第6回 2005年2月17日(木)放送 あらすじ

#6 聖夜

 クリスマス・イヴの日。相変わらず「森の時計」はにぎわっている。コーラス・グループのメンバー五木(木村多江)らが勇吉(寺尾聰)に「今晩予定はあるか」とあせって聞く。何事かと尋ねると、コーラス慰問の予定があるのにサンタクロース役が風邪で寝込んだ、ついては代役を探している、と言うのだ。勇吉は、予定は無かったが言下に断った。コーラスグループメンバーは、来る客来る客に「サンタになって」と頼み込み、とうとう常連の佐久間(久保隆徳)が引き受ける羽目になった。そんな騒ぎの中、美可子(清水美砂)が店に入って来た。梓(長澤まさみ)が呼んだのだった。美可子は小さなトランクを開けて中を梓に見せた。そこには、美可子が作ったアクセサリーが並んでいた。梓は雪の結晶の形をした同じ銀のペンダントを二つ買った。
 美可子のアクセサリーでひとしきり店内の話題が弾むころ、怪しい男が入って来た。リリ(森上千絵)が応対に出ると「内村の奥さんだね」と、別居中の夫の苗字で話し掛けてきた。何事かと不審顔のリリに男は「内村が困った事をしでかした。あんたに話がある」と言を重ねた。
 リリは注文だけ通しておくと言って、その場を離れ、客として来ていた刑事の風間(山下澄人)に、その男のことを耳打ちした。風間はカウンターを離れ、男の背後の席に移った。リリが男の席に座る。男によると、内村が札幌である女といい仲になったが、女は有力者の妻で、話をつけるのに金がいる、という話であった。リリが「夫とは3年会ってない。関係ない」と立とうとすると男がリリの手を掴む。と、風間が男の肩を叩いた。「今のは立派な脅迫だ」と男を外に連れ出し、車に乗せて走り去った。
 陽も翳って雪が降り出し客も減った。ミミ(高橋史子)が、「マスターにお子さんがいらしたんですか」と勇吉に尋ねる。はっきり答えない勇吉だが、子供にサンタクロースをしてやったことを話し出した。「一度だけやったが、泣かれた。多分怖かったのだろう」。
 一人になって勇吉は、2度目の「サンタ役」の日のことが、眼前に浮かんできた。それは商社マンの頃である。仕事で夜遅く帰って来た勇吉を、サンタの衣装を持っためぐみ(大竹しのぶ)が責める。「なぜ早く帰って来てくれなかったの」。勇吉は説明する。「急に部長から呼ばれた。来月から単身でロンドン赴任だ。今度帰る時には拓郎は小学校だな。あいつとどんどん離れていくな……」
 夜になって、件のコーラスグループが慰問直前のリハーサルに店にやって来た。佐久間が衣装を着せられる。そんな折、梓が勇吉に話し掛けてきた。「私にプレゼントさせてください」。「何をくれるの」と勇吉。梓が答える。「あげるんじゃなくて、紹介したい人がいるんです」。「アズちゃんの大事な人かな。光栄だね」。店が終わったら梓の車で会いに行くことになった。
 梓は、美可子から買ったペンダントの残りのひとつを包装した。拓郎(二宮和也)に渡すつもりであろう。だが、店にペアルックを着た父子が入って来て、梓の気が変わった。梓は、自分の首から下げたペンダントを外し、それも車の中でプレゼント用に包装した。
 その様子を外から朋子(余貴美子)に覗かれた。朋子は「見いちゃった」と言いながら「あんた拓のことマスターにしゃべってないね」と念を押しながら店に入って行った。
 朋子が入って「哀れな人へ慈悲を」と勇吉にケーキを差し出す。すると、すぐに美可子も現れた。手にはケーキが。なんとそこへリリとミミが特大ケーキを作って登場した。客の横山(水津聡)が「どれを食べるか、どの順番か、問題だ」と茶化し、勇吉は困り果てる。
 店も閉め、梓は車に勇吉を乗せ暗い道をひた走る。車内で梓は、例のペンダントを勇吉にプレゼントした。皆空窯の近くへ着き、梓は勇吉を車内に待たせて工房へ向かった。
 中では拓郎が仕事をしていた。梓がプレゼントの箱を渡す。拓郎が開けると勇吉と同じペンダントが入っている。喜ぶ拓郎に梓は「もうひとつプレゼントがあるの」と切り出した。「何?」と聞く拓郎に「紹介したい人がいるの」。「誰?」「マスター。あなたのお父さん」。
 拓郎は蒼白になり後ずさった。「しゃべったのか?」声がかすれる。「まだ」と梓。「何で連れて来た」「仲直りして欲しいから」「余計なことするな」。そう言うが早いか、拓郎は裏口から外へ飛び出した。
 そのころ勇吉は、工房の前に置いてある彩文の陶器オブジェが気になり車外へ出ていた。と、梓の「タクちゃん!!」という必死の呼び声が聞こえた。そっと中を覗くと、立ちすくむ梓の背中越しに、裏へ走って行く若い男の姿が目に飛び込んできた。勇吉は梓に知られぬよう、そっと車に戻り、蒼い顔をした梓が戻るのを待った。「忙しくって今晩は会えないって」と誤魔化し言い訳する梓。車は「森の時計」に走り出した。
 一人になった勇吉は、めぐみに「あれは拓郎だろうか……」と尋ねるしかなかった。

キャスト

湧井勇吉 … 寺尾 聰
  ○
湧井拓郎 … 二宮和也
皆川 梓 … 長澤まさみ
  ○
井上美可子 … 清水美砂
五木 … 木村多江
  ○
九条朋子 … 余 貴美子
  ○
湧井めぐみ … 大竹しのぶ

  ほか

スタッフ

■原作・監修
 倉本 聰
■共同 脚本
 倉本 聰
 吉田紀子
■監督・演出
 西浦正記

■音楽
 渡辺俊幸
■制作
 フジテレビジョン
 フジクリエイティブコーポレーション(FCC)

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