東京湾景~Destiny of Love~
#1 日韓を駆け抜ける運命の恋
2003年、クリスマスイヴの夜。とある披露宴会場から、ドレスの裾をたくしあげた女が走り出てきた。女は、途中で段ボール箱を抱えた男にぶつかるが、とにかく急いでいる様子でひと言詫びただけで走り去る。そんな女性を見送る男。彼女が走り去った門には『韓国大使館』のプレートが掲げられていた。
女は、シティーホテルのエントランスを駆け抜け、エレベーターに乗りクリスマスパーティーが行われているスイートルームのインターフォンを押す。急いでいたのは、木本美香(仲間由紀恵)。遅くなってしまったことを詫びる美香を、交際中の川口守(山崎潤)や早瀬佳男(佐藤隆太)たちパーティー出席者たちが見つめている。美香のドレスは、チマ・チョゴリ。親戚の結婚式から、そのまま来てしまったため、場違いな衣装かと不安な美香。だが、居合わせた人々は、美香の衣装と美しさに目を奪われていたのだ。改めてクリスマスパーティーが始まって…。
2004年、夏。美香は、台場にあるネクサス出版の週刊誌『Pen』編集部で働いていた。美香は編集者。彼女の向かいのデスクには、後輩の佳男が座る。佳男は、後輩でありながらも美香の良き話し相手。ランチをともにした美香は佳男に相談。美香は、父の正雄(石坂浩二)から見合いを薦められていた。しかし、美香にその気はなく、守のことを正雄に話すキッカケもつかめないでいる。逡巡する美香に、佳男は守のことを正雄に話したほうが良いとアドバイス。
その夜、美香は思い切って守のことを正雄に話した。守が大学病院の医師と聞いた正雄は、将来は木本家の家業であるホテル事業を継いでも医師なら兼業も可能だとまんざらでもない。美香が、結婚など具体的な話はまだだと言おうとすると、正雄は守に婿となることを話していないのかと畳み掛ける。美香が言葉を濁していると、一度連れて来いと正雄。しかし…。守の名を聞いた正雄は態度を一変させた。さらに、守が日本人だと知った正雄は、無理な相談と部屋を出てしまう。美香は在日韓国人家族で育った在日韓国人三世だった。美香は、既に亡くなった母の写真をみつめ、何で頑固な正雄と結婚したのか? と、つぶやく。
カラオケボックスで、美香の正雄への恨み言がマイクを通して爆発。自分は日本で生まれ育ったのに、何で守が日本人だというだけで交際を反対されるのかと。聞かされているのは佳男。ひと通りの爆発を終えた美香に、佳男は守にも同じ事を言ったのかと聞く。うなずく美香。守の答えは、時間をかけて正雄を説得しよう…だった。それならば良かったと言う佳男だが、美香は話をした時、守の表情が一瞬曇ったと不安そう。
美香は、守のことで考え込む日が続く。そんな美香に、妹の紀香(ソニン)が出会い系メールのサイトアドレスを教える。その時は、今時古くさいと取り合わなかった美香。しかし、守と会えない日が多くなって…。ある夜、携帯電話を手にした美香の目に出会い系サイトのアドレスが飛び込む。サイトを呼び出した美香は、指示に従って文字を打ち始めた。特に希望する項目はなかったが『相手に望む住んでいる地域』に“東京”続けて“湾景”と、『備考』に“日本男児”とだけは明記して送信。すると、すぐに一件だけ該当者確認のメールが届く。美香は、思わずその見知らぬ相手に『本当の私を見つけてくれますか…?』とメールしていた。
美香のメールを受けたのは、品川埠頭の倉庫で働く和田亮介(和田聡宏)。作業中の亮介が、美香のメールを見ていると携帯電話が鳴る。職場の後輩、小山ヒロシ(速水もこみち)の着信名だが、声の主は先輩の大杉健(哀川翔)。居酒屋でヒロシと飲んでいた大杉は、亮介に仕事を切り上げて合流するようにと告げる。山根真理(佐藤江梨子)も来ると言う大杉に、行かないと断る亮介。真理は、亮介の別れた彼女。大杉は、真理から亮介とヨリを戻したいと頼まれたのだ。そんな大杉に、亮介は出会い系で女性からメールが来たことを報告。実は、亮介のアドレスは大杉がイタズラで出会い系サイトに登録してしまったものだった。
