第3回 2003年10月28日(火)放送 あらすじ

#3 姫君と浪人

 菊川座に肥前興津藩の百合姫(朱花)が逃げ込んで来た。大名家との婚儀がまとまって江戸に来たのだが、一行が浪人の一団に襲われた。伴侍の一人・谷川運平(小林太樹)も襲撃側に寝返り、やっとの思いで追跡を振り切った。一座では、お染(若村麻由美)が姫君に扮していて、二人の姫姿がそろった。
 百合姫を襲った一団が木戸口にいたお染を見て姫と間違え、連れ去ろうとする。そこに鵜飼平八郎(松平健)が現れ、浪人たちを撃退する。身なりはむさ苦しいが顔は精悍で、滅法強い。百合姫は家臣の裏切りに不信感を持ち、江戸屋敷には行きたがらない。お染は百合姫を菊川座でしばらく預かることにした。
 姫を襲わせたのは、肥前にも出店を持つ廻船問屋西海屋の主人・四郎兵衛(園田裕久)。手下の佐吉(佐藤仁哉)は鵜飼が強いのに驚き、腕の立つ浪人を雇っては菊川座に向かわせるが、何度やっても赤子の手をひねるようにやっつけられる。
 百合姫が眠っている菊川座の座頭部屋に音次(片岡愛之助)が忍び込み、衣桁(いこう)にかけられた姫の赤い帯に手を伸ばす。鵜飼がそれに気づき、音次を捕らえた。しかし音次を厳しく調べることもせず、「今度だけは大目に見る」と許してやる。その騒ぎを見たお染には、鵜飼の正体は一体何なのかと不審がつのった。
 姫が行方不明になった興津藩江戸屋敷は、必死でその行方を捜している。困ったことに屋敷の侍は誰も姫の顔を知らない。奉行所の笹原弥平(山崎銀之丞)は上司とともに、藩の江戸詰めの重役から探索を依頼された。弥平はさらに新十郎(内藤剛志)に協力を頼む。そんな動きをつかんだ西海屋の佐吉が新十郎に、百合姫は菊川座にいると教える。ほどなく弥平と新十郎が捕り手を従えて乗り込み、鵜飼を捕まえる。なぜか鵜飼は抵抗しない。しばらくして藩からの迎えだという侍が来た。自身番に鵜飼を連行した弥平は、一件落着とほっとしたが、縛られたままの鵜飼は、「面倒になる」と言った。そこに興津藩からの正式な迎えが到着、さっきのは偽者だと判明する。
 お染が一計を案じていた。偽の迎えについて行ったのは百合姫ではなく、姫君の衣裳を着たお染だった。お染が連れて行かれたのは、西海屋の寮だった。四郎兵衛はあいさつもそこそこに着替えを勧め、お染が断ると偽の藩士がかかってきて、打ち掛けをはぎ、赤い帯をほどいて去った。目的は姫ではなく帯だったようだ。
 だが、帯の中には何もなかった。百合姫の顔を知っている谷川がお染のところに来て、偽の姫だと見破った。四郎兵衛が「斬れ」と叫ぶ。危ういところに鵜飼が来てお染を助け、金を出せば本物の姫を渡すと言って引き上げた。
 菊川座で姫の赤い帯を切ると、中から厚紙が出てきた。荷物の受け渡しなどに使う割符である。やっと鵜飼が説明を始めた。西海屋は興津藩内で密貿易をしていた。だが藩に気づかれて地元では荷を受け取れなくなり、江戸で荷を受け取ろうと考えた。厳しい監視の中で割符を江戸に送るために、百合姫の帯の中に縫いこんだのだ。しかも密貿易には藩の重役もかかわっているから厄介だった。鵜飼は藩の隠し目付けだった。
 まず、姫を引き取りに来た西海屋の四郎兵衛以下一団が弥平に捕らえられた。鵜飼は割符を音次に渡す。音次が抜け荷の取り締まりにかかわっていることを見抜いたのだ。さらに鵜飼はお染を百合姫と偽って興津藩江戸屋敷に乗り込む。お染は家臣の中に、西海屋で見かけた真崎十太夫(石田登星)を見つける。鵜飼に問い詰められた真崎は、姫は偽者だと言う。だがそれは、西海屋の寮にいなければ分からないことだった。真崎は自ら馬脚を現わした。抜け荷を受け取りに来た一味もつかまり、姫もようやく屋敷に入り、一件落着となった。

キャスト

夜桜お染 … 若村麻由美
石室新十郎 … 内藤剛志
音次 … 片岡愛之助
笹原弥平 … 山崎銀之丞

菊川春之丞 … 鏡味仙三郎(太神楽師)
菊川小太郎 … 鏡味仙一(太神楽師)
菊川春太郎 … 鏡味仙三(太神楽師)

おろく … 南條瑞江
あやめ … 亜路奈
文次 … 井手らっきょ

甚六 … 火野正平

佐吉 … 佐藤仁哉
真崎十太夫 … 石田登星
西海屋四郎兵衛 … 園田裕久
徳永将監 … 浅見小四郎
百合姫 … 朱花

鵜飼平八郎 … 松平 健
ほか

スタッフ

■企画
  能村庸一(フジテレビ)
  西岡善信(映像京都)
■プロデュース
  保原賢一郎(フジテレビ)
  西村維樹(映像京都)
■脚本
  田村 惠
■音楽
  coba
■美術監修
  西岡善信
■監督
  斎藤光正
■制作
  フジテレビ
  映像京都

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