白い巨塔
#19 嘘だ!真実の叫び
東(石坂浩二)は、自分の医師生命を賭して法廷に立った。国平(及川光博)は、財前との間に個人的憎しみなど確執があったゆえの出廷であるという言質を引き出そうと陰湿な尋問を重ねる。東は答えに窮しながらも「確かに確執はあった。だが、恨みに駆られて出て来た訳ではない。明日の医療に繋げるためだ。」と発言を。父親を巻き込んでしまった罪の意識から佐枝子(矢田亜希子)は法廷の外へ出るが、里見(江口洋介)から「見届けましょう」と促され中に戻る。
法廷では船尾(中原丈雄)の尋問が始まっていた。船尾は一切財前に過失はなかったという学術的な回答を自信たっぷりに発言するのだった。関口(上川隆也)は質問さえできぬほど敗北感を味わっていた。
扇屋には又一(西田敏行)や鵜飼(伊武雅刀)らが集まり、船尾の労をねぎらう会が開かれたが、まるで財前の祝勝会の様相を呈した。国平だけはクールに裁判の予定を読み上げる。次回は財前とよし江(かたせ梨乃)の本人尋問。その次には関口側は亀山君子(西田尚美)と里見を申請しているという。国平も「最後まで勝つとは言いません」としながらも自信の笑みを浮かべた。
また、関口の事務所ではよし江と庸一(中村俊太)が肩を落としていた。二人は「医師たちはいつも何言ってるか分からない。私たちに分かるように言え、と思う」と漏らす。関口はハッとし、「僕は闘い方を間違えていたのかもしれない。裁判の流れを変えられるかも……」と何かつかんだ様子を見せた。
財前は医局員を前に「鵜飼学長から、がんセンター長の打診を頂いた。系列大学から優秀なスタッフを集めるとともに君らの中からもセンターに来てもらいたい。つまりこの中から系列に行ってもらう者も出てくる。覚悟してくれ」と脅迫にも似た忠誠を求める訓辞を語る。慌ててお追調の声を上げる佃(片岡孝太郎)や安西(小林正寛)。金井(奥田達士)までも……。その場を離れながら財前は柳原(伊藤英明)を手招きした。財前は「野田華子(三浦理恵子)との結婚はどうなった。論文も通してやるし、センターにも連れて行くから、早い方がいい」と“アメ”を与えながら「ただし、僕が目をかけていることを忘れてはならない。忘れたら…」と柳原への“ムチ”をちらつかせるのだった。
関口は自分のつかんだ「感触」を里見に当てた。関口は「医者と患者が向き合うために不可欠なものは何か」と里見に問うた。里見は「財前が選択の可能性を話していれば、手術を選んでも安らかだったかも」と言う。関口は「話すと言うことですね」とさらに新しい争点に自信を深めた。
君子が労共病院の仕事を終え外に出ると、国平が待ち受けていた。「出廷しないで頂きたい」と封筒を渡す。君子が「出廷の気はない」とつき返すと、国平は「それはよかった。お姉さんが離婚問題でお悩みのようですので、お役に立ちたいと思いましたので……」。そこまで調べ上げる裁判や弁護士というものに恐れをなし、君子は走って逃げた。国平の表情はピクリとも動かなかった。
本人尋問の日、財前は行きの車の中で里見に電話した。がんセンターの内科部長になってくれというのだ。断る里見に「その目で見れば来たくなる」と傲然と言い放ちつつ財前は、咳き込んだ。最近頻発するのだ。里見は「よくない咳だ。体調管理はしているか」とつい心配してしまう。財前は笑って取り合わず、電話を切った。
高裁の席についた財前が辺りを見回す。見慣れた顔が座っている。が、入り口辺りになんときぬ(池内淳子)がいる。財前はケイ子(黒木瞳)に目配せし、きぬを連れ出すように合図した。関口は財前のその様子をじっと見ていた。
裁判が始まると関口が発言を求めた。原告被告による対質尋問を申請するというのだ。二人の対立する証人が同時に質問を受ける方法である。国平は拒否しようとしたが、財前は「望むところだ。手間も掛からんでしょう」と不敵に応じた。
法廷では対質尋問が始まった。関口は財前を畳み掛けるように問い詰めた。
