第6回 2003年11月13日(木)放送 あらすじ

#6 父の姿

 浪速大学医学部教授会で第一外科教授の選考委員選びが行われていた。31票のうち最多数を獲得したのは、鵜飼部長(伊武雅刀)でも東教授(石坂浩二)でもなく、謹厳な学究派で知られる病理学の大河内教授(品川徹)であった。大河内は醜い学内の派閥争いや権力闘争に業を煮やし出馬表明したのであった。大河内はそのまま選考委員長に就任した。財前にとっては、東肝いりの菊川石川大助教授(沢村一樹)に並ぶ障壁となりそうだった。
 足元を固めるべく、財前は、医局長の佃(片岡孝太郎)に、東が菊川を推していることを仄めかして佃の不安をあおる。佃は、他大学の教授が自分たちの上に降りてくるなど許せないと、財前の思惑にまんまと乗るのだった。
 東の教授総回診が始まった。いつものように東は慇懃に財前を牽制する。「ニューヨークのがんセンターの講師にならんかね」。「ありがたい言葉ですが、私は浪速大に骨を埋める所存です」。こんなやり取りに医局員は緊張した。と、その中から新人の柳原(伊藤英明)が東に駆け寄った。「尊敬する財前先生は第一外科に必要な方です」。佃や安西(小林正寛)があわてて引き戻した。憮然とした東は財前に「今のはなんだ」と問う。すぐに佃が引き取って「監督不行き届きでございました」と謝るが、東は「百年早いと教えておきなさい」と去るのだった。
 そんなころ、里見(江口洋介)も内科の総回診に臨んでいた。鵜飼部長は、転院しているはずの末期がん患者・林田加奈子(木村多江)に気付き、加奈子の前で里見をなじる。里見は「最後まで引き受けたい」と鵜飼を追う。鵜飼は「まるで私が悪者のようだが、ベッドの空きを待っている患者にとっては君が悪者だ。私の方針に従えなければここを出て行ってもらう。私が教授で君は助教授だ」と厳しく叱責するのだった。
 東の家では、佐枝子(矢田亜希子)が、政子(高畑淳子)の急病を救ってくれた里見に礼を言ってくれと、東に願い出ていた。だが、東も政子も、そんなことは眼中になかった。教授選が最大の関心事なのである。佐枝子は思い余って「お父様は不幸です」と言い放ちその場を去る。娘の情緒不安定な様子を訝る東に、政子は「里見先生が原因かも。妻帯者だから厄介です」と佐枝子の心の動きを見抜いていた。
 里見は、加奈子に終末治療を施す決心と苦悩を大河内に吐露していた。大河内は「医学に答えはない。何度でも石を投げるしかない。互いに頑張ろう」と教授選を視野に入れて激励する。が、そのころ、加奈子は、鵜飼に意を含まれた竹内(佐々木蔵之介)に「うちの病院には順番を待っている患者さんがたくさんいます。出て行ってください」と申し渡される。加奈子は病室の闇を見詰めた。
 徹夜明けの里見が昼前に自宅に戻ると、家の中から佐枝子が顔を出した。三知代(水野真紀)に会いに来ていたのだ。その時、玄関のベルが鳴った。息子の好彦(片岡涼)が玄関口に出て戻って来た。「お父さん、財前さんだって」。驚き訝る一同。玄関先で辞すると言った財前は、佐枝子がいると知ると中に入って来て「ご恩は必ずお返しするとお伝えください」など殊勝な挨拶をし始める。里見は「外に出よう」と財前を促した。
 財前は「君の熱意に負けた。林田の手術をやろう」と切り出す。だが「その代わり、大河内教授との間を取り持ってくれないか」と続けるのであった。里見は無言で聞いた後「そんな条件には応じられない。取引のために末期治療しているわけではない」ときっぱり断った。財前は「なら医者を辞めろ。君だって金をもらって診療している。特別な顔をするな」と里見の理想主義を厳しく糾弾するのだった。
 美和子と佐枝子は、互いの父親が置かれた運命的な状況について話をしていた。と、そこに電話が鳴った。林田が自主的に退院したという連絡だった。
 里見と財前は病院に向かった。竹内が出て来て言う。「すぐ退院するときかなくて。里見先生には会いたくないとのことだったので…」。里見は加奈子を追った。バスを待つ加奈子を見つけた里見は「なぜですか」と問う。「里見先生に迷惑をかけたくないんです」。里見は「あなたに会って、患者を選ぶことに疑問を抱きました」としか答えられなかった。加奈子は「少し救われました。先生こそ頑張りすぎちゃ駄目」とバスに乗り込んでいった。里見は財前に「俺は彼女を苦しめたのか」と問った。財前は、その問いに肯定した後「悩んだって患者のためになるとは限らない。そんな簡単じゃない。だから僕は確実なものが欲しいんだ」と自分に言い聞かせるように答えるのだった。
 6人の委員による第1回教授選考教授会が始まった。ここで一人の名前に絞られれば、本教授会の投票は信任となる公算が大きい。財前や医局員たちが緊張している。委員長の大河内はまず具体的な選考基準を決めていこうと提案した。財前を推す鵜飼と葉山(渡辺憲吉)、東に因果を含まれた今津(山田明郷)は、意見が割れ、会議室には沈黙が流れる。それを破ったのは大河内のある提案であった。それを聞いて鵜飼と東は絶句した。

キャスト

財前五郎 … 唐沢寿明
(浪速大学第一外科助教授)
里見脩二 … 江口洋介
(同第一内科助教授)

花森ケイ子 … 黒木 瞳
(クラブ・アラジンのママ)
東 佐枝子 … 矢田亜希子
(東教授の娘)
里見三知代 … 水野真紀
(里見の妻)

菊川 昇 … 沢村一樹
(心臓外科医)
佃 友博 … 片岡孝太郎
(第一外科医局長)
鵜飼医学部長 … 伊武雅刀
(第一内科教授)

財前杏子 … 若村麻由美
(財前の妻)
亀山君子 … 西田尚美
(外科病棟ナース)
鵜飼典江 … 野川由美子
(鵜飼の妻)
黒川きぬ … 池内淳子
(財前の母)
柳原 弘 … 伊藤英明
(第一外科医局員)
東 貞蔵 … 石坂浩二
(第一外科教授)
財前又一 … 西田敏行
(財前マタニティクリニック院長、財前の舅)

スタッフ

■原作
  山崎豊子
■脚本
  井上由美子
■企画
  和田 行(フジテレビ)
■プロデューサー
  高橋萬彦(共同テレビ)
  川上一夫(共同テレビ)
■演出
  河野圭太(共同テレビ)
■音楽
  加古 隆
■制作
  フジテレビ
  共同テレビ

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