夜桜お染
#7 黒い渦
石室新十郎(内藤剛志)と同じ信州阿賀山藩の浪人・半田彦四郎(益岡徹)が江戸で行き倒れとなった。とある長屋に住むお仲(山本みどり)という一人暮らしの髪結いが看病した。翌朝気がついた彦四郎が言ったのが、新十郎とお染(若村麻由美)の名前だった。二人が抜け荷の探索で北陸路へ行った時に、甲州路で彦四郎に出会い、江戸の連絡先を伝えてあったためだ。お仲が呼びに来て、新十郎とお染は彦四郎に会った。
幕府の探索方が、海産物問屋の中岩屋を取り調べる。抜け荷の疑いあり、との情報があったためだが、岩間助右衛門(伊藤高)らが蔵を調べても何も出てこなかった。探索方を指揮する吉川帯刀(古谷一行)には手痛い失敗となった。
彦四郎はお仲の口ききで、長屋のお仲の隣の部屋に住み、傘張りやガマの油売りの口上を覚えようとするが、不器用で仕事がみつからない。お仲はそんな彦四郎に優しく、夕飯まで食べさせてくれる。むさくるしいヒゲを剃り、髪も結いなおしてくれた。
お仲は、身の不遇を嘆いて彦四郎が涙を流したことに対して、「人前で泣くお侍を初めて見た。気持ちを素直に出せるのがうらやましい」と言った。彦四郎が、「お仲殿は、息を詰めて生きているのか」と聞くと、お仲は「少し」と言ったきり、多くを語らなかった。音次(片岡愛之助)が菊川座にふらりと現れ、帯刀が中岩屋の件で謹慎処分を受けたことをお染に伝える。お染と音次は帯刀に会う。お染も帯刀も、音次がただの屋根屋だとは思っていない。音次は、探索方に内通者がいて、動きが伝わっているのだろうと帯刀に言う。帯刀も同感で、お染が中岩屋に入り込むことになる。
お染は山出しの女中姿になって中岩屋で働くことになる。驚いたことに、お仲が髪結いとして中岩屋に出入りしていた。主人の中岩屋喜左衛門(小沢象)のお気に入りらしい。
お仲の世話で、彦四郎の身なりがこざっぱりしてくる。おたがいに憎からず思っているようだ。様子を見に彦四郎の長屋を訪ねたお染は、お仲は働き者で、最近夜が遅いことを彦四郎から聞く。そこへお仲が帰って来た気配がする。彦四郎が隣に行くと、また仕事に行くのだという。
お染は夜道を行くお仲を尾行する。するとお仲の姿が消え、お染は覆面の男たちに取り囲まれる。形勢不利のお染を助けてくれたのは、献残屋の伊三郎(遠藤憲一)だった。お染は伊三郎と一杯飲む。この男もただの商人には見えない。お染は、伊三郎の腕の黒子に気づき、火事で生き別れた兄の腕の同じ場所にも黒子があった話をする。
新十郎が彦四郎の長屋で酒を飲む。声をかけるとお仲も来た。新十郎がお仲に、「誰か決まった人は?」と尋ねると、お仲は「いませんよ」と答える。彦四郎は嬉しそうだ。
お染が、「船が三日後に木更津沖に来る」という、喜左衛門と番頭の話を立ち聞きして帯刀に伝える。音次が、中岩屋と探索方の内通者との連絡係をお仲がしていることを突き止める。帯刀が部下をお仲の長屋に向かわせる。「決して殺すな」と帯刀は言った。杉田新蔵(南條豊)がその役目を志願した。
だが、その杉田こそが内通者だった。お染は危機を知って長屋に行き、お仲を守ろうと黒覆面姿の杉田の一団四、五人と戦うが、杉田がお仲を斬る。音次の知らせで新十郎が駆けつける。杉田が逃げるところへ、上司の岩間が到着。怒りのあまり杉田を斬る。しかしお仲は、彦四郎の腕の中で絶命した。
