第9回 2003年12月4日(木)放送 あらすじ

#9 正念場

 教授選投票を突然棄権するという東(石坂教授)の“奇行”で教授会は騒然となった。意図を図りかねるまま教授会は投票に進行した。財前(唐沢寿明)は、その“事件”を里見(江口洋介)が持ち込んできた食道がん患者・佐々木庸平(田山涼成)の診療中に、佃(片岡孝太郎)の連絡で知った。財前は、庸平を放り出し診察室を飛び出した。庸平の妻・よし江(かたせ梨乃)は、その人を人とも思わぬ態度に大きな不安と不信感を抱いた。外に出た財前は、東の態度に感心する佃を「俺を陥れるために仕組んだ芝居じゃないか。騙されるな」と罵倒した。
 果たして投票の結果は混沌を極め、財前12票、菊川(沢村一樹)11票、野坂(山上賢治)らが押す葛西が7票と、3候補とも過半数を割り、翌週の決選投票に持ち越されてしまった。医局員たちは予定外のこの事態に慌てふためき混乱した。財前の「自分に出来ることは何か、落ち着いて考えてくれ」という含みのある指示に、佃は一人何事か思うのだった。
 東、財前両陣営とも野坂派の突き崩しを画策した。東は参謀の今津(山田明郷)を呼び「もう一芝居打たねばならんだろうね」と思案する。一方、扇屋に集まった財前派は、又一(西田敏行)が、「野坂派を馬鹿にしたツケや。どなたかの政治力も財力も当てに出来まへんな」と、鵜飼(伊武雅刀)、岩田(曾我廼家文童)に嫌味を露にしながら、まるで敗北したように騒いでいた。そこへ財前がやって来た。「東にしてやられた。一巻の終わりや」とわめき散らす又一に対し、財前は「ここで諦めたら、あなたの欲しかった名誉も手に入らず、ばら撒いた金も無駄になる」と諌める。鵜飼、岩田も頷き、財前は不敵に笑うのだった。
 その夜、医局では佃が、安西(小林正寛)と柳原(伊藤英明)を「菊川のところへ一緒に乗り込んで辞退を要請しよう」と誘っていた。柳原は「フェアじゃない」と腰が引けるが、安西は佃の迫力に負け、その無茶な案に付き合うことにした。その時、医局のドアが開き里見が現れた。財前に渡す佐々木の資料を持って来たのだ。柳原に温かい言葉をかける。
 その時、財前はアラジンでケイ子(黒木瞳)と飲んでいた。そこへ、財前を訪ねて佃と安西が現れた。菊川に直談判に行くことを報告に来たのだ。財前は表向き止めるのだが、底意は逆である。「好意は嬉しいが…、だがそこまで思ってくれるなら止められん。無理はするな、僕は聞かなかった事にする」と結果煽るのであった。
 佐々木の診断の日である。財前は、佃、安西が、菊川のいる金沢へ向かうための虚偽の病欠であることを知りつつ、柳原を助手として付け、診断に向かう。弁当屋の店主である庸平は仕事一途の人間で外科医・財前の登場にひるむ。財前はそんな様子を無視し、即座に食道がんと判断、里見に手術を言い渡す。財前が去った後、里見はそれを受けて、よし江に診断や手術を説明するが、よし江の財前に対する違和感はさらに増していた。
 佃と安西は雪がちらつく金沢・石川大に到着、菊川を訪ねた。二人は単刀直入に候補から降りるように申し入れた。菊川は、二人の都合のいい言い分に、怒り心頭に至り「僕がどれだけ自分を抑えているか分かるか」と叱責する。だが佃らもひるまず「万一、先生が教授になられても一切協力しない」と脅すように言い放ち出て行った。菊川は、すぐさま船尾(中原丈雄)に連絡した。
 そんな夜、東の専用車には、東と今津、野坂が乗り込んでいた。話の見当のついている野坂は「7票を回せと言われても困る。私は白票を投じる」と清廉なことを言う。だが、東は構わず「本題は、あなたが日本整形外科医学会の理事になる気があるかという話だ」と持ち出した。野坂は「私は学者としての将来を考える人間だ」と不敵に微笑む。
 が、東は帰宅して掛かってきた船尾の電話に驚いた。佃、安西の話だ。「どんな教育をしているのだ」と船尾の怒りは収まらない。東は絶句する以外すべがなかった。
 なんと野坂は東と別れた後、扇屋にいた。目の前に座っているのは、又一、岩田のコンビである。表向きの話題は、医師会の講演であったが、野坂の「テーマは?」という問いに答えとして出てきたのは、札束であった。500万円が6束、1000万円が一束。7票分である。断る野坂に「ほな、何で来られたんです?」という真意を見透かした岩田の問いに絶句する野坂であった。
 翌朝、東邸に船尾が勢い込んで乗り込んできた。「菊川君は辞退すると言っているが、させません。私の面目が潰れます」と興奮している。「あなたの交渉では不安だ。甘い」と、東を無能扱いし、野坂派の各教授に名誉職ポストを次から次へと用意し手帳に書き込んで行く。そそくさと船尾が帰った後、東は、何かが切れたように荒れ、玄関脇の鉢植えに当り散らすのだった。あまりの様子に佐枝子(矢田亜希子)が病院まで送ることになった。
 佐枝子はついでに里見の部屋を訪ねた。佐々木よし江が遠慮がちに入ってきた。財前がまともに診てくれないのでは、と訴えるのだった。
 そのころ財前は、東の部屋に呼び出されていた。佃たちの件の責任が財前にあるのでは、という責めであった。財前は知らぬ存ぜぬを通したが「東先生が私を否定するために棄権したと、医局は殺気立っている」と東の気持ちを逆なでする。カッとした東は「言葉を慎め」と激昂する。財前は「申し訳御座いません」と悪びれる様子なく平然と頭を下げるが…。

キャスト

財前五郎 … 唐沢寿明
(浪速大学第一外科助教授)
里見脩二 … 江口洋介
(同第一内科助教授)

花森ケイ子 … 黒木 瞳
(クラブ・アラジンのママ)
東 佐枝子 … 矢田亜希子
(東教授の娘)
里見三知代 … 水野真紀
(里見の妻)

菊川 昇 … 沢村一樹
(心臓外科医)
佃 友博 … 片岡孝太郎
(第一外科医局長)
鵜飼医学部長 … 伊武雅刀
(第一内科教授)

財前杏子 … 若村麻由美
(財前の妻)
亀山君子 … 西田尚美
(外科病棟ナース)
鵜飼典江 … 野川由美子
(鵜飼の妻)
黒川きぬ … 池内淳子
(財前の母)
佐々木よし江 … かたせ梨乃
(裁判の原告)

柳原 弘 … 伊藤英明
(第一外科医局員)
東 貞蔵 … 石坂浩二
(第一外科教授)
財前又一 … 西田敏行
(財前マタニティクリニック院長、財前の舅)

スタッフ

■原作
  山崎豊子
■脚本
  井上由美子
■企画
  和田 行
■プロデューサー
  高橋萬彦
  川上一夫
■演出
  西谷 弘
■音楽
  加古 隆
■制作
  フジテレビ
  共同テレビ

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