仕事を終えた亮介は、銭湯で美香にメールを返信。美香は自室で『俺で良ければ。亮介』というメールを受けた。軽い文章に、不愉快な印象を受けた美香は『どうも、ありがとう。涼子』と再返信。追伸として『でも、そんなこと無理だと思います。俺でよければなんて安易な返事しないで下さい』と、続けた。メールを受けた亮介は、美香が偽名として使った“涼子”という名前にひっかかる。
次の日、美香は『だったら試してみる? 安易に返事したわけじゃないよ。亮介』というメールを着信。守と音信不通となっていた美香は、誘いに乗るように『土曜日の夕方、羽田空港の出発ロビーにいるので見つけられるなら、見つけてみて下さい』と挑戦的なメールを返信した。
土曜日の羽田空港。4時少し前の出発ロビーに美香はいた。だが、時間になっても亮介は現れない。やっぱりイタズラと、美香が去ろうとした時、ロビー上階から『涼子さん、俺はここにいます。亮介』と書かれた垂れ幕が下がった。続けて『すぐに来ないと、あんたのアドレスばらすよ』とも。美香は慌てて、上階へ。そして、亮介と出会った。
喫茶店に場所を移した美香と亮介。2人は、お互いのことは何も知らず、美香は“涼子”という偽名のまま。だが、亮介はどこかで会った気がすると言う。先輩のイタズラで出会い系サイトにメール登録されたと話す亮介は、美香に登録の理由を尋ねる。美香は心のコップがあふれ出そうだったと答えた。すると亮介は、モノレールに乗ろうと美香を誘い、車内でなぜ美香を探そうと思ったかを話す。亮介は“涼子”という名だったからだと言う。“涼子”は、死んだ妹と同じ名だったと。亮介が品川の倉庫で働いていると聞いて、美香は『東京湾景』で該当したことを納得。だが、逆に問われた美香は、あいまいな返事。そして、美香はつかの間の出会いを切り上げて帰ることに。別れ際、亮介は、寂しかったり、辛かったりしたら出会い系などに登録しないで泣いた方がいいと、美香に告げた。亮介が去った直後、美香の携帯に守から電話が…。一方、亮介は美香が、昨年のクリスマスイブの日に、韓国大使館付近でぶつかった女性だと思い当たる。
美香は、喫茶店で久しぶりに守と会った。正雄の反対を真剣に考えたと言う守。だが、守が出した結論は美香とは結婚できないという悲しい答え。自宅に戻った美香は、やるせなさで一杯。思わず、家族写真の入った写真立てを投げてしまった。
日曜日。ワールドバザーが開催されているアメリカ大使館の中庭に、亮介と大杉が出店していた。売っているのは、筆文字の色紙や掛け軸に書かれた亮介の書。亮介は、“涼子”という女性にメールアドレスを変えられてしまったと大杉に話していた。
その夜、美香の父、正雄は井上弘一(中村俊介)と会う。帰国したての井上は、美香が日本人男性と付き合っていたことが心外だと怒りをかみしめる。
翌日、美香は編集長に呼ばれる。新たな連載を始める小説家、神谷文(仲村トオル)が美香を担当編集に指名してきたのだ。会議室で神谷と対面した美香は、自分を指名した理由を尋ねる。すると、神谷は古びた日記帳を読んで欲しいと美香に提示。それは、美香の亡き母、優里(仲間由紀恵・二役)のもの。神谷は、その日記に美香の母の悲恋が詰まっていると言う。娘の自分に返しに来てくれたと思う美香だが、神谷の答えは違っていた。優里の物語を小説に書きたいと申し出てくる。
編集部に戻った美香は、母の日記を読み始める。日本人青年(川端竜太)と出会い、恋に落ちて行く優里。彼女も、美香と同じように在日韓国人として日本人と交際することに悩んでいた。日本人男性への一途な恋。しかし、2人の恋は悲しい結末を迎えてしまう。『本当の私を見つけてくれますか?』。日記の出だしに書かれていた文章も、今の美香に通じている。日記を読み終えて涙がにじむ美香。と、その時、美香の携帯にメールが着信。それは、亮介だった。亮介は“hontouno-watashi”と代えた美香のアドレスを探し当てたのだ。『もう一度、会いたい』との亮介に、美香はオフィスを飛び出す。