お染の情報で中岩屋は言い逃れが出来ずにお縄になったが、彦四郎には辛い結末となった。彦四郎によると、お仲の指先は長年の髪結い仕事で油が染み込んでつるつるだった。そして、「ここからいつも幸せが滑り落ちる」と話していたという。
幕府の探索方が、海産物問屋の中岩屋を取り調べる。抜け荷の疑いあり、との情報があったためだが、岩間助右衛門(伊藤高)らが蔵を調べても何も出てこなかった。探索方を指揮する吉川帯刀(古谷一行)には手痛い失敗となった。
彦四郎はお仲の口ききで、長屋のお仲の隣の部屋に住み、傘張りやガマの油売りの口上を覚えようとするが、不器用で仕事がみつからない。お仲はそんな彦四郎に優しく、夕飯まで食べさせてくれる。むさくるしいヒゲを剃り、髪も結いなおしてくれた。
お仲は、身の不遇を嘆いて彦四郎が涙を流したことに対して、「人前で泣くお侍を初めて見た。気持ちを素直に出せるのがうらやましい」と言った。彦四郎が、「お仲殿は、息を詰めて生きているのか」と聞くと、お仲は「少し」と言ったきり、多くを語らなかった。音次(片岡愛之助)が菊川座にふらりと現れ、帯刀が中岩屋の件で謹慎処分を受けたことをお染に伝える。お染と音次は帯刀に会う。お染も帯刀も、音次がただの屋根屋だとは思っていない。音次は、探索方に内通者がいて、動きが伝わっているのだろうと帯刀に言う。帯刀も同感で、お染が中岩屋に入り込むことになる。
お染は山出しの女中姿になって中岩屋で働くことになる。驚いたことに、お仲が髪結いとして中岩屋に出入りしていた。主人の中岩屋喜左衛門(小沢象)のお気に入りらしい。
お仲の世話で、彦四郎の身なりがこざっぱりしてくる。おたがいに憎からず思っているようだ。様子を見に彦四郎の長屋を訪ねたお染は、お仲は働き者で、最近夜が遅いことを彦四郎から聞く。そこへお仲が帰って来た気配がする。彦四郎が隣に行くと、また仕事に行くのだという。
お染は夜道を行くお仲を尾行する。するとお仲の姿が消え、お染は覆面の男たちに取り囲まれる。形勢不利のお染を助けてくれたのは、献残屋の伊三郎(遠藤憲一)だった。お染は伊三郎と一杯飲む。この男もただの商人には見えない。お染は、伊三郎の腕の黒子に気づき、火事で生き別れた兄の腕の同じ場所にも黒子があった話をする。
新十郎が彦四郎の長屋で酒を飲む。声をかけるとお仲も来た。新十郎がお仲に、「誰か決まった人は?」と尋ねると、お仲は「いませんよ」と答える。彦四郎は嬉しそうだ。
お染が、「船が三日後に木更津沖に来る」という、喜左衛門と番頭の話を立ち聞きして帯刀に伝える。音次が、中岩屋と探索方の内通者との連絡係をお仲がしていることを突き止める。帯刀が部下をお仲の長屋に向かわせる。「決して殺すな」と帯刀は言った。杉田新蔵(南條豊)がその役目を志願した。
だが、その杉田こそが内通者だった。お染は危機を知って長屋に行き、お仲を守ろうと黒覆面姿の杉田の一団四、五人と戦うが、杉田がお仲を斬る。音次の知らせで新十郎が駆けつける。杉田が逃げるところへ、上司の岩間が到着。怒りのあまり杉田を斬る。しかしお仲は、彦四郎の腕の中で絶命した。
お染の情報で中岩屋は言い逃れが出来ずにお縄になったが、彦四郎には辛い結末となった。彦四郎によると、お仲の指先は長年の髪結い仕事で油が染み込んでつるつるだった。そして、「ここからいつも幸せが滑り落ちる」と話していたという。