財前は一瞬の沈黙の後、「そう、担当医の柳原君に詳しく説明するよう命じました。もし同意書を強要したかのような印象を持たれれば、指導不足、監督不行き届きであり、遺憾なことである」と柳原に責任転嫁を始めた。その時、傍聴席で声が上がった。
法廷では船尾(中原丈雄)の尋問が始まっていた。船尾は一切財前に過失はなかったという学術的な回答を自信たっぷりに発言するのだった。関口(上川隆也)は質問さえできぬほど敗北感を味わっていた。
扇屋には又一(西田敏行)や鵜飼(伊武雅刀)らが集まり、船尾の労をねぎらう会が開かれたが、まるで財前の祝勝会の様相を呈した。国平だけはクールに裁判の予定を読み上げる。次回は財前とよし江(かたせ梨乃)の本人尋問。その次には関口側は亀山君子(西田尚美)と里見を申請しているという。国平も「最後まで勝つとは言いません」としながらも自信の笑みを浮かべた。
また、関口の事務所ではよし江と庸一(中村俊太)が肩を落としていた。二人は「医師たちはいつも何言ってるか分からない。私たちに分かるように言え、と思う」と漏らす。関口はハッとし、「僕は闘い方を間違えていたのかもしれない。裁判の流れを変えられるかも……」と何かつかんだ様子を見せた。
財前は医局員を前に「鵜飼学長から、がんセンター長の打診を頂いた。系列大学から優秀なスタッフを集めるとともに君らの中からもセンターに来てもらいたい。つまりこの中から系列に行ってもらう者も出てくる。覚悟してくれ」と脅迫にも似た忠誠を求める訓辞を語る。慌ててお追調の声を上げる佃(片岡孝太郎)や安西(小林正寛)。金井(奥田達士)までも……。その場を離れながら財前は柳原(伊藤英明)を手招きした。財前は「野田華子(三浦理恵子)との結婚はどうなった。論文も通してやるし、センターにも連れて行くから、早い方がいい」と“アメ”を与えながら「ただし、僕が目をかけていることを忘れてはならない。忘れたら…」と柳原への“ムチ”をちらつかせるのだった。
関口は自分のつかんだ「感触」を里見に当てた。関口は「医者と患者が向き合うために不可欠なものは何か」と里見に問うた。里見は「財前が選択の可能性を話していれば、手術を選んでも安らかだったかも」と言う。関口は「話すと言うことですね」とさらに新しい争点に自信を深めた。
君子が労共病院の仕事を終え外に出ると、国平が待ち受けていた。「出廷しないで頂きたい」と封筒を渡す。君子が「出廷の気はない」とつき返すと、国平は「それはよかった。お姉さんが離婚問題でお悩みのようですので、お役に立ちたいと思いましたので……」。そこまで調べ上げる裁判や弁護士というものに恐れをなし、君子は走って逃げた。国平の表情はピクリとも動かなかった。
本人尋問の日、財前は行きの車の中で里見に電話した。がんセンターの内科部長になってくれというのだ。断る里見に「その目で見れば来たくなる」と傲然と言い放ちつつ財前は、咳き込んだ。最近頻発するのだ。里見は「よくない咳だ。体調管理はしているか」とつい心配してしまう。財前は笑って取り合わず、電話を切った。
高裁の席についた財前が辺りを見回す。見慣れた顔が座っている。が、入り口辺りになんときぬ(池内淳子)がいる。財前はケイ子(黒木瞳)に目配せし、きぬを連れ出すように合図した。関口は財前のその様子をじっと見ていた。
裁判が始まると関口が発言を求めた。原告被告による対質尋問を申請するというのだ。二人の対立する証人が同時に質問を受ける方法である。国平は拒否しようとしたが、財前は「望むところだ。手間も掛からんでしょう」と不敵に応じた。
法廷では対質尋問が始まった。関口は財前を畳み掛けるように問い詰めた。
財前は一瞬の沈黙の後、「そう、担当医の柳原君に詳しく説明するよう命じました。もし同意書を強要したかのような印象を持たれれば、指導不足、監督不行き届きであり、遺憾なことである」と柳原に責任転嫁を始めた。その時、傍聴席で声が上がった。