第9回 2004年8月30日(月)放送 あらすじ

#9 激流

 木本美香(仲間由紀恵)の父、正雄(石坂浩二)は、和田亮介(和田聡宏)が自分の妻、優里(仲間由紀恵・二役)がかつて愛した男、健介(夏八木勲)の息子であることを知っていた。正雄に、亮介は美香との正式な交際を求めに行くが許されるはずはない。また、正雄は亮介が家に来た日以来、美香と口を利かなくなった。一方、美香は井上弘一(中村俊介)が巻き込まれた事件に責任を感じている。井上の入院する病院に顔を出す機会も多くなった。それでも、お互いを求め合う気持ちを止められない美香と亮介だったが…。
 そんなある日、美香が勤める『Pen』編集部に一本の電話が入る。亮介が参加した書道大会の主催者からだ。美香が不在なので、受けたのは早瀬佳男(佐藤隆太)。一方、亮介のアパートでは大杉健(哀川翔)が、主催者からの手紙を受け取った。大杉は、福島の亮介に電話して、手紙の内容を伝える。その頃、美香は井上の病室にいた。何かと面倒を見てくれる美香に、井上は改めて結婚を考えて欲しいと頼む。
 美香が、佳男から連絡をもらったのは、帰宅して自室に入ってから。しばらく経って、かかってきた亮介の電話に出た美香は、祝辞を述べる。亮介の書は、大賞を取っていたのだ。亮介は、次の日曜日に行われる授賞式に来られるか? と、美香に尋ねる。美香も、母、光代(岩本多代)の看病で福島にいる亮介に、来られるの? と…。必ず来て欲しいと言う亮介に、美香は「必ず行く」と答えた。そんな時、小説家の神谷文(仲村トオル)は、優里と健介の“その後”について、もっと深く調べようとしていた。
 翌日『海岸酒場』では、大杉、佳男、真理(佐藤江梨子)、小山ヒロシ(速水もこみち)が集って亮介の受賞を祝っていた。亮介の前途も開けそうだし、佳男と真理の仲もうまくいきそうな様子に、大杉もホッとした笑顔をこぼしている。
 その日の新聞に、亮介の大賞受賞の記事が掲載された。授賞式の日程を見て顔を曇らせる正雄。福島では、健介が東京に行くのは授賞式を最後にして欲しいと亮介に釘を刺す。健介は、美香と交際するのは亮介のエゴだと言うのだ。すると亮介は、正雄に会いに行って美香との交際を断られたが、引き下がるつもりはないと断言。健介は怒りを露にするが、亮介も負けてはいない。頭を冷やせと、この場は健介がことを荒立てずに納めた。
 日曜日、授賞式に出かけようとする美香を正雄が止めた。亮介との交際は認めないと言う正雄に、認めなくてもいいから授賞式には行かせて欲しいと美香。美香は、亮介の夢が叶う日を見届けたいと家を飛び出す。追おうとする正雄を、紀香(ソニン)が美香は命がけで恋をしていると強く引きとめた。
 美香は、亮介の受賞式に間に合った。受賞の挨拶をする亮介は、まず自分が最初に書いた文字の動機を話し、そして…。美香を見つめながら、今回受賞したハングル文字は自分の恋人、つまり美香が書かせてくれたと述べる。亮介の言葉に、美香の目には涙が滲んだ。一方、編集部では佳男が、真理の自分への気持ちを量りかねている。まだ、亮介に想いを残しているのではないかと。そこに、神谷からのバイク便がついた。それは、原稿ではなく手紙。神谷は、今まで送った原稿を没にしてほしいと頼んできた。美香が優里の恋人だった人物の息子と出逢って恋人関係になっていると知ってしまったからには、あらためて長編小説として見直したいというのだ。そのためには、どうしても会っておきたい人物がいると…。どうしても、会っておきたい人物…。神谷は福島に出向いていた。
 美香は、亮介とともに彼のアパートへ。賞金を中国かどこかに留学するために使った方が良いと人に薦められたと亮介が話していると、美香の携帯が鳴る。井上からだ。亮介に出るよう促されて、美香は携帯を取る。井上は、来てくれると思ったのにと、美香に話す。明日は行くと約束する美香だが、亮介の「今夜、泊まっていく?」との問いに首をふる。一緒に居たくても居られない、せつない二人…・。
