第5回 2003年11月11日(火)放送 あらすじ

#5 間違えられた男

 香具師の元締・音羽の伝五郎(田畑猛雄)が伴の者二人と共に、夜道で腕の立つ浪人に斬られて死んだ。夜鷹が一人現場を見ていた。浪人は夜鷹を斬ろうとするが、通りかかった石室新十郎(内藤剛志)がかばう。浪人は逃げ、夜鷹も姿を消した。
 災難だったのは新十郎。死体の傷を改めているところに通りかかった町人に、懐の金を盗もうとしている下手人と思われた。奉行所が書かせた人相書きは新十郎にそっくり。事情を話す新十郎だが、同心の笹原弥平(山崎銀之丞)は、目撃者の夜鷹が見つかるまでは疑いは晴れないと言った。
 お尋ね者同然の新十郎は編み笠をかぶり、弥平、岡っ引きの文次(井手らっきょ)と夜鷹を探しに事件の現場に行く。すると、やはり夜鷹たちと話をしている不審な編み笠の浪人がいた。後をつけると、秋葉の銀蔵(内田勝正)という、最近急に勢力を拡大している香具師の家に入った。
 銀蔵の家から出て来た商人の伊三郎(遠藤憲一)は新十郎と顔見知り。伊三郎によると、銀蔵は勢力拡大のためには手段を選ばず、平気で人も殺す。伝五郎はそれを許すまいとしていた。伊三郎は銀蔵との取り引きもあるが、昔、伝五郎に世話になった恩義があり、内情を話してくれたのだ。
 事件の背景は読めたが、証拠はない。お染(若村麻由美)が女賭博師として銀蔵一味に潜入する。だが、抱えている浪人が七、八人もいて誰が下手人か分からない。癖の悪い浪人もいたが、そんな時に忠弥(田中健)という若い浪人がお染をかばってくれた。
 忠弥には苗字がない。ある夜、お染は銀蔵の家に近い路地裏で忠弥が吹く笛の音を聞いた。哀しい音だった。お染が話しかけ、二人は笛の話をする。忠弥は笛を、子供のころに父親から習ったと言う。その父は火事で死んだ。そう聞いて胸が高鳴ったお染は、自分も同じ身の上で、火事で兄と生き別れたと言う。忠弥は、「俺にも妹がいた」と言う。だが、「妹の名前は忘れた。今の俺には関係ない」と、それ以上は話さなかった。
 銀蔵が、香具師・根津の丑松(峰蘭太郎)を殺すために、二人の浪人を差し向ける。その話を立ち聞きしたお染は、ちょうどよく賭場に入ってきた音次(片岡愛之助)に伝える。音次から聞いた新十郎が、丑松への襲撃の場に駆けつけ、丑松を守った。
 失敗に怒る銀蔵は、「こっちの動きをタレ込んだ奴がいる」と言い、お染が疑われた。物陰で聞いていてハッとするお染の腕を忠弥がつかんで、素早く障子の陰に引っ張り込んだ。その前を、銀蔵と浪人が通り抜ける。忠弥はお染に「逃げろ」と言う。お染は、「旦那も」と言うが忠弥は、「俺は十一の時に銀蔵に拾われた。気がついたら犬のように飼いならされて、今更どこへも行けない」と悲しそうに言うのだった。
 伝五郎殺しを目撃した夜鷹のおもん(井上紀子)が見つかった。新十郎への疑いは晴れたが、弥平はその先を考える。夜鷹が見つかったという情報を、伊三郎を通じて銀蔵に伝える。あわてた銀蔵は、浪人の薄井要蔵(永野典勝)と忠弥におもんを探させる。おもんが見つかる。編み笠の浪人一人がおもんと共に木立に入り、帯を解くおもんを斬ろうとする。その時捕り手が現れる。お染がおもんになりすまし、罠をかけたのだ。
 新十郎が刀を抜く。浪人も編み笠を脱ぐ。忠弥だった。お染は忠弥に、「悪の片棒を担いだまま死ぬ気ですか」と言う。忠弥は黙って刀を捨てた。突然銃声がして、忠弥が撃たれる。新十郎が、撃った薄井を峰打ちで倒した。忠弥はお染の腕の中で、「妹は火事で死んだ。俺は、あんたの兄貴ではない」と言って息絶えた。動かぬ証拠で銀蔵は捕らえられ、事件は解決したが、お染には辛い出来事だった。

キャスト

夜桜お染 …… 若村麻由美
石室新十郎 …… 内藤剛志
音次 …… 片岡愛之助
笹原弥平 …… 山崎銀之丞

おろく …… 南條瑞江
文次  …… 井手らっきょ

伊三郎 …… 遠藤憲一

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忠弥 …… 田中 健

楠原喜左衛門 … 本田博太郎

秋葉の銀蔵 …… 内田勝正
薄井要蔵 …… 永野典勝
瀬田の権兵衛 …… 本城丸裕
亥之吉 …… 出光秀一郎
音羽の伝五郎 …… 田畑猛雄

ほか

スタッフ

■脚本:
  田村 惠
■企画:
  能村庸一・西岡善信
■プロデュース
  保原賢一郎・西村維樹
■監督
  斎藤光正
■美術監修
  西岡善信
■音楽
  coba
■制作
  フジテレビ、映像京都

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