第8回 2003年11月27日(木)放送 あらすじ

#8 決戦

 「教授にはなりたくございません」…財前五郎(唐沢寿明)は、教授選考の大きな壁になっている大河内教授(品川徹)の琴線に触れようと、芝居掛かった直訴に及んだ。熱弁を振るう財前を、大河内は、相槌一つ打たず黙って見据えるだけである。と、そこへ里見(江口洋介)が入ってきた。大河内は財前への態度とは打って変わって「実は市民講座の講師を引き受けてくれ」と滑らかに切り出す。「意義あることだと思うが…気が進まんなら辞退したまえ」。まるで財前を諭すように里見に話しかける。自分の意図を見透かされた気がした財前は、里見に「先生の勧めに応じるべきだ」と助言し、「先生、有難う御座いました」とその場を辞した。里見は、「彼の言を気にするな」という大河内の言葉を聞きつつも、生真面目に次の日曜の講座講師の仕事を引き受けるのだった。
 その日曜は里見の息子・好彦(片岡涼)の誕生日であった。美知代(水野真紀)は好彦がなついている佐枝子(矢田亜希子)を誕生パーティに招待しようと電話をかけた。だが、佐枝子は、里見への思いが招きうる様々な問題を思うと、これ以上里見家に深入りすることにためらいを覚えていた。佐枝子は論文執筆を理由に誘いを断った。佐枝子が電話を切ると、東(石坂浩二)が戻って来た。疲れきった東は、政子(高畑淳子)に「教授選が招く不幸はあなたが生んだ」「菊川は大丈夫か」「退官後の行き先は」と遠慮なく畳み掛けられるのであった。
 家に帰った財前も、杏子(若村麻由美)から無神経な言葉を浴びせ続けられていた。「花森ケイ子さんに会ってきたわ。しばらく会わないでって言ったの」。たまらぬように財前は家を飛び出した。
 財前の行き先は、鵜飼(伊武雅刀)、又一(西田敏行)、岩田(曾我廼家文童)らの待つ「扇屋」であった。最後の票読みである。又一は岩田の「18票」という数字に愕然とした。もっと圧勝の数字が報告されると思っていたのだ。問題はやはり大河内が持つ基礎医学の15票である。鵜飼は、財前が大河内に直訴したことをなじりながらも、葉山教授に最終的な票固めを依頼した。焦る又一は「いくらいるのか」と相変わらず直接的な表現をする。岩田が「教授選はもっと品格が必要なんだ」と皮肉ると、又一は臆すことなく「そんな一文にもならんものまで欲しがるとは、先生方の方がよっぽど欲張りですな」と煙に巻くのだった。
 そのころ東家でも票固めが行われていた。今津(山田明郷)が基礎の教授に会って菊川の運動をしてきたのだ。今津も17から19票は固いと踏んでいた。
 扇屋を出た財前は「アラジン」に向かった。そこには医局の佃(片岡孝太郎)、安西(小林正寛)、柳原(伊藤英明)がそろっていた。若手の結束と意思統一を図ろうという算段だった。ただ財前は、ケイ子(黒木瞳)のよそよそしい態度の方が気に掛かった。
 同じころ里見は、講演会に行く準備をしていた。好彦は自分の誕生日に仕事を入れた父に対し不満である。また、政子のいない東家には、東都大の船尾(中原丈雄)と菊川(沢村一樹)が訪問していた。船尾は、教授選の最後のツメを確認するとともに東の退官後のポストを提示に来ていたのだ。菊川が遠慮して学会に出向くと言うと、佐枝子が送りに出てきた。佐枝子の気持ちを察した菊川は「私も結婚する気などない」と先回りする。さらに「あなたの方が古い人間だ。」と喝破する。
 里見は市民公開講座で講演していた。後ろの立見席に財前とケイ子がいる。財前は自分に問うように言う。「患者と医学のためにだけ力を注ぐとう人間がいるのか。嘘じゃなきゃ、俺は困るんだ」
 里見が講演を終えると楽屋に佐々木よし江(かたせ梨乃)が飛び込んで来た。夫の調子が悪いと言う。里見は病院に連れて来るように伝えた。
 数日後、よし江と夫・庸平が診察にやって来た。その日は教授選の最終日でもあった。里見が庸平を検査すると、果たして食道がんである。里見は、財前の判断を仰ぐようにと竹内(佐々木蔵乃介)に命じるが、案の定、財前は留守であった。そのころ財前は母・きぬ(池内淳子)に仕送りの電話をかけていた。「お前は立派になったよ」と言うきぬに、財前は「まだ、もっともっとと思ってるよ」と天に向かって手を伸ばすのであった。
 教授会31名の投票が始まろうとしていた。と、突然、東が立ち上がって口を開いた。その発言にそれぞれの思惑と表情で場内が粟立つ。

キャスト

財前五郎 … 唐沢寿明
(浪速大学第一外科助教授)
里見脩二 … 江口洋介
(同第一内科助教授)

花森ケイ子 … 黒木 瞳
(クラブ・アラジンのママ)
東 佐枝子 … 矢田亜希子
(東教授の娘)
里見三知代 … 水野真紀
(里見の妻)

菊川 昇 … 沢村一樹
(心臓外科医)
佃 友博 … 片岡孝太郎
(第一外科医局長)
鵜飼医学部長 … 伊武雅刀
(第一内科教授)

財前杏子 … 若村麻由美
(財前の妻)
亀山君子 … 西田尚美
(外科病棟ナース)
鵜飼典江 … 野川由美子
(鵜飼の妻)
黒川きぬ … 池内淳子
(財前の母)
柳原 弘 … 伊藤英明
(第一外科医局員)
東 貞蔵 … 石坂浩二
(第一外科教授)
財前又一 … 西田敏行
(財前マタニティクリニック院長、財前の舅)

スタッフ

■原作
  山崎豊子
■脚本
  井上由美子
■企画
  和田 行
■プロデューサー
  高橋萬彦
  川上一夫
■演出
  村上正典
■音楽
  加古 隆
■制作
  フジテレビ
  共同テレビ

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