第1回 2003年10月14日(火)放送 あらすじ

#1 炎の記憶

 お染(若村麻由美)は六歳の時に火事で両親を亡くし、兄とも生き別れた。両国の芝居小屋の菊川春之助一座に拾われて芸人として育った。持ち前の美貌と芸で、「夜桜お染」と呼ばれて一座の看板になり、今は引退して両国で踊りと三味線の師匠をしている。
 お染は身のこなしが軽く、武芸の腕も立つ。変装も得意なために、南町奉行所の同心笹原弥平(山崎銀之丞)に協力することがある。ある日も、裏切った女への復讐から若い女の顔を切る通り魔の清太郎(尾美としのり)を、自分がおとりになって捕まえた。
 お染が弥平を助けるのは、一座の座頭でお染とは姉妹同然に育ったおたつ(平淑恵)が、妻子のいる弥平といい仲なためだ。協力に感謝する弥平にお染は、両親を亡くした二十年前の下谷車坂の火事について調べてと頼んだ。弥平は奉行所の書庫で古い記録を見る。
 居酒屋の高砂は、お染のなじみの店だ。亭主の甚六(火野正平)は、昼間は菊川座で裏方の仕事をしている。店を支えるのが姉のおろく(南條瑞江)。店には最近、石室新十郎(内藤剛志)という浪人がいる。仇討ちのために江戸に来たが、敵は見つからず金はなくなる。高砂で薪割りをしたり、紹介されたガマの油売りで糊口をしのいでいる。
 町を歩くお染が二人の侍に行く手を阻まれた。お染は抵抗したがかなわず、目隠しをされ、駕籠に乗せられてある寺の離れに連れて行かれる。そこには吉川帯刀(古谷一行)という年配の侍がいた。「名乗れないが」と言う帯刀はお染に、「なぜ二十年前の火事について調べたいのか」と聞く。
 問われるままにお染は、父親の富蔵は薬種問屋に頼まれて諸国に薬草の買い付けに行っていたこと。火事の時の恐ろしさ。そして火事の時に、侍が何人か家に入ってきて刀を抜いた記憶がおぼろにあることなどを話した。それだけを聞くと、帯刀は再びお染に目隠しをさせて町中まで駕籠で送った。
 夜道を歩くお染は、突然屋根から落ちてきた金無垢の仏像を拾う。「はて面妖な」と首をかしげながら、仏像を懐に入れた。しばらくしてお染は音次(片岡愛之助)という着流しに頬かむりの男に、「落としものを知らないか」と声をかけられる。「知らない」と言うと男は立ち去った。家に帰ったお染は仏像を仏壇に置いた。
 翌日、お染が帰ると、仏像がなくなっていた。お染はある決意をして、駕籠で連れて行かれた寺に行った。目隠しをされていたが、橋を渡る音など、外の音を懸命に記憶して方向をつかんでいたのだ。寺に着いたお染は出てきた僧侶に、「この前の侍に、盗人の真似なんかするんじゃないと言っとくれ」と言って帰った。
 数日後、自宅で弟子に稽古をつけているお染に、深川の料亭から呼び出しがかかる。帯刀が待っていた。お染が、「誰かを私の家に入り込ませたね」と言うと、帯刀は知らないと言う。今度は帯刀が、なぜ寺に訪ねて来られたかを質問する。「音を聞いていた」と答えると、「親の血かねえ」と言って吉川帯刀と名乗る。幕府の若年寄支配、諸国探索方。お染の父親富蔵は、帯刀が使う隠密の一人で、椚富蔵というれっきとした侍だった。
 帯刀は、火事は富蔵を殺した者の放火だと思うと話した。富蔵は当時、西国や北陸の藩がからんだ抜け荷の探索をしていた。帯刀はお染に、「富蔵の跡を継ぐ気はないか」と言う。今の暮らしを続けながら、女にしか出来ないことをする。帯刀の下で働けば、親の敵を突き止め、行方不明の兄とも会えるかもしれないと思ったお染は、迷った末に隠密になることを決意した。

キャスト

夜桜お染 … 若村麻由美
石室新十郎 … 内藤剛志
音次 … 片岡愛之助
甚六 … 火野正平
笹原弥平 … 山崎銀之丞

菊川春之丞 … 鏡味仙三郎(太神楽師)
菊川小太郎 … 鏡味仙一(太神楽師)
菊川春吉 … 鏡味仙三(太神楽師)

伊三郎 … 遠藤憲一
おろく … 南條瑞江
あやめ … 亜路奈
文次 … 井手らっきょ

清太郎 … 尾美としのり

おたつ … 平 淑恵
吉川帯刀 … 古谷一行
   ほか

スタッフ

■企画
  能村庸一(フジテレビ)
  西岡善信(映像京都)
■プロデュース
  保原賢一郎(フジテレビ)
  西村維樹(映像京都)
■脚本
  金子成人
■音楽
  coba
■美術監修
  西岡善信
■監督
  井上 昭
■制作
  フジテレビ
  映像京都

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