品川埠頭の倉庫へと急ぐ美香は、自分の中に母の体に流れていたものと同じものを感じていた。1人の人を愛する、1人の人でありたいと願う、強く烈しい心の叫び…。美香が倉庫に着くと、亮介が現れて…。
女は、シティーホテルのエントランスを駆け抜け、エレベーターに乗りクリスマスパーティーが行われているスイートルームのインターフォンを押す。急いでいたのは、木本美香(仲間由紀恵)。遅くなってしまったことを詫びる美香を、交際中の川口守(山崎潤)や早瀬佳男(佐藤隆太)たちパーティー出席者たちが見つめている。美香のドレスは、チマ・チョゴリ。親戚の結婚式から、そのまま来てしまったため、場違いな衣装かと不安な美香。だが、居合わせた人々は、美香の衣装と美しさに目を奪われていたのだ。改めてクリスマスパーティーが始まって…。
2004年、夏。美香は、台場にあるネクサス出版の週刊誌『Pen』編集部で働いていた。美香は編集者。彼女の向かいのデスクには、後輩の佳男が座る。佳男は、後輩でありながらも美香の良き話し相手。ランチをともにした美香は佳男に相談。美香は、父の正雄(石坂浩二)から見合いを薦められていた。しかし、美香にその気はなく、守のことを正雄に話すキッカケもつかめないでいる。逡巡する美香に、佳男は守のことを正雄に話したほうが良いとアドバイス。
その夜、美香は思い切って守のことを正雄に話した。守が大学病院の医師と聞いた正雄は、将来は木本家の家業であるホテル事業を継いでも医師なら兼業も可能だとまんざらでもない。美香が、結婚など具体的な話はまだだと言おうとすると、正雄は守に婿となることを話していないのかと畳み掛ける。美香が言葉を濁していると、一度連れて来いと正雄。しかし…。守の名を聞いた正雄は態度を一変させた。さらに、守が日本人だと知った正雄は、無理な相談と部屋を出てしまう。美香は在日韓国人家族で育った在日韓国人三世だった。美香は、既に亡くなった母の写真をみつめ、何で頑固な正雄と結婚したのか? と、つぶやく。
カラオケボックスで、美香の正雄への恨み言がマイクを通して爆発。自分は日本で生まれ育ったのに、何で守が日本人だというだけで交際を反対されるのかと。聞かされているのは佳男。ひと通りの爆発を終えた美香に、佳男は守にも同じ事を言ったのかと聞く。うなずく美香。守の答えは、時間をかけて正雄を説得しよう…だった。それならば良かったと言う佳男だが、美香は話をした時、守の表情が一瞬曇ったと不安そう。
美香は、守のことで考え込む日が続く。そんな美香に、妹の紀香(ソニン)が出会い系メールのサイトアドレスを教える。その時は、今時古くさいと取り合わなかった美香。しかし、守と会えない日が多くなって…。ある夜、携帯電話を手にした美香の目に出会い系サイトのアドレスが飛び込む。サイトを呼び出した美香は、指示に従って文字を打ち始めた。特に希望する項目はなかったが『相手に望む住んでいる地域』に“東京”続けて“湾景”と、『備考』に“日本男児”とだけは明記して送信。すると、すぐに一件だけ該当者確認のメールが届く。美香は、思わずその見知らぬ相手に『本当の私を見つけてくれますか…?』とメールしていた。
美香のメールを受けたのは、品川埠頭の倉庫で働く和田亮介(和田聡宏)。作業中の亮介が、美香のメールを見ていると携帯電話が鳴る。職場の後輩、小山ヒロシ(速水もこみち)の着信名だが、声の主は先輩の大杉健(哀川翔)。居酒屋でヒロシと飲んでいた大杉は、亮介に仕事を切り上げて合流するようにと告げる。山根真理(佐藤江梨子)も来ると言う大杉に、行かないと断る亮介。真理は、亮介の別れた彼女。大杉は、真理から亮介とヨリを戻したいと頼まれたのだ。そんな大杉に、亮介は出会い系で女性からメールが来たことを報告。実は、亮介のアドレスは大杉がイタズラで出会い系サイトに登録してしまったものだった。
