐみの声が届いてきた。「雪虫が飛ぶと、富良野では10日後に初雪が降るのよ」……その時、病院からの電話が鳴った。美子が運び込まれたのだ。
 勇吉が病院へ着くと院長が勇吉との関係を聞いた上で、美子が重い癌であると告知した。
 勇吉はそのまま店に戻った。相変わらず梓は皿を割っている。閉店時間になって水谷が戻って来た。水谷は、美子が長くないこと、ペンションの話はすべてフィクションで美子の夢に付き合っていたことを話した。「残酷だな」と言う勇吉に水谷は「付き合う内に本当にそうしてしまおうかと思うようになってきた」と告白する。さらに「美子は湧井さんのところが本当の家庭ね、と言ってました」と付け加えた。だが勇吉にはめぐみの涙の記憶が蘇ってくるだけだった。
 水谷も帰り、一人きりになった勇吉の前に「お誕生日おめでとう」と、めぐみが現れた。めぐみは「還暦旅行をするつもりだった」と言う。勇吉は「それに拓郎も連れて行ってやりたかった」と告白する。めぐみは拓郎の作ったカップに気付き、それで飲ましてとねだった。勇吉は「最近、優しい気持ちになって、あいつと話したくなる。ここに来る素朴な人達のおかげで優しくなっているんだ」とめぐみに白状する。
 そのころ梓は「皆空窯」に拓郎を訪ねていた。

キャスト

湧井勇吉 … 寺尾 聰
  ○
湧井拓郎 … 二宮和也
皆川 梓 … 長澤まさみ
  ○
水谷三郎 … 時任三郎
水谷美子 … 手塚理美
  ○
九条朋子 … 余 貴美子
天野六介 … 麿 赤兒
  ○
湧井めぐみ … 大竹しのぶ

  ほか

スタッフ

■原作・脚本
  倉本 聰
■監督・演出
  田島 大輔
■音楽
  渡辺 俊幸
■制作
  フジテレビジョン
  フジクリエイティブコーポレーション(FCC)

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