 神谷が訪ねたのは、健介の家。健介は、昔を懐かしんで快く家に招じ入れる。神谷は、かつて健介が優里と一緒に自分の家に来ていたのか? と、切り出した。さらに、優里の肖像画を家に送ってきたのは、ケガを負った3年後だったことを確かめる神谷。健介は、光代の入院中に物騒な話は止めてくれと遮ろうとする。だが、神谷は追及の手を緩めない。光代との結婚後も優里と会っていたのではないか? と、突っ込む。答えを拒否する健介に、大事なことだと神谷。そして、神谷は自分が調べたことを突きつけた。優里は、正雄と結婚した時、すでに身ごもっていたと。つまり…。その頃、亮介がアパートにいると、電話が鳴る。なんと、正雄からだ。正雄は、美香には秘密の話があると亮介を呼び出した。
 次の日、約束どおりに井上を見舞う美香。親身に世話をする美香に、井上は笑顔で傍にいられると辛くなると言う。そして、結婚の返事を迫る。結婚する気がないなら、もう自分の前には現れないで欲しいと告げる井上。美香は次回、病院に来る時にはハッキリした答えを返すことを約束させられてしまう。その夜、亮介は正雄と料亭で対面した。亮介は、賞を取ったことで安定した収入も得られるようになると、改めて美香との交際を請おうとするのだが、正雄の返事は変わらない。どうしても認めるわけにはいかないと言う正雄に、亮介は健介への嫉妬なら男らしくないと勇気を出して反論する。だが、苦渋の表情の正雄は、美香には絶対に秘密にすることを前提に衝撃の告白を…。
 正雄の言葉に、亮介は大きなショックを受けて料亭を後にする。アパートへの帰り道、亮介は真理と会う。そこに、今からアパートに行っても良いか?と、美香からメール。メールの文面から真理へと視線を移した亮介の表情が、ある決意に引き締まる。
 井上の切なる願いに、返事を思案する美香は亮介のアパートへ。部屋をノックすると、亮介が現れるが…。ドアの奥に見える布団の上には、下着姿の真理がいるではないか。亮介は言い訳もせず、ただ「ごめん」と美香に謝るだけ。愕然とした美香は、踵を返す。その背中に、佳男には言わないで欲しいとの真理の声が…。亮介が…なぜ? 怒りや悲しみではない、やるせなさに襲われた美香の足は井上の病室へ。しかし…。やはり何かの間違えと引き返そうとしたとき、わずかに開いた病室のドアの隙間に、不自由な下半身でもがく井上の姿が見えてしまう。その様子に、いたたまれず病室に入る美香。
 その頃、亮介は埠頭で正雄の言葉を思い返していた。美香には秘密だと言う正雄の話。それは、美香と亮介が兄妹だということだった。優里が正雄との結婚前、既に美香を身ごもっていたと。そして、優里の相手が健介だったと…。東京湾を見つめる亮介は、どうすることも出来ない事実を知らされていたのだ。
 病院では、美香の介護で井上がベッドに戻る。1人では何も出来ないと嘆く井上を思わず抱きしめる美香。次に来る時には返事を…。井上には、美香の行為が結婚を承諾だと思えた。美香も…。

キャスト

木本美香、金 優里 … 仲間由紀恵
(一人二役)
和田亮介 … 和田聡宏
  ●
早瀬佳男 … 佐藤隆太
山根真理 … 佐藤江梨子
小山ヒロシ … 速水もこみち
木本紀香 … ソニン
青年 … 川端竜太
  ●
井上弘一 … 中村俊介
井上麗子 … 李麗仙
神谷 文 … 仲村トオル(友情出演)
  ●
大杉 健 … 哀川 翔
和田健介 … 夏八木 勲
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木本正雄 … 石坂浩二

スタッフ

■原作
 吉田修一「東京湾景」(新潮社刊)
■脚本
 原 夏美
■企画&プロデュース
 大多 亮
■プロデューサー
 栗原美和子
 森谷 雄
■演出
 村上正典
■音楽
 イルマ
 高梨康治
■制作
 フジテレビドラマ制作センター

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