第11回 2004年9月13日(月)放送 あらすじ

#11 輪廻

一命は取り留めたものの、木本美香(仲間由紀恵)は記憶を失ってしまった。母、優里(仲間由紀恵・二役)と亮介の父、健介(夏八木勲)、そして神谷文(仲村トオル)の隠された真実を知り、亮介(和田聡宏)を追いかけたことも…。美香が入院したことを知るよしもない亮介は、健介にも場所を教えずに留学先へ旅立った。自分と美香が兄妹でないことにも、もちろん気付かずに…。
退院した美香は、紀香(ソニン)に付き添われて家に帰る。出迎えたのは、父の正雄(石坂浩二)と…車椅子に乗った井上弘一(中村俊介)だ。美香と公園に出かけた井上は、自分が婚約者だと名乗る。そして、美香が記憶を失ったのは神様のプレゼントだと言う。不幸を背負いすぎた美香を楽にしてくれたのだと…。どんな不幸かは語らずに、新しい思い出を作っていこうと言う井上に、美香は安らぎを覚える。その頃、紀香は正雄に、亮介のことは美香に隠し続けようと提案。行方不明で美香の傍にいない亮介。また、例え居場所が分かっても美香の状態を知ったら、自分を責めるのではないか? と、紀香。正雄は、静かに頷いた。
行方不明の亮介は、韓国に留学していた。ソウルで師事し、韓国の書を修行している。ある日、亮介がソウル市内の書道具店にいると、顔見知りに気付く。姜(パク・ヨンハ)だ。亮介は姜から美香が長期休暇を取っていることを知らされる。結婚したからではないかと話す亮介。すると、姜は亮介と美香が別れたのは残念だと言う。姜は、それでもまだ亮介が美香を愛していると問いかける。答えられない亮介に、姜は2人が終わってはいないと信じると。亮介は、姜に自分と韓国で会ったことを日本には伝えないで欲しいと頼んだ。
 井上と美香の結婚式を結果的に崩壊させた正雄は、麗子(李麗仙)と龍弘(石田太郎)に責められる。なんと、正雄の会社株の買占めに走り出したのだ。麗子は、井上と美香の結婚式をすぐにでも執り行えば…と、含みをもたせる。また、龍弘も正雄の会社を潰すのは簡単だと高飛車。そんな2人に、正雄の怒りが爆発。井上家のような家庭には、美香を嫁がせられないと怒鳴った。
 記憶を取り戻せない美香は、自室で自分の記憶につながるものを眺めていた。卒業アルバム、社員証…。と、パスポートが入ったケースに、鍵を見つける。美香は、その鍵に不思議な力を感じる…心の空白を、心の扉を開けてくれる鍵なのか? そんなある日、祖母の貞姫(森康子)は、美香が子供の時に遊んでいた玩具が入っているはずと、螺鈿の箱を持ってきた。箱に鍵を差し込もうとする貞姫。それは、パスケースに見つけた鍵とそっくりだった。部屋に戻った美香は鍵を確認。すると、脳裏に螺鈿の箱に土を盛るシーンが蘇る。だが、激しい頭痛に苛まれ、それ以上は思い出せない。
 正雄は神谷文(仲村トオル)と会う。神谷は、美香が自分の妹だと知った驚き、それを優里の小説を書こうとしたことで知らされた運命に圧倒されたと話し出す。そして、正雄は美香の記憶が戻ることで、再びその渦に巻き込まれるのを恐れているのでは? と、問いかける。返事をしない正雄に、神谷はもう優里の物語を追うつもりはないと言う。しかし、正雄は優里の日記の在り処を尋ね返した。日記を読ませて、美香に記憶を取り戻させたいと。しかし、日記は既に美香の手に渡っているので、在り処は本人にしか分からない。そこで、神谷に小説を書いてもらいたいと正雄。神谷は、正雄の誠意に心を打たれ、再び小説に挑むことを了承する。
 クリスマス間近の木本家に、早瀬佳男(佐藤隆太)が来ていた。職場復帰を願う佳男だが、美香にはまだ無理の様子。その時、イヴの話題に。紀香は昨年、親戚が挙げたイヴの結婚式の慌しさを想い出す。と、美香が同調。焦って式場を飛び出したと言う。紀香は、美香が記憶の断片を蘇らせたと喜ぶ。だが、美香はチマ・チョゴリのまま会場を飛び出して、男にぶつかったところまで…男? それ以上思い出せない。
 次の年の夏が来た。『海岸酒場』では大杉健(哀川翔)が、亮介が未だに行方不明だと嘆いている。井上の美香への再接近も心配。すると、山根真理(佐藤江梨子)が本人に直接聞いてみろと言い出す。
 大杉は、数日後、井上の会社を訪ねる。大杉は井上の美香への真剣な気持ちを確認。しかし…と、大杉。その想いだけで、井上自身が幸せになれるのか? と。美香が純愛を注いでいるのは、あくまでも亮介だと大杉。それを知っているからこそ、美香の傍にいることで井上の心が重くなっているのではないかと突きつけた。一方、美香は出社。その出社を待っていたかのように、神谷の小説の製本が上がった。帰り道、佳男は神谷が美香のために一度中断した執筆を再開したと話す。
 数日後、亮介のもとに姜が来た。姜は神谷の小説をプレゼントだと亮介に渡す。そして、美香が職場復帰して、結婚もしていないと話す。動揺する亮介に、逃げないで立ち向かって欲しいと諭す姜だった。
