第9回 2004年1月20日(火)放送 あらすじ

#9 親の仇

 神田の廻船問屋・加納屋に深夜押し込みが入り、主人から奉公人までを斬り殺し、家に火を放って逃げた。深手を負った番頭が這って高砂までたどりつき、翌朝お染(若村麻由美)や甚六(火野正平)に看病された。番頭は「石州、浜田」と言って息絶えた。お染が家に帰ると、吉川帯刀(古谷一行)からの呼び出しの結び文があった。
 浜田藩御用達の加納屋には抜け荷の疑いがあった。大坂の船宿が抜け荷の拠点になっていた。その生き証人となる石見の船頭頭を、大坂にいる探索方が捕らえたが、江戸への護送中に殺された。続いて加納屋の襲撃。番頭が口にしたのは浜田藩のことで、口封じに殺されたのだろう。帯刀はそうお染に話した。
 抜け荷の黒幕は浜田藩。しかし、藩主の松平康任(林与一)は幕府の要職にあり、簡単には手を出せない。帯刀の疑問は、密かに護送した船頭頭がなぜ襲われたのか。内通者は誰か、だった。お染は、加納屋に押し込んで家人を殺して火をつける手口が、自分の両親を殺した一味のやり方と似ていると思い、帯刀の依頼を受けた。
 お染は小間物屋に変装した音次(片岡愛之助)とともに浜田藩江戸屋敷の前で様子を探る。中から要人が乗る駕籠が出て来た。後をつけると「重の井」という料亭に入る。女将はお染の踊りの弟子だった。駕籠の要人は江戸家老の沢島兵部(石丸謙二郎)だった。
 お染は芸者に変装してお座敷に潜り込む。お染が踊り、音次が太鼓を叩く。やがて新しい客が来た。「岩間殿」と言われたその男は、帯刀の部下の探索方・岩間助右衛門(伊藤高)だった。夜道を帰る岩間をお染と音次がつけると、三、四人の男が岩間を襲う。岩間は抜刀し、お染と音次も加勢、一人を捕らえた。岩間も足を斬られて動けなくなった。
 帯刀の前に呼び出された岩間が全てを白状した。加納屋とは二十年以上も前から通じていた。近づいてきた女に気を許し、いつか取り込まれていた。加納屋に恩を売り、背後の浜田藩主に認められれば出世もと考えたが、実は「用済み」として襲われる存在でしかなかった。「己の出処進退は心得ていような」と帯刀は厳しい表情で言った。
 帯刀がお染に衝撃的な話をした。二十年前、越前や石見を探索して加納屋の抜け荷にいち早く気づいたのはお染の父親の富蔵だった。それを知った岩間は加納屋に内通し、外部には秘密の富蔵の家を教えた。そして浜田藩の腕利きが富蔵と妻を殺し、家に火を放った。お染は岩間に会って仇討ちをと帯刀に言うが、岩間は既に腹を切っていた。ならば浜田藩を相手に仇討ちをするとお染は言った。無謀なことだが、帯刀にはお染の気持ちが分かった。岩間が襲撃された夜に捕らえた浜田藩士を連れて江戸屋敷に乗り込むが、沢島にはぐらかされてしまう。
 やっと見つけた敵なのに討てないもどかしさ。お染はただ悔しい。そんなお染に新十郎(内藤剛志)は、仇討ちにとらわれずに、自由に生きた方が人生は楽しいと言うのだが。 浜田藩主の松平康任が帯刀を訪ねて来た。老中が一探索方のところに来るのは異例だ。江戸家老の沢島が急な病で死んだと言う。それは表向きで、抜け荷発覚の責めを負って腹を切ったものと思われる。屋敷に帰る藩主の駕籠を、お染が物陰で待っている。駕籠を襲いかねない顔をしている。いつのまにか傍に来た伊三郎(遠藤憲一)がお染の腕をつかむ。「あれは親の敵」と言うお染。「敵のために、あなたまで死なすわけにはいかない。生き別れた兄さんもきっとそう思う」と伊三郎は言う。
 結局、浜田藩には何の公式な処分もなかった。しかし、康任は近く老中を退くという。「これは罷免だ」と帯刀は言い、お染も少し胸のつかえが取れた。お染は帯刀の密偵役を辞した。後は兄の行方が分かれば良いのだが…。

キャスト

夜桜お染   … 若村麻由美
石室新十郎  … 内藤剛志
音次     … 片岡愛之助
笹原弥平   … 山崎銀之丞
甚六     … 火野正平

伊三郎    … 遠藤憲一
岩間助右衛門 … 伊藤 高
おろく    … 南條瑞江
あやめ    … 亜路奈
文次     … 井手らっきょ

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松平康任   … 林 与一
沢島兵部   … 石丸謙二郎
平林     … 高川裕也

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吉川帯刀   … 古谷一行
  ほか

スタッフ

■脚本
  金子成人
■企画
  能村庸一
  西岡善信
■プロデュース
  保原賢一郎
  西村維樹
■監督
  田中幹人
■美術監修
  西岡善信
■音楽
  coba
■制作
  フジテレビ
  映像京都

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