仕事を終えた亮介は、銭湯で美香にメールを返信。美香は自室で『俺で良ければ。亮介』というメールを受けた。軽い文章に、不愉快な印象を受けた美香は『どうも、ありがとう。涼子』と再返信。追伸として『でも、そんなこと無理だと思います。俺でよければなんて安易な返事しないで下さい』と、続けた。メールを受けた亮介は、美香が偽名として使った“涼子”という名前にひっかかる。
次の日、美香は『だったら試してみる? 安易に返事したわけじゃないよ。亮介』というメールを着信。守と音信不通となっていた美香は、誘いに乗るように『土曜日の夕方、羽田空港の出発ロビーにいるので見つけられるなら、見つけてみて下さい』と挑戦的なメールを返信した。
土曜日の羽田空港。4時少し前の出発ロビーに美香はいた。だが、時間になっても亮介は現れない。やっぱりイタズラと、美香が去ろうとした時、ロビー上階から『涼子さん、俺はここにいます。亮介』と書かれた垂れ幕が下がった。続けて『すぐに来ないと、あんたのアドレスばらすよ』とも。美香は慌てて、上階へ。そして、亮介と出会った。
喫茶店に場所を移した美香と亮介。2人は、お互いのことは何も知らず、美香は“涼子”という偽名のまま。だが、亮介はどこかで会った気がすると言う。先輩のイタズラで出会い系サイトにメール登録されたと話す亮介は、美香に登録の理由を尋ねる。美香は心のコップがあふれ出そうだったと答えた。すると亮介は、モノレールに乗ろうと美香を誘い、車内でなぜ美香を探そうと思ったかを話す。亮介は“涼子”という名だったからだと言う。“涼子”は、死んだ妹と同じ名だったと。亮介が品川の倉庫で働いていると聞いて、美香は『東京湾景』で該当したことを納得。だが、逆に問われた美香は、あいまいな返事。そして、美香はつかの間の出会いを切り上げて帰ることに。別れ際、亮介は、寂しかったり、辛かったりしたら出会い系などに登録しないで泣いた方がいいと、美香に告げた。亮介が去った直後、美香の携帯に守から電話が…。一方、亮介は美香が、昨年のクリスマスイブの日に、韓国大使館付近でぶつかった女性だと思い当たる。
美香は、喫茶店で久しぶりに守と会った。正雄の反対を真剣に考えたと言う守。だが、守が出した結論は美香とは結婚できないという悲しい答え。自宅に戻った美香は、やるせなさで一杯。思わず、家族写真の入った写真立てを投げてしまった。
日曜日。ワールドバザーが開催されているアメリカ大使館の中庭に、亮介と大杉が出店していた。売っているのは、筆文字の色紙や掛け軸に書かれた亮介の書。亮介は、“涼子”という女性にメールアドレスを変えられてしまったと大杉に話していた。
その夜、美香の父、正雄は井上弘一(中村俊介)と会う。帰国したての井上は、美香が日本人男性と付き合っていたことが心外だと怒りをかみしめる。
翌日、美香は編集長に呼ばれる。新たな連載を始める小説家、神谷文(仲村トオル)が美香を担当編集に指名してきたのだ。会議室で神谷と対面した美香は、自分を指名した理由を尋ねる。すると、神谷は古びた日記帳を読んで欲しいと美香に提示。それは、美香の亡き母、優里(仲間由紀恵・二役)のもの。神谷は、その日記に美香の母の悲恋が詰まっていると言う。娘の自分に返しに来てくれたと思う美香だが、神谷の答えは違っていた。優里の物語を小説に書きたいと申し出てくる。
編集部に戻った美香は、母の日記を読み始める。日本人青年(川端竜太)と出会い、恋に落ちて行く優里。彼女も、美香と同じように在日韓国人として日本人と交際することに悩んでいた。日本人男性への一途な恋。しかし、2人の恋は悲しい結末を迎えてしまう。『本当の私を見つけてくれますか?』。日記の出だしに書かれていた文章も、今の美香に通じている。日記を読み終えて涙がにじむ美香。と、その時、美香の携帯にメールが着信。それは、亮介だった。亮介は“hontouno-watashi”と代えた美香のアドレスを探し当てたのだ。『もう一度、会いたい』との亮介に、美香はオフィスを飛び出す。
品川埠頭の倉庫へと急ぐ美香は、自分の中に母の体に流れていたものと同じものを感じていた。1人の人を愛する、1人の人でありたいと願う、強く烈しい心の叫び…。美香が倉庫に着くと、亮介が現れて…。