白い巨塔
#7 毛嫌い
財前五郎(唐沢寿明)は、ケイ子(黒木瞳)のマンションで、教授選考委員会の結果を待っていた。だが、佃医局長(片岡孝太郎)からの連絡は、教授選が財前推薦でまとまらず、大河内教授(品川徹)の発案で全国公募になったという予期せぬ結論であった。財前は動揺した。
その夜、東(石坂浩二)は家に菊川(沢村一樹)を招き、最後の意思統一を行っていた。菊川は「名前が挙がる以上、敗れるわけにはいかない」と強い調子で東に念を押す。政子(高畑淳子)は、そんな緊張はお構いなしに、佐枝子(矢田亜希子)の結婚相手として菊川の気を引こうと躍起である。そんな茶番に呆れた佐枝子が廊下に出ると、玄関のチャイムが鳴る。その主は財前だった。
菊川を応接間に残して、東が玄関に応対に出た。財前は、東が行う予定の肺の手術に助手として参加させてくれ、と、懇願する。「おそらく助手につく最後のチャンスと思います」と財前。東は意図を量りかねながらも、断る理由を探せなかった。
2週間後、東のオペに財前は助手として参加した。一糸乱れぬ師弟の見事な手際に、金井(奥田達士)や佃、安西(小林正寛)は目を見張る。
同じころ、里見(江口洋介)は、動物実験の満足行く結果に喜んでいた。が、研究室の誰も手伝おうとしない。竹内(佐々木蔵之介)ですら、「里見先生を尊敬しますが、鵜飼部長に睨まれるわけにはいきません」と部屋を出て行くのだった。竹内が持ってきた郵便の中に静岡の病院からの封書があった。里見は緊張した。果たして、その病院へ転院した加奈子(木村多江)が亡くなったことの連絡であった。里見はすぐに鵜飼(伊武雅刀)に報告し、「末期患者の受け入れについて考え直してくれ」と申し入れる。鵜飼は「説はもっともだが、大学病院の使命ではない。君こそ研究に精を出してくれ」と聞き流し去って行くのだった。
そんなころ、杏子(若村麻由美)は、鵜飼の自宅へ典江(野川由美子)を訪ねていた。忙しい振りをする典江は「挨拶を」と申し出る杏子の風呂敷包みに目をやりながら、渋々の素振りで招じ入れた。風呂敷の中身は高価な辻が花の反物である。典江は慣れた様子でそれを受け取りながら「宅が心配しておりましてよ」と、クラブ・アラジンのマッチをさりげなく杏子に渡すのであった。
手術が終わった東は、財前の意図を探ろうと、一杯誘う。財前は『待っていた』とばかりに承知する。二人はアラジンへ向かった。ケイ子が席を立ったのを見計らい、東は財前に「なぜ助手についた」と質し、「教授にしてくれと素直に僕に頼めんのか」と直截に詰問する。
同じころ、里見は病院に残って研究を続けていた。電話が鳴る。佐枝子からであった。佐枝子は、自分の縁談成就を焦る母・政子が里見と自分の仲を怪しみ、不快な電話を掛けるかも知れないと、里見に伝える。静寂が流れたその瞬間、研究室に財前が入ってきた。里見は慌てて佐枝子に別れを告げ、財前に向き合った。
酔った財前は「助けてくれ。大河内教授との間を取り持ってくれ」と懇願する。里見は無視して研究を続ける手を休めない。諦めて立ち上がる財前に里見は背中越しに言った。「信念があるのなら誰にでも堂々と会えるだろう。自分で行け」。財前は少なからず衝撃を受けながら、黙って里見の部屋を後にした。
数日後、ケイ子の部屋に杏子が現れた。杏子はすぐに切り出した。「しばらく主人と会わないでください。教授になったら、またお貸しします」。熱い視線が交じり合い火花を散らした。
医学部では2回目の教授選考委員会が開かれた。全国から推薦された10人の教授候補の名がボードに書かれていて…。
その夜、東(石坂浩二)は家に菊川(沢村一樹)を招き、最後の意思統一を行っていた。菊川は「名前が挙がる以上、敗れるわけにはいかない」と強い調子で東に念を押す。政子(高畑淳子)は、そんな緊張はお構いなしに、佐枝子(矢田亜希子)の結婚相手として菊川の気を引こうと躍起である。そんな茶番に呆れた佐枝子が廊下に出ると、玄関のチャイムが鳴る。その主は財前だった。
菊川を応接間に残して、東が玄関に応対に出た。財前は、東が行う予定の肺の手術に助手として参加させてくれ、と、懇願する。「おそらく助手につく最後のチャンスと思います」と財前。東は意図を量りかねながらも、断る理由を探せなかった。
2週間後、東のオペに財前は助手として参加した。一糸乱れぬ師弟の見事な手際に、金井(奥田達士)や佃、安西(小林正寛)は目を見張る。
同じころ、里見(江口洋介)は、動物実験の満足行く結果に喜んでいた。が、研究室の誰も手伝おうとしない。竹内(佐々木蔵之介)ですら、「里見先生を尊敬しますが、鵜飼部長に睨まれるわけにはいきません」と部屋を出て行くのだった。竹内が持ってきた郵便の中に静岡の病院からの封書があった。里見は緊張した。果たして、その病院へ転院した加奈子(木村多江)が亡くなったことの連絡であった。里見はすぐに鵜飼(伊武雅刀)に報告し、「末期患者の受け入れについて考え直してくれ」と申し入れる。鵜飼は「説はもっともだが、大学病院の使命ではない。君こそ研究に精を出してくれ」と聞き流し去って行くのだった。
そんなころ、杏子(若村麻由美)は、鵜飼の自宅へ典江(野川由美子)を訪ねていた。忙しい振りをする典江は「挨拶を」と申し出る杏子の風呂敷包みに目をやりながら、渋々の素振りで招じ入れた。風呂敷の中身は高価な辻が花の反物である。典江は慣れた様子でそれを受け取りながら「宅が心配しておりましてよ」と、クラブ・アラジンのマッチをさりげなく杏子に渡すのであった。
手術が終わった東は、財前の意図を探ろうと、一杯誘う。財前は『待っていた』とばかりに承知する。二人はアラジンへ向かった。ケイ子が席を立ったのを見計らい、東は財前に「なぜ助手についた」と質し、「教授にしてくれと素直に僕に頼めんのか」と直截に詰問する。
同じころ、里見は病院に残って研究を続けていた。電話が鳴る。佐枝子からであった。佐枝子は、自分の縁談成就を焦る母・政子が里見と自分の仲を怪しみ、不快な電話を掛けるかも知れないと、里見に伝える。静寂が流れたその瞬間、研究室に財前が入ってきた。里見は慌てて佐枝子に別れを告げ、財前に向き合った。
酔った財前は「助けてくれ。大河内教授との間を取り持ってくれ」と懇願する。里見は無視して研究を続ける手を休めない。諦めて立ち上がる財前に里見は背中越しに言った。「信念があるのなら誰にでも堂々と会えるだろう。自分で行け」。財前は少なからず衝撃を受けながら、黙って里見の部屋を後にした。
数日後、ケイ子の部屋に杏子が現れた。杏子はすぐに切り出した。「しばらく主人と会わないでください。教授になったら、またお貸しします」。熱い視線が交じり合い火花を散らした。
医学部では2回目の教授選考委員会が開かれた。全国から推薦された10人の教授候補の名がボードに書かれていて…。