 美香と亮介は、日本と韓国でそれぞれに神谷の小説を読み始める。ストーリーが進むにつれ、心が揺れ動く美香と亮介。美香の声に、記憶の底から男が呼びかけてくる。“こんな海くらい、泳いで渡りきってみせるよ”“本当の私を見つけて欲しいって気持ち、すごく分かったから、ずっと待っていた”。いったい誰? 蘇る日本語と韓国語で書かれた『私』の文字。部屋に額が…。今は空白となった壁を見つめる美香。そして、小説を読み終えた時…美香は自分の空白になった心の扉を開くのは、パスケースの鍵だと認識した。優里のブレスレットに触れた美香は、知っていることを全て話して欲しいと佳男に電話をかける。ところが、韓国の亮介は再び姿を消してしまった。訪ねて来た姜は、亮介から預かったと師匠から手紙を渡される。
 羽田空港のロビーに美香はいた。時刻は4時。佳男からの呼び出しだ。佳男が現れないので帰ろうとすると、垂れ幕が落ちてきた。“涼子さん、俺はここにいます。亮介”あの時の再現に、美香は亮介の顔をハッキリと思い出す。2人だけの想い出も…。垂れ幕を落とした人間を確かめるために美香は走るが亮介の姿はない。現れたのは、大杉と佳男、真理と小山ヒロシ(速水もこみち)だ。4人は、美香の表情から記憶を取り戻したことを知る。そして、4人は亮介を探し出せるのは美香だけだと優しく背中を押した。
 家に帰った美香は、正雄の書斎へ。“美香です”と改めて名乗る美香に、正雄も全てを取り戻したことに気付く。正雄は、美香には韓国人と日本人の血が流れているので2つの祖国に誇りを持って欲しい。両国間に広がる大きな海の架け橋になって欲しいと頼む。まだ、美香には解決しなくてはいけない問題が残っていた。井上だ。美香が話を切り出そうとすると、井上が遮る。そして、井上は幼い頃のトラウマから、そろそろ卒業しようかと思うと告げる。誇りある人生を送りたいと続ける井上は、自分から婚約解消を申し込む。井上も、美香の目覚めに気付いていた。さらに、井上は小説のラストはハッピーエンドだったと美香を勇気付けて別れて行った。その夜、紀香は預かっていた2枚の額縁を美香に返し、約束の場所へ亮介と会いに行くのかと尋ねる。首をふる美香は、大きな力を信じて待つことにしたと答える。その頃、姜は、亮介の手紙を読んでいる。手紙には、小説を読み終えての亮介の決意が書かれていた。運命なんかに振り回されずに、もう一度、本当の自分たちを見つけ直したいと。
 待ち続ける美香に、一通のメールが届く。“新しいアドレス、一発で見つけた。”亮介からだ。美香の新アドレスは“hontouno-watashitachi”。逢いたい! もう一度、亮介に…。美香は走る。母のブレスレットと共に、愛する人のもとへ! その手には、螺鈿の箱の鍵も握られている。着いたのは、亮介が働いていた品川埠頭の倉庫街。息を切らせて亮介を捜す美香。と、背後から抱きしめられた。「見つけた」続けて「愛している」そして「サランヘヨ」…懐かしい声。亮介の腕の中に、美香は再び戻ることが出来た。亮介は、韓国から螺鈿の箱を持ち帰っていた。抱きしめあい、互いの愛を深く確認する美香と亮介。螺鈿の箱の中には優里の日記。やはり、優里は愛し合う2人を再び逢わせてくれたのだった…。

キャスト

木本美香、金 優里 … 仲間由紀恵
(一人二役)
和田亮介 … 和田聡宏
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早瀬佳男 … 佐藤隆太
山根真理 … 佐藤江梨子
小山ヒロシ … 速水もこみち
木本紀香 … ソニン
青年 … 川端竜太
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井上弘一 … 中村俊介
井上麗子 … 李麗仙
神谷 文 … 仲村トオル(友情出演)
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姜 … パク・ヨンハ
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大杉 健 … 哀川 翔
和田健介 … 夏八木 勲
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木本正雄 … 石坂浩二

スタッフ

■原作
 吉田修一「東京湾景」(新潮社刊)
■脚本
 原 夏美
■企画&プロデュース
 大多 亮
■プロデューサー
 栗原美和子
 森谷 雄
■演出
 平井秀樹
■音楽
 イルマ
 高梨康治
■制作
 フジテレビドラマ